花だより
2795「花だより」 髙田郁 ハルキ文庫 ★★★★
「みおつくし料理帖」シリーズ特別巻。澪が大坂に戻って四年。澪を案じる「つる屋」の店主・種市だったが、易者にとんでもない卦をもらい、床に臥せってしまう。一方、その頃澪は窮地に陥っていて・・・。
種市を中心に、澪が去ったあとのつる屋の面々を描く「花だより」、小野寺数馬と妻・乙緒の暮らしを描いた「涼風あり」、生家の再建を果たした野江の人生の岐路「秋燕」、澪と源斉夫婦が陥った苦境とそこからの再生を描く「月の船を漕ぐ」の四編。
シリーズ完結してから四年経ったのですね。「もう四年も会えてねぇ」という、冒頭の種市の嘆きは、まさにシリーズ愛読者の心境そのものです。久しぶりに会った澪たちは相変わらずで、懐かしさと愛おしさで、始終涙腺は緩みっぱなしでした。
つる屋のみんなはどうしているかな。澪と源斉は大坂でどんな新婚生活を送っているのかしら。野江はどんな暮らしをしているのかしら。・・・そんな読者の「気になる」を、まさにかゆいところに手が届くように書いてくださいました。
私は、小松原さまこと小野寺さまがどうしているのか、すごく気になっていたので、今回すごくうれしかったです。あの方だって、澪と添えなかったのはものすごく苦しかったはずなので。幸せそうで、本当によかった。
それから、野江と亡くなった又次のつながりが、あんなに深いものだったというのに、頬を打たれたような気分になりました。惚れたとかそういうことだけではなかったのですね。生きていくための、かけがえのない相棒だったのですね。
澪と源斉の話は、ちょっとつらかったですが・・・。私も自分自身のことを省みて、はっとさせられました。
これでもう、シリーズは本当に打ち止めになるようです。ちょっと寂しいですが。それでも、本を開けば、何度でも澪たちに会えますものね。
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