森見登美彦

2017年6月 3日 (土)

夜行

2587「夜行」 森見登美彦   小学館   ★★★★

10年前の夜、英会話スクールの仲間6人で、「鞍馬の火祭」に出かけた大橋たち。そこで、仲間の一人、長谷川さんは消えてしまった。10年後、5人で再び火祭を訪れた大橋たちは・・・。

久しぶりの森見さんは、今までとは違った幻想世界へ誘ってくれました。

忽然と消えてしまった長谷川さん。10年ぶりに集まった仲間が語る物語。そこに現れる岸田道生という画家の連作「夜行」。奇妙なその銅版画に導かれるように、大橋たちはこの世ならぬ世界を旅する。

今までの森美作品の多くは、主人公の(あるいは作者の)脳内の妄想が爆発するような世界が多く、その熱量もすさまじいものがありました(←ほめてる)。

でも、この作品は、静謐でもの悲しく、ノスタルジーも感じさせる。今までの爆発的な熱を水面下に潜め、淡々と物語が進みます。しかし、はらんだ狂気は少しずつ読者をとらえていき、いつのまにか、自分も「夜行」の世界に囚われたような気分にさせられるのです。

森見さんの新しい一面を見たような気がする物語でした。

2015年8月20日 (木)

四畳半王国見聞録

2345「四畳半王国見聞録」 森見登美彦   新潮社   ★★★

世界は四畳半の内部に存在する・・・壮大なる妄想が、京の都に繰り広げられる!

「四畳半王国建国史」「蝸牛の角」「真夏のブリーフ」「大日本凡人會」「四畳半統括委員会」「グッド・バイ」「四畳半王国開国史」の7編。

題名を見ただけで怪しいです。いつもながらの森見ワールド。いずれも妄想パワー爆発の怪作(?)です。

混沌とした世界の連続で、読んでいるうちに何が何だかわからなくなるのですが(苦笑)、微妙にツボにはまるところがあって、クスッと笑ってしまったり。なんだかんだ言って、くせになるのですよねえ。

学生時代って、アホだったなあと、しみじみしてしまいました(これに登場する人たちほどではないけれど)。

2015年5月 9日 (土)

有頂天家族 二代目の帰朝

2287「有頂天家族 二代目の帰朝」 森見登美彦   幻冬舎   ★★★

天狗の赤玉先生の息子が、イギリスから帰ってきた。確執のある父子だけに、ただではすむまいと、狸たちはざわめく。狸界の名門・下鴨家の三男・矢三郎は、「阿呆の血」を自覚しつつ、人や天狗にちょっかいをかけて日々を謳歌していたが、天狗の親子げんかに巻き込まれ・・・。しかも、狸鍋を食らう金曜倶楽部や、下鴨家の宿敵・夷川家との争いも勃発して・・・。

毛玉物語「有頂天家族」シリーズ第2弾。1作目から7年半ですか? よく続きが出たものです(笑)

さてさて、いとしい毛玉たちは、相変わらずふくふくころころと、阿呆の道を突っ走っております(笑) 今回は、長男・矢一郎が洛中の狸の元締め・偽右衛門襲名なるかという大一番あり、また狸たちの恋の話あり、天狗の親子げんかに弁天が絡んでの大立ち回り、金曜倶楽部と怪しげな幻術師の暗躍、そして、夷川早雲の策略・・・と、分厚い本にふさわしく、内容てんこ盛りです。

あっちこっちと首を突っ込んで回る(そういう羽目に陥る)矢三郎とともに、こちらも振り回されつつ、いつもながらのはちゃめちゃな森見ワールドを堪能いたしました。

そして、恐ろしいことには、巻末に「第三部」予告が! しかも、堂々と「執筆未定」と! 次は何年後になるんでしょうねえ(笑)

2013年9月26日 (木)

聖なる怠け者の冒険

2051「聖なる怠け者の冒険」 森見登美彦   朝日新聞出版   ★★★

朝日新聞連載を、全面改稿したもの。というか、登場人物以外、原型とどめてないじゃないですか(笑)

正直言って、森見作品を連載するなんて、朝日新聞も思い切ったことを・・・と思っていました。だって、森見ワールドは、細切れにして読むと、なんだかよくわからないのですもの。「はあ?」と思うような世界が次々展開し、「なんじゃこれ?」とやや引きつつ読み、そうしていくうちに奇妙な物語の世界にはまってしまう、森見ワールド。ついていけない・・・と思いつつ、読み続けることで、最後の到達点にたどり着けるのです。私見ですが。

ということで、全面改稿。でも、やっぱり京都といえば、森見さんですね。そして、ほかの作品との微妙なリンクも、例によってあります。

祇園祭、特に宵山は、人を酔わせる何かがあるのでしょうか。天下の怠け者・小和田くんと、正義の味方・ぽんぽこ仮面の冒険、楽しかったです。徹底して怠けるのも、悪くないかもと思いますが、それはそれでエネルギー使いそうですねえ。

2012年8月12日 (日)

宵山万華鏡

1903「宵山万華鏡」 森見登美彦   集英社   ★★★★

京都祇園祭の宵山。地元民だけでなく、全国から観光客もこぞってやってくるこの日の賑わいの中で、何かが起こっている。それはまるで万華鏡のように・・・。

久しぶりの森見さん。どうも、私の中では森見登美彦氏と、万城目学氏は、混ざっちゃうのです。時々、どれがどちらの作品だか、混乱します(苦笑)

さて、森見ワールドには、いつもやられちゃうんです。最初はわけのわからない世界が展開して、やや引きながら読むのですが、いつのまにかせつないような哀しいような、独特の世界に連れて行かれてしまって。

今回も、そうでした。連作短編のように紡がれていく物語は、視点人物を変えることで、見える世界がくるくる変化していきます。まるで、万華鏡をのぞいているように。

特に「宵山劇場」、「宵山回廊」「宵山迷宮」のあたりがすごく好きで、一連の物語が「宵山万華鏡」できれいに閉じるのは、さすがでした。

しかし・・・森見さんの妄想ワールドも、いったいどこから湧いてくるんでしょうね。

2011年10月28日 (金)

美女と竹林

1775「美女と竹林」 森見登美彦   光文社   ★★★

作家である森見登美彦氏は、竹林が好きである。同じ職場の鍵屋さんが竹林を所有していると聞き、その竹林の手入れをしようと思い立つ。荒れた竹林にのこぎり片手に突入する登美彦氏を待つものは・・・。

先日、「恋文の技術」を読んだときには、「森見さんが書簡体小説を書くとこうなるのか・・・」と思いましたが、今度は「森見さんがエッセイを書くとこうなるのか・・・」と、呆然としてしまいました。なんなんでしょう、これ・・・。

どこまで本当でどこからフィクションなんだか。ほかの作品の話や、山本周五郎賞受賞、本上まなみさんとの対談など、確実にノンフィクションの部分は疑いようがないのですが・・・。こういう現実に、いつものわけわからん妄想が絡んできて、大変なことに(笑)

個人的にツボだったのは、森見さんが万城目学さんを殴ったくだり(笑) 私の中では双璧なんです、このお二方。奇妙なインナーワールドをもってる作家さんとして。

それにしても・・・本当に女性と竹林の話だけでしたねえ。これを書き続けるのもすごいけど、これを載せる雑誌もすごいと思ってしまいました。

2011年10月19日 (水)

恋文の技術

1770「恋文の技術」 森見登美彦   ポプラ社   ★★★★

大学の研究室から能登の実験所に追いやられた守田一郎は、文通修行を思い立つ。数人と同時進行で手紙のやりとりをするものの、肝心の伊吹さんへの恋文は思うように書けぬまま、守田の妄想はとめどなくひろがっていき・・・。

書簡体小説はさまざまあれど、森見登美彦が書くとこうなっちゃうのか・・・という(笑) これ、人前で読むのは危険すぎます。もうおかしくて、おかしくて。くだらないことこの上ない(ほめ言葉です、この小説に関しては)。

私も手紙は好きで、今もちょこちょこ友人たちに書きますが、守田のは「修行」だけあって、とんでもない量です。同時進行で複数の人間とやりとりするものだから、その相手による「違い」がまず笑いのネタ。そして、守田のしょぼい(笑)生活がまた笑えるし、森見ワールド(妄想世界)も健在。というか、半ばあたりは、人前で読んでたらヤバいでしょう・・・というくらい。

これだけバカバカしくって、くだらないのに、なんだか最後はせつない気分にさせられてしまうあたりが、いつもながらうまいなあ、と(苦笑)

今回も、森見ワールド堪能させていただきました。

2011年7月31日 (日)

夜は短し歩けよ乙女

1734「夜は短し歩けよ乙女」 森見登美彦   角川書店   ★★★★

大学生の私は、同じサークルの後輩「黒髪の乙女」に恋をして、なんとか彼女に近づくべく、さまざまな計略をめぐらす。しかし、ことごとく奇妙な人たちや奇妙な出来事に巻き込まれ、事態は思わぬ方向に。そして、私の思惑などまったく知らぬ乙女は、今日もおもしろい出来事を求めて、世界を闊歩するのだった。

馬鹿馬鹿しい・・・けど、なんでこんなにおもしろいのか。

久々に森見ワールドに帰ってきました。これ、ずっと読みたかったのですが、図書館でもなかなか借りられなくて。で、読む機会を逃しまくっているうちに、すっかり森見作品から離れてしまっていました。今回、たまたま図書館で発見。本当に久しぶりに森見ワールドにはまりました。

とにかく、「バッカじゃないの」「く、くだらない・・・」の連続(笑) どうしてこんなのを大真面目に書けるの~と思わずにいられません。すべての登場人物が変。主人公である「私」も、「彼女」も、変。変なんだけど、妙なところでツボを押さえていて、ちゃんと青春恋愛小説になってしまっているところが怖い、です。あの『太陽の塔』ですっかり魅了された森見ワールド。それにはまってしまえる自分が怖いと思ってしまいます(苦笑)

「妄想と現実がごっちゃになってしまう」というセリフがありましたが、恋をしてるときって、誰しもそんなものかもしれませんね。荒唐無稽な話なんだけど、どうにも惹かれるのは、そういう共感ポイントのせいかもしれないです。「私」が彼女に認識してもらおうと考えるあの手この手(それ、一つ間違えればストーカー)のくだらなさ、恥ずかしさ。でも、そうやって遠回りしていきたくなる気持ちもわかるような・・・。

いやいや、とにかく楽しみました。未読の森見作品たまってるので、少しずつ読んでいきます。

2008年5月 9日 (金)

四畳半神話大系

1292「四畳半神話大系」森見登美彦   角川文庫   ★★★

 大学三回生の春まで、ばら色のキャンパスライフとは縁遠い生活を送ってきた。二年前の春、もしあのサークルを選んでいなかったら、私は悪友の小津と知り合うこともなく、幸せな生活を送れていたのではないか・・・?四つのパラレルワールドがおりなす、森見流青春ストーリー。

 「太陽の塔」に続く第2作。「夜は短し~」のヒットに伴い、最近文庫化されました。

 「太陽の塔」を読んだときは、「なんじゃこれ」と思いつつ、そのおもしろさにはまったのですが、当時は森見作品がこんなに市民権を得るとは思いませんでした。だって、妄想に次妄想なんだもん。

 この「四畳半~」もまた、妄想ワールドです。大学入学当時に心惹かれた四つのサークル(いずれもちょっとあやしい・・・)。その四つそれぞれを選んだ場合の学生生活が、一話ごとにパラレルワールドとして描かれます。似て非なる世界が展開するわりには、基本的な流れは同じだったり。大差ないけど、微妙に違う世界が四つ描かれるわけで、読んでいるうちにこっちの頭の中までおかしくなってきます。

 というか、書いてておかしくならないんでしょうかね。「太陽の塔」に負けず劣らずの「奇書」だと思うのですが(苦笑)

2008年3月20日 (木)

【新釈】走れメロス 他四篇

1273「【新釈】走れメロス 他四篇」森見登美彦   祥伝社   ★★★

 芽野史郎は激怒した・・・友との約束を「守らない」ために奔走する芽野。きっと芽野は来ないと確信する芹名。京都に生息するどうしようもない学生たちの物語。

 「山月記」「藪の中」「走れメロス」「桜の森の満開の下」「百物語」の5篇を収録。いずれも文学史上に燦然と輝く名作のパロディ。

 京都を舞台にした、大学生もの。これでもかと繰り広げられる森見ワールド。特にも「走れメロス」は、その馬鹿馬鹿しさにおいて、森見ワールドの真骨頂。読んでいて、「やれやれ・・・」という気分になるのですが、つい読んでしまうんですよね。

 5篇が微妙にリンクしているのも楽しいです。

 すごいと思ったのは、それぞれが原作の文体やムードを忠実になぞっていること。こんなふうに書き分けられるなんて、さすがです。

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