北森鴻

2017年3月10日 (金)

狂乱廿四孝/双蝶闇草子

2547「狂乱廿四孝/双蝶闇草子」 北森鴻   創元推理文庫   ★★★

江戸から明治への過渡期に花咲いた名女形・澤村田之助。病で四肢を失いながらも舞台に立とうとする彼の周りで起こる血なまぐさい事件とは。

「狂乱廿四孝(きょうらんにじゅうしこう」は、以前に文庫化されたときに読みました。これで田之助のことを初めて知ったのでした。久しぶりの再読でしたが、全く覚えてませんでした(苦笑)

「双蝶闇草子(ふたつちょうやみぞうし)」は、「狂乱廿四孝」のその後の物語で、連載中に作者が急死したため、未完です。未完のミステリをよくぞまあ文庫に・・・と思いましたが。これからおもしろくなりそう!というところで終ってしまっているのが残念です。

これらは、絵師・河鍋暁斎をキーパーソンにした三部作になる予定だったとのこと。つくづく、それを読みたかったです。

2017年2月19日 (日)

うさぎ幻化行

2538「うさぎ幻化行」 北森鴻   創元推理文庫   ★★★

義兄の圭一が、飛行機事故で死んだ。リツ子を「うさぎ」と呼んでいた優しい義兄が遺したのは、「うさぎ」あての手紙と、「音のメッセージ」。その音は、日本の音風景百選の一部だったが、奇妙な仕掛けがほどこされていて、リツ子はその謎を解こうとするが・・・。

「音」を題材にしたミステリ。裏表紙のあらすじを読んだときには、もう少し甘めの物語を想像していたのですが、予想よりハードでした。

話が思ったより入り組んでいて、最後まで読んだ後は、「ん?じゃあ、あれってどういうこと?」となったりしました。ミステリとしてもすっきり謎解きという感じではなく、読者が察してくださいという雰囲気だったし。

なんともやりきれない物語でもありました。読み終えて表紙のイラストを見ると、なんとも言えない気分になりました。

北森さんが亡くなってもう9年が過ぎたのですね。未読の作品もあるので、大切に読んでいきたいと思います。

2015年8月 9日 (日)

天鬼越 蓮丈那智フィールドファイルⅤ

2339「天鬼越 蓮丈那智フィールドファイルⅤ」 北森鴻 浅野里沙子   新潮社   ★★★

在野の民俗学者・賀川からの依頼で、某県にある「天鬼年代記」について調べにきた蓮丈那智たち。その小さな村で、殺人事件が立て続けに起こり・・・。

蓮丈那智シリーズの短編集。「鬼無里」「奇偶論」「祀人形」「補堕落」「天鬼越」「偽蜃絵」の6編。最初の2編は、北森鴻さんが書いたもの。「天鬼越」はテレビ用に北森さんが書いたプロットをもとに、公私ともにパートナーだった浅野さんが小説化したもの。ほかの3編は、浅野さんの手になるもの、だそうです。

蓮丈那智シリーズは「邪馬台」で終わりだと思っていたので、この本が出たのは望外の喜びでした。北森さんが遺した短編を、何とか世に出そうという編集者の執念だったようです。

那智と三國が遭遇する、決して表に出せない裏のフィールドワークとなる事件の数々。民俗学というアプローチで描かれる独特のミステリは、今回もおもしろかったです。

これで本当に終わりなんでしょうね。つくづく、北森さんの急逝が惜しまれます。

2014年9月27日 (土)

深淵のガランス

2177「深淵のガランス」 北森鴻   文春文庫   ★★★★

銀座の花師・佐月恭壱。彼にはもう一つ、絵画修復師という顔があった。彼のもとにもたらされるのは、なぜかいわくありげな依頼が・・・。

表題作のほか、「血色夢」「凍月」を収録。

ずいぶん前に買ったのに、なぜかその気になれず、積読していました。読んでみたら、やっぱり北森さんらしいたくらみに満ちた世界を、堪能できました。

主人公の佐月というのが、どうにも正体不明。父との確執とはいったいなんだったのか、どうして二足のわらじをはくことになったのか、女狐さんことパートナーとはどういう関係なのか・・・謎をたくさん抱えている彼は、とっても魅力的なのです。

絵画の修復にはとっても興味があるので、ぜひともこの続きを読みたいのですが・・・もうそれがかなわぬことなのが、とても残念です。神のごとき佐月のお手並みを、もっと拝見したかったものです。

2014年4月25日 (金)

邪馬台 蓮丈那智フィールドファイルⅣ

2113「邪馬台 蓮丈那智フィールドファイルⅣ」 北森鴻 浅野里沙子   新潮文庫   ★★★★

異端の民俗学者・蓮丈那智のもとに届けられた「阿久仁村遺聞」。明治時代に消えた村の歴史を語るその本が、那智とその助手・内藤三國たちを歴史の闇へと誘っていく・・・。

北森鴻の急死で、連載の途中で止まってしまった「鏡連殺」。それを、北森さんの公私にわたるパートナーであった作家・浅野里沙子が完成させた作品です。

シリーズの4作目は、長編。しかも、テーマが邪馬台国ということで、いつになくメジャーな・・・と思っていたら、出だしは内藤三國による「廃村の民俗学」。このマイナー感がいかにも異端の民俗学っぽくていいなあと思っていたら、那智先生自らが邪馬台国をテーマ設定してしまうじゃないですか。でも、おもしろかったです。

「邪馬台国はどこにあったのか」ではなく、「邪馬台国とは何だったのか」。なかなか魅力的な謎解きでした。とはいえ、記紀(特に日本書紀)はわからないことが多いので、苦戦しましたけれど。こうの史代「ぼおるぺん古事記」のおかげで、神代編だけはなんとなくわかりましたが・・・。神功皇后のあたりになると、アヤシイ。

蓮丈那智と内藤三國のコンビはもちろんのこと、新しく加わった助手の佐江由美子、さらに冬狐堂こと宇佐見陶子、雅蘭堂店主・越名集治も登場して、オールスターキャストっぽくなっています。陶子も越名もゲストではなく、それぞれ事件に深くかかわる役どころ。

そもそも、この事件そのものが冬狐堂シリーズの「狐闇」の続編のような設定なので・・・シリーズまたがって続編ってどうよ?と思うのですが(苦笑)

正直、北森さんが最後まで書いていたら、どんなラストになったのだろうと思わないでもなかったです。でもまあ、これはこれで。那智先生たちがちゃんと世に出られただけでも良しとしないと。たぶん、浅野さんがこれを書くのは、すごくしんどかったと思うのですが・・・こうして形にしてくれたことに、感謝します。

ただ、これが正真正銘のラストなのだと思うと、さびしい限りです。もっと那智と三國の活躍を読みたかったなあ。

2011年4月20日 (水)

香菜里屋を知っていますか

1685「香菜里屋を知っていますか」北森鴻   講談社文庫   ★★★★★

三軒茶屋にあるビアバー・香菜里屋。そこに持ち込まれる謎は、マスター工藤哲也によって、いつのまにか解き明かされてしまう。工藤の推理とおいしい料理に魅せられた常連客たちが、それぞれに人生の岐路を迎える頃・・・香菜里屋は突然閉店。やがて、姿を消した工藤の過去が明らかになり・・・。

とうとう、香菜里屋シリーズ最終巻も文庫化されました。

前作あたりから、マスターの過去がなんとなく見えてきて、最終巻ではそれが明かされるのだろうなという予感はありました。が、まさかこういう展開をするとは思っていませんでした。それぞれの常連客たちの、新たな人生の出発。同時に、店をたたんでしまう工藤。その「謎」が明らかにされる最終話は、北森ミステリならではの趣向でした。

こうしてみると、きちんと幕引きされたこの「香菜里屋シリーズ」は幸運でした。北森作品のほかの登場人物たちは、このまま時間が止まってしまうのですね。北森さんの突然の訃報のショックも思いだしたりして、この最終話は読みながらちょっとウルウルしてしまいました。

それにしても、相変わらず工藤のつくる料理のおいしそうなこと! これを読んでいると、おいしい料理とお酒が無性にほしくなります。香菜里屋を探しに行きたくなってしまう・・・。

できることなら、もっとこの物語を読み続けたかったですが・・・つくづく、残念です。

2010年10月28日 (木)

なぜ絵版師に頼まなかったのか

1601「なぜ絵版師に頼まなかったのか」北森鴻   光文社文庫   ★★★

明治元年生まれの葛城冬馬は、13歳で東京大學医学部教授ベルツ先生の給仕として働くことになった。日本をこよなく愛するベルツ先生の雇用条件は髷を結い続けること。天涯孤独の身ゆえ、仕方なくその条件を飲んだ冬馬だったが、どうもベルツ先生の周りには奇妙な人と事件が集まるようで・・・。

北森鴻さんが急逝したのが今年の1月。今でも信じられない気持ちでいっぱいです。その北森さんが書き遺した歴史ミステリの連作短編。

主人公は松山出身の冬馬ですが、ベルツ先生はじめ、実在の人物がたくさん登場します。そして、冬馬の謎解きを援助する元旗本の新聞記者・市川歌之丞は、一話ごとにその名前と職業をどんどん変えていくといういかがわしさ。彼らが遭遇する事件の謎を解いていく過程で、明治という時代の危うさが徐々に浮き彫りになっていきます。

最終話では冬馬は22歳になっています。これは、大日本帝国憲法が発布された年。そして、日本が不平等条約改正に向けて本格的に動き出し、同時に外国との戦争を現実のものとして想定し始めた時期です。第1話では軽妙な雰囲気で始まったこの物語は、最後には暗雲垂れ込める日本の空気を暗示して終わります。

残念なのは、もっと続きが書けそうな終わり方なのに・・・ということです。冬馬と歌之丞とベルツ先生たちの話をもっと読みたかったです。

なお、ミステリ好きには言わでもがなですが、それぞれの短篇のタイトルは有名ミステリのパロディです。本格ミステリを愛し続けた北森さんらしい遊びですね。

2008年2月22日 (金)

写楽・考 蓮丈那智フィールドファイルⅢ

1262「写楽・考 蓮丈那智フィールドファイルⅢ」北森鴻   新潮文庫   ★★★

 大胆な説を唱える論文が発表されて、内藤三國は衝撃を受ける。これを書いたのは、異端の民俗学者・蓮丈那智ではないか。しかし、それは意外な人物の手になるものだった。そして、那智と三國は殺人事件に巻き込まれ・・・。

 蓮丈那智シリーズ、3作目です。表題作を含む4編を収録。

 民俗学をベースに、那智先生のフィールド・ワークとその過程で起こる事件を描くシリーズも、すっかり定着してきました。蓮丈研究室に入った由美子が三國と行動を共にするのと、教務部の「狐目の男」がとうとう正体(?)をあらわすのが目新しいところでしょうか。

 民俗学と事件と、双方向からの謎解きが同時に進むので、頭がスッキリしていないとついていけなくなります。今の私のコンディションにはちょっとつらいものが(苦笑)

 それでも、那智と三國のかけあいや、民俗学の話のおもしろさは堪能しました。冬狐堂・宇佐見陶子がゲスト出演して活躍してくれるのもうれしかったです。

 それにしても、こういうミステリを考えつくことがすごいと思うのですよね。北森さんの頭の中ってどうなっているのかしら・・・。

2008年1月14日 (月)

瑠璃の契り 旗師・冬狐堂

1239「瑠璃の契り 旗師・冬狐堂」北森鴻   文春文庫   ★★★★

 店を持たずに骨董をあつかう旗師・宇佐見陶子。彼女がたまたま見かけた切子の皿に、親友のカメラマン硝子が妙な反応を見せた。陶子は切子の来歴を調べ始める。

 冬狐堂シリーズ短編集第2弾です。4つの短編が収められています。今回はよりいっそう陶子の内面に迫る話が多かったです。表題作の「瑠璃の契り」は硝子の話でしたが・・・。

 「倣雛心中」では、目を悪くした陶子の葛藤。「苦い狐」では、学生時代の陶子の精神的な挫折。そして、「黒髪のクピド」では、元夫のプロフェッサーDが登場!陶子とのなれそめも語られます。陶子ファンとしては、なかなかおいしい一冊でした。

 相変わらず他作品とのリンクも。「孔雀狂詩曲」の雅蘭堂の越名は、もはや冬狐堂シリーズに欠かせない存在ですし、「香菜里屋」らしいバーも出てきます。「知り合いの民俗学者」なんて言葉がサラッと出てきて、蓮杖那智を知る人はニヤリとするでしょう。それから、なんと言っても「親不孝通りディテクティヴ」のキュータ!! 博多でテッキが残した屋台を引き継いでいるキュータが登場、活躍します。キュータと越名は何か関わりがあるらしい・・・。

 もちろん、古美術をからめたミステリとしての質も高いです。堪能しました。

2007年9月22日 (土)

蛍坂

1180「蛍坂」北森鴻   講談社文庫   ★★★★

 三軒茶屋のビアバー「香菜里屋」。四種類の度数の異なるビールと、マスターの作る肴がうまいこの店に、今日も常連が集う。彼らが持ち込む「謎」を、マスターの工藤が解き明かしてくれる・・・。

 
「香菜里屋」シリーズ第3弾。今日、書店で買ってきて、速攻で読みました。
 大好きです、このシリーズ。まず、ビールがおいしそうだし(酒好きにはたまりませんね)、出てくる食べ物がそれ以上においしそう(食いしん坊にはたまりません)。そして、店の温かくて包み込むような雰囲気が、とっても好き。物語の中なのに、自分がその場にいるような気になってしまいます。
 そのくせ、事件はいつもやりきれないような後味のものが多くて。そのアンバランスさが、かえって印象に残るのです。
 今回は表題作「蛍坂」がやっぱりそうでしたが、それなりに救いもあり、ほっとしました。「双貌」は、このシリーズにはめずらしくトリッキーな感じの構成でしたが、最後の最後がとってもあたたかくて・・・。それから、巻末の「孤拳」はせつなくて、うるうるしてしまいました。ついでに、芋焼酎を飲み始めてしまいました(苦笑)

 解説によると、このシリーズ、次巻ではマスターの工藤の秘密(?)が明らかになるそうです。なんとも楽しみです。

さくら > 早いですね!私も買ってはありますがまだ手をつけてないです。う~~ん・・今回もビールを片手に読んだほうがよさそうですね! (2007/09/24 08:26)
まゆ > さくらさんならきっと手に入れていると思ってましたよ。ビールも必要ですが、芋焼酎の話なんかも出てきますよ~。それからやっぱり、工藤の料理はとってもおいしそうでした。私も食べたい・・・。 (2007/09/24 17:13)

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