高橋克彦

2016年7月10日 (日)

石の記憶

2450「石の記憶」 高橋克彦   文春文庫   ★★★

火明継比古(ほあかりつぐひこ)という変わった力をもった人物と出会い、私はその土地がもつ記憶を見ることができるようになった。そうして見えた太古の記憶とは。

文春文庫だし、「~の記憶」だし、あの「記憶」シリーズの続きかななんて思ったら、全然違いました。

表題作以外は、ホラー短編系のものが8編。やはり後味がよい「花火」がよかったです。

「石の記憶」は、本来シリーズもの「日本繚乱」の第1話として書かれたものだそうです。47都道府県を舞台にして、それぞれの土地の記憶を物語にしようというアイディアで書き始めたもの。しかし、掲載誌の休刊で、第2話の途中でストップ。ゆえに、物語として成立したのは、秋田県を舞台にした第1話のみ。

よくぞこれを世に出してくださいました、という感じです。大湯のストーンサークルの「記憶」をたどる物語は、いかにも高橋さんらしい展開をたどりますが、大地震や津波、火山の噴火などを経験した今の私たちには、この切迫感は非常にリアルに伝わってきます。

できれば、47都道府県、全部めぐってほしかったですねえ。高橋さんのライフワークともなったでしょうに。残念です。

2014年8月26日 (火)

ジャーニー・ボーイ

2167「ジャーニー・ボーイ」 高橋克彦   朝日新聞出版   ★★★

明治11年。イザベラ・バードという英国人女性が日本の奥地を旅行したいと希望し、その通訳兼護衛として、伊藤鶴吉という青年が選ばれる。真実の日本の姿を見たいというバードの自由な魂に伊藤は惹かれるが、バードの命を狙う魔の手がせまり・・・。

先日、新幹線に乗った際、車内誌でこの本の存在を知りました。高橋克彦を読むのは久しぶりです。

イザベラ・バードの「日本奥地紀行」はずっと気になっている一冊で、いつかは読もうと思っています。そのバードの旅(日光から新潟まで)を、随行した伊藤鶴吉の視点で描く時代エンタテイメント。

少々話ができすぎなところもありますが、明治初期の混沌とした時代ならではの空気が堪能できます。

やっぱり、「日本奥地紀行」は読まねば!です。

2008年1月29日 (火)

楽園にようこそ

1250「楽園にようこそ」高橋克彦   NHK出版   ★★★

 大河ドラマ「炎立つ」以来ライフワークになった蝦夷の物語。愛してやまない東北のこと。ふるさと・盛岡。さまざまな人たちとの出会い。・・・還暦を迎えた高橋克彦が今までさまざまな媒体に発表したものを集めたエッセイ集。

 思えば、「写楽殺人事件」を読み衝撃を受けたのは学生時代。20年も前のことです。岩手在住の作家ということで、一方的な親近感を抱き、作品を読み続けました。

 ミステリ、ホラー、SF伝奇、そして東北を舞台に蝦夷を描いた時代もの。どのジャンルも私を夢中にさせてくれました。特にも、「炎立つ」に始まる蝦夷ものには、どれだけ泣かされ、感動させられたかわかりません。

 その「炎立つ」を書くまで、安倍氏のことはろくに知らなかったばかりか、藤原四代の名もろくに言えなかった・・・というくだりを読んで、「うそでしょう!?」と、声をあげてしまいました。そんな人が、あんなすばらしい人間ドラマを書いちゃうんだ・・・と。史料を読みこなす力量と、そこから物語を紡ぎだす「物書き」のすごさを感じました。

 高橋克彦ファンとしては、非常に興味深いエッセイです。読んでいると、高橋克彦の根っこが見えてきます。

 杉浦日向子さんへの追悼文も収録されています。そういえば、高橋さんは親しかったんでした・・・。なんだかせつなかったです。

2007年2月23日 (金)

完四郎広目手控 いじん幽霊

1083「完四郎広目手控 いじん幽霊」高橋克彦   集英社文庫   ★★★

 旗本の子で、名にしおう剣豪でありなが武士を捨て、広目屋稼業に精を出す香冶完四郎。仮名垣魯文とともに、開港まもない横浜で、数々の難事件に挑む。

 幕末ミステリも3作目。初めは江戸、2作目は東海道が舞台でしたが、今回は横浜。政情不安な中、外国人たちが暮らす街で起こる不可解な事件を、完四郎と魯文のコンビが解き明かします。
 例によって浮世絵が挿絵として用いられていて、それを見るのも楽しいです(ただ、文庫だと、絵は見づらいですね・・・)。
 ミステリとしておもしろかったのは、「筆合戦」。外国の新聞に興味をもった完四郎たちの前に、岸田吟香(のちに「新聞の父」と呼ばれた新聞記者)が現れ、どちらが新聞にふさわしい記事を発掘し、書けるかの勝負をすることに。その記事がめぐりめぐって、ある真実を浮かび上がらせて・・・という次第。
 歴史ミステリは高橋さん御得意の分野なので、安心して読めますが、完四郎の先行きがどうなるのか、ちょっと不安なのでした。

2006年4月15日 (土)

おこう紅絵暦

965「おこう紅絵暦」高橋克彦   文春文庫   ★★★

 十二歳の花売り娘が人殺しの疑いで捕らえられた。吟味方筆頭与力の妻でもと芸者のおこうと、舅の左門が、事件の謎に挑む。

 パソコンが壊れて、しばらくネットから遠ざかっていました。やっと復帰です。またよろしくお願いします。
 しかし、休んでいる間も、ほとんど本を読んでいません。仕事に追われて、家でもひたすらお仕事・・・。ここまで追い詰められたのは何年ぶりだろう。
 
 さて、数少ない読了本は、「だましゑ歌麿」の姉妹編とも言える捕物帖。時代物を書くのに手慣れた高橋さんの文章は安心して読めるし、主人公のおこうのキャラがなんとも魅力的で、おもしろかったです。
 事件はやりきれないものもありますが、よき妻でありながらも、元芸者の気風のよさが身上のおこうに救われます。
 今回は脇役になっていますが、夫の一之進がかっこいいんだなあ(笑)

2005年12月27日 (火)

総門谷R 阿黒篇

914「総門谷R 阿黒篇」高橋克彦   講談社   ★★★★

 平安京ができて間もないころ。陸奥では蝦夷との戦いが続いていた。誰もが気づかぬまま、世は阿黒王こと総門と屍魔たちの手に落ちようとしていた。
 その企みを阻止するべく、和気諒と、坂上田村麻呂の配下・久遠縄人、空海の三人が立ち上がった。蝦夷の長・跡呂井と手を結んだ彼らは、阿黒王を追いつめるが・・・。

 先日、「白骨篇」を読みましたが、正直言って忘れてることが多かったので、まず第一話を再読。ああ、そうそう、そうだったねえ~と思いながら。
 まず現代を舞台にした「総門谷」があって、この「R」は、一気に時代を遡って物語がリスタート。今、ようやく中盤まで進んできたところですね。「R」の意味は、最終巻まで読めばわかるらしい(って、いつの話だ~!)
 これ、初読の時にはボロボロ泣いたのですが・・・。どこでそんなに泣けたんだっけ?と思ったら、諒たちが現代に生まれ変わっても、また仲間としてめぐり合い、闘い続けているという絆にめちゃくちゃ感動したのでした。でも、今回はもうわかっているので、泣けませんでした(苦笑)
 ラストは「ええっ!」って茫然としてしまったものですが、こちらは今は続きを知っているので、安心して読み終えました。
 それにしても、聖徳太子とかキリストとか、屍魔として登場させちゃっていいんでしょうか・・・。

2005年12月11日 (日)

総門谷R 白骨篇

905「総門谷R 白骨篇」高橋克彦   講談社文庫   ★★★

 恐山で怨魔・シバを倒した和気諒と久遠縄人、空海。しかし、戦いはまだ終わっていなかった。
 怨魔王の力によって、シバは白骨女として復活。死んだはずの少年僧・聆雲も、魔童児となって甦った。総門谷のある早池峰山をめざす諒たちの前に、聆雲たちが立ちはだかる。かつての仲間と闘うことにとまどう諒たちだったが・・・。

 もはや高橋克彦のライフワークと言うべきシリーズ「総門谷」。岩手の早池峰山の地下帝国との闘いを描く壮大なSF伝奇。第1作は現代を舞台にしたものでしたが、その後「総門谷R」シリーズが刊行され、時間を過去に戻して、総門と諒との闘いが描かれています。
 私はこのシリーズの大ファンで、ずっと読みつづけていますが・・・前作が出てから7年ってのはなかなか長い。もう、忘れかけてますよ・・・。
 7年経ってる割に、物語としては前作とつながっていて、「小町変妖篇」の直後の話です。ものすごい超能力をもっている(ただし、本人には全く自覚なし)諒、剣の腕は一級品の熱い男・久遠、そして、知らぬ者のない高僧・空海。この絶妙のバランスのトリオが今回も活躍します。
 ただ、今回はいつものような盛り上がりに欠けたかなあ? 「R」最初の「阿黒篇」なんか、泣けて泣けてしかたなかったのですが、今回はわりと淡々と読んでしまいました。聆雲や篁のところで、ちょっとジンときましたが。
 とにかく、ファンとしては、長く続くのは大歓迎ですが、どうか早く次を出してください!とお願いしたいです。

2004年12月23日 (木)

時宗 巻之四 戦星

703「時宗 巻之四 戦星」高橋克彦   NHK出版   ★★★

 ついに元の大軍が日本への侵攻を始めた。時宗と時輔は、かつて父・時頼が立てた策を用いて元軍に相対した。武者の道が通じぬ相手に、数多の御家人たちが雄々しく戦い、その命を散らしていった。そして、「神風」は吹いた・・・。

 うーむ。
 非常に微妙な読後感になってしまいました。高橋克彦にしてこれは珍しい。
 何故かというと、物語の視点が定まらないからです。「時宗」というからには、時宗が主役かと思うじゃないですか。ところが、11・2巻は、父の北条時頼が主役。3巻でやっと時宗が、と思ったら、この4巻は戦の場面が主体なので、話の主導権は時輔へ。しかも、元寇が終わると同時に、時宗はあっけなく死んでしまいます。史実がそうなのだから仕方ないですが。そのへんの描写は何もなく、こっちの気持ちの持って行き所がないまま。4巻にわたって紡いできた物語はどこに行っちゃったの~って感じです。ちょっと寂しい。
 でも、そこまでの展開は非常に緊迫感がありました。元寇というのがいかに未曾有の国難であったのか。勝手の違う相手との戦。どんな策を立ててくるかもわからない相手。まともにぶつかったら、勝ち目がない。それを退けることができたのは奇跡に近いという気がします。でも、「奇跡」じゃないんだ、というのがこれを読んでいてわかります。全て、人の力なんですね。
 高橋克彦の歴史ものは、一貫して「戦いにおける人の生きざま」を描いていますが、「時宗」でもそれは感動的なものでした。
 ただ。やっぱり題材がちょっと消化不良だったかな~という気もします。なんとなく。「炎立つ」とか「火怨」ほどの盛り上がりには欠けたかな。それとも、私の思い入れの違いでしょうか。

ふく > 時宗は完全に時頼と時輔に食われてしまってましたよね。時宗が博多での合戦を現場で指揮しているわけではないので、苦肉の策として、史実では時宗に叛旗を翻して殺されてしまったはずの時輔を生かしたのでしょうけど、ちょっとあだになってしまったかなという感じですね。個人的には史実どおりのドロドロの兄弟の確執も読んでみたかった気もします。僕は北条氏は名君揃いというイメージがあって割りと好きですが、時宗は小説の主人公としてはちょっと不向きなのかもしれないと思いました。 (2004/12/26 04:27)
まゆ > やっぱり時輔は史実では時宗とうまくいってなかったんですね。小説は事実である必要はないので、それはあんまり気にしないたちなんですけど、考えちゃったんですよね。武者たちが時輔や太郎の下知に従うんだろうか、とかね。ちょっと無理がある気がしました。何より、「時宗」というタイトルロールの活躍が少ないというのが致命的でしたね。違う題名だったら、もうちょっと違和感なかったかも。 (2004/12/26 19:27)

2004年12月19日 (日)

時宗 巻之三 震星

699「時宗 巻之三 震星」高橋克彦   NHK出版   ★★★

 北条時頼亡き後、嫡子時宗は北条の得宗の地位についた。若年ながら纏めとしての役割を果たす時宗を揺さぶる謀反の計画。再び二つに割れようとする鎌倉を手を尽くして収めた矢先、ついに蒙古からの書状が届く。

 いよいよ、「時宗」が主人公です。
 名執権時頼の二人の息子、時宗と兄の時輔を軸にして話が展開します。前半は鎌倉の内紛。後半は対蒙古前哨戦。
 いずれも二人の兄弟が父の教えを守り、周囲に補佐されながら、難題を解決していく過程がおもしろいです。この話では時輔はひたすら時宗を支えることに徹し、やがて自ら名を捨てるのですが、史実ではどうなっているのでしょう。この辺の歴史、全く疎いので。もしかして、時宗が異腹の兄を攻め滅ぼした・・・ってことになってるのかしら。
 時宗を補佐する実時、政村、安達泰盛らは1巻から出ずっぱりですが、それ以外の人間関係がよくわからなくなってきました。と思ったら、今回は系図付き。ブラボー! 姻戚関係入り組んでて、もう何がなんだか。しかも、みんな名前似てるし。
 元寇という未曾有の国難に対する時宗の覚悟はすばらしいものがあります。果たして武者の道を貫けるのか。次はいよいよ最終巻。元寇です。

2004年12月13日 (月)

時宗 巻之二 連星

691「時宗 巻之二 連星」高橋克彦   NHK出版   ★★★★

 鎌倉幕府の第五代執権北条時頼は、病をきっかけに職を辞し、嫡男時宗と共に諸国をめぐる旅に出た。やがて来るだろう蒙古の脅威にそなえ、国を一つにまとめようとする時頼のもとに、志を同じくする者たちが集まる。一方、僧・日蓮は、鎌倉で念仏宗を激しく攻撃する説法を繰り返し、幕府からにらまれていた。 

1巻は争いの連続でしたが、こちらは一見穏やかな展開をします。しかし、それは時頼が先を見越して争いの種を排除しているからで、非常にあやういバランスなのも事実。
 実際、時宗は嫡男とはいえ、兄の時輔との微妙な人間関係におかれています。ただ、この二人がとってもいい子たちなんですね。
 2巻は時頼の死で幕を閉じます。ここで不覚にも涙してしまいました。自分の人生を全うした人ってどうしてこんなにもかっこいいのでしょう。
 3巻からはいよいよ時宗が主役になるのですね。このあたりの歴史に詳しくないので、どう展開するのか楽しみです。

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