荻原規子

2019年7月19日 (金)

つる花の結び

2926「つる花の結び(上)(下)」 荻原規子   理論社   ★★★★

「源氏物語」のうち、玉鬘十帖を中心とした「中の品の女」たちの物語を集めたもの。「紫の結び(3冊)」「宇治の結び(2冊」に続いて、この「つる花の結び」2冊。計7冊で、「源氏物語」全五十四帖、完訳です。

刊行されてすぐ購入したものの、今まで積読・・・。ようやく手に取りました。

荻原版源氏を読むにあたって驚いたのが、この再構成の仕方でした。紫の上を中心とした本筋を「紫の結び」に。宇治十帖は「宇治の結び」。そして、脇筋の物語を「つる花の結び」としてまとめたのです。不勉強にして、こういう分類の仕方があったのを知らなかったのですが、こうすると実にわかりやすい。いつも話があっちこっち行ってる気がして、途中で脱落してしまうのが、こうすると私でも読めました。いや、むしろこの「つる花の結び」にまとめられた話は、こうすると実にわかりやすい。源氏の君が関わった女性たち(空蝉、夕顔、末摘花など)の話。その夕顔の娘・玉鬘の話。また、源氏の君の息子・夕霧の話。今まで煩雑に思えたこれらの話は、むしろ本筋から分離してやると、独特のおもしろさが感じられるのです。

要するに、これらは番外編・スピンアウト・アナザーストーリーといった扱いなのでしょう。だから、こういう読み方をした方が、わかりやすい。

そのせいか、登場人物、特に殿方の言動について、作者の視線はなかなか厳しいようです。私も読んでいてけっこうイライラしました(苦笑) 特に、玉鬘のくだりは以前から苦手で・・・。でも、それもかくやと思ったのが、夕霧です。幼なじみの雲居雁と結ばれて十年あまり。亡友・柏木の妻だった落葉宮に懸想して言い寄るのですが、これがなかなかひどい(苦笑) できることなら物語の中に入っていって、一発殴ってやりたいと思うほど。父親の源氏の君もひどいですが、真面目一方の夕霧の方が、物慣れない分、こじれるとにっちもさっちもいかなくなるようで。こんな人だったかと驚くやら、呆れるやら、でした。

でもきっと、今までたくさんの人たちが、こうやって呆れたり、笑ったり、共感して涙したりしながら読んできたのでしょうね。きっと、千年の昔でも、そういう感覚は大きく変わらないのかなと思ったりします。

自慢じゃないけど「源氏物語」は現代語訳でも読み通したことがない私ですが、これは読めました! 肩肘はらない優しい現代語訳で、とっつきやすいし、読みやすいので、おすすめです。

 

2018年7月17日 (火)

宇治の結び

2769「宇治の結び(上)(下)」 荻原規子   理論社   ★★★★

光源氏亡き後。源氏の君の息子である薫大将は、己が不義の子であることを知り、思い悩んでいた。帝の子であり、源氏の君の孫でもある匂宮は、薫の良き好敵手であったが、その二人が宇治に住む宮家の血筋の姫たちを見初めたことから、女人たちの運命の輪が回り始め・・・。

「紫の結び」に続く、宇治十帖の現代語訳。光源氏の次の世代の話になるわけですが、昔からこれがとみに苦手で(苦笑) 今回も苦戦しました。少しずつ少しずつ読んで、2週間近くかかりました。

とにかく、薫って男がめんどくさい。荻原さんがあとがきで書かれていますが、この宇治十帖の顛末は、とにかく薫の気質に原因があると思うのです。その根底にあるのは、「不義の子」という意識なのですが、とにかく自分の感情を素直に表せない。どこか堅苦しいそのさまを見ていると、女人が「いい方なんだけど・・・」とため息をつきたくなるのもわかります。

一方の匂宮はわかりやすい性格で、人好きがするたちなのですが、いかんせんボンボン(笑) 生活力がないというか、まあ、高貴な生まれなので、そんな心配をする必要がないわけですが。身分違いの女人にとって、これほど頼りにならない男もないわけで。

さらに、宇治の姫たち(大君、中の君、浮舟)の感覚もよくわからない・・・。ある意味被害者のようなものではありますが、あまりに流されるばかりで。でも、これが当時の女性の共感を得たのかもしれません。

とにかく昔からこのくだりは苦手で、斜め読みするからよけいに話がわからず・・・だったのですが、荻原さんの丁寧でわかりやすい訳で、ようやくいろんな人間関係が腑に落ちました。浮舟はたしかに身の置き所がなかっただろうなあ。

2018年5月20日 (日)

RDG レッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴

2750「RDG レッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴」 荻原規子   角川書店

「RDG」のその後・・・。泉水子と深行は何事もなかったかのように学園に戻ってきた。二人のあまりの変わらなさに、真響は苛立つ。そんな真響のもとに、従兄弟の克巳が現れる。真響の婚約者に名乗りをあげる克巳に、動揺する真響だったが・・・。

「RDG」のスピンオフ集。

「影絵芝居 相楽深行・中三の初夏」「九月の転校生 相楽深行・中三の秋」「相楽くんは忙しい 相楽深行・高一の秋」の短編三篇と、「氷の靴 ガラスの靴 宗田真響・高一の冬」の中編一篇。

泉水子視点ではスーパー同級生の深行と真響が、それぞれの視点で紡ぐ物語は、とってもおもしろかったです。本編読んで、だいぶ経ってるからな~、忘れちゃったかな~、と不安でしたが、読んでいくうちに思い出しました。

深行が、なんだかんだ言って、泉水子をめちゃくちゃ意識しているのがかわいかったし(笑) 本編では魅力的だったけれど、いまいちつかみきれなかった感のある真響も、なんだかようやく理解できた気がしました。

「あとがき」で、荻原さんが、泉水子の友人には、ドラマの主人公になれる背景をもっていたほしかったと書いているのを読んで、はっとしました。たしかに、よくできた物語って、そうなんですよね。物語のために登場人物がつくられるのではなく、それぞれが生きていて、その一場面を切り取ったのがこのお話ですよ、という感じ。私が好きなのは、そういう物語なのだなあと、実感しました。

2015年6月19日 (金)

RDG6 レッドデータガール 星降る夜に願うこと

2311「RDG6 レッドデータガール 星降る夜に願うこと」 荻原規子   角川書店   ★★★★

戦国学園祭で、その能力をあらわした泉水子。学園の皆がそれを知るところとなり、影の生徒会長・穂高は、世界遺産候補になる学園トップは泉水子と判定する。しかし、高柳一條がそれに異を唱え・・・。果たして泉水子と深行は、人類滅亡の未来を変えることができるのか。

最終巻です。戦国学園祭というとんでもない行事が終わったと思ったら、高柳との力比べやら、クリスマスパーティーやら、なんともせわしない学校です(笑) でも、そういう学園もののノリの部分は、泉水子と一緒に楽しんでしまえるので気が楽です。

泉水子(姫神)が抱えている運命があまりにも重すぎて、これにどうやって決着つけるんだろうと思っていたら・・・そういうことでしたか。ニンマリ。要するに、この物語は、泉水子の物語であって、泉水子と深行が人生のスタート地点にようやく立つまでの「はじめて物語」なのですね。これだけ話を広げておいて、泉水子に集約していくさまはいっそ爽快でした。なんというか・・・「ひとりひとりの存在」の大切さを実感させられました。

それに、この後、彼らがどうなっていくんだろう・・・と、いろいろ想像を掻き立てられました。本を読んでこういう感じになったの、久しぶりです。

ただ、「三人寄れば、物語のことを」を読んでなかったら、こんなふうに肯定的に読めなかったかもしれません。なんだ、この少女漫画はー!という読み方をしてしまったと思います(苦笑) あの鼎談で「RDG」の良さをわかりやすく解説してくれていたので、このラストで本当によかったと思えました。

しかし、泉水子と深行がどうなるのかと思っていたら、そうきましたか! やるねえ、深行くん(笑) そして、大人パートのかっこいいこと。紫子と大成と雪政の三角関係って・・・。この三人の若い日の物語を読みたいものです。紫子は、人類の未来のためというより、自分の娘のために、ふつうの母親としての生活は手放したのですね・・・。「強いけど、痛ましい」という表現が出てきましたが、まさにそう感じました。

2015年6月15日 (月)

RDG5 レッドデータガール 学園の一番長い日

2308「RDG5 レッドデータガール 学園の一番長い日」 荻原規子   角川書店   ★★★★

泉水子に憑いている姫神は、二度の人類滅亡を経験し、今が三度目の転生だという。あまりのことに茫然とする泉水子だったが、学園はいよいよ「戦国学園祭」を迎える。高柳や真響たちの思惑が入り乱れる中、泉水子は高柳の術中にはまってしまう。それに怒った泉水子は・・・。

とうとう学園祭です。もちろんお話だからできてしまう戦国コスプレ文化祭なんですが、違和感なく読めてしまうところがすごいです。

そして、泉水子と深行の関係も、いよいよ・・・という感じですね。ただ、泉水子の抱えているものが大きすぎて、深行、どうするよ?という。真響たち宗田三姉弟の関係性もなんだかひと段落したみたいで、そっちはちょっとホッとしました。

しかし、今回ウケたのは、白い犬! そうかあ、泉水子の中では、きっと高柳は血統のよい白い和犬なのですね(笑) いやもう、それでもえらそうな高柳がおかしくて。深刻な場面でも、白い犬が出てくるとなんだか笑ってしまうのでした。

さて、残すところあと1巻。どんなふうに決着するのか、楽しみです。

2015年6月 5日 (金)

RDG4 レッドデータガール 世界遺産の少女

2302「RDG4 レッドデータガール 世界遺産の少女」 荻原規子   角川書店  ★★★

戸隠での出来事をうまく消化できないまま、泉水子と深行は2学期を迎えた。文化祭の準備に執行部は忙殺されるが、その中の着付け講習会で泉水子はモデルを務めることに。そして、講習会が終わったあと、泉水子は姫神に・・・。姫神とともに城跡を訪れた深行は、姫神の正体を知らされる。

姫神の設定のスケールの大きさと、その哀しさに圧倒されつつ、泉水子と深行がお互いにビシバシ相手を意識しつつ、全然進展しない少女漫画状態にニマニマしてしまった4巻です(笑)

最初に読んだときには、その辺をどう受け止めていいのかわからず、ちょっと引いてしまったのですが、「三人寄れば、物語のことを」を読んで、なんだ、それを楽しめばいいんだと開き直ったので、楽しかったです。きっと、荻原さんも書いてて楽しかったでしょうね、これ。

泉水子を取り戻すために抱きしめてしまった深行。それに気づいた泉水子の動揺と、真響の追求が、個人的にはツボでした。戦国文化祭も、一條のたくらみも、なかなか興味深いのですが、このあと、泉水子と深行がどうなっていくのかが楽しみです(笑)

2015年5月15日 (金)

RDG3 レッドデータガール 夏休みの過ごしかた

2290「RDG3 レッドデータガール 夏休みの過ごしかた」 荻原規子   角川書店   ★★★

玉倉山を出て、鳳城学園に編入した泉水子。ルームメイトの真響やその弟・真夏といった友人もできて、生徒会にも入ってしまった。その生徒会の合宿を、真響たちの地元・戸隠ですることになり、泉水子は期待に胸をふくらませる。しかし、そこでは思いもかけない出来事が待ち構えていた・・・。

「三人寄れば、物語のことを」を読んで、やっぱり挫折した「RDG」読まねば・・・と、再チャレンジ。そもそも、2巻まで読んだのはいつのことだったか…と調べたら、5年前でした。さすがに記憶があやしかったので、1・2巻を斜め読みして、3巻に突入!

3巻は、宗田きょうだいが活躍というか、暗躍してました(笑) 高柳一條に対抗するために、生徒会を見方に引き入れようと画策する真響。生徒会長の仄香とも対立し、深行の力を試そうと無茶なことを仕掛けたり、なんだか怪しい人になってました。

一方、真夏も大きな危機に直面します。その原因は・・・三つ子の一人、真澄。幼いころ亡くなり、真響と真夏の呼びかけにこたえて現れる真澄は、実は・・・というお話。

そして、泉水子は、地味にひそかに(笑)成長しています。泉水子のいじいじぶりがうっとうしいのですが(笑)、深行がお気に入りなので、とりあえず良しとします。

全巻読み通さないと、本当のおもしろさは味わえない気がするので、今度は最後まで読み通します!

2015年3月29日 (日)

あまねく神竜住まう国

2257「あまねく神竜住まう国」 荻原規子   徳間書店   ★★★★

伊豆に流された源頼朝は、土地の豪族にうとまれ、命を狙われ、生きる希望も失いがちだった。そんな頼朝の前に、不思議な運命の糸で結ばれた草十郎とその妻・糸世が現れる。三人の若者の運命は・・・。

作者もあとがきでふれていますが、主人公は頼朝ですが、「風神秘抄」のその後の物語でもあります。「風神」を読んだのはずいぶん前なのでちょっと不安でしたが、読んでいるうちにどんどん思い出してきました。

頼朝はまだ10代半ば。英雄・義朝を父にもち、父や兄・義平のような荒武者でないことに引け目を感じていて、父がだまし討ちにあったことが心の傷になっている少年です。

当時の習いとはいえ、若くして戦場に出て命のやり取りをし、家族を失い、一人で雪の中をさまようという経験は、あまりに過酷だったのでしょう。生きようという強い意志を失ってしまっています。この少年・頼朝の設定が、すごく説得力がありました。そして、草十郎と糸世と出会い、頼朝の世界が変わっていくわけですが・・・。 

正直、私は頼朝にあまりいいイメージをもっていなかったのですが、これはすんなり受け入れられました。頼朝が、一人の少年としてまっすぐに描かれていたからだと思います。なんとなく、大河ドラマ「平清盛」での岡田将生演じる頼朝を思い出していました。

さて、草十郎と糸世は相変わらずというか(笑) 糸世っていいですね。生きるエネルギーに満ち溢れていて。そんな糸世に命がけで惚れられる草十郎は幸せ者です(笑) 「風神」で完結したわけでなくて、まだまだ二人が苦悩していたというのは、ちょっとつらかったですが、それも今回で幕を下ろしたようなので、ホッとしました。

ただ、荻原さんらしくないこの本の薄さは何事!?と思ってしまったので、★は4つ。もっと物語世界に浸っていたかったです。   

2015年3月18日 (水)

三人寄れば、物語のことを

2249「三人寄れば、物語のことを」 上橋菜穂子・荻原規子・佐藤多佳子   青土社   ★★★★

大好きな作家さん3人の鼎談集。買ってしまいました。

上橋さんの「守り人」、荻原さんの「RDG」、佐藤さんの「シロガラス」について、お三方が語り合うという、とっても豪華な一冊。やはり作家ならではの視線があって、すごくおもしろかったです。

各章のタイトルがなかなか素敵で。

 Ⅰ「こちら」と「むこう」が出会うときー物語の生まれる場所(上橋さん)

 Ⅱ物語を紡ぐ女神ー世界の襞へわけいる力(荻原さん)

 Ⅲ乱調が織りなすリアルー子どもたちは<物語>と遊ぶ(佐藤さん)

それぞれの鼎談のテーマと、作家さんの特徴がビシッとまとめられていて、編集者さんのセンスに脱帽しました。

上橋さんはエッセイ集を去年2冊読んだので、なんとなく物語の背景もつかめていましたが、荻原さんや佐藤さんはこういうの初めてだったので、興味津々でした。私がそれぞれの作品のどこにひかれているのか、これを読んでよくわかりました。

佐藤さんの「シロガラス」も読んでみたいし、何より「RDG」は途中でリタイアしているので・・・うーん、やっぱり読みたくなってきました。

2014年3月 9日 (日)

源氏物語 紫の結び 三

2101「源氏物語 紫の結び 三」 荻原規子   理論社   ★★★★★

荻原源氏「紫の結び」完結編。「若菜」から「雲隠」まで。

初めて、「源氏」を通読して(もっとも、枝葉にあたる部分や、宇治十帖は入っていないので、原典の一部だということは認識したうえで)、なるほど、こういう物語だったのか、と。どちらかというと、源氏の君には興味がなくて、女人たちの方にスポットを当てていたのですが、やはりこの物語の主人公は光源氏なのだと、よくわかりました。

世の栄華の限りを尽くしたかのような主人公。しかし、彼はごくごく普通の人間なのです。そのリアルさはある意味恐ろしいほど。思わず「あんた、いい加減にしなさいよ!」と蹴りを入れたくなるような情けなさこそが、この物語を読ませるもとなのでしょう。そうでなければ、ただのおとぎ話です。なんというか・・・物書きの視線というのは、容赦なく冷徹で、少々あたたかくて・・・それは現代でも古代でも、何も変わらないのですね。

また、紫の上に関する荻原さんの考察(あとがき)には、深く感じるものがありました。なるほどね・・・。それにしても、源氏ってやつは・・・。

原典や谷崎源氏、与謝野源氏などを読破された方には、荻原源氏は邪道な口語訳かもしれません。しかし、こうすることで、見えてくるものもあるのです。あらためて、「物語を読む」ことを考えさせられました。

荻原さんは、今回カットした部分をまとめた「蔓花の結び」「宇治の結び」も編んでみたいとのこと。ぜひ、お願いしたいものです!

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