笹尾陽子

2008年5月22日 (木)

サンネンイチゴ

1299「サンネンイチゴ」笹尾陽子    理論社    ★★★

 文芸部でおとなしめのキャラってことになってるあたし、森下ナオミは、ひょんなことからクラスでやたら目立つ強面のアサミと、その彼氏(?)ヅカちんと親しくなってしまう。なぜかアサミたちと「マスコット狩り」を追うはめになり…。

 笹尾さんというと、少年が主人公のイメージが強いのですが、これは女子の一人称で語られる物語。テンポの良さと、重くなりすぎないバランス感覚は、いつも通り。
 ナオミが家族と馴染めない感じとか、小学校時代の事件とか、すごく共感できました。そういうのってあるよね…という。
 彼女が自分らしさをつかんでいく過程は、読んでて心地よかったです。
 ただ、サンネンイチゴのエピソードがもうちょっと生きてもよかったかな。少し物足りない気がしました。

2007年8月19日 (日)

ぼくは悪党になりたい

1164「ぼくは悪党になりたい」笹生陽子   角川文庫   ★★★★

 エイジはシングルマザーの母と、異父弟のヒロトとの三人家族。母が海外へ仕事に行っている間、ヒロトが水ぼうそうに。困ったエイジは、母の知り合いらしい杉尾に助けを求めた。予想外にいい人な杉尾と接するうちに、エイジはある疑問を抱き始める。杉尾はヒロトの父親じゃないのか・・・?

 
今までの笹尾作品(文庫化されたもの限定)で、これが一番好きです。
 普通の、というよりも、普通よりももっと落ち着いた若年寄みたいなエイジが、どんどん壊れていっちゃうのですが。それが非常に淡々と描かれています。でも、よくよく考えてみれば、エイジが我を失ってしまうようなショックな出来事があったわけで。そのあたりをサクサクッと書いてしまう笹生さんのバランス感覚が好きですね~。
 奔放な母とわんぱく盛りの弟のために、家事全般引き受けるというけなげな高校生が、人生最大の衝撃を受けて、「悪党」になっちゃう。エイジ、どこまで行っちゃうんだよ?と思いつつ、最後の収束の仕方もお見事でした。
 感動的な親子の心の交流なんてのもないけど、ラスト一文の締め方がとても好きでした。

three bells > 遅ればせながら5周年おめでとうございます!
笹生さん、男の子をうまく書いている人だと思います。
エイジの壊れ方が半端じゃなくってドキドキしました。奔放な母にも憧れます。 (2007/08/21 20:30)
まゆ > three bellsさん、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
笹生さんの描く男の子は、なんでもないようでいて、ちょっといいですよね(笑)エイジの壊れ方には私もドキドキしました。ユリコさんと「彼」は、昔どんな恋愛をしたんでしょうね~。 (2007/08/21 20:41)

2007年7月31日 (火)

バラ色の怪物

1151「バラ色の怪物」笹生陽子   講談社文庫   ★★★

 中学2年の遠藤は、壊れたメガネを買いなおすために、友人の宇崎に誘われてバイトを始める。他校生の三上が代表をつとめる「行動する中学生の会」だ。そのバイトのために、遠藤は夜、こっそり家を抜け出すようになる。
 一方、学校では変わり者の吉川ミチルと言葉をかわすようになった。私服を着て、髪をピンクに染めているミチルは、問題児として有名で、遠藤も初めは敬遠していたが・・・。

 久しぶりの笹尾作品です。
 いつものことながら、何気なく書いているようでいて、読んでいるうちにじわじわ効いてくるのです。
 主人公の遠藤は、中学2年。体がどんどん成長していて、外見はたくましいけれど、気持ちはおとなしい方で、自分でもそのアンバランスにとまどう少年です。
 夏休み明けすぐに、三上とミチルという対照的な二人と親しくなり、遠藤は急激に「変化」していきます。
 そう、「変化」なのです。成長なんて生易しい言葉では表せない変化。変貌といってもいいかもしれません。外見もだけれど、むしろ内面の。遠藤自身、制御しきれないほどの。
 自分をコントロールできない。その状態が、さらりと書かれています。さらりと書いているからこそ、生々しいと思うのは私だけでしょうか。
 読んでいて、三上が登場する場面は息がつまるようで、ミチルの場面はすがすがしい気持ちになりました。

2005年7月 6日 (水)

楽園のつくりかた

819「楽園のつくりかた」笹生陽子   角川文庫   ★★★

 都内の私立中学に通う優は、父の故郷のド田舎の学校に転校することに。年老いた祖父を一人にしておけないのがその理由。
 いざやってきた村の学校は、同級生がたったの3人。エリートめざして一直線の優は、あまりの環境の激変にめまいを覚える。

 夏休みの「読書」を当てこんでか、薄くて読みやすそうな文庫がドドッと出てますね。中高生がターゲットでしょうか。それを買い込んでいるあたり、私って・・・。
 とりあえず、その中の第1弾は笹生陽子。「ぼくらのサイテーの夏」「きのう、火星に行った。」に続いて、3冊目。いずれもそれなりにおもしろくて、ハズレなしですね、今のとこ。
 
 主人公の優は、ほんとにかわいくない(笑)もし、私の目の前にこんな生徒いたら、殴りたくなりますね(先生、体罰はいけません)。
 田舎を見下してるし、田舎の中学生も見下してるし、偏差値が友達で、人を裏切ってもなんとも思わないし・・・。
 そんな優が放り込まれた田舎の分校の同級生は、これまたユニークな子ばかり。地元民の山中はバカだし。山村留学生の宮本は、マスクをして一言も口をきかない。同じく山村留学してる一ノ瀬は、めちゃくちゃ可愛いんだけど・・・!
 田舎ライフにことごとくなじめない優のイライラは募り、とうとうある事件が起こります。そこで明らかになる事実に、びっくり。ああ、そういうことだったんだ、と。
 あんなにいやなヤツなのに、なぜだか優のこと、憎めないのですよね。むしろ、彼の言動が妙にせつなく思えてくる。そう思わせる話の展開、その説得力はさすがだなあ。

 余談ですが。
 優の転校先の分校は、小中併設で、中学生は16人。
 私のいる学校は、やっぱり小中併設で、中学生は20人(去年は17人)。分校ではありませんが。
 うちのクラスは2年生7人。うちの学級に優が入ってくるようなものか・・・と、妙にリアルに想像してしまいました(笑)

あしか > まゆさん、そんなに小規模な学校だったんですか?小さいとは聞いてましたが・・・。7人って、私のほうが多いです・・・・。去年9人、今年8人ですもの。 (2005/07/06 23:54)
やりさん > こんにちは!最近、笹生さんの本を初めて手に取りました。今までは若い子向けなのかな~と思って、ちょっと敬遠していた部分があって…私が読んだのは「ぼくは悪党になりたい」なのですが、とても気に入ったので、他の作品読みたいと思っています♪こちらの作品も面白そうですね~。 (2005/07/07 10:23)
まゆ > あしかさん、小規模も小規模。去年まで担任してた学級は、5人でした。ははは。小規模ゆえの苦労はありますが、やはり仕事の量が大規模校とは全然違います。全校生徒900人超の大規模にもいたことありますが。こうやってのんびり本が読めるのも、今の学校にいるおかげですよ。 (2005/07/07 21:48)
まゆ > やりさん、私は文庫化されたものしか読んでないのですが、笹生さんの描くところの小生意気なガキンチョたちがけっこうお気に入りです。「ぼくは~」もすごく気になってます。 (2005/07/07 21:51)

2005年3月27日 (日)

きのう、火星に行った。

767「きのう、火星に行った。」笹生陽子   講談社文庫   ★★★

 なんでもできるけれどやる気が全くない山口拓馬は、6年生。ある日、体育大会の選手に選ばれてしまう。それだけでもうんざりなのに、療養生活を送っていた弟・健児が7年ぶりに帰ってきた。健児にすっかりペースを乱され、クールなはずの拓馬は苛立つが・・・。

 あっというまに読めちゃう長さですが、それなりに起伏があって、おもしろかったです。児童書と言っても分厚いものもありますが、これくらいの分量(文庫で160ページくらい。活字はかなり大きい)で、描きたいことを描ききるのって、すごいです。
 拓馬みたいな子っているんですよね。冷めてる・・・ようでいて、実はかなりイラついてみたり。自分でもそういうのコントロールできなくて。
 「イマドキの子」の気持ちは、正直言ってわからないことがいっぱいあります。でも、彼らなりにいろいろあるんだろうな、ということはわかる(つもり)。そんなことを感じさせる物語でした。
 私は拓馬と正反対の人間だけど(できないけど、悪あがきして熱くなるタイプだから)、拓馬のことは嫌いじゃないです。かわいいじゃん、オマエ・・・と、思ってしまいました。

あしか > 「~悪党になりたい」で初だったのですが、文章がすごく小気味よい感じだったので、なにかもっと読みたいと思っていました。そういえば先日もどなたかが何かUPされてましたね・・・なんでしたか・・・。 (2005/03/28 15:30)
まゆ > 先日アップしてたのも私です。デビュー作「ぼくらのサイテーの夏」を。講談社で2ヶ月連続文庫化してくれたので購入してみました。ほかのも読んでみたいですね。 (2005/03/28 19:36)
あしか > ああ、そうでしたか。それはそれは失礼しました。でも良かったです。気になってたまま過ぎてしまった感じがしてたのでわかってよかったですo(*^▽^*)o
ぜひどちらも読もうと思います。 (2005/03/28 20:56)
雨あがり > こんにちは。わたしも「ぼくは悪党になりたい」でこの作家に出会い、他にも読んでみたいと思っています。この本も、↓でUPされてる「ぼくらの~」もおもしろそうですね。 (2005/03/29 09:41)
まゆ > あしかさん、雨あがりさん、私は「ぼくは~」を読んでいないので、なんともいえないのですが・・・イマドキの子たちが出てくる物語だなあと思いました。読みやすくて、まずまず、といった感じです。「ぼくは~」もぜひ読んでみたいです。 (2005/03/30 00:21)
すもも > この作家さんの本は、「火星」も含めて、同じような雰囲気の作品が多いような気がします。まゆさんのいわれる「イマドキの子ども」が主人公という設定だからでしょうか。そうそう「バラ色の怪物」も、おもしろかったですよ(^^) (2005/03/30 09:30)
まゆ > すももさん、情報ありがとうございます。なんたって、笹生さんの存在を知ったのが最近なので、まだまだこれからという感じです。ちなみに、「笹生」を「さそう」と読むのも、本を買って初めて知りました。 (2005/03/30 22:17)

2005年3月20日 (日)

ぼくらのサイテーの夏

764「ぼくらのサイテーの夏」笹生陽子   講談社文庫   ★★★

 小学6年のぼく、桃井は、一学期の終業式の日、「階段落ち」で栗田に負けた。しかも、怪我をしてしまい、夏休み中の罰掃除までくらってしまった。どうにも好きになれない栗田と二人。ぼくにとって、サイテーの夏が始まった。

 最近、児童文学がどんどん文庫化されていますね。私としては大歓迎なのですが。児童書って高くてなかなか買えないし。でも、それだけ需要もあるってことなんでしょうか??
 さて、笹生さんは最近よく見かけますけど、読むのは初めて。薄いし、読みやすそうなので買ってみました。
 同級生にも一目置かれてるっぽい桃井と、一匹狼の栗田。栗田ん家は「カテイホウカイ」してるという噂。だけど、誰にも知られないようにしてるけど、実は桃井家も崩壊寸前。原因は、優秀で自慢の息子だった兄トオルが、不登校からひきこもりになっちゃったこと。
 腕にはギプスをはめたまま、外では苦手な栗田と暑い中のプール掃除。内では、兄に振り回される家庭。とってもサイテーな桃井の夏は、実は栗田との関わりで、変化していきます。
 その変化の過程は、それほど劇的なものでもないし、うんと深いところまでつっこんで描かれるわけでもありません。なにより、主人公の桃井が、そんなに苦悩しない(笑)いや、悲しい思いとかしてないわけじゃないんだけど、この子、たくましい。物語の中に「温室の花と雑草」のたとえが出てくるけど(ありふれたパターンではありますが)、桃井も栗田も、まさに雑草。それが、読者にも心地よいのです。
 最後の場面がとってもいい余韻を残して、お気に入りです。

なみ > はじめまして。私もこのお話から笹生さんにはいったのですが、読んだあとに優しくなれるような気持ちになれました。笹生さんの作品は他に3冊読んだのですがどれも気に入って、早く次のが読みたくてしかたがありません☆児童書ですが本当、大人でも楽しめる作品ですね。 (2005/04/02 21:19)
まゆ > なみさん、レスありがとうございます。笹生さんのって、さらりと描いているけれど、すうっと心にしみこんでくるような何かがありますね。ぜひぜひ次のも読みたいと思います。 (2005/04/03 17:27)

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