伊坂幸太郎

2016年8月 2日 (火)

サブマリン

2459「サブマリン」 伊坂幸太郎   講談社   ★★★★

家裁調査官の武藤は、無免許運転で人をひいてしまった棚岡少年の事件を担当している。ところが、上司の陣内にひっかきまわされ・・・。その挙句に見えてきた「真実」は。

「チルドレン」の世界、ふたたび。

いつもいつも、伊坂さんの物語の設定は、息が詰まりそうになるほど苦しい。どうしても考えてしまうのだ。「もし、私ならどうする?」

今回も、そんなふうでした。その苦しさに風穴をあけてくれるのが、陣内。普通の人は決して口にしないようなことを言い、ありえない行動に走る。でも、それが私たちの苦しさを救ってくれるのです。

ただ、現実に陣内がそばにいたら、すごく嫌でしょうけれど(笑)

こんなに重いテーマを扱って、エンタメ作品として成立させる伊坂さんの手腕はさすがです(いつものことですが)。でも、やっぱりどこかで「で?あんたならどうするの?」と問われている気がするのです。

2015年10月30日 (金)

陽気なギャングは三つ数えろ

2370「陽気なギャングは三つ数えろ」 伊坂幸太郎   祥伝社   ★★★★

あの銀行強盗四人組が帰ってきた! 天才スリの久遠は、ホテルで暴漢に襲われた記者の火尻を救う。ところが、火尻はハイエナのような男だった。火尻と関わったことで窮地に陥った久遠たちは、人間嘘発見器・成瀬を中心に、逆襲を計画するが・・・。

成瀬、久遠、雪子、そして響野。あの四人が復活です。なんと、9年ぶりのシリーズ新作!

いつもながらあの四人の絶妙な掛け合いと、入り組んだ作戦が最高です。以前に比べると、スピード感はやや落ちたかなという気もしますが、それぞれの個性が生かされたプロットは、やはり楽しい。

最終的にはうまく片付くのだろうなと思っていましたが、今回はぎりぎりまで追い詰められる感じでひやひやしました。

それにしても、成瀬と久遠と雪子の能力はとっても有効だと思うのですが、響野って・・・(笑) 演説の達人というのがどれだけ役に立っているのか、いつも疑問なのです。でも、彼の存在あってのこの物語だという気も。

いずれまた彼らに会えるのを楽しみにしています。

2015年7月 8日 (水)

ジャイロスコープ

2321「ジャイロスコープ」 伊坂幸太郎   新潮文庫   ★★★★

「浜田青年ホントスカ」「ギア」「二月下旬から三月上旬」「if」「一人では無理がある」「彗星さんたち」「後ろの声がうるさい」の7編を収録した短編集。巻末には「十五年を振り返って 伊坂幸太郎インタビュー」。

好きな話は、「一人では無理がある」と「彗星さんたち」。やっぱり、後味のいい話が好きです(笑) 伊坂さんは不本意かもしれませんが。

「後ろの声がうるさい」は、書き下ろし。伊坂さんらしい「おまけ」です。なんだかんだ言って、ファンサービスしてくれるんですよね。

インタビューでは、収録作へのコメントのほか、これまでの作品についても語っています。「夜の国のクーパー」「死神の浮力」「火星に住むつもりかい?」が、伊坂さんの中では三部作というのに驚きましたが、すごく納得しました。何の三部作なのかは・・・どうぞお読みください(笑)

つい先日「仙台ぐらし」を読んだばかりなので、しばらく寝かせておこうと思っていたのに、あっという間に読んでしまいました。

2015年6月27日 (土)

仙台ぐらし

2315「仙台ぐらし」 伊坂幸太郎   集英社文庫   ★★★★

「仙台学」に掲載されたものを中心にしたエッセイ集。いちばん古いものは2005年。

ご本人も「エッセイは苦手」と言っていて、たしかに以前読んだエッセイ集は「う~ん。小説の方がおもしろいかも」と思ったものですが・・・これは、おもしろかったです。

「○○が多すぎる」シリーズは、読んでて笑ってしまいました。伊坂さんの心配性と、自意識過剰かと動揺するところと。これが実話だというところが、ほんとにおかしかったです。伊坂ワールドって、小説の中だけじゃないんだ・・・。個人的なお気に入りは「ずうずうしい猫が多すぎる」。

あ、仙台の本屋が次々となくなったというのは、寂しかったです。学生時代、講義はサボっても、本屋通いはサボらなかった私。「仙台=本屋がたくさんある街」というイメージだったんですけどね。

そのほか、震災に関して書いたものもいくつか。「震災関連本にはしたくない」という筆者の強い意志で、そこはあまり宣伝されていませんが、私は伊坂さんがあの震災をどう受け止めたか知りたかったので、読めてよかったです。伊坂さんが「泣いた」というのを読んで、思わずほろりとしてしまいました。

それから、「ブックモビール」という短編。震災後ボランティアをしている青年たちの話・・・なのだけど、いつしか奇妙な伊坂ワールドに入り込んでいきます。

伊坂ファンには、おすすめの一冊。

2015年5月 2日 (土)

火星に住むつもりかい?

2281「火星に住むつもりかい?」 伊阪幸太郎   光文社   ★★★★

「安全地区」に指定されると、「平和警察」が犯罪を未然に防ぐために、情報を集め、四か月に一度、「危険人物」の公開処刑が行われる。一度嫌疑をかけられると、拷問によって危険人物であることを認めさせられてしまう、そんな社会。そこに一人のヒーローが現れて・・・。

とんでもなく気が重くなる設定なんだけど、ついつい読んでしまう伊坂作品。いつものことながら、この設定でエンタテイメントになってしまうところがすごいです。恐ろしい、とも言う。

今回の話は、いわば現代版魔女狩りの世界。理不尽すぎる物語に翻弄される登場人物たち。そんな彼らをなぜか救ってくれるヒーロー(?)が現れます。警察も必死にその正体を探るのですが、複雑に絡み合った糸がほどけたとき、見えてくる真実は・・・。

伊坂幸太郎の描く世界は、ある意味極端で、現実には起こりえないものばかり。けれど、読んでいるうちにふと思うのです。これは本当に架空の世界の話なのか? いつかこれが現実になってしまうんじゃないか? 

「この状況で生き抜くか、もしくは火星にでも行け。」・・・火星に住むことができない以上、どんなにひどい世界でも、ここで生きていくしかない私たち。だったら、ひどい世界にならないようにしていくしかないんだよな・・・と、そんなことを考えさせられました。

2015年1月 7日 (水)

アイネクライネナハトムジーク

2214「アイネクライネナハトムジーク」 伊坂幸太郎   幻冬舎   ★★★★

「アイネクライネ」「ライトヘビー」「ドクメンタ」「ルックスライク」「メイクアップ」「ナハトムジーク」の6つの短編が起こす、小さな奇跡の物語。

伊坂幸太郎がラブストーリーを書くとこうなるんですね。照れている作者が目に浮かぶようで、ニマニマしちゃいます。

連作短編になっていて、それぞれの主人公がほかの話のどこかに登場していたり、いろんなリンクが楽しめます。あまり具体的に書くと、ネタバレになってつまらないので、自粛。

私が好きだったのは、「ルックスライク」と「ライトヘビー」かな。気持ちがほっこりします。

いつものことながら破天荒なキャラが登場しますが(今回は、織田一真)、なぜだか憎めないんですよねえ。現実にいたら、とっても嫌だけど(笑)

2015年1月 4日 (日)

キャプテンサンダーボルト

http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/508704/592280372212「キャプテンサンダーボルト」 阿部和重 伊坂幸太郎   文藝春秋   ★★★★

東京大空襲の夜、蔵王に墜落したB29。公開中止になった幻の映画「鳴神戦隊サンダーボルト」。村上病という感染症。これらの意味がすべて解き明かされたとき、カタストロフィのスイッチが入る・・・。相葉時之と井ノ原悠は、人類を救えるか。

伊坂幸太郎は「ファンです!」と胸をはって言えますが、阿部和重は以前一作読んで、あとは・・・。その二人の共作ってどうなんだろうと思ったのですが、とにかくおもしろそうだったので、図書館で借りてきました。

小学校時代、野球チームで一緒だった相葉と井ノ原。大人になった今は、相葉は定職もなく、たちの悪い借金に追われ、一方の井ノ原も妻子がいるものの借金がかさみ、それぞれに苦しい立場に。トラブルメイカーの相葉が偶然井ノ原に再会したところから、この冒険が本格的にスタートします。

話は複雑に絡み合っており、さらにジェットコースターのごとく展開していくので、詳しい筋立てを説明するのは難しいのです。しかし、一難去ってはまた一難・・・という感じで、次々と襲ってくる困難を、ぎりぎりで乗り越えていく相葉たちにはらはらさせられ、ページを繰る手が止まりませんでした。

伊坂さんの「ゴールデンスランバー」とちょっとイメージが重なりますが、あちらよりもパワフルな物語になっているのは、主人公がコンビだからでしょうか。昔の仲間だからわかることという感じが、なんとも言えずいい味出してます。

舞台は伊坂作品定番の仙台と、阿部さんの出身である山形。それに、「相葉」は「阿部」、「井ノ原」は「伊坂」と頭文字の音が同じですね。なんか、お二人で楽しんで書いたんだろうなという雰囲気が伝わってきます。

2014年7月29日 (火)

死神の浮力

2156「死神の浮力」 伊坂幸太郎   文藝春秋   ★★★★

娘を殺された作家・山野辺とその妻は、犯人への復讐を生きるよすがにしていた。犯人に無罪判決がくだされたその日、千葉と名乗る男が現れる。千葉の正体は・・・「死神」。山野辺の「調査」に来たのだ。

死神の千葉さん、長編で登場です。

サイコパスに娘を殺されるという、なんともやりきれない設定なので、初めはかなり読むのがしんどかったです。それでも、千葉さんとのやりとりがおかしくて、なんとか読み進めることができました。山野辺夫妻が千葉さんにちょっとだけ救われるような気持ちになったの、わかる気がします。

死神がやってきたということは、逆に調査機関の7日間は、対象者は絶対死なない。とはいえ、山野辺のおかれている状況がどんどん悪くなっていくので、じりじりしましたが・・・最後はちょっとびっくりな決着でした。そうきましたか。

伊坂さんはこういう救いのないような物語を書くけれど、ラストシーンは抜群にいいですね。まるで映画のラストシーンを見ているようでした。

2014年5月 2日 (金)

首折り男のための協奏曲

2118「首折り男のための協奏曲」 伊坂幸太郎   新潮社   ★★★★

別々の媒体に、別々のテーマで掲載した物語7編を並べてみたら、連作みたいになりました、という・・・。もちろん、多少の加筆はしているようですが。伊坂マジックですね。
「首折り男の周辺」、「濡れ衣の話」、「僕の舟」、「人間らしく」、「月曜日から逃げろ」、「相談役の話」、「合コンの話」の7編。人の首をボキッと折って殺してしまう殺し屋の話に加え、伊坂ワールドおなじみの探偵兼泥棒の黒澤も登場します。
「僕の舟」は、しごくまっとうなラブストーリー。黒澤さんが登場してなかったら、恥ずかしくて読めないような(笑) 
「月曜日から逃げろ」は、物語の仕掛けがおもしろい。読み終えたあと、もう一度最初に戻って読みたくなります。
「時空のねじれ」という言葉が何度も出てきて、SF?と思いましたが、さにあらず。伊坂ワールド、堪能しました。
印象に残った言葉。
「いつだって、自分にこう問いかければいい。『俺が、もし、あいつの立場だったら、正しいことができたのか?』とな。そこで、『俺ならできた』と思えるなら、とことんまで非難してもいい。ただ、『同じ立場だったら、同じようなものだったかもしれない』と感じるならば、批判もぐっと堪えるべきだ」
(中略)
「安全地帯から文句を言うだけなら、ただの、謙虚さをなくした評論家だ」

2013年8月24日 (土)

ガソリン生活

2039「ガソリン生活」 伊坂幸太郎   朝日新聞出版   ★★★★

帯のコピーを転載します。

「謎がひしめく会心の長編ミステリーにして、幸福感の結晶たる、チャーミングな家族小説。」

「本小説は車が語り手です。」

朝日新聞連載中から気になっていましたが、新聞小説をコツコツ読むのは苦手なので、本になったら読もう、と。人気が高いのでなかなかまわってきませんでしたが、ようやく!

車が主人公?緑のデミオ? うーん。どうなんだろう・・・と思わないわけでもなかったのですが、緑デミと隣家のカローラをはじめ、車同士の会話がなんともかわいい。所有者への愛情とか、人間の運転に対する苦情とか。びっくりした時の表現が「ワイパー動く」とか。

緑デミの持ち主・望月家が巻き込まれた災難とその顛末。いつもながらいろいろな伏線が張られていて、それがきれいに回収されていく展開は、爽快感があります。

それにしても、たくさんの「いやなやつ」が出てきます。まあ、それなりに報いを受けるので(半沢直樹みたいに「倍返し」とはいきませんが)、後味は悪くないです。ただ、謎のご近所さんたちの正体っていったい・・・?

望月家の末っ子・亨は、伊坂さんお得意の「可愛げのない子ども」(笑) でも、こういうキャラ、好きなんですよねえ。

そうそう、コンビニにチラッと彼らが登場してたのもうれしかったです。ほら、父親が4人いる・・・。

エピローグはできすぎの気もしましたが、ちょっぴり泣きそうになってしまいました。

その他のカテゴリー

「あ」行の作家 | 「か」行の作家 | 「さ」行の作家 | 「た」行の作家 | 「な」行の作家 | 「は」行の作家 | 「ま」行の作家 | 「や」行の作家 | 「ら」行の作家 | 「わ」行の作家 | あさのあつこ | いしいしんじ | こうの史代 | さだまさし | その他 | たつみや章 | よしもとばなな | アンソロジー | 万城目学 | 三上亜希子 | 三上延 | 三島由紀夫 | 三木笙子 | 三浦しをん | 三浦哲郎 | 三谷幸喜 | 上橋菜穂子 | 中山七里 | 中島京子 | 中田永一 | 中野京子 | 乃南アサ | 乙一 | 井上ひさし | 京極夏彦 | 伊坂幸太郎 | 伊藤計劃 | 伊集院静 | 佐藤多佳子 | 佐藤賢一 | 俵万智 | 倉知淳 | 光原百合 | 冲方丁 | 初野晴 | 加納朋子 | 加門七海 | 北大路公子 | 北山猛邦 | 北村薫 | 北森鴻 | 原田マハ | 司馬遼太郎 | 吉村昭 | 吉田修一 | 向田邦子 | 坂木司 | 夏川草介 | 夏目漱石 | 大倉崇裕 | 大崎梢 | 太宰治 | 奥泉光 | 宇江佐真理 | 宮下奈都 | 宮尾登美子 | 宮部みゆき | 小川洋子 | 小路幸也 | 小野不由美 | 山崎豊子 | 山本周五郎 | 山白朝子 | 岡本綺堂 | 島本理生 | 川上弘美 | 平岩弓枝 | 彩瀬まる | 恩田陸 | 愛川晶 | 戸板康二 | 日明恩 | 日記・コラム・つぶやき | 有川浩 | 朝井まかて | 朝井リョウ | 木内昇 | 朱川湊人 | 杉浦日向子 | 村山由佳 | 東川篤哉 | 東野圭吾 | 松本清張 | 柏葉幸子 | 柳広司 | 柴田よしき | 栗田有起 | 桜庭一樹 | 梨木香歩 | 梯久美子 | 森博嗣 | 森絵都 | 森見登美彦 | 森谷明子 | 横山秀夫 | 橋本治 | 氷室冴子 | 永井路子 | 永田和宏 | 江國香織 | 池波正太郎 | 津原泰水 | 浅田次郎 | 海堂尊 | 海外の作家 | 湊かなえ | 漫画 | 瀬尾まいこ | 田中啓文 | 田丸公美子 | 畠中恵 | 石田衣良 | 福井晴敏 | 笹尾陽子 | 米原万里 | 米澤穂信 | 芥川龍之介 | 若竹七海 | 茅田砂胡 | 茨木のり子 | 荻原規子 | 菅野彰 | 菅野雪虫 | 藤沢周平 | 藤谷治 | 西條奈加 | 西澤保彦 | 角田光代 | 誉田哲也 | 辺見庸 | 辻村深月 | 近藤史恵 | 酒井順子 | 重松清 | 金城一紀 | 須賀しのぶ | 高城高 | 高橋克彦 | 髙田郁 | 鷺沢萠

2017年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

カテゴリー