森見登美彦

2019年3月27日 (水)

熱帯

2877「熱帯」 森見登美彦   文藝春秋   ★★★★

 

「この本を最後まで読んだ人間はいないんです」・・・友人に誘われて行った沈黙読書会で、「私」はかつて最後まで読みきれないまま行方不明になった本『熱帯』を持っている女性と出会う。彼女が『熱帯』について語り始めると、そこに広がった世界は・・・。

 

ブラボー! ブラボー、登美彦氏!!  読み終えた瞬間、私は心の中で喝采を送っていました。

物語とは何なのか。物語を読む楽しみとは。なぜ人は物語を欲するのか。・・・本読みが心に抱えているそんな想いを、物語を書くことで結晶させたのが、この「熱帯」かもしれません。

『千一夜物語』をベースにして、不思議な入れ子構造でめくるめく物語世界がどんどん増殖していくこの感じ。もう理屈でなく、ただただ物語の世界に浸り、それを楽しんだ、芳醇な読書の時間でした。好きだなあ、こういうの。

これ、どのエピソードがどこでどうつながっているのかとか、あれこれ読み解いていくのも楽しそう。もちろん、ただ波間を漂うごとくに流されていてもよいのですけれど。

こんなにワクワクしながら本を読んだのも久しぶりな気がします。

2018年1月 4日 (木)

太陽と乙女

2689「太陽と乙女」 森美登美彦   新潮社   ★★★★

デビューから14年、森美登美彦氏の初のエッセイ大全集。

森美さんの単行本は読破しているのですが、どれだけ読んでも得体の知れない人・・・という印象がありました。これを読んだらその謎が解けました・・・ってことは全くなくて、やっぱり森美さんは謎の人でした。

とはいえ、森美さんのぐるぐるっぷりに、笑いつつもなんだかホッとしたのも事実。やっぱり森美さんも人間だったのか、と。

とにかく全編おもしろいのですが、やはり「太陽の塔」でファンタジーノベル大賞を受賞する前後の話と、初公開の「森美登美彦日記」は必読です。

「ふわふわ」している印象の森美さんですが、どんなふうにして物語を書いていくのか、スランプに陥ったときのことなど、とっても興味深かったです。私はやはり「物語」が好きなので、森美さんの「物語を創る」方法には、「ほお~」と。

そして、やっぱり読んでると笑ってしまって、いい感じに脱力できるのでした。

2017年12月 8日 (金)

ペンギン・ハイウェイ

2674「ペンギン・ハイウェイ」 森美登美彦   角川書店   ★★★★

小学校四年生の「ぼく」は、大人に負けないほといろいろなことを知っているし、いろいろなことを研究している。そんな「ぼく」が今気になるのは、歯科医院の「お姉さん」のこと。そして、「ぼく」の住む町に、ある日突然ペンギンたちが現れて・・・。

森美さんって、奈良県出身だったのですね。京都だと思ってました。

これは、奈良県と思われる「海のない」町を舞台にした、ある少年の物語。賢くて、いろんな知識を吸収し、よく考え、でも人の心の機微にはちょっと疎い少年が遭遇した不思議な出来事と、「お姉さん」の物語。

いつもの森美作品とはちょっと雰囲気が違うかな・・・と思って読み始めましたが、いきなりペンギンが登場して、やっぱり森美ワールドか、と(笑) 

まだ乳歯も抜け替わらない「ぼく」の頭でっかちさと、彼の初恋のせつなさがなんとも言えない味わいで、誰もがいつかどこかで感じた思いと再会するような、そんな物語でした。

2017年6月 3日 (土)

夜行

2587「夜行」 森見登美彦   小学館   ★★★★

10年前の夜、英会話スクールの仲間6人で、「鞍馬の火祭」に出かけた大橋たち。そこで、仲間の一人、長谷川さんは消えてしまった。10年後、5人で再び火祭を訪れた大橋たちは・・・。

久しぶりの森見さんは、今までとは違った幻想世界へ誘ってくれました。

忽然と消えてしまった長谷川さん。10年ぶりに集まった仲間が語る物語。そこに現れる岸田道生という画家の連作「夜行」。奇妙なその銅版画に導かれるように、大橋たちはこの世ならぬ世界を旅する。

今までの森美作品の多くは、主人公の(あるいは作者の)脳内の妄想が爆発するような世界が多く、その熱量もすさまじいものがありました(←ほめてる)。

でも、この作品は、静謐でもの悲しく、ノスタルジーも感じさせる。今までの爆発的な熱を水面下に潜め、淡々と物語が進みます。しかし、はらんだ狂気は少しずつ読者をとらえていき、いつのまにか、自分も「夜行」の世界に囚われたような気分にさせられるのです。

森見さんの新しい一面を見たような気がする物語でした。

2015年8月20日 (木)

四畳半王国見聞録

2345「四畳半王国見聞録」 森見登美彦   新潮社   ★★★

世界は四畳半の内部に存在する・・・壮大なる妄想が、京の都に繰り広げられる!

「四畳半王国建国史」「蝸牛の角」「真夏のブリーフ」「大日本凡人會」「四畳半統括委員会」「グッド・バイ」「四畳半王国開国史」の7編。

題名を見ただけで怪しいです。いつもながらの森見ワールド。いずれも妄想パワー爆発の怪作(?)です。

混沌とした世界の連続で、読んでいるうちに何が何だかわからなくなるのですが(苦笑)、微妙にツボにはまるところがあって、クスッと笑ってしまったり。なんだかんだ言って、くせになるのですよねえ。

学生時代って、アホだったなあと、しみじみしてしまいました(これに登場する人たちほどではないけれど)。

2015年5月 9日 (土)

有頂天家族 二代目の帰朝

2287「有頂天家族 二代目の帰朝」 森見登美彦   幻冬舎   ★★★

天狗の赤玉先生の息子が、イギリスから帰ってきた。確執のある父子だけに、ただではすむまいと、狸たちはざわめく。狸界の名門・下鴨家の三男・矢三郎は、「阿呆の血」を自覚しつつ、人や天狗にちょっかいをかけて日々を謳歌していたが、天狗の親子げんかに巻き込まれ・・・。しかも、狸鍋を食らう金曜倶楽部や、下鴨家の宿敵・夷川家との争いも勃発して・・・。

毛玉物語「有頂天家族」シリーズ第2弾。1作目から7年半ですか? よく続きが出たものです(笑)

さてさて、いとしい毛玉たちは、相変わらずふくふくころころと、阿呆の道を突っ走っております(笑) 今回は、長男・矢一郎が洛中の狸の元締め・偽右衛門襲名なるかという大一番あり、また狸たちの恋の話あり、天狗の親子げんかに弁天が絡んでの大立ち回り、金曜倶楽部と怪しげな幻術師の暗躍、そして、夷川早雲の策略・・・と、分厚い本にふさわしく、内容てんこ盛りです。

あっちこっちと首を突っ込んで回る(そういう羽目に陥る)矢三郎とともに、こちらも振り回されつつ、いつもながらのはちゃめちゃな森見ワールドを堪能いたしました。

そして、恐ろしいことには、巻末に「第三部」予告が! しかも、堂々と「執筆未定」と! 次は何年後になるんでしょうねえ(笑)

2013年9月26日 (木)

聖なる怠け者の冒険

2051「聖なる怠け者の冒険」 森見登美彦   朝日新聞出版   ★★★

朝日新聞連載を、全面改稿したもの。というか、登場人物以外、原型とどめてないじゃないですか(笑)

正直言って、森見作品を連載するなんて、朝日新聞も思い切ったことを・・・と思っていました。だって、森見ワールドは、細切れにして読むと、なんだかよくわからないのですもの。「はあ?」と思うような世界が次々展開し、「なんじゃこれ?」とやや引きつつ読み、そうしていくうちに奇妙な物語の世界にはまってしまう、森見ワールド。ついていけない・・・と思いつつ、読み続けることで、最後の到達点にたどり着けるのです。私見ですが。

ということで、全面改稿。でも、やっぱり京都といえば、森見さんですね。そして、ほかの作品との微妙なリンクも、例によってあります。

祇園祭、特に宵山は、人を酔わせる何かがあるのでしょうか。天下の怠け者・小和田くんと、正義の味方・ぽんぽこ仮面の冒険、楽しかったです。徹底して怠けるのも、悪くないかもと思いますが、それはそれでエネルギー使いそうですねえ。

2012年8月12日 (日)

宵山万華鏡

1903「宵山万華鏡」 森見登美彦   集英社   ★★★★

京都祇園祭の宵山。地元民だけでなく、全国から観光客もこぞってやってくるこの日の賑わいの中で、何かが起こっている。それはまるで万華鏡のように・・・。

久しぶりの森見さん。どうも、私の中では森見登美彦氏と、万城目学氏は、混ざっちゃうのです。時々、どれがどちらの作品だか、混乱します(苦笑)

さて、森見ワールドには、いつもやられちゃうんです。最初はわけのわからない世界が展開して、やや引きながら読むのですが、いつのまにかせつないような哀しいような、独特の世界に連れて行かれてしまって。

今回も、そうでした。連作短編のように紡がれていく物語は、視点人物を変えることで、見える世界がくるくる変化していきます。まるで、万華鏡をのぞいているように。

特に「宵山劇場」、「宵山回廊」「宵山迷宮」のあたりがすごく好きで、一連の物語が「宵山万華鏡」できれいに閉じるのは、さすがでした。

しかし・・・森見さんの妄想ワールドも、いったいどこから湧いてくるんでしょうね。

2011年10月28日 (金)

美女と竹林

1775「美女と竹林」 森見登美彦   光文社   ★★★

作家である森見登美彦氏は、竹林が好きである。同じ職場の鍵屋さんが竹林を所有していると聞き、その竹林の手入れをしようと思い立つ。荒れた竹林にのこぎり片手に突入する登美彦氏を待つものは・・・。

先日、「恋文の技術」を読んだときには、「森見さんが書簡体小説を書くとこうなるのか・・・」と思いましたが、今度は「森見さんがエッセイを書くとこうなるのか・・・」と、呆然としてしまいました。なんなんでしょう、これ・・・。

どこまで本当でどこからフィクションなんだか。ほかの作品の話や、山本周五郎賞受賞、本上まなみさんとの対談など、確実にノンフィクションの部分は疑いようがないのですが・・・。こういう現実に、いつものわけわからん妄想が絡んできて、大変なことに(笑)

個人的にツボだったのは、森見さんが万城目学さんを殴ったくだり(笑) 私の中では双璧なんです、このお二方。奇妙なインナーワールドをもってる作家さんとして。

それにしても・・・本当に女性と竹林の話だけでしたねえ。これを書き続けるのもすごいけど、これを載せる雑誌もすごいと思ってしまいました。

2011年10月19日 (水)

恋文の技術

1770「恋文の技術」 森見登美彦   ポプラ社   ★★★★

大学の研究室から能登の実験所に追いやられた守田一郎は、文通修行を思い立つ。数人と同時進行で手紙のやりとりをするものの、肝心の伊吹さんへの恋文は思うように書けぬまま、守田の妄想はとめどなくひろがっていき・・・。

書簡体小説はさまざまあれど、森見登美彦が書くとこうなっちゃうのか・・・という(笑) これ、人前で読むのは危険すぎます。もうおかしくて、おかしくて。くだらないことこの上ない(ほめ言葉です、この小説に関しては)。

私も手紙は好きで、今もちょこちょこ友人たちに書きますが、守田のは「修行」だけあって、とんでもない量です。同時進行で複数の人間とやりとりするものだから、その相手による「違い」がまず笑いのネタ。そして、守田のしょぼい(笑)生活がまた笑えるし、森見ワールド(妄想世界)も健在。というか、半ばあたりは、人前で読んでたらヤバいでしょう・・・というくらい。

これだけバカバカしくって、くだらないのに、なんだか最後はせつない気分にさせられてしまうあたりが、いつもながらうまいなあ、と(苦笑)

今回も、森見ワールド堪能させていただきました。

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