川上弘美

2008年6月26日 (木)

古道具 中野商店

1314「古道具 中野商店」川上弘美    新潮文庫    ★★★★

 古道具屋の主人・中野さん。その姉のマサヨさん。アルバイトのタケオと、ヒトミ。古道具・中野商店を舞台にした、四人それぞれの恋と日常の物語。

 久々に川上ワールドを堪能しました。
 古道具屋(骨董屋、ではない)の雑然とした、それでいて安心できるような独特の雰囲気の物語。テーマは、恋愛。
 語り手のヒトミは、バイト仲間のタケオとつきあっているような、そうでないような、微妙な関係。店主の中野さんは、妻のほかに女性がいるのが常。その姉・マサヨさんは五十代にして独身。ところが最近男ができたらしい。それぞれの年代の、一筋縄ではいかない恋愛が、川上さんらしい上品な「淫靡さ」でえがかれていきます。
 登場人物のテンションの低さというか、淡々とした感じが、今の私には心地よかったです。
 そうだよねー、いくつになっても、恋愛はね、簡単にはいかないよねー…などとしみじみ思ってしまいました。
 中野商店がリニューアルされてしまうくだりは寂しさを感じましたが、幕切れは幸せな感じで、とても好きです。

2006年12月28日 (木)

ハヅキさんのこと

1061「ハヅキさんのこと」川上弘美   講談社   ★★★★  

 かつての同僚・ハヅキさんのお見舞いに行くことにした。ハヅキさんは怒るかもしれないけれど。一緒に過ごしたころを思い出しながら。

 あとがきによると、もともとエッセイを依頼されたのにどうしても書けなくて、エッセイとも小説ともつかない文章を書いてしまえ、と書いたものだそうな。原稿用紙にして10枚前後の短い小説集。
 そういう形で初めて書いた「ハヅキさんのこと」をはじめ、「姫鏡台」「床の間」「扉」「吸う」「島」「水かまきり」といったあたり(この短編集の中では古い方の作品)が好きです。
 ドキリとしたのは、「だめなものは」。好きな詩人の作品を「だめなものはだめ」と評され、しばらくものを書けなくなるという話。これは厳しい。川上さん自身、そういう経験があったのかしら?と思うくらい。
 短編というのは短くなればなるほど、長編以上に物書きとしての力量が問われると思うのですが、川上さんはさすがです。ちょっと淡いトーンの世界をたゆたうような心地よさがあります。

青子 > まゆさん、新刊ですか? 川上弘美、ちょっと遠ざかっていて久しぶりです。読んでみたいなぁ。 (2006/12/29 13:40)
たばぞう > まゆさん、お久し振りです!。短期間になると思いますが、楽しい本プロに戻ってきました。「ハヅキさんのこと」、まだ全部読んでいませんが、今年出た短編集「ざらざら」とこれとが、私にとって嬉しい新・川上本でした。クウネルとか他で川上さんの短編集を見かけるたびに、ああっ、まとめて読みたい!と地団駄踏んだものでして・・・。今年他に出た「夜の公園」はなんかおっかなったです。「真鶴」は未読。こちらは楽しみにしています。 (2006/12/31 12:01)
まゆ > 青子さん、たばぞうさん、レス遅くなってごめんなさい。正月早々、高熱でダウンしてました。
青子さん、これは9月刊行で、最新刊ではないと思います。これとか「ざらざら」は短編集で読みやすいと思いますよ。
たばぞうさん、お久しぶりです!もうお仕事モードに戻っちゃいましたかね?私は「夜の公園」は、読みながら「え?江國香織?」と思っちゃいました。「真鶴」は未読です。友人がすごく気に入ったようなので、気になっているのですが。 (2007/01/07 19:46)

2006年10月 6日 (金)

ざらざら

1033「ざらざら」川上弘美   マガジンハウス   ★★★★

 わたしと恒美とバンちゃん。二十七歳で、お酒が好きで、そろそろ人生の執行猶予がなくなってきてる・・・って感じの三人。酔った勢いで、三人で「お正月」をすることにしたのだけれど・・・。

 短~い小説が23編。ほとんどが雑誌「クウネル」に掲載されたもの。この雑誌は友人のお気に入りなので、私も本屋で見かけると、パラパラとめくってみます。が、川上さんの小説が載っているのは気づきませんでした。
 一場面を切り取ったようなこういう短い小説は、私はあまり得意ではないようです。どちらかというと長くて重厚なものの方が、性に合ってるようで。だから、これも最初は淡々と読んでいたのですが、三分の一を過ぎたあたりから、俄然おもしろくなっていきました。
 夫が死んで、全国放浪の旅に出た三十三の女と、十九の青年の話「同行二人」あたりからスイッチが入った感じ。
 「パステル」「椰子の実」「笹の葉さらさら」「草色の便箋、草色の封筒」「クレヨンの花束」「卒業」あたりが特に好きでした。
 川上弘美さんって、独特の世界をもっていて、そこにうまく入り込めればいいんだけど、チャンネルが合わないともうダメ・・・というのが今までの印象。だけど、最近はその垣根が低くなったかなあという気がします。なんとなく江國香織さんに似てきたような気もするけれど、江國さんより生々しいというか(笑)
 世の中からちょっと浮いてる。でも、自分の足でちゃんと立ってる。そういう登場人物の造形はうまいですね。読んでて、気持ちよかったです。

2006年5月27日 (土)

夜の公園

982「夜の公園」川上弘美   中央公論新社   ★★★

 リリは夫の幸夫をあまり好きではない。そう気づいた頃に夜の公園で出会った年下の暁と、リリは抱き合う。一方、幸夫はリリの友人の春名と・・・。春名は幸夫に恋をしながら、複数の男とつきあっていた。その中の一人は、暁の兄の悟。互いに知らないまま絡まっていた糸が、ふいに白日のもとにさらされて・・・。

 と、あらすじを書いてしまうとドロドロしている感じですが、全くそうではありません。むしろ淡々と物語は進みます。最初のうち、なんとなく江國香織を読んでいるような錯覚に陥りました。何度も。ああ、違う違う、これは川上弘美だった・・・と。リリの透明感というか、独特の生活感のなさというか、非現実的なたたずまいがそう思わせたのかもしれません。
 リリと春名という対照的な二人の「少女」が中心。三十五歳の女を「少女」とは何事?と思われるかもしれませんが、間違いなく「少女」なんです。傷つきやすくて、不安定で(川上弘美ふうに言うなら「よるべな」くて、「ふわふわ」してる)、きまじめ。もちろん、二人とも不倫してるわけだし、春名なんか複数の男とつきあってるけれど、リリも春名も、すごく純粋・・・というのが、私が受けた印象。ただ、それゆえに、自分も傷つくし、周りも傷つく。
 私自身は、春名の方に感情移入していました。たぶん、一般的に見れば、春名の方が強く、しっかりして見えるけれど、実はリリより弱い。そして、リリに強烈なコンプレックスと憧れとをもっていて・・・。なんとなく、わかる気がします。
 彼女たちと関わってしまった悟と暁という二人の「少年」も、痛々しかったです。

 いろんな要素がたくさんつまっていて、でも、それを書き込みすぎず、淡々と筆を運んでいく感じが心地よかったです。読んでいてせつない気持ちになって、胸がキュウッとなりました。

そのみ > まゆさん、こんばんは。私も最近この本を読んだのですが、同じく江國香織と錯覚してしまいました。皆がひとりになってしまう結末がとてもせつなかったです。 (2006/05/28 20:52)
まゆ > そのみさん、やっぱり、江國さんと雰囲気似てますよね。安易にまとめず、最後にああいう結末になったのは、寂しいような気もします。でも、これでいいのかなあという気も。 (2006/05/29 21:29)

2004年3月 8日 (月)

ニシノユキヒコの恋と冒険

471「ニシノユキヒコの恋と冒険」川上弘美   新潮社   ★★★★

「とめどないこの世界の中で、自分の居場所をみつけることが、できたのだろうか?」

 西野君、ニシノ、幸彦・・・さまざまに彼を呼ぶ女たちと、ニシノユキヒコは愛を交わしてゆく。たくさんの女たちに愛されながら、誰のことも愛せなかった彼の人生は・・・。

 先日「光ってみえるもの、あれは」を読んだばかりですが、またしても川上弘美。これもよかったです。
 物語はニシノユキヒコがつきあった女性たちの視点で進みます。10の短編で構成。つまり、10人以上の女性が登場します。「以上」というのは、ふたまたかけてたりするから。ニシノユキヒコはそういう男です。
 立ち居振舞いがスマートで、人あたりがよくて、女性(年上にも同級生にも年上にも)にやさしくて、適度にいいかげんで、とってもマメで、セックスもうまくて。そんな男。だからもてるんだけど、必ず女性の方から彼に別れを告げていく。そんな男。
 なんとなくとらえどころがない彼に、そして常にほかの女の影がちらつく彼に、女性の方が耐えられなくなっていくのはよーくわかります。
 だけど、時系列もバラバラにちりばめられた物語から、ふうっと彼のよるべなさが浮き上がってきます。生きていく上でのせつなさ、寂しさ、頼りなさ。そんな感じ。その雰囲気がとっても好きでした。

 

羽鳥 > こんばんはっ。川上さんは未読なのですが、この題名にすごく惹かれています。「ニシノユキヒコ」というカタカナ、恋愛小説(?)なのに「冒険」と表現されてるところなど、題名だけでワクワクします。まゆさんの日記を読んで、内容にも興味が湧いてきました。図書館に予約に走ります! (2004/03/09 22:15)
青子 > まゆさんも高評価でうれしいです。あと一歩のところでするりと逃げちゃう女性たちにとっては、モテモテニシノクンは結婚向きじゃないのでしょうね。すべてにおいて理想的な男性のように見えても、あと一つ一番大切なものが足りないのに、ニシノクンだけが気づいていないのがせつないです。 (2004/03/09 22:44)
まゆ > 羽鳥さん、これは川上さん初体験の方でもとっつきやすいのではないかな、と思います。おすすめしますよ。ぜひ読んでみてください。
青子さん、なぜこうなっちゃうのか、女の人たちはよくわかっていて、ニシノくんだけがわかっていない・・・というのがね。しょーもない男なんだけど、なんか憎めないです。お姉さんのエピソードがつらかったです。 (2004/03/09 23:14)
たばぞう > 読む人の年齢や今している恋愛の様子で、ひっかかる物語がそれぞれ・・・という感じですよね。高評価で良かったです~。 (2004/03/10 12:27)
まゆ > ひっかかる物語ね・・・ありましたよ、そう言えば。私の中では「センセイの鞄」がやっぱりベストなのですが、これもけっこういいですね。 (2004/03/10 19:30)

2004年2月22日 (日)

光ってみえるもの、あれは

459「光ってみえるもの、あれは」川上弘美   中央公論新社   ★★★★

高校生の江戸翠は、祖母と母との三人暮らし。父親はいない。いや、正確に言うと生物学上の父親・大鳥さんが家に出入りしているのだが、「親子」という関係ではない。
 親友の花田と、彼女の水絵と。それなりに日々を過ごしている翠は、だけどどこか世界から浮き上がっていて・・・。

 久々の川上ワールドを堪能いたしました。
 と言っても、例の不思議ワールドではなくて、普通の人間の物語なんだけど。ただ、世界になじみきれず、どこかしら浮き上がってしまっている人たちの物語。その世界からの浮き具合が、私の感じる川上ワールドなのです。
 母の愛子も、祖母も、大鳥さんも、みんな世間の基準から見れば「変わった」人たち。そういう人たちの中で育てられた翠も当然のごとく、どこか変わった空気を身にまとっている。一見超然としているように見えるけど、実は心の中ではいろんな思いがわだかまっていて、それが川上さん独特の語彙で語られていく過程は、とてもおもしろかったです。ただ、最後に翠がそういう選択をするとは思わなかったけど。
 文章中に織り込まれている詩歌が非常に印象的で素敵でした。

たばぞう > 去年はこの本と「ニシノユキヒコの恋と冒険」を読みましたが、最近の川上さんは、またちょっと変容してきているように思えます。もともと好きな方なので、これから書いて頂ける作品がとても楽しみなんです~。 (2004/02/24 00:01)
まゆ > これは「センセイの鞄」の次に好きかもしれないです。「ニシノユキヒコ」も読みたいな~と思ってます。とりあえず、図書館でさがしてみるつもりです。 (2004/02/24 00:11)
青子 > まゆさん、私はこの作品が一番好きです。最初から最後まで、1文1文に反応してしまいました。「椰子・椰子」みたいな訳のわからないのも好きですが、川上弘美にしては、フツーっぽい設定なのに、ほんの少し私たちの日常からずれていて、そのずれかげんがイイ感じでした。それは、私もちょっとずれてるからかもしれませんが…。「ニシノユキヒコ~」もお薦めです。 (2004/02/24 18:46)
まゆ > 私はやっぱり「センセイの鞄」がいちばんなのですが、あのツキコさんとセンセイもちょっとずれた人たちでしたね。川上作品はオッケーなものと受け付けないものとわりとはっきり分かれるのですが、これは大丈夫でした。「ニシノユキヒコ」早く読みたいです。 (2004/02/24 20:12)

2003年6月 3日 (火)

いとしい

237「いとしい」川上弘美   幻冬舎文庫   ★★★★

「誰かを好きになるということは、誰かを好きになると決めるだけのことなのかもしれない」

 高校教師のマリエは教え子のミドリ子の兄・紅郎と恋におちた。ミドリ子の愛人のチダさんは、かつてマリエの母の恋人で、マリエの姉のユリエが恋した相手だった。ユリエにはオトヒコさんという恋人がいて、ミドリ子には鈴本鈴郎という青年がまとわりつく。
 
 錯綜した人間関係の中での恋愛模様。けっこうどろどろしているようでいて、淡々と描かれるストーリーは、最初のころちょっと江國香織を連想しました。が、生活感のない江國さんと違って、妙に生々しいようなリアルさがあって、このへんが川上さんらしいとこなのかな、と。
 さらに川上・不思議ワールドも全開です。だいぶ慣れたつもりでも、「え?」と思うような世界が、ごくあたりまえのように描かれていきます。
 最後はせつなくてせつなくて、なんとなくうるうるしてしまいました。
 「センセイの鞄」の次に好きな話かもしれません。 

ありんこ > 私も読みました。川上さんの作品は名前がカタカナだったり変わった名前が多いので、すごく印象に残りますね。「センセイの鞄」早く読みたいのですが、なかなか回ってきません! (2003/06/03 22:41)
たばぞう > せっかくまゆさんが、川上さんをアップしているのに、この本の内容が思い出せない~!。うう~!。 (2003/06/04 12:47)
青子 > まゆさんも、読まれたんですね。この人間関係はかなり複雑そうですね。あらすじでは、ちょっと川上弘美っぽくなさそう。でも、川上ワールドなんですね。チェックしておきます。 (2003/06/04 17:37)
まゆ > 不思議ワールド全開なのに、ちゃんと恋愛小説という絶妙のバランスがおもしろかったです。
ありんこさん、「センセイの鞄」よいですよ~。文句ナシに人に薦められる一冊です。
たばぞうさん、これから読む人もいると思うので、あえて展開は書きませんでした。たばぞうさんの感想も聞きたかったけど、残念。
青子さん、最初は川上さんっぽくないなあと思って読んでましたが、途中からやっぱり川上ワールドでした。私はこの話好きです。 (2003/06/04 20:56)
モネ > 恋愛小説が、”川上ワールド”に変換されるとどういう展開になるんでしょうね。ふーむ。予想しながら読んでみるのも面白そう~です。 (2003/06/04 21:35)
まゆ > これが意外といい感じなのですよ。「センセイの鞄」にも不思議テイストな一章がありますが、「いとしい」ではもっとすごいです。でも、けっこうストレートな恋愛小説です。 (2003/06/05 00:02)

2003年5月 2日 (金)

パレード

210「パレード」川上弘美   平凡社   ★★★★

「ツキコさん、昔の話をしてください」・・・夏の午さがり、ツキコさんがセンセイに語る、幼い日の不思議な出来事。

 「センセイの鞄」サイドストーリー。センセイとツキコさんがふたりで過ごした時間が描かれます。
 そうめんをおなかいっぱい食べて昼寝をした二人。ここのやりとりがなんとも言えず好きです。ほのぼのとしていて。
 そしてツキコさんが語る幼い頃の話は、不思議なんだけどなんだかせつない。小学校のころ、同級生の女の子が仲間はずれにされる話。こういうの、身におぼえがあるからでしょうか。
 初めて読んだ時は川上弘美の不思議ワールドにイマイチ入り込めなかったのですが、今回はとってもよかったです。昔話のせつなさと、もう失われてしまったセンセイとツキコさんの二人の時間のせつなさと、両方が心にしみてきました。
 

青子 > 私が川上弘美にはまった、記念すべき最初の一冊です。特にどうってコトないような日常を、「シアワセ」と人は呼ぶのではないでしょうか。そして、そんなささやかな「シアワセ」さえも、いつか遠い過去になってしまうという事実がせつないです。 (2003/05/03 10:52)
まゆ > センセイとツキコさんの「シアワセ」な時間がなんとも言えずよいですね。でも、これがもうすぎてしまった時間だというのが、ほんとにせつないです。 (2003/05/03 17:23)
れんれん > 図書館に行くといつも定位置にあるのを目の隅でとらえていましたが、「センセイの鞄」のサイドストーリーだったなんて・・・全然知りませんでした。わぁい、いい事聞いちゃった 。 (2003/05/03 23:34)
まゆ > 「センセイの鞄」を読んだ方にはおすすめの一冊ですよ。薄いからサクサク読めるし。ぜひどうぞ。 (2003/05/04 11:21)
たばぞう > 立ち読みで読んじゃいました(笑)。「センセイの鞄」って、川上さんにしては、随分普通ワールドでしたが、これはやっぱり、川上さん、ていう世界でしたね。 (2003/05/06 19:56)
まゆ > 確かに、立ち読みできる長さですよね。川上弘美の不思議ワールド全開。でも、初読のときは「ああ、なんだかよくわからない~」って感じだったのが、今回読み返したら、物語がすんなり入ってきました。これもちょっと不思議です。 (2003/05/06 20:38)

2003年3月 2日 (日)

センセイの鞄

169「センセイの鞄」川上弘美   平凡社   ★★★★★

 37歳の月子が飲み屋で再会したのは、高校時代の「センセイ」。もはや老境にさしかかったセンセイに、月子はしだいに惹かれていき…。

 本プロではもはや揺るぎない高評価を受けているツキコさんとセンセイの恋物語。もちろん、私も大好きです。
 とはいえ、一度読んだきりなので細部の記憶はあやふやになってきたということで、再度読み返してみました。
 で、結論。やっぱり好きです。
 私がとっても好きな場面は、月子のどうしようもない寂しさと、センセイへの思いがほんわり形になってくる「お正月」。それから、センセイと距離をおこうとした月子が、やっぱり戻ってくる「こおろぎ」。初めてのデートの「公園で」。
 思えば、この物語は、男と女が出会ってから別れるまでの過程が全部描かれている。ものすごく派手な場面はないけれど、月子もセンセイもすごく揺れ動いて、そうしてお互いを求めずに入られなくなっていく。たぶん、誰もがわかるそんな気持ちを、丁寧に描いているからこそ、私たちは月子とセンセイに惹かれるのでしょう。
 不思議なのですが、これを読んでいて、二人の年齢差は全く気になりませんでした。そういう余分なものを取り除いた「人を恋うる気持ち」が、「あわあわと、色濃く」伝わってくる物語です。

マウス > オヤジが読むとどうしてもある種の「枯れた」男のやらしさを感じたりして気恥ずかしいものがあるのですが。女性はまた違う読み方をされるのでしょうか? (2003/03/03 00:15)
まゆ > マウスさん、はじめまして。男性の方でも、この物語好きって人もけっこういますよ(私の知ってる限りでは、ですが)。私はどうしても月子に感情移入して読んじゃうので…。枯れた男のやらしさかぁ。なんとなくわからないでもないですが。でも、「やらしさ」がなくなったら、恋愛できなくないですか?(笑) (2003/03/03 00:39)
たばぞう > ちょっとズレているかもしれませんが・・・。恋愛体質の友人に、「月子さんは先生に激しく抱かれたってあったけれど、センセイ本当に○○○出来たのかな」と言うと、「この二人は、そういうことは関係ないと思う」と言われ、ははーっと思ってしまったことがあります。 (2003/03/03 12:58)
まゆ > あはは。私もたばぞうさんと同じこと考えちゃいましたよ(笑)でも、お友達の意見に賛成ですね。月子とセンセイは、限りある時間を一緒に生きていければ、それでよかったのではないでしょうか。しかし、近い将来終わりが来るだろうと思いながらの恋愛ってせつないなあ。 (2003/03/03 18:31)
こうちゃん。 > まゆさん、お邪魔します。
自分も、この本好きですよ。月子さんと先生の独特な間ってのが、自分にとって良い感じでした。人に恋するとか愛するとかって、年齢差ではなく感覚なんだなぁと思いました。でも、自分にとって川上弘美さんって不思議!の一言に尽きます。それが好きなんだよなぁ。 (2003/03/03 20:18)
まゆ > この物語の魅力の一つは、年齢とかそういう余計なものにとらわれず、相手の存在を求めるプレーンな気持ちにあるような気がします。
この物語にも、不思議テイストな一章がありますよね。初読の時は、なんだか邪魔に感じたのですが、読み返してみて、なんとなくわかるような気がしました。何が?って聞かれると困るんですけどね。 (2003/03/03 23:25)
EKKO > ありましたね~、不思議テイスト。私もあの部分だけ雰囲気が違って「え?」と思ったのですが、今思えばあの章があったからこそ、ほかでもない川上ワールドなんだなあ、と感じます。本当に「何が?」って聞かれると困るけど、言葉じゃなくまさに感覚に訴えてくるんでしょうね。 (2003/03/04 08:22)
まゆ > あの章は、月子の揺れ動く気持ちを、実にうまく表してますね。ありがちな言葉を並べ立てるより、あの不思議な夢の場面が人の気持ちのぐらぐらした感じをうまく表してると思います。川上弘美だから書ける部分ですね。 (2003/03/04 21:35)

2003年2月17日 (月)

神様

156「神様」川上弘美   中公文庫   ★★★

 くまにさそわれて散歩に出る。くまはおすの成熟したくまで、305号室に越してきた。いまどき律儀に引っ越しそばをふるまった。そんな昔かたぎなところのあるくまと、川原ですごすひとときは…。

 表題作「神様」をはじめとする9編を収録。ドゥマゴ文学賞、紫式部文学賞受賞作。
 「センセイの鞄」に泣かされて、次に手にとったのがこの本でした。不思議不思議の川上ワールド。なにこれ?と思いつつ、ひきこまれていったのを鮮明に覚えています。読み返してみてもそれは同じ。
 好きなのは、くまの話の「神様」「草上の昼食」、猫屋のカナエさんの恋物語「春立つ」。
 いずれも派手な話ではないのだけれど、ほんのりとしたあたたかさと、ちょっぴりのせつなさ感がいい感じです。

たばぞう > この本、私は大好きです。「センセイの鞄」が出るまでは、私の中ではNO.1の川上作品でした。 (2003/02/21 14:47)
まゆ > 私は「センセイ」が先だったので、それに比べるとまあまあという感じでしたね。妙に律儀で古風なくまが好きでした。 (2003/02/21 21:07)

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