光原百合

2008年4月 9日 (水)

星月夜の夢がたり

1280「星月夜の夢がたり」光原百合 鯰江光二・絵   文春文庫   ★★★

 「外の世界にどれほど嵐が吹き荒れていようとも、ここには静かな世界がある」・・・遠い思い出、せつない恋、おとぎ話のその後。32篇の物語の宝石箱。

 読んでいて気恥ずかしくなるほどピュアな物語に、とても美しいイラストがついた「絵本」。「星夜の章」「月夜の章」「夢夜の章」の三章で構成されています。光原百合さんのもつ特性が強く出た作品と言えるかもしれません。

 あとがきでは、光原さんはこの作品群を「メルヘン」と定義しています。メルヘンとは、「辛く苦しい現実と対峙していくときの支えとなる、遠く高くにある美しい世界を描き出すためのもの」だそうです。それがストレートに結晶したのが、最終話「遥か彼方、星の生まれるところ」です。

 一つ一つの話は非常に短いので、あっという間に読めてしまいますが、少しずつ丁寧に読みたい本です。イラストがまた本当にきれいなので、それを眺めてるのも楽しい。

 32の話の中で、一番好きなのは「海から来るモクリコクリ」かな。ちょっともの悲しい物語ですが。「エンゲージリング」「いつもの二人」「目覚めの時」も好きでした。

 

2007年11月21日 (水)

最後の願い

1214「最後の願い」光原百合   光文社文庫   ★★★

 劇団立ち上げに奔走する度会恭平とその仲間たちが、行く先々で出会う謎・・・。彼らが解き明かした、人の心の不思議とは。

 「劇団φ」立ち上げと、ミステリとが絡み合った連作短編。「φ」の代表の度会恭平と、彼がスカウトするメンバーとがさまざまな謎を解いていくという構成。徐々に劇団のメンバーもそろっていき、最後は旗揚げ公演の幕があがります。

 ミステリ好きで、演劇好きな私のストライクゾーンど真ん中、でした。評価は、ほんとは★3.5って感じです。好みの話のわりに、ちょいと評価が辛いのは、あまりにもどのキャラもかっこよすぎて、リアリティがなさすぎるように感じしまったから、です。

 連作短編という構成も好きなのですが、伏線の張り方がもう一つかなあ、と。もうちょっと意外性がほしかったかも。

 ただ、基本的に、人が集まって、何かを創ろうとするその過程が大好きなので、「φ」が立ち上がっていくのを楽しんで読みました。役者サイドだけでなく、制作や脚本、美術・・・そういう部分が描かれているのも楽しかったです。

2006年7月29日 (土)

時計を忘れて森へいこう

1001「時計を忘れて森へいこう」光原百合   創元推理文庫   ★★★★

 清海に越してきた高校生・若杉翠は、森で時計を捜している時、自然解説指導員の深森護さんと出会った。優しく穏やかな護さんは、実は人の目には見えない物語を織り上げる達人だった。

 待望の文庫化。どうしてこんなに文庫落ちに時間がかかったのでしょう。首を長くして待っていましたよ。
 さて、主人公は高校生の翠。お父さんは大学で教えているけど、翠自身は勉強は低空飛行。周りから見るとのんびりしていて楽天的な、そんな女の子。
 翠はひょんなことから出会った護さんに導かれて森に親しみ、護さんに強く惹かれていくのです。
 女子高生が主人公とはいえ、翠の護さんへの思いがあまりにストレートで、こっちが恥ずかしくなってしまいます(笑)ただ、それは嫌悪感というより、ああ、こんなふうにまっすぐに人を好きになれた時代もあったなあ、という・・・。でも、翠ちゃん、あまりにもバレバレですよ(笑)ただ、翠はそれでよいのですよね。隠すとか、気を引くとか、そんな駆け引きは必要ないんだから。
 話は、人の心の謎を護さんが解き明かしていくという構成。誰にも見えていなかった当事者の「物語」を、護さんが「語り部」として解き明かし、人の心を解きほぐす。手放しのハッピーエンドではないけれど、ほんの少し、誰かが救われていく。その辺がとてもいい感じです。
 日常の謎系ミステリですが、解き明かされるのは人の心、生と死に関わるもので、ちょっと痛いです。それでも、全編を流れる雰囲気が、静かで、優しく、あたたかい。そして、ものすごく純粋。まっすぐ。読んでいると照れくさいような気もするけれど、こういうものを鼻で笑ってしまうようになったら、自分はおしまいだなあと思います。護さんや翠のまっすぐな瞳に、向き合える自分でありたいと思うのです。

ケイ > こんにちは。素敵なタイトルの本ですね。それにおもしろそう。こういう本って、確かに大人になると忘れがちかも。十代の子の不思議な感覚って、遠いのかしら。。
まゆさん、千冊おめでとうございます。。これからも読書を楽しみに。。またおじゃましますね。 (2006/07/29 13:35)
まゆ > ケイさん、ありがとうございます。この本は、いちおうミステリですが、森へ行きたい気分になったとき読むとよいですよ。実際に取材をされて書かれた森の様子が素敵です。 (2006/07/30 19:29)

2004年6月16日 (水)

十八の夏

535「十八の夏」光原百合   双葉文庫   ★★★★

 信也が彼女に出会ったのは、18歳の春だった。魅力的な彼女に心ひかれるものの、彼女には信也が立ち入れない何かがあった。それが明らかになった時、信也は・・・。

 待望の文庫化です。
 推理作家協会賞受賞作の「十八の夏」ほか、「ささやかな奇跡」「兄貴の純情」「イノセント・デイズ」を収録。
 前作「遠い約束」もかなり好きでしたが、これもまたよかったです。
 表題作もせつなさ感がなかなかですが、いちばん好きだったのは妻に先立たれた男の恋を描く「ささやかな奇跡」でした。これは読んでいてすごくホッとしました。
 それから「兄貴の純情」の、ちょっとエキセントリックなお兄さんは、いい味出してました。
 全体的に、結末に救いがあって、読んでいて心がほんわかするような物語が多かったです(「イノセント~」はちょっと重かったけど)。

ココ > 私も好きです~。だいぶ忘れていますが、まゆさんの日記を読んでいて、なんとなく思い出してきました。「ささやかな奇跡」はいいですよね。それに「兄貴」もとてもいいキャラでした。あ~読みたくなってきました! (2004/06/17 09:45)
さくら > あ~全然気づかなかった・・私もずっと文庫化されるの楽しみにしてました!早速購入します~ (2004/06/17 17:27)
EKKO > いいですよね~、光原さん。私も「ささやかな奇跡」は感動しました。そういえば「時計を忘れて森へ行こう」はまだ文庫化されてないですよね?光原さんの作品はどれも温かくてとても好きです。 (2004/06/17 21:42)
イギー > こんにちわ!光原さんの本はいつも「読みたい」と思いつつ、まだ読んでません・・。でもこの感想を伺って絶対に読もうと思いました。 (2004/06/18 10:15)
まゆ > ココさん、「ささやかな奇跡」はとっても好きです。ハッピーエンドになるとこも。
さくらさん、私も本屋で偶然見つけました。速攻でゲットしましたよ~。
EKKOさん、「時計を~」は文庫化されてないんですよね。なんでだろう?ずっと待ってるんですけどね。
イギーさん、光原さんいいですよ。読むとやさいい気持ちになれます。ぜひどうぞ。 (2004/06/18 21:05)

2003年8月28日 (木)

遠い約束

315「遠い約束」光原百合   創元推理文庫   ★★★★

「好きなもののために意地を張るのはいい、でも好きなものに対して意地を張るのは、やめたほうがいい」

 浪速大学に入学した桜子は、念願のミステリ研に入部し、個性的な三人の先輩と出会う。ミステリ研の「頭脳」の若尾、「良識」の清水、そして「筋肉」の黒田。一流の名探偵(?)でもある彼らと共に、桜子は亡き大叔父が託したメッセージを読み解いてゆく。

 「なんだいミステリ研」の活躍を描く連作短編。再読です。
 なんといっても、三人の先輩たちが絶妙です。ヨーロッパ貴族のような若尾に、日本の公達のような清水、西部開拓農民の黒田・・・この取り合わせと掛け合いが最高です。ちなみに私はやんちゃな黒田君がお気に入り。
 それから、数々の事件を通して、桜子が「ものを書く」ことに向き合っていく過程というのがすごく好きです。
 事件そのものも「日常の謎」系なのですが、それを通して桜子がいろんな人の思いにふれていきます。そういうところがとってもいいなあと。
 表紙カバーが野間美由紀さんだったので購入しちゃったのですが、アタリでした。

さくら > 野間美由紀さんの絵がもうすっかり頭の中でイメージ定着しちゃいました。 (2003/08/29 09:24)
ココ > 読みたいと思っていたのにスッカリ忘れていました!まゆさんのおかげで思い出しました。明日、図書館へ行くので探してみます。 (2003/08/29 10:33)
EKKO > 再読されたのですね。3人の先輩たちのチームワーク(?)が最高でした。♪光原さんの作品は心が温まるのでどれも大好きです。 (2003/08/29 12:56)
まゆ > さくらさん、私もです~。とっても「らしい」絵で、ぴったりですよね。
ココさん、これ良いですよ~。感想楽しみにしてます。
EKKOさん、3人の役割分担がいいですよね。光原さんのは残念ながらこれしか読んだことがないのです。ほかのも文庫落ちしてくれないかなあ。 (2003/08/29 23:33)

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