「た」行の作家

2017年10月11日 (水)

悪女の品格

2648「悪女の品格」 辻堂ゆめ   東京創元社   ★★★★

光岡めぐみは、三人の恋人に貢がせ、贅沢な生活を送っている。そんな彼女に降りかかる災難。監禁、薬物混入、そして・・・。めぐみのもとには過去の罪を告発する手紙が届く。いったい誰が? めぐみは婚活パーティーで知り合った大学准教授と共に、犯人探しにのりだすが・・・。

ずっと気になっていた作家さん。初読みです。

携帯電話会社社長を父に、有名女優を母にもつめぐみは、保険の外交員。自慢の美貌にものを言わせて、ノルマをこなすとあとは遊んで暮らす。金持ちの男たち三人とつきあっていて、彼らからもらった高価なプレゼントは、飽きると質屋で換金。子どもの頃から裏表が激しくて、常に「女王様」でいないと気がすまなかった。

そんな主人公が、いきなり監禁されるところから始まります。このあと、めぐみはさんざんな目に遭うのですが・・・まったくこりない彼女に同情する気には、これっぽっちもなれませんでした。どうやら小学生の頃にいじめられていた同級生の復讐では?ということになるのですが。

犯人は見当がつきましたし、犯行計画がけっこうずさんで、それでいいのかと思ったりもしました。が、犯人が明かされてからも意外な展開があり、そのへんはおもしろかったです。

めぐみは嫌な女なんですが、底が浅く、なぜか憎めないところもあり。まあ、彼女が歪んだ理由もわからないではないかなあ、と。ただ、いじめの被害者がそんなにわりきれるものかしら?という気はしました。

2017年8月 3日 (木)

茄子の輝き

2615「茄子の輝き」 滝口悠生   新潮社   ★★★★

離婚して、ひとり暮らしをしている市瀬は、職場の千絵ちゃんの愛らしさを愛でる日々を過ごしている。やがて、会社が倒産し、その職場もなくなり、千絵ちゃんも遠くへ行ってしまい・・・。

最近、ツイッターでやたらと見かけるので、読んでみました。芥川賞作家さんなんですね。

「お茶の時間」「わすれない顔」「高田馬場の馬鹿」「茄子の輝き」「街々、女たち」「今日の記憶」の連作6編と、短編「文化」を収録。

文章が、心地よいというのとはちょっと違う。微妙に間を外されるような感じがするのです。でも、読んでいるうちに、いつのまにかそのリズムにはまってしまっている・・・そんな感じでした。

東京の片隅で、ひっそりと生きている市瀬という人物の視点での日常。彼の生活に大きな事件はほとんど起こりません。たぶん、一番大きかったのは、離婚(結婚よりも)。時間がたっても、去っていった妻のことを思い出したり(そのくせ、妻の顔を思い出せなくなっていたり)、職場の千絵ちゃんをかわいいと思えることに救われたり。そんな気持ちのゆらめきを、淡々と記したような物語。

時間の経過とともに、人は変化していくし、記憶も風化していくものもあって、それは当たり前のことなのですが、その変化をじっと見つめているような、そんな物語たちです。

静かな物語なのだけど、不思議な磁力みたいなものがあって、読み終えてもしばらく、その力に囚われたままでした。

2017年6月30日 (金)

死と砂時計

2597「死と砂時計」 鳥飼否宇   東京創元社   ★★★★

世界中の死刑囚が集められてくるジャリーミスタン監獄。その終末監獄に収監されたアランは、監獄の長老・シュルツと出会う。監獄内で起こる事件を解決するシュルツの助手となったアランは、奇妙な事件の数々に関わることになり・・・。

探偵も被害者も犯人も、すべて監獄の中・・・という、奇想天外な設定の本格ミステリ。アランが5つの事件の謎解きに参加させられ、最後はアラン自身が犯した罪の謎が解かれる・・・という構成。

監獄という特殊な状況下でも成り立つミステリ、その場所だからこそ成り立つミステリ、両方を堪能できます。

謎解きのおもしろさに誘われて、どんどん読んでいくと・・・最後の最後で、うわっ!と。ラストを読んで、それまでのあれこれを思い返してみて、ゾワッと鳥肌が立ちました。

ミステリを読む愉しみを、存分に味わうことのできる一冊。おすすめです。

2017年6月14日 (水)

図書室のキリギリス

2591「図書室のキリギリス」 竹内真   双葉社   ★★★

ある日突然失踪した夫との離婚を機に、学校図書館の司書として就職した詩織。資格のない「なんちゃって司書」だが、詩織のもとには、いろんな本と生徒、そしていろんな謎がやってきて・・・。

「司書室のキリギリス」「本の町のティンカー・ベル」「小さな本のリタ・ヘイワース」「読書会のブックマーカー」「図書室のバトンリレー」の5話。

高校の図書室を舞台にした、日常の謎系ミステリ。本が好きな人、図書館が好きな人なら文句なしに楽しめます。

実際、司書の仕事って、ほんと奥が深いですよね・・・。私は司書の資格は持っていませんが、真似事はしたことがあるので、当時を思い出して、思わずため息。本が好きで、人に興味がないとできない仕事だとつくづく思います。

気になったのは、詩織の「人には言えない秘密」というやつ。彼女が持っている不思議な能力なのですが・・・これって必要だったかな? なくても成立したんじゃないか、と。

続編も出ているようなので、読んでみようと思います。

2017年1月13日 (金)

夏目漱石

2524「夏目漱石」 十川信介   岩波新書   ★★★

夏目漱石の生い立ちから、鏡子との結婚、倫敦留学、小説家になるまで、主な作品の執筆時の状況、修善寺の大患、その晩年まで。夏目漱石という人物の一生をわかりやすくまとめた、漱石入門書。

夏目漱石の人となりが気になっているので、読んでみました。思ったよりはザックリ、やや駆け足で書かれている感じで、そこもう少し詳しく知りたい~というところが何箇所かありました。が、ある程度の分量でその一生を書ききるには、仕方ないところでしょう。

これで漱石に興味をもったら、作品を読んでみましょうということですね。私も未読のものがたくさんあるので、ぼちぼち読もうと思います。

とりあえず、「彼岸過迄」と「明暗」は読まねば。「明暗」は未完なので手を出せずにいましたが、これを読んで俄然興味がわいてきました。

2016年12月25日 (日)

ゴースト≠ノイズ(リダクション)

2515「ゴースト≠ノイズ(リダクション)」 十市社   創元推理文庫   ★★★★

ある出来事をきっかけに、クラスですっかり「幽霊」扱いされているぼくの日常が変わったのは、席替えで前の席に玖波高町が座るようになってからだった。彼女は、「幽霊」のぼくに声をかけてきた。「まだお礼を言ってもらってない気がする」・・・ぼくには何のことか全くわからなかったのだけれど。

これがデビュー作なのですね。

最初はなかなか波に乗れずに読んでいたのですが、中盤あたりから一気読みでした。読み終えてからもしばらく、「ええっと、あれがこうで、あれはこういうことで・・・」と、反芻して、ボーっとしてしまいました。

ネタバレになるとまずいので、詳しくは書けませんが、多少盛り込みすぎのところはあるにせよ、ミステリとして、じゅうぶんおもしろかったです。青春ものとしても、よく書けていると思います。最後はちょっとうるうるきました。

大森望さんの解説も秀逸でした。

2016年9月18日 (日)

ディスリスペクトの迎撃

2470「ディスリスペクトの迎撃」 竹内真   創元推理文庫   ★★★

売れっ子ミステリ作家・辻堂珊瑚朗の昔の作品がドラマ化されるという。ところが、何やらトラブル続きで・・・。銀座の文壇バー・ミューズのミーコママと、甥っ子のボーイ・了を聞き手に、サンゴ先生が華麗に謎を解くシリーズ第2弾。

「チェスセットの暗号」「ファンサイトの挑戦状」「トラブルメーカーの出題」「ポー・トースターの誘拐」「ディスリスペクトの迎撃」の5編。今回は、サンゴ先生の推理小説がドラマ化されるという話題に絡めての連作です。

安楽椅子探偵ものは好きなんですが、なんといっても文壇バーの世界が魅力的。まったく未知の世界ですが、その雰囲気を楽しみながら読んでます。

「ディスリスペクト~」というタイトルに、なんのこっちゃ?となってましたが、読んで納得。さすがです、サンゴ先生。

残念ながら、第1話のチェスの話はよくわかりませんでした。将棋も全然わからない人間なので・・・悲しい。

2016年7月28日 (木)

綾瀬はるか「戦争」を聞くⅡ

2457「綾瀬はるか『戦争』を聞くⅡ」 TBSテレビ『NEWS23』取材班 編   岩波ジュニア新書   ★★★★★

祖母の姉が広島で被爆したという綾瀬はるかが、被爆者の体験を聞くシリーズ第2弾。

読んでいて、涙が出てきました。

自らの被爆体験を語る人たちが、みな同じように「生き残ったことが申し訳なくて」という趣旨のことをおっしゃるのです。

生きる道が残された人たちが、そんな思いで生きていかなくてはいけないというのは、やはり根本的に間違っているのだ、と改めて感じました。

生々しい体験は、正直、聞く方もつらいと思います。それでも、静かに耳を傾ける綾瀬さんの姿勢に、みなさん心を開かれるのでしょう。

有名な詩「生ましめんかな」のモデルになった方(そのとき生まれた赤ちゃん)、原爆症に苦しむ父親との生活、奄美大島の原爆乙女、建物疎開で被爆した少年少女、そして爆心地近くで生き延びた人々。

建物疎開の作業に生徒を出すことに、学校側は強く反対して軍と対立したことも、初めて知りました。

「語り継ぐことは、きっと何かの役に立つ」という綾瀬さんの言葉、その通りだと思います。私たちには、聞く責務があると思うのです。

2016年6月20日 (月)

なぜ独裁はなくならないのか

2444「なぜ独裁はなくならないのか」 千野境子   国土社   ★★★

副題「世界の動きと独裁者インタビュー」。アラブの春をはじめ、東欧、中南米、そしてヒトラーまで、独裁者に迫った記録。

ジャーナリストの著者が書いたものならわかりやすいかなと思ったのですが、意外とてこずりました(苦笑) 

というのは、私に基礎知識がないからです。アラブの春に興味があったので手に取ったのですが、う~ん。むしろ、東欧やキューバ、フィリピンのイメルダ夫人や、ヒトラーの話がおもしろかったです。

しかし、なぜ独裁はなくならないのか。明確は答えは見つけられませんでした。でも、独裁を望む心理というのもたしかに民衆の側にあるのだということは、わかりました。恐ろしいことだけれど。

2016年5月 5日 (木)

シチュエーションパズルの攻防

2429「シチュエーションパズルの攻防」 竹内真   創元推理文庫   ★★★★

銀座の文壇バーでアルバイトすることになった「僕」。そこで出会ったのは、大御所作家・辻堂珊瑚朗。実は、サンゴ先生、なかなかの名探偵で・・・。

文壇バー、あこがれです(笑) といっても、舞台になっている「ミューズ」は、いわゆるお姉さんたちが接客するタイプのお店なので、私があこがれてるのとはちょっと趣が違いますが。

そのバーのミーコママを叔母に持ち、大学進学と同時にバイトをすることになった「僕」。みんなに「小僧」呼ばわりされながらの社会勉強です。そこで、サンゴ先生と出会うわけで。

いわば、日常の謎系安楽椅子探偵ミステリ。「クロロホルムの厩火事」「シチュエーションパズルの攻防」「ダブルヘッダーの伝説」「クリスマスカードの舞台裏」「アームチェアの極意」の5編。

わりと軽いノリで読み始めたのですが、予想以上におもしろかったです。表題作はちょっと頭が混乱しましたが、「ダブルヘッダー~」や「クリスマスカード~」は、謎解きを楽しめました。

続編も出ているようなので、そちらも読みます!

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