畠中恵

2020年3月31日 (火)

てんげんつう

3019「てんげんつう」  畠中恵      新潮社      ★★★

繰り返し繰り返し、厄介なことに巻き込まれる長崎屋の若だんなと妖たち。今度は若だんなの許嫁・於りんの中屋や、僧・寛朝たちまで巻き込んでしまい…。


「てんぐさらい」「たたりづき」「恋の闇」「てんげんつう」「くりかえし」の五話。

毎度おなじみの話なのに、読んでしまうんですよねえ。なぜ読んでしまうのか、ずっと不思議だったのですが。

思うに、主人公・若だんなの人物造型が大きいのでは。

大店の跡取り息子で、賢く優しい彼は、体がものすごく弱い。ゆえに、思うままに出歩くこともできず、しょっちゅう寝込んでしまう。それは、祖母が人ならぬ身であることに起因しているらしく、それはどうしようもなく…。妖たちに囲まれて楽しそうではあるけれど、若だんなが思いどおりに行動的できないことで感じる負の感情が、この物語の肝なのでしょう。

ままならぬ世を生きているのは、私たちも同じなので。

そんなことを考えながら読み終えました。


2019年8月24日 (土)

かわたれどき

2938「かわたれどき」 畠中恵   文藝春秋   ★★★★

神田町名主の跡取り息子・麻之助は評判のお気楽者。とはいえ、近頃はいろいろな困りごとが持ち込まれ、のんびりと猫と日向ぼっこもできない始末。今日も今日とて、いきなりやってきた娘さんが「結納の前にお顔を拝見したくて・・・」と。身に覚えのない麻之助は困惑するが、これが厄介な事件のとば口で・・・。

 

「まんまこと」シリーズも第7作。ずいぶん長いこと続いてますね。麻之助の身辺もいつも以上に慌しく、さらに大きな変化も訪れそうで・・・。最近は、麻之助の親友の清十郎や吉五郎に焦点があたっていましたが、ようやく真打登場といったところ。それにしても、世の中はままならない・・・。

「きみならずして」「まちがい探し」「麻之助が捕まった」「はたらきもの」「娘四人」「かわたれどき」の6話。冒頭で、麻之助の亡き妻・お寿々によく似たおこ乃が縁付いて江戸を去ってしまいます。なんとも言えない気持ちにさせられましたが、それが皮切りだったかのように、麻之助に次から次へと縁談が。やもめの麻之助を案じる皆の気持ちは、本人もじゅうじゅうわかっていて。さらに、名主の仕事上、やはり妻が居てくれた方がいいわけで。それでも、お寿々を失った傷が簡単に癒えるわけもなく。大切な人を突然失う怖さを忘れられない麻之助に、こちらも思わず涙が・・・。

それでも、ときぐすりが効いて、少しずつ、自然に、麻之助の心も動きだすのですね。なんだか、素直に「よかったなあ」と思えました。まあ、いろいろ大変そうだけど(笑)

描かれる事件も、決して気持ちのいいものではないし、大団円、100%のハッピーエンドとはいかないのだけど。そういう苦さも抱えつつ、人の暮らしは続いていくのだよねえ・・・と、しみじみ思うのでした。

2018年10月29日 (月)

むすびつき

2809「むすびつき」 畠中恵   新潮社   ★★★

貧乏神・金次と若だんなの意外な縁。それを聞いた鈴彦姫は、自分も若だんなとは浅からぬ縁があるはずだと言い・・・。長崎屋の若だんな・一太郎と、そこに集う妖たちとの「むすびつき」とは。

「昔会った人」「ひと月半」「むすびつき」「くわれる」「こわいものなし」の五話。

もうシリーズ何作目かわからなくなりました(苦笑) 今回は前世からの関係や、長い時を生きる妖とはかない人の命、生まれ変わりなど、なんともせつないテーマの話が並んでいます。

シリーズが進むにつれて、こういう色合いが濃くなってきてはいましたが、今回はより鮮明に。どれだけ慕われていても、決して同じ生き物ではない若だんなと妖たちとの対比と、それでもやはり互いにいとしいと思う気持ち。それがせつなくてたまりませんでした。

ただ、思ってしまったんです。この無限ループのような物語を続けている以上、若だんなは永遠に年をとらないし、死なない。それって妖だよなあ、と。幸せな時間が長く続くのは嫌いじゃないですが、やはり流れていく物語が好きです。

2017年11月20日 (月)

とるとだす

2667「とるとだす」 畠中恵   新潮社   ★★★

長崎屋の主人が重病!? いつもは心配してもらう立場の若だんな・一太郎が、妖たちの力を借りて、父の病を治そうと奔走するのだが・・・。

「しゃばけ」シリーズ最新作は、「とるとだす」「しんのいみ」「ばけねこつき」「長崎屋の主が死んだ」「ふろうふし」の5話。

冒頭の表題作でいきなり父親が倒れてしまい(それも一太郎のために無茶をして)、若だんなと妖たちがいい薬を探して奔走するというのが、今回の趣向。病弱な若だんなはできない無理をするのではなく、自分の体調の按配を見ながら、仲間の妖たちに手助けを請うことに。マンネリなようでいて、ほんの少しずつですが、成長していくのですよね。

というわけで、迷ったあげくに新刊が出ると結局読んでしまう・・・を繰り返してもう何年?(苦笑) まあ、次もきっと読んでしまうんだろうな。

2017年10月15日 (日)

ひとめぼれ

2651「ひとめぼれ」 畠中恵   文藝春秋   ★★★★

町名主の一人息子・麻之助はお気楽者ながら、近頃はいろんな相談事・揉め事を持ち込まれることも増えた。ところが、友人の吉五郎の様子がおかしい。同心の養子である吉五郎は、いずれ一人娘の一葉と夫婦になって、跡を継ぐはずなのだが・・・。

「まんまこと」シリーズも、早や6作目。

「わかれみち」「昔の約束あり」「言祝ぎ」「黒煙」「心の底」「ひとめぼれ」の6編。今回は、麻之助の友人・吉五郎編という感じです。

本当に、世の中思いのままにならぬことばかりで。自分の心でさえままならぬのに、人の思いなどどうにかできるはずもなく・・・。そんな物語です。

麻之助がことあるごとに、亡き妻・お寿ずに心の中で語りかけるのがせつなくて。そのたびにしんみりしてしまいました。

それでも、物語の中で時間はゆっくりと流れていて。麻之助がお気楽者になった原因のお由有は嫁ぎ、妻をめとった清十郎はまもなく父に。子どもだとばかり思っていた一葉も少し大人になり。麻之助だって、町名主の手伝いみたいなことを、以前よりもするようになり。この時間の流れていく先を、見届けたいと思っています。

ところで、帯のコピーに「慟哭の」とありましたが・・・私は「慟哭」って感じはしませんでした。ちょっと誇大広告では?

2017年6月12日 (月)

おおあたり

2590「おおあたり」 畠中恵   新潮社   ★★★

相変わらず病弱な若だんなだけれど、相変わらずもめごとには巻き込まれて・・・。シリーズ第15作。

「おおあたり」「長崎屋の怪談」「はてはて」「あいしょう」「暁を覚えず」の5話。今回は、いろんな「大当たり」が描かれます。

大妖おぎんの命によって、一太郎のもとにつかわされた若き日(?)の佐助と仁吉の話「あいしょう」と、若だんながなんとか仕事に行こうとする「暁を覚えず」がよかったです。

しかし、若だんなの幼なじみ・栄吉の作るあんこって、いったいどんな味がするんでしょうねえ。妖たちが気絶するって(笑)

2016年1月 3日 (日)

なりたい

2394「なりたい」   畠中恵         新潮社         ★★★

病弱な若だんなのもとなまたしても持ち込まれる、数々の厄介ごと。若だんなと妖たちは、事件を解決できるのか?

しゃばけシリーズ第14弾。

「妖になりたい」「人になりたい」「猫になりたい」「親になりたい」「りっぱになりたい」の五編。

若だんなの知り合いが若くして亡くなるというのが幕開け。人一倍からだの弱い若だんなだからこそ感じる、さまざまなことが、なんともせつなかったです。長い時間を生きる妖たちのせつなさも。

好きだったのは「親になりたい」でした。

若だんなが来世に望むことに、なんだかほろりとさせられました。人と人ならぬ者たちが共存できるようなゆとり、失いたくないものです。

2015年12月 6日 (日)

うずら大名

2383「うずら大名」 畠中恵   集英社   ★★★★

江戸にほど近い村の名主・吉之助は、辻斬りに襲われたところを、二人の武家に助けられる。その二人は、かつて町道場で一緒だった有月と左源太だった。今や隠居大名となった有月との邂逅を喜ぶひまもなく、泣き虫の吉之助は大きな陰謀に飲み込まれていく。

「うずら大名」の名の由来は、有月が「佐久夜」という名の鶉を飼っているからです。この鳥、飛ぶのは不得手ですが、「御吉兆ーっ」と鳴く縁起物。そして、やたらと賢く、勇猛果敢(と言えば聞こえはいいが、気が荒い)。もちろん、佐久夜は大活躍をするわけです。

さて、もともとは名主の家の三男坊で、将来に希望をもてなかった吉之助が通っていた不動下道場。そこは、身分の上下を問わず、同じような部屋住みの身が集まっていて、大名の末子だった有月もかつてそこにいた、というわけ。二人とも思わぬ運命の変転があって、吉之助は名主の家を継ぎ、有月は大名になり(ただし、今は若くして隠居の身)・・・そして、偶然にも再会したところから物語は始まります。

江戸近郊の大百姓たちに何かが起きている。急死する者もおり、代替わりが続いている。大名に金を貸すほどに力をつけてきた豪農たちに、何が起こっているのか。その探索に関わることになった吉之助たちは、思わぬ事件に遭遇します。それは、江戸の太平の世を揺るがしかねない陰謀。

徐々に明らかになる事件は、吉之助たちにとって、なんともせつない結末を迎えます。なんとなく、真犯人が哀れに思えてなりませんでした。

2015年11月15日 (日)

まったなし

2376「まったなし」 畠中恵   文藝春秋   ★★★★

麻之助の悪友仲間の一人・清十郎はモテ男。今までも多くのおなごと浮名を流してきたが、町名主を継いだころから、縁談が引きも切らず。とうとう「まったなし」の状況に追い込まれるが、清十郎はなかなか嫁を貰う気にならない。麻之助たちはやきもきするのだが・・・。

お気楽な町名主の跡取り・麻之助たちが活躍する「まんんまこと」シリーズの5作目。今回のメインは、清十郎の縁談です。

「まったなし」「子犬と嫁と小火」「運命の出会い」「親には向かぬ」「縁、三つ」「昔から来た文」の6編。

妻子を亡くした麻之助もすっかり元気になって、今回は友のために奔走しています。まず、そのことに安堵しました。一方、清十郎の縁談はいよいよ「まったなし」。というのも、清十郎の義母のお由有にも縁談がもちあがっており、さらに清十郎の妹にも縁談が。すべてが、清十郎の嫁取りが前提になっているので、よりせかされるというわけ。

一方、お由有(実は、麻之助たちの幼なじみで、二つ年上なだけ)の息子・幸太の実の父親のことが明らかになったり、麻之助も清十郎もはやり病で死にかけたりと、波乱含みの展開です。

清十郎の前には、しっかり者だけどもう二十のお安と、十も年下のかわいらしいお香という、二人の女性が登場。さらに、麻之助たちは何かと厄介な事件の始末に駆り出され・・・。紆余曲折の末に、清十郎が得た答えとは。

まあ、そうなるだろうなという感じでしたが、一筋縄ではいかない展開がなかなか楽しめました。

2015年7月 3日 (金)

えどさがし

2318「えどさがし」 畠中恵   新潮文庫   ★★★

明治の世。かつて長崎屋にいた妖たちは、若だんなが生まれ変わってくるのを、人の世で待ち続けていた。今は京橋と名乗る仁吉は、若だんなを探すうちに、事件に巻き込まれ・・・。

「しゃばけ」シリーズ外伝。

「五百年の判じ絵」「太郎君、東へ」「たちまちづき」「親分のおかみさん」「えどさがし」の5編。

佐助が長崎屋に入るきっかけの出来事を描いた「五百年の~」と表題作が印象的でした。どちらも、長い時間を生きる妖ならではのせつなさや悲しさが感じられて。表題作では、鳴家たちが若だんなを慕っているのがなんとも言えず・・・。早く会えますようにと祈らずにいられませんでした。

「親分のおかみさん」も好きな話。日限の親分、こんなにラブラブだったんですね(笑)

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