髙田郁

2017年2月16日 (木)

あきない世傳金と銀 三 奔流篇

2536「あきない世傳金と銀 三 奔流篇」 髙田郁   ハルキ文庫   ★★★

五代目五鈴屋徳兵衛となった惣次と夫婦になった幸。商いに命をかける惣次を支えつつ、自らも商いの工夫をし、五鈴屋は順調に盛り返していったかに見えたが・・・。

四代目のときとは違って、惣次は幸にほれているようだし、商いも順調で、とんとん拍子かと思えば・・・というお話。そりゃそうですよね。いいことだけだったら、物語になりません。

幸も二十歳になり、すっかり「ご寮さん」が板についてきたようで。しかし、最初のうちは幸の商いの工夫を喜んで聞いていた惣次が、徐々に「後ろに隠れていればいい」と言う様になるあたりは、なんだかざわざわしました。そんなもんですかねえ。惣次は商人としてのプライドも高いから、幸の方が柔軟な発想ができるのが怖かったのかも。この後、この夫婦はどうなってしまうんでしょうね。

しかし、幸は強いなあ。いろんなことが起こるけど、基本的に動じてない感じがするんですよね。「図太く生きろ」って言われたからって、そんなに強くなれるものなの?と、ヘタレな私は思ってしまいました。そこがイマイチこの物語にのめりこめない原因かも。

とは言え、幸の今後は気になるので、次巻を楽しみに待ちたいと思います。

2017年1月27日 (金)

あきない世傳 金と銀 早瀬篇

2530「あきない世傳 金と銀 早瀬篇」 髙田郁   ハルキ文庫   ★★★

大坂天満の呉服屋「五十鈴屋」に女衆として奉公した幸も、早や14歳。そんな彼女を店主徳兵衛の後添いにという話が持ち上がる。幸はとまどうが、番頭・治兵衛に諭され、五十鈴屋の「御寮さん」になる決意を固める。しかし、徳兵衛は商売に身を入れる気配もなく・・・。

シリーズ第2作では、とうとう幸が大出世!

というか、そうなることはだいたい見当がついていたので、それほど驚きはしませんでした。徳兵衛が文句を言うことや、呉服商仲間の厳しい試験など、まあそれくらいは当然でしょう。

むしろ、女衆仲間のお竹やお梅が、わりあいあっさりと「御寮さん」になることを認めたあたりがちょっと拍子抜けでした。多少のごたごたはありましたが、え?そんなもん?と。もっとドロドロしたものがあってもいいんじゃないのかな、という気も。

考えてみれば、幸の周りはいい人がいっぱい。まあ、そうでなければとんでもなく陰惨な話になりそうですけど。もう少し、「御寮さん」になった幸の日常でのとまどいなんかも書いてほしかったなあ。それまでの暮らしと違いすぎて、大変だったこともたくさんあったと思うので。

しかし、急転直下の展開にはちょっとビックリ。そして、そう来ましたか・・・。物語の終わりでは17歳になった幸。もはや大人への入り口ですね。傾きかけた五十鈴屋を、彼女がどう立て直していくのか?楽しみです。

2016年10月22日 (土)

あきない世傳 金と銀 源流篇

2481「あきない世傳 金と銀 源流篇」 高田郁   ハルキ文庫   ★★★

村の学者の娘・幸は、父の死によって大坂天満の呉服商・五鈴屋の女衆として奉公することに。おなごの身ながら学ぶことに興味をもつ幸だったが、奉公人の身ではそれはかなうべくもない夢だった。しかし、聡い幸に興味をもった番頭・治兵衛は、こっそり手ほどきをしてくれて・・・。

新シリーズですね。出てすぐ買ったのですが、積読してました。どうも商いってあまり興味がもてなくて(苦笑) でも、読み始めたらおもしろかったです。

田舎の学者の娘・幸。歳の離れた兄は幸の「学びたい」という気持ちの理解者だったけれど、若くして死んでしまいます。享保の大飢饉と、この兄の死と、さらに父の死が、幸の運命を大きく変えていきます。

摂津で家族むつまじく暮らしていた子どもが、いきなり奉公人になるつらさ。ただ、幸は奉公先でさほど理不尽な目には遭っていないですね。むしろ、「お家さん」の富久の覚えがめでたく、かわいがられています。それに、幸の才能に目をつける人たちも現れているし。

もっとも、まだ「源流」なので、幸の人生が本当に回りだすのは次巻以降でしょう。とりあえず、次も読んでみるかな。

2014年8月15日 (金)

天の梯

2163「天の梯」 髙田郁   ハルキ文庫   ★★★★★

澪は、己がどんな料理人になりたいのか、心に決め、新たな人生を歩むことに。しかし、幼なじみの野江を廓から救い出すという心願をかなえることはできるのか。そんな澪の心には、いつしか源斉の面影が・・・。

「みをつくし料理帖」シリーズ第10弾にして、最終話です。題名は「そらのかけはし」と読みます。

前作のあとがきで、次巻が最終巻と予告されてはいたものの、読み終えてなんというか・・・感無量でした。

天涯孤独の身で、料理の腕は多少あるけれど、頼りない少女だった澪。彼女が上方とは全く文化の異なる江戸で料理と向き合い、さまざまな人と出会い、つらい恋も経験して、一人の大人の女性になっていく過程が、まざまざと思い出されたからです。

このシリーズを読むたびに、自分が作ったものを食べてもらえる幸せについて考えさせられます。そういう意味でも、幸せな時間を提供してくれる物語でした。

澪の運命を象徴する「雲外蒼天」の言葉通り、澪の前には青空が広がっています。出来すぎ・・・と思わないでもないですが、やっぱりこのシリーズは、大団円になってくれなくちゃ!

そして、いずれ登場人物たちの「その後」を書いてくれるそうなので、それも楽しみに待ちたいと思います。

さらに、巻末の「特別付録」には、にんまりさせられます。お見逃しなく。

神保町の三省堂書店さんでは、このシリーズの表紙絵すべてが展示されています。素敵でしたよ。

2014年2月21日 (金)

美雪晴れ

2096「美雪晴れ」 髙田郁   ハルキ文庫   ★★★★

「みをつくし料理帖」シリーズ第9弾。

前作からけっこう早く出ました。うれしい限り。

しかも、ここのところ悲しい話が多かっただけに、今回はご寮さん・芳の再婚から始まって、物事が少しずつ良い方向へ動いていくので、ほっこりした気持ちになりました。

食べたものだけが人の体を作っていく。あらためて、そのことを考えさせられた巻でもありました。料理苦手な私には、けっこうつらい言葉だったのですが・・・良い材料を選んだり、その人に必要だと思うものを考えたり、そういうのも大事なことですね。

料理人として大きな岐路に立たされた澪も、どうやら自分の道に気付いた様子。やれやれ・・・と思ったら、なんと夏に出る次巻で完結してしまうらしいです! うう、ちょっとショック。

そして、今回のおまけには、あの方が登場しますよ。

2013年7月 1日 (月)

残月

2012「残月」 髙田郁   ハルキ文庫   ★★★★

「みをつくし料理帖」シリーズ第8弾。

そろそろ続きが出ないかなあと思ったその日が、発売日でした。うれしいシンクロニシティ。

前作「夏天の虹」があまりに悲しい終わり方だったもので、どうなることかと思いましたが、やはりどうしても彼の死の影を引きずってしまいますね。それでも、澪も、芳も、ふきも、それぞれの道に一歩踏み出そうとする・・・そんな「再開」でした。

特にも、芳には、息子との念願の再会、そして・・・と、激動の展開が続きますが、澪のもう一人の母とも言える彼女には、本当に幸せになってもらいたいものです。

それにしても・・・小松原さまとの縁は、もう切れてしまったのでしょうか。寂しいですね。

2012年6月 2日 (土)

みをつくし献立帖

1871「みをつくし献立帖」  田郁   ハルキ文庫   ★★★★

「みをつくし料理帖」シリーズに登場した料理の写真やレシピ。さらに、著者のエッセイや新旧つる屋の間取り、澪と野江の幼い日を描いた短編「貝寄風(かいよせ)」を収録した一冊。

こういう出版社の思惑が透けて見えるような企画っていかがなものか・・・と思うんですが、のせられちゃうんですよねえ(苦笑)

料理苦手なので、レシピを見ても実際に調理するかは微妙なんですが、でも、見てるだけで楽しいです。ああ、あの話で出てきたのはこんな感じだったのかあ、と。

それに、エッセイが思いのほかおもしろかったです、シリーズ成立の裏話や、それぞれの人物設定などなど、ファンにはお得感たっぷり。しみじみと「そういうことだったのね・・・」と、思いに浸ってしまいました。シリーズ最新作「夏天の虹」の表紙絵に込められた思いも、これを読むまで気づきませんでしたよ。

あ、そうそう。今までやったことがなかったのですが、この本に載っていた「蕗の青煮」に挑戦してみました。ちょうどいただいた生の蕗があったので。おいしかったです。

2012年3月25日 (日)

夏天の虹

1847「夏天の虹」 髙田郁   ハルキ文庫   ★★★★★

思いを寄せた小松原との縁談をあきらめて、料理人として生きていくことを決断した澪。しかし、そのことが澪に思わぬ試練を与えることに。匂いが、味がわからない。料理人として致命的な状態に陥った澪を、つる家の面々と、吉原の料理人・又次が支えてくれた。そんな澪を待っていたのは、あまりにも哀しい運命だった。

「みをつくし料理帖」シリーズ第7弾。

前作で思わぬ展開から、身分違いの武家である小松原さまと縁組という夢のような話になったものの、澪は自分の生きる道は料理であると悟ります。そしてまた、小松原もそれを理解し、澪や周囲の人々を傷つけぬよう身を引くのですが・・・。

せつなかったです。どうにもならない壁。努力だけではどうにもならないもの。どちらかしか選べない道。決断しても思い迷い、小松原の嫁取りにショックを受ける澪の姿に、思わずこちらも涙・・・。

そんな澪に、さらに試練が。匂いが感じられない。ということは、味もわからない。料理人としては致命的です。それでも、周りの人たちに支えられて、澪は料理をあきらめようとはしません。又次が助っ人として来てくれて、つる家は活気づきます。

吉原で生まれ育ち、日の当たる場所を知らないような又次ですが、徐々につる家になじみ、穏やかに、朗らかに笑うようになります。今回、又次にまつわるエピソードの一つ一つが身に染みて、しみじみいい話になっています。

そして・・・。最終話「夏天の虹」。泣きました。澪が味覚を取り戻すには、つらかったことを忘れられるほど幸せな思いをするか、もっとつらい目に遭うか・・・というくだりがありましたが、こんなつらい思いをしなければならないなんて。あんまりじゃないの、と言いたくなりました。

「雲外蒼天」という澪の人生。澪の行く先に、真っ青な空が広がっていることを、心から願わずにはいられません。

人は、いろんな人に支えられて生きていく。そんなあたりまえのことを、読みながらしみじみと考えさせられた一冊でした。

2011年8月21日 (日)

心星ひとつ

1745「心星ひとつ」 髙田郁   ハルキ文庫   ★★★★

澪に思いもかけない話が持ちかけられる。吉原で天満一兆庵を開かないか、と。それは澪と芳の宿願でもあり、野江の身受けにも一歩近づく、願ってもない話。ところが、同時に登龍楼からも、店を居ぬきで買わないかという話が。しかも、ふきが弟と一緒に奉公できるようにしてくれるという。どうすれば、みんなが幸せになれるのか、澪は思い悩むが・・・。さらに、澪が思いを寄せる小松原との間に、意外な展開が・・・。

「みをつくし料理帖」シリーズ、最大の波乱がやってきました。ここが澪の正念場、でしょうか。

澪が料理人として生きていくうえで、いろんな人への思いがそこには重なっています。芳や種市たち、つる家の面々。今は苦界に身を沈めている幼なじみの野江。澪の料理を幸せそうに食べてくれるお客。そして、身分違いとわかっていても、恋わずにいられない小松原。

今までも澪の人生は波乱万丈でしたが、それでも一心に料理をすることですべてを乗り越えてきたようなところがありました。ところが今回は・・・そんな澪の心の芯の部分を大きく揺さぶるような出来事が、立て続けに起こります。

誰一人(登龍楼は別として)、誰かを傷つけようとか困らせようと思っているわけではないのに。それどころか、みんなが互いを思いやり、大切な人が幸せになれるようにと心を砕いているだけなのに・・・。

特にも、表題作「心星ひとつ」は、不覚にも読んでいて何度も涙ぐんでしまいました。澪はあの瞬間、間違いなく幸せだったはずです。それでも、澪の幸せは、澪の「心星」はそこにはない。おそらく、彼もわかっていたから、「無理をするな」と言ったのでしょう。

この後、澪はどうなっていくのでしょう。今回から、巻末に「みをつくし瓦版」というのがついていて、それによると、作者の中ではもうラストまで決まっているのだそうです。そうかぁ・・・。どこへどう着地するのかわかりませんが、「雲外蒼天」という澪の運命を信じて、希望をもって読み続けたいです。

2011年4月29日 (金)

小夜しぐれ

1689「小夜しぐれ」髙田郁   ハルキ文庫   ★★★★

つる家の料理人・澪と、同じ名をもつ大店の一人娘・美緒。それぞれに叶わぬ恋をしているが、美緒にとうとう縁談が。意に染まぬ縁談を嫌って家を飛び出してきた美緒だったが・・・。

「みをつくし料理帖」シリーズ第5作。

今回は、なんともせつない話が多かったです。メインになる美緒の縁談もそうですが、芳が行方不明の息子を見かけて取り乱す場面や、つる家の主人・種市が娘おつるを亡くした経緯や・・・。特にも、人の良い酒好きな老人というイメージがあった種市の意外な一面を垣間見る第1話「迷い蟹」は、読み終えて、泣きたいようなやりきれない気持ちになりました。

両親を失った澪はもちろんのこと、この物語の登場人物たちは、何かを失った人たちが本当に多いです。それぞれに小さくない傷を負って、それでもなお、人のために奔走し、自分らしく生きていこうとする人たちの姿が、読者に力をくれるのかもしれません。

恵まれた環境で育ってきた美緒もまた、一生をかけようとした恋を失ってしまいます。誰を恨むのも筋違いと了見して、静かに嫁ぐ美緒は、それまでのわがまま娘ではなく、大人の女性になっていきます。得るものと失うもの。人生には、どちらも必要なのかもしれません。

せつない話が多かったけれど、最後の「嘉祥」は、なんと御膳奉行・小野寺数馬さま(笑)が、菓子のことで悩む話でした。いつものつる家のメンバーは登場しません。親友や妹とのやりとりが楽しく、いつもとは違った趣向でおもしろかったです。

澪の思いは、どうなっていくのでしょうね。

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