重松清

2012年2月25日 (土)

とんび

1837「とんび」 重松清   角川文庫   ★★★★

昭和37年。ヤスさんは、愛妻・美佐子さんとのあいだに長男・アキラを授かった。待望の我が子誕生で幸せの絶頂にあったヤスさんは、その数年後、突然の悲劇に見舞われる。父として子育てに奮闘するヤスさんは、ふるさとの人々に支えられながら、アキラを大きく育てていく。

NHKでドラマ化されていたのを、なんとなく見たのです。で、思わず泣いてしまって・・・。これは、原作も読まなくては!と。

覚悟していたはずなのに、原作の方はもっと大変でした。もう、初めの方で泣けてしまって(苦笑)

ヤスさんは、理想的な父親ではありません。人一倍愛情深いたちなのだけど、照れ屋でへそ曲がりなので、どぎまぎするととんでもないことを口走ったり、わけのわからない行動に走ってしまったり。思わず「アホか!」とツッコんで、頭をバシッとはたきたくなるのです。

でも、不器用なヤスさんが、誰よりもアキラの幸せを一番に考えて、一生懸命生きていく姿に、何度も目頭が熱くなりました。何回も失敗して、そのたびに後悔して、それでも、アキラのために。だって、親だから。

ヤスさんと美佐子さんは、どちらも親との縁が薄い人でした。だからこそ、家族を欲していたし、一緒になって、子供を授かって、本当に「家族」になったと喜んでいた。渇していたものが与えられた時の幸福感はどれほどだったことか。それなのに、不慮の事故で美佐子さんが亡くなり、ヤスさんはアキラを守り、育て、必死に生きていくことに・・・。うまくいかないこともたくさんたくさんあって、それでもアキラは無事に巣立ち、やがて新しい家族ができ・・・。読みながら、なんとなく「ゆずり葉」の詩を思い出しました。

ヤスさんとアキラを支えてくれる、幼なじみの照雲さんやたえ子さんの存在も大きかった・・・。

ドラマでは、ヤスさんは堤真一でした。広島弁でアホなことをしゃべりまくるヤスさんとはちょっとイメージ違うかなあという気もしましたが、なかなかの熱演でした。たえ子さんは、小泉今日子。照雲和尚は、古田新太。

昔は、こういう「親父」、いましたよね。かっこ悪いんだけど、不器用でスマートさのかけらもないんだけど、あったかい。もうそういうのは過去のものなんでしょうか。

2008年7月16日 (水)

熱球

1323「熱球」重松清    徳間書店    ★★★★

 仕事をやめ、娘の美奈子とともに故郷の周防に帰ったヨージ。学者の妻はボストンに単身赴任中。年老いた父とこのまま同居すべきか、それとも…。苦い思い出のあるふるさとで、ヨージの心は揺れる。

 タイトルから、野球ものかな?と予想してましたが、予想以上に苦い物語でした。でも、私は、この話が好きです。
 ヨージは元高校球児。高3の夏、ヨージたちは信じられないようなツキに恵まれ、県大会の決勝まで勝ち進んだ。しかし、部員の不祥事で、決勝戦を辞退。周防高校(シュウコウ)の歴史に泥を塗った代になってしまう…。
 20年たった今も、その時の傷が癒えないヨージが、それを乗り越えるまでの物語でした。過去だけでなく、現在のヨージが抱える問題もリンクして、なかなか重い設定なのですが、重松さんらしくサラリと、それでいて感動的に読ませます。
 ヨージの元チームメイトたちとの関わりがよいです。みんな、それぞれに過去のことは傷になっているし、現状もうまくいってるわけじゃないけれど。不器用に生きている姿が、なんだか好きでした。
 そして、シュウコウを応援し続けるザワ爺の存在。「熱球」という言葉にこめられた思い。なんだか、涙が出そうになりました。
 重松さんは、決して弱者を切り捨てない。逃げてもいいんだよ、その代わり生きなさいというメッセージに、素直に共感できました。

2008年6月20日 (金)

口笛吹いて

1310「口笛吹いて」重松清    文藝春秋    ★★★

 26年ぶりに再会した幼なじみの晋さん。僕にとってヒーローだった晋さんは、あまりにも変わってしまっていて…。

 「口笛吹いて」「タンタン」「かたつむり疾走」「春になれば」「グッド・ラック」の五編の短編を収録。
 「かたつむり〜」は、「はじめての文学」で読んでました。ほかのは初めて読みましたが、粒が揃っているなぁという印象。重松さんの短編って手堅いですね。
 表題作と「春になれば」が印象的でした。
 表題作は、かつての憧れの存在と再会した主人公の心の揺れが描かれています。甲子園のヒーローになるはずだった晋さん。変わり果てた彼に困惑する主人公。苦い物語ですが、重くなりすぎず、かすかに明るさを残す幕切れが良いです。
 「春になれば」は、産休代理で教壇に立った主人公が、子どもに振り回される話。キレイゴトじゃない世界を描きつつ、最後は希望を感じさせる終わり方で、ホッとしました。
 重松さんは、人を見る目が温かいなといつも感じます。人生に失敗したり、うまくいかずジタバタしていても、決して見捨てない。今回も、その優しいまなざしに救われる思いでした。

2007年10月25日 (木)

はじめての文学 重松清

1203「はじめての文学 重松清」重松清   文藝春秋   ★★★★

 少年野球チームの監督をして6年間。最後の試合を迎えた徹夫は葛藤していた。息子の悟を試合に出すかどうか・・・。6年生だけどへたくそな息子を、親としての情で試合に出すのは抵抗があったからだ。しかし・・・。(卒業ホームラン)

 この「はじめての文学」シリーズはずっと気になっていました。シンプルな装丁も目を引くし。ただ、好きな作家さんのは読んだことあるし、そうでない人のはなかなか手が出ないし・・・で、今まで一冊も読まずにいました。が、重松清本に収録されているのは、すべて未読だったのと、短編ばかりだったので、読みやすそうだと思い、借りてきました。

 「卒業ホームラン」「モッちん最後の一日」「ウサギの日々」「かたつむり疾走」「カレーライス」「タオル」「あいつの年賀状」「ライギョ」の8編。

 いちばん好きだったのは、「卒業ホームラン」。この感じは、誰でも書けそうでいて、重松さんにしか書けない気がします。「がんばってもいいことないじゃん」という娘の典子の存在が、苦いんだけど効いています。

 サッカー部の話の「ウサギの日々」と、祖父の葬式を描いた「タオル」も好きでした。

 重松さんの、人を見る視線の優しさが胸にしみる物語でした。

 

2007年7月30日 (月)

最後の言葉

1150「最後の言葉」重松清 渡辺考   文春文庫   ★★★★

 戦場で収容された、日本人将兵たちの手になる日記や手紙。遺族の手に渡ることなくひっそりと残されたいたそれらを、遺族に渡したい。
 NHKハイビジョンスペシャル「最後の言葉~作家・重松清が見つめた戦争~」制作のドキュメンタリー。


 サブタイトルに「戦場に遺された二十四万字の届かなかった手紙」とあります。南方の過酷な戦場で敵や飢餓と戦いながら、つづられた言葉。それを重松さんは「小さな言葉」と定義します。
 大本営発表などの公の言葉は「大きな言葉」、それに対して、個人の心情を吐露するのが「小さな言葉」。その「小さな言葉」に着目しよう・・・。戦後世代の重松さんは、そうすることで戦争に向き合うのです。
 四人の日記や手帳を遺族の手に渡す過程は、非常にドラマティックであり、感動的でもあります。しかし、安易に涙を流すことが許されないような気持ちでした。泣きながらも、感情のままに泣いてすまされるようなことじゃないぞ、と思いながら読み進めました。それほど、ズシンときました。
 最も印象的だったのは、ニューギニアで戦死した田村義一さんの日記です。俳句や短歌、詩や流行歌まで記された日記。軽妙な味わいのある文章は、これが戦地で書かれたものなのか?と疑いたくなるほど。田村さんにとって、書くことは日常で、不可欠なことで、だからこうして書き続けたのでしょう。届かないと思いつつも、書かずにはいられなかった思い。その重さにただ圧倒されました。

 戦争を体験として伝えることは、あってはならないことです。しかし、同じあやまちを繰り返さないためには、伝えるべきことを伝えなければならない。そのために、重松さんは「言葉のプロ」として、バトンを受け取り、次の世代に渡す役割を担いました。
 重松さんのその真摯な姿勢が、このドキュメンタリーを成立させたのだと思います。
 読み終えてから、いろんなことを考えています。うまく言葉にならないほど、いろんなことを。
 この本、できるだけ多くの人に読んでほしいと思います。戦争が「わからない」世代の人ほど、読んでみてほしいと思うのです。

2006年1月 4日 (水)

きみの友だち

919「きみの友だち」重松清   新潮社   ★★★★★

 小学4年の時、恵美は事故で松葉杖が手放せない体になった。命はとりとめたけれど、友だちを失った。でも、それは本当の「友だち」との出会いでもあった。

 恵美を軸に、周辺の人々(同級生や弟など)を主人公にした連作集。
 「ほんとの友だち」って何?・・・誰もが、一度は考えたことがあるのでは? この物語は、重松さんが一生懸命書いてくれた、その疑問への一つのヒントです。そういう意味では、「きよしこ」と同じ系列の物語かな、と。
 「みんな」という言葉。それがすごく怖かった時期が、私にもありました。「花いちもんめ」という遊びが怖かったというエピソード。女子のグループ。安っぽく聞こえる「親友」という言葉。・・・自分も通過してきた時間が、この物語の中に閉じ込められているのを感じました。
 傷ついて、傷つけて、友だちを失った恵美は、「みんな」といるのではなく大事な友だちといることを選びます。それは、簡単にできることではなくって、誰もがちょっとだけ恵美をうらやましく思うけど、同じことはできない。
 そんな恵美が、実はものすごくつらい覚悟をして「友だち」といたことが「花いちもんめ」でわかりました。そして、恵美が弟のブンたちにとっての「もこもこ雲」になっていたんだとわかった時の感動・・・。
 愛想笑いはしない。ちゃんと相手と向き合う。それだけのことが、なんでこんなに難しいのでしょうね。でも、それができる相手が(たとえ短い時間であっても)、「きみの友だち」。

 私も、小学生から中1にかけて、「みんな」からはじかれたり、逆にはじいたりした経験があります。特に小学生の時にはクラスの女子っていうのが絶対の世界をもっていて、はじかれるのがほんとに怖かった。毎日、びくびくしていました。今でも、背後でのひそひそ声や笑い声にビクッとした時の感じ、生々しく思い出せます。
 でも、ショックだったのは、だいぶ後になってから、ある同級生に「あんたにいじめられた時はつらかった」と言われたこと。実は・・・私は、そのこと、全然おぼえてなかったのです。自分がいじめられたことは覚えてるのに。人間って、身勝手なものだなと痛感し、自分が大嫌いになったものでした。
 私は中学生になって、自分の居場所をいろいろ見つけて、人の顔色をうかがうことも減りましたが・・・昔の自分と重ねながら、最後まで一気に読んでしまいました。

 最終話は蛇足じゃないかとも思ったのですが・・・重松さんは書きたかったんですよね。幸せな恵美の姿を。そっけなくて、無愛想だけど、きちんと人と向き合うからこそ、友だちができた恵美の姿を。
 泣けました、と安易に言いたくないほど、心に響きました(もちろん、ものすごく泣いたのですが)。
 少年少女のために・・・かつて子供だった大人のために・・・そんな物語でした。
 登場人物の心のひだを丁寧に描きつつ、こういうテーマに真っ向から取り組む重松さんの姿勢にも感動しました。

butti > まゆさん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。まゆさんの日記を読ませていただいただけでも、わたしも昔を思い出して胸がキリキリして来ました。そうなんですよね。自分らしくいられる場所を見つけるまでの居場所探し。子供であるがゆえの残酷さ。重松さんは、きっとまた今の図々しさの衣に厚く覆われた、私の心の奥の痛いものを、あけてしまうんだろうなぁ。自分のために、そしてこれから試練の時を迎えるであろう我が子供たちのために、必ず読みたいと思います。 (2006/01/05 22:01)
雨あがり > 重松さんの新刊、読みたいなと思っています。そうそう私にも「女子」の世界での様々な思い出ありますね~きっと読みながら忘れていた傷を見つけてしまうのかもしれないけれど、読んでみたいです。 (2006/01/05 23:57)
nanao > 最終話を読んで、良かった良かったて思えました。
思い出しても涙ぐんでしまいます。 (2006/01/06 00:03)
three bells > 友だちの意味にも幅広いものがあって、この年になってからも、この年になったからか重松さんの投げかけにぐっときます。 (2006/01/06 07:13)
さくら > 子供の頃の、楽しいだけじゃなく当時複雑に抱えていた気持ちをたくさん思い出させてくれる本でした。一番好きだったのは誕生会のエピソード。「花いちもんめ」では泣かされました。
私も最終話はちょっと違うテイストかな~とは思いましたが、これはこれで重松さんらしいラストですよね。 (2006/01/06 10:06)
まゆ > みなさん、レスありがとうございます。
buttiさん、今年もよろしくお願いします。私の感想だけでは、重松さんの描きたかったものの10分の1も伝わらないです。ぜひぜひ読んでみてください。ヒリヒリと痛いと同時に、重松さんの優しさに感動します。
雨あがりさん、たぶん、「女子」の世界は共感できる部分がたくさんあると思います。同時に、「男子」の世界も描かれていて、こっちはちょっと憧れてしまいました。おすすめですよ。
nanaoさん、最終話の前でもう満足していたので、「え、まだ続くの・・・」と思ってしまいました。おまけみたいなエピローグですが、最後の恵美の姿と堀田ちゃんたちの様子を想像したら涙がとまらなくなりました。
three bellsさん、この時期を通り過ぎてきた「今」だから、恵美のことも、由香のことも、堀田ちゃんたちのことも、ブンやモトのことも、佐藤先輩や三好くんのことも・・・受け入れて読めたんじゃないかなという気がします。そうだよねえ、と頷きながら。
さくらさん、「きよしこ」もそうでしたが、登場人物たち=読者、なんですよね。重松さんが呼びかける「きみ」は、私たちでもあるわけで。誕生会のお父さんの歌は、想像するだけで涙が出てきます・・・。最終話。なくてもよかったかもしれないけど、恵美の幸せな姿には感動しました。 (2006/01/06 15:00)
トントン > 重松さんの本は未読なんですが、今年こそ読みたいと思っています。これは一番新しい本でしたよね。子どもの頃を思い出して痛いような予感がしますがぜひ読んでみたいです。 (2006/01/07 22:39)
まゆ > トントンさん、そうですね、これが最新刊だと思います。痛いけど、それだけでは終わりませんよ。私も重松さんは読み始めて2年くらいなので、未読のものがたくさんあります。少しずつ読んでいきたい作家さんです。 (2006/01/09 17:13)
yumiruka > まゆさんも最近読まれた本だったのですね。まゆさんが深く丁寧に読まれている姿に感動しました。 (2006/01/13 00:03)
まゆ > yumirukaさん、はい、つい最近読んで、ボロボロ泣いた一冊です。自分の痛い思い出なんかも甦ってきて、フクザツな心境でしたが、読んでよかったです。 (2006/01/15 18:28)

2005年12月17日 (土)

その日の前に

909「その日の前に」重松清   文藝春秋   ★★★★

 余命を宣告されてから、「その日」をどうやって迎えるか、夫婦は必死で考えてきた。たくさんの準備をして、そうして「その日」はやってきた・・・。

 今読むには、ちょっとつらすぎる本でした。
 つい最近、子供の頃から知っていた人が、ガンで亡くなりました。それこそ、「余命」を宣告されて、家族の方も覚悟をしていて(本人に告知はしなかったそうですが)。少なからず悲しい思いをしている中で読むには、ちょっとしんどいものがありました。
 そんな状態でこれを読んで、泣かないわけがないじゃないですか。
 
 この連作短編では、死を宣告された人やその家族が、混乱しつつも、静かに現実を受け入れていく姿が描かれます。そこにあるのは、「日常」です。死という「非日常」を、「日常」の営みの中で受け入れていく作業。その感じ、すごくわかります。
 泣きたくなることも、何かを恨みたくなることも、もちろんある。だけど、それは意外と継続できない感情で。本人も、周りも。この話では、かなりきれいにまとめられていますが、それを「嘘っぽい」と言えないだけの実感が私にもあります。そうだよね、と頷く部分がたくさんありました。
 突然やってくる死ではなく、時間をかけてやってくる死。どちらがどうということはできませんが・・・そこに直面した時、私はどうするのだろう?と考えずにはいられませんでした。

さくら > 私はこれ母を亡くした後に読んで、それこそ息が止まるんじゃないかというくらい泣きました。大切な人を残していかなければいけない辛さ、大事な人を失う哀しみ、どちらも心に沁みてたまらなかったです。
ダイに向かっての父の言葉「お母さんがんばったんだよ・・」今思い出しても駄目です。しばらくは再読できないでしょうが、いつか又読み返したい大切な一冊です。 (2005/12/26 09:56)
れんれん > 300冊以上の予約待ちです。さくらさんの息が止まるんじゃないかという記述に、はっとして書き込ませていただきました。私も母を亡くした時全く同じだったからです。箸が転がるのもおかしいという表現がありますが、あの時は何を見ても誰かが何かを一言発するのを聞いただけでも、すべてが涙を誘発してこぼれていく感じでした。読むのが怖いような、読みたいような作品です。 (2005/12/26 13:41)
まゆ > さくらさん、そういう状況では、涙するのは当然だと思います。私も、「お母さんがんばったんだよ」で号泣でした。こういうテーマに、真正面から向き合う重松さんってすごいなあ、と思います。いずれ、もう少し時間をおいて、再読してみたいです。 (2005/12/26 18:22)
まゆ > れんれんさん、300以上の予約!すごいですねえ。でも、これは読むだけの価値はある物語だと思います。他人事とは思えない痛みが、読む側に伝わってきます。 (2005/12/26 18:24)
れんれん > まゆさん、冊と人を間違えてしまいました。300人以上も待っている方がいらっしゃるなんて、重松さん凄い本をお書きになったんですね。 (2005/12/26 21:26)
まゆ > れんれんさん、重松さんに対する評価は年々あがっていってる気がします。この物語には賛否両論あるかもしれませんが、たくさんの方に読んでほしいです。 (2005/12/27 20:37)
バケツ > 私はまだ、「息が止まるんじゃないかと思う程、涙の流れる死別」を体験した事がありません。この本を読んで考えさせられました。そんな私だからなのか、一番印象に強いのは「妻が逝くという日に、自分は髪を洗い、リンスまでする人間なんだ」と思うくだりです。きっとそうなんだろう。きっとそう思って、その日にそう思った事も一生覚えているモノなのだろうと思いました。 (2006/02/28 22:08)
まゆ > いくつかの身近な人の死を経験して思うのは、「死は非日常ではなく、日常の中にある」ということです。そういう意味で、すごく共感するものがありました。正直言って読むのはつらかったのですが、いずれまた時間がたったら再読したい一冊です。 (2006/03/01 22:24)

2005年7月26日 (火)

きよしこ

830「きよしこ」重松清   新潮文庫   ★★★★

「それが、君のほんとうに伝えたいことだったら・・・・・・伝わるよ、きっと」

 父親の仕事の都合で転校を繰り返すきよしは、ひとりぼっちだった。吃音がもとで、言いたいことをうまく言えない。そのもどかしさを抱えているきよしの前に、「きよしこ」が現れて・・・。

 「きよし、この夜」を「きよしこ、の夜」だと勘違いしていた・・・というエピソードから始まる連作。きよしの小学生時代から高校卒業間際までを描く物語。
 読みながら、何度も泣きそうになりました。作者が物語にこめた思いがあたたかくて。きよしの思いがせつなくて。
 特にも好きだったのは中学時代のエピソード二つ。初めてきよしを親友と呼んだ同級生の話「ゲルマ」と、野球部にやってきた天候せいとの話「交差点」。いずれも、友人たちの描かれ方も印象的で、不器用ながら人と関わろう、なんとか思いを伝えようとするきよしの成長が感じられました。
 悪戦苦闘しながら、一歩ずつ進んでいくきよしの姿には、勇気をもらった気がします。

「君はだめになんかなっていない。ひとりぼっちじゃない。ひとりぼっちのひとなんて、世の中には誰もいない。抱きつきたい相手や手をつなぎたい相手はどこかに必ずいるし、抱きしめてくれるひとや手をつなぎ返してくれるひとも、この世界のどこかに、必ずいるんだ」

 「きよしこ」が、きよしに言ってくれたこの言葉は、多くの人の救いになるはず。

 余談ですが。
 うちの学校にも、「きよしこ、の夜」だと思っていた子が・・・。おいおい。

nanao > 私も、クリスマスに読んだので勘違いしていました。
季節に相応しいと思い手にとったものですから。 (2005/07/28 05:02)
three bells > 文庫で見つけて、寒くなってからにしよう…と思ってやめたのですが今読んでもしっくりくるのですね。 (2005/07/28 13:23)
やりさん > 気になるタイトルだなぁと思っていました。意味が分からないだけにインパクトありますよね。そういう事だったんですね。「よろしこ!」みたいって思ってました(笑)重松さんの連作ですか、面白そうです~。 (2005/07/28 14:24)
まゆ > nanaoさん、three bellsさん、やりさん、レスありがとうございます。
nanaoさん、私も最初はクリスマスの話かなあと思っていました。でも、知人に「それだけじゃないよ」と聞いて手にとりました。読んでよかったです。
three bellsさん、表題作はクリスマスの話ですが、それ以外は季節がまちまちです。クリスマス限定の話じゃないので、ぜひどうぞ。
やりさん、「きよしこの夜」の勘違いバージョンの歌詞が笑えます。ぜひぜひお手にとってみてください。
(2005/07/28 23:52)
ケイ > こんにちは~長女が購入したので、いずれ読みたいです。ひさしぶりの重松さん。まゆさんも四つ星で楽しみです。 (2005/07/29 13:24)
まゆ > ケイさん、これは子供にも大人にも読んでほしい物語です。お嬢さんから借りてぜひ読んでみてください。 (2005/07/29 19:51)

2005年3月31日 (木)

流星ワゴン

769「流星ワゴン」重松清   講談社文庫   ★★★★

 38歳。秋。死んじゃってもいいかなあ。そう思っていた。そんな時、目の前に現れたのは、交通事故死した父子の乗る不思議な車。そして、自分と同い年の父親に出会った。僕は、時空を超えて、人生をやり直せるのか?

 以前に浅田次郎「地下鉄に乗って」をアップした際に、「似たような設定の小説がある」というので、おすすめしていただいてました。文庫化されたので、ようやく読破。
 父と息子。この関係って、私には永遠の謎なんですが。よく母性については「無償の愛」なんて言われますが、じゃあ父親はどうなのよ?と思っていたことへの、答えがここにありました。
 私はいまだに「親」になってないので、「わかる」なんて口が裂けても言えませんが・・・親の愛って、ほんとに大きいですね。子供が何かしてくれなくても、ただ我が子だというだけで、愛をそそげる。実際、私もそうやって育てられてきたのだよなあ、としみじみ思います。そういうことを押し付けがましくなく語るさらり感が、けっこう心地よかったです。
 「地下鉄に乗って」と設定が似てますが、世代の違いか、文章の熱さの違いか、印象は全く違いますね。でも、どちらも好きです。
 私にも「やり直し」したい人生の岐路はたくさんあります。でも、本当に「やり直し」なんて、きっとできないんでしょうね。サイテーでも、ここから始めるしかないのだ、と。

 今日、病院の待合室で読んでいたのですが(そして、読み終わってしまった)、終盤は泣けてきて、非常に恥ずかしい思いをしました。一目があるところでの読書は、本のチョイスに気をつけましょう。

butti > こんばんは!わたしもこれ大好きです。重松さんの本を読むと、親である自分と、子である自分がすごく感じられて、心地いいですよね。…半面、感じられすぎてイタイことも多々ありますが。 (2005/04/01 02:23)
まゆ > 私は「子」であることしか実感できませんが・・・読んでいると、「親」のとまどいも、愛も、感じますね。私自身親不孝者なので、きっとうちの親も・・・と、身につまされます。 (2005/04/01 19:27)
EKKO > この本を読んで「地下鉄に乗って」を思い出しました。私もどちらとも好きです。父と息子の関係って、本当に微妙で何とも言葉にできにくい面があるように思います。この本の「朋輩」という言葉がそれを表しているのかもしれないと感じました。 (2005/04/01 21:37)
まゆ > そうそう。「朋輩」って言葉が効いてましたね。「友人」とか「仲間」とかじゃなくって、「朋輩」。チュウさんがその言葉を使うたびに、ジンときました。 (2005/04/02 01:37)
やりさん > こんにちわ!やっと読めました~。まゆさんがおっしゃる通り、父性って分からないんですよね。まさに、父性とはこういうものだ!的世界でした。家族崩壊の典型的な図には胸が苦しくなりましたが、さすが重松さんですね!大満足です。「地下鉄~」は読んだ事ないので、そちらも興味深いです。浅田さんの作品でしたっけ? (2005/04/10 11:47)
まゆ > 非常に現代的な、父と子の物語でしたね。そこに焦点をしぼっているので、「え、じゃあこの母親は?夫婦としてはどうなの?」と思う部分もありましたが。
「地下鉄(メトロ)に乗って」は浅田次郎の作品です。設定やテーマが似てるようでいて、こちらはもっと濃い世界が描かれます。でも、いい物語ですよ。 (2005/04/10 19:12)
バケツ > 重松さんの著作は痛いです(泣)本当に痛いです。でも読後には「読んでよかった」と思わせるものがありますよね。私も実父との関係にワダカマリを持ってる人間なので身に沁みてしまいました。何の話題もなくても(本当は山ほど言葉はある)、今の内に話してみなくては取り返しが付かない、後悔が残る事になるのではないか?と考えさせられました。でもまだ実行に移せていませんけど(^^ゞでも考えてみるキッカケになりました。 (2006/04/09 00:12)
まゆ > バケツさん、先日、父親を亡くした少年が、「もっと話をしておけばよかった」と語っていました。そうなって初めてわかることってありますね。 (2006/04/09 10:23)

2005年1月22日 (土)

隣人

728「隣人」重松清   講談社   ★★★★

 1999年から2000年にかけて、「読みもの作家」重松清がさまざまな事件を取材した「寄り道・無駄足ノンフィクション」。

 ノンフィクションだと思わずに借りてきたので、読み始めてちょっとビックリ。でも、おもしろかったです。
 冒頭の「池袋通り魔殺人事件」については、わりと最近、「新潮45」の連載をまとめた本(「殺ったのはおまえだ」)で読んだばかりでした。だから、ノンフィクションのライターと、「読みもの作家」の視点の違いが興味深かったです。
 前者はとにかく、「真実」を求めてどこまでも執拗にくらいついていく。加害者だけでなく、被害者の事情までつきつめて、真実を洗い出そうとする。一方、後者は非常にゆったりかまえている(という表現は御幣があるかもしれないけど)。加害者のことでさえ追いつめようとはせず、ただ、作家の鋭敏な感性で感じ取れるものを描写してゆく。
 どちらがいい、悪い、ではなく、重松清が「作家」としてのスタンスから、ノンフィクションを描くというのがおもしろかったのです。そして、殺人事件を扱ったものより、出家する人たちを取材したものや、Iターンの現状を描いたもの、ニュータウンの崩壊などの方が、すんなりと読めました。

 12話すべて読み終えて本を閉じた時、「隣人」というタイトルが、あらためて重くのしかかってきました。この中に描かれた情景は、決して「どこか遠く」のことではなく、私たちのすぐ側で起こっていることなのだ、と。そして、もしかしたら、彼らは私たちだったのかもしれない、と・・・そんなことを考えさせられました。

butti > まゆさん、こんばんは!これは、図書館の棚にある重松さん本をがつがつ読んでいた(笑)頃に読んだので、これだけ心に染み入る作品(フィクション)を書くには、それ以上のたくさんのノンフィクションを心に入れているからこそ書けるのかな~なんて思った覚えがあります。 (2005/01/23 17:51)
まゆ > buttiさん、重松本はあんまり読んでないので詳しくはわからないのですが、ほかにもノンフィクション系のありましたよね?去年あたり、本屋で見かけたような・・・。ノンフィクションライターのような執拗さがないぶん、すごく読みやすかったんですけど。 (2005/01/23 22:34)

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