島本理生

2008年5月18日 (日)

ナラタージュ

1295「ナラタージュ」島本理生   角川文庫   ★★★★

 大学生の泉は、出身高校の演劇部に客演することになる。演劇部の顧問の葉山先生は、泉がかつて恋焦がれた相手だった。再会し、自分の思いが過去のものではないと自覚した泉。しかし、葉山先生は泉を受け入れようとはしないのだった。

 「ナラタージュ」というのがどういう意味なのかわからず、調べました。映画などで、主人公が過去のことを振り返って語ることをいうのですね。この物語はタイトルどおり、大人になり、結婚を目前に控えた泉が、過去の恋を回想するという構成になっています。

 刊行当時、かなり売れた本だと記憶しています。島本さんはわりと好きなのですが、これを読むのは正直怖かったです。なぜかは自分でもわかりませんが・・・なんか、「やばいぞ」サインがチカチカしてて。

 読み終えて、わかりました。おそらく、読んでしまったら、ものすごく引きずられるだろうという予感だったのです。そして、それは当たりました。

 いい歳をして何を今さら・・・という感じなのですが。そして、私は先生にあこがれたことすらないのですが。人を恋うる思いというのは、きっとシチュエーションこそ違え、誰もが経験するものだから、ここまで共感してしまうのでしょうね。

 葉山先生にまっすぐな思いを傾ける泉。そんな泉を愛しながらためらう葉山先生。泉に恋してしまって苦しむ小野君。それぞれの思いがあまりにせつなくて、痛いほどそれぞれの気持ちがわかってしまって、最終的に行き着くところがわかっていても、ページを繰る手を止められませんでした。

 読み終えてから、しばらくボーっとしてました。いろんなことを考えてしまって。

 恋愛ものって苦手なんですが、これは読んでよかったと思います。 

2006年1月15日 (日)

リトル・バイ・リトル

924「リトル・バイ・リトル」島本理生   講談社文庫   ★★★★

 高校を卒業してから、バイトをして過ごすふみ。母と、父の違う妹との三人家族。穏やかだけど、どこかが欠けているようなふみの世界は、年下の周と出会ってから少しずつ少しずつ変わってゆく・・。

 野間文芸新人賞受賞作。
 私が島本理生を読むのは、「生まれる森」以来2作目。
 今、若い世代の作家が世の中にどんどん出てきて、彼ら独特の感性や表現に賛否両論あるけれど、島本理生に関しては、不思議と違和感を感じないのです。私としては。
 寂しさ。どうしようもない欠落感。自分を守るために繭の中に閉じこもっているような主人公。人との出会いで、その繭がゆっくりほどけてゆく感じ。静かな物語。
 物語を構成するこういう要素が、私の好みにあうのでしょう。
 この話も、妙に好きなタイプでした。ふみが実父と年に一度会うのをすっぽかされたエピソードなんかは、自分にはそんな経験はないのに、不思議と印象的で。そういうふみの気持ちを静かにほどいていく周のこと、素敵だなあと思っちゃいました。
 この話に出てくる周が読んだ児童書。核戦争の話。あれって「The End of World」ですね。自分が読んだ時はそれほど印象に残らなかったけど、こうしてみると、とてもせつなくて悲しい話に感じます。また読み返してみようかな。

EKKO > こんにちは。若い世代の作家さんの感性にはついていけないこともあるのですが(「蹴りたい背中」がダメでした)、島本さんは私もしっくりきますね。「ナラタージュ」は強烈な印象でした。追いかけていきたい作家さんですが、昨年出た「一千一秒の日々」(だったかな?)をまだ読んでいないので、近いうちに読みたいです。 (2006/01/17 17:22)
まゆ > EKKOさん、「蹴りたい背中」は私もイマイチ・・・。島本さんは「生まれる森」を読みましたが、そう、「しっくりくる」んですよね。不思議と。「ナラタージュ」すごく読みたいんですが未読です。「一千一秒の日々」は、友人のイチ押しだそうです。これも気になります。 (2006/01/17 21:38)

2004年4月12日 (月)

生まれる森

494「生まれる森」島本理生   講談社   ★★★★

 好きだった人と別れた。そして、父親が誰ともわからない子を堕した。抜け殻のようになっていた「わたし」の時間は、高校時代のクラスメートだったキクちゃん一家と関わるようになって、少しずつ動き出してゆく。

 初・島本理生です。実はすごく気になっていた作家さん。とは言え、若い感性についていけるかしら・・・と、ちょっと尻込みしていたのも事実(笑)
 最初は文章にちょっと違和感を覚えましたが、最初の2、3ページのことでした。あとははまりました。
 いろんな「痛み」を抱えている人たちがそれぞれに関わりあうことで、前に進もうとする・・・そんな物語。ベースは恋愛なのだけれど、恋愛ものという枠でくくってしまうには惜しいような気がします。
 キクちゃんの兄の雪生の言葉が、けっこう効きました。すごくシンプルなんだけど、こんなことを言われたら泣いちゃうなあ、と。
 どこがどう好きなのと聞かれても実はうまく説明できないのですが、すごく大切なものがつまってるような気がする物語です。

たばぞう > 島本さんは、20歳ですが、すごくしっかりした文章を書きますよね。30歳だと言われても、私はうなづいてしまいそう。そのせいか、作者の年齢をあまり意識せずに読めました。私は「リトル・バイ・リトル」が一番好きかもしれません。島本さんがお気に召したら、こちらもいかがですか?。 (2004/04/12 23:12)
まゆ > 最初は「やっぱりダメかも・・・」と思ったのですが、いつのまにかひきこまれるようにして読んでました。島本さんは「少女時代の終わりを書きたかった」と言ってますが、私が経験してきた「少女時代の終わり」を思い出させられるような気もします。「リトル・バイ・リトル」読みたいのですが、図書館にないのですよ。くう~。 (2004/04/13 00:08)
あさこ > 私も彼女の作品は「リトル・バイ・リトル」が一番好きです。この本も静かで淡々としてて、一気に読めてしまいますよね。そこが良かったです。これからの作品が楽しみです。 (2004/04/13 23:52)
まゆ > そうそう、あんまり大げさな書き方をしないで、淡々としているところが好みでした。「リトル・バイ・リトル」、評価高いですね。読みたいなあ。 (2004/04/14 00:36)

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