藤谷治

2015年3月21日 (土)

全員少年探偵団

2252「全員少年探偵団」 藤谷治   ポプラ社   ★★★

小学校6年生の吉田元基君は、学校の帰り道、こうもり紳士に誘拐されてしまう。それには、吉田君のおとうさんが作った首飾りが関わっていた。名探偵明智小五郎と小林少年、そして少年探偵団が立ち上がる!

江戸川乱歩生誕120年記念企画「みんなの少年探偵団」シリーズ。

先日読んだ小路幸也「少年探偵」とは違い、こちらは時代を現代に設定しています。だから、ケータイやネットが出てくる。そんな中を明智小五郎や怪人二十面相が闊歩するのは、なんだか不思議な感じでした。

父親の作った首飾りがもとで事件に巻き込まれた吉田君が、明智小五郎や級友たちに助けられながら、事件解決にひと役かう物語。作者が楽しんで書いているのがよくわかります(笑)

こういうの、子供のころにワクワクドキドキしながら読みたかったなあ。(怪人二十面相シリーズは、表紙絵が怖くて、手が出せなかった私・・・)

2010年9月27日 (月)

船に乗れ! Ⅲ 合奏協奏曲

1575「船に乗れ! Ⅲ 合奏協奏曲」藤谷治   ジャイブ   ★★★★

最愛の南を失い、チェロにも限界を感じたサトルは、とうとうチェロをやめることを決意する。ただし、高校を卒業するまでは、オーケストラも、文化祭でのミニコンもやらなければならない。伊藤や鮎川たちに囲まれ、最後になる演奏にどうにか取り組むサトル。そして、ミニコンの日、信じられない出来事がサトルを待っていた。

読みながら、「感傷的になるまい」と、何度も自分に言い聞かせていました。

好きなことを、誰もができるとは限らない。例えば、音楽家・演奏家として生計を立てることができる人は、音楽を本格的に学んだ人のほんの一握り。その中で名をなすことができるのは、本当に数えるくらいのごくごく一部。その陰には、「音楽科のある学校にいた」「個人で先生について楽器を習っていた」という人たちがたくさんいて、さらにその周辺には「やっていたけど下手だった」「才能がなかった」という人たちがいて、さらに「好きだけど、そういうことを学ぶ環境になかった」という人たちが、存在する。それはもう、本当に大勢。もちろん、才能だけの問題ではなく、努力したかとか、経済的に勉強を続けることが可能かとか、いろんな要素がそこには絡んでくるのだけど・・・。どんな分野のことであれ、好きなこと、興味のあることを、誰もが一生続けられるとは限らない。それが大事なものであればあるほど、手の届かない焦燥感は、耐えがたい。

サトルは、恐ろしく一人よがりだったと思うし、自分で可能性を摘み取ってしまったようにも見えます。ただ、それも含めて、サトルは音楽家であることを、自分に許さなかったのでしょう。冷酷にも見えるサトルは、それだけ純粋で潔癖だったのかもしれません。

サトルの葛藤は、私自身も経験したことのあるものです。だから、感傷的になるまい、むしろ突き放して読まなければと思っていました。でも、あのミニコンでの「合奏協奏曲」の場面。思わず、涙が出ました。サトルの思い、南の思い、伊藤の、鮎川の・・・言葉にしなかったそれぞれの思いを超えて、みんなを飲み込む音楽の美しさ。その美しい音楽を奏でているのは、みっともなくて不格好で、迷い悩み、泣きわめいている彼らなのです。人が音楽を捨てられない理由が、そこにあると思いました。

最後のオーケストラ。一人ひとりが、そしてみんなが、「楽しい」と思える瞬間。それぞれ歩む道が違っても、その瞬間は、みんなで何かを共有できる、その幸福感。それは、演奏している側だけでなく、聴いている側も。そんな奇跡を生み出せる音楽。・・・サトルは、音楽から離れたけれど、やっぱり彼の根っこにあるのは、音楽なのだと思うのです。

それにしても、伊藤と鮎川の言葉にしない思いが、本当にせつなかったです。

「船に乗れ!」というのは、そういう意味でしたか。しかし、これは勇気をくれるようでいて、なかなか厳しい言葉ですね。サトルにこの言葉をくれた人は、サトルに船に乗り続けることを要求したともとれます。おそらく、あの人もサトルとは違う船に乗り続けているのかもしれません。

ちょっと気になったのは、ピアノの北島先生です。彼女はいったいどんな人生を歩んでいるのでしょう。彼女の物語を読んでみたい気がします。

2010年9月26日 (日)

船に乗れ! Ⅱ 独奏

1574「船に乗れ! Ⅱ 独奏」藤谷治   ジャイブ   ★★★★

南とオペラ「魔笛」観劇のデートをし、すべてが順風満帆に思えていたサトル。ところが、南が芸大進学を宣言したことで、サトルも「一緒に芸大に」と考えるようになる。そんなサトルに、ハイデルベルクへ短期留学の話が。突然のことにとまどうサトルだったが、ドイツへ渡る決意をする。それが、大きな運命の分かれ道になるとも知らずに・・・。

正直、きつかったです。

まだ何者でもない。何かを語れるほどのものもなく、何かを成し遂げたことだってない。何もわかっていない。でも、自分では、自分は何者かだと信じている。・・・その愚かさ、傲慢さ。人を思いやっているつもりで、傷つけていたり。自分がどれだけ周囲の人によって生かされているか気づかず、自分一人で生きているような顔をしていたり。傷つけられることには敏感でも、傷つけることには鈍感だったり。「若さ」と言えばそれまでだけれど、それだけではとうてい許せない自分の幼稚さ、世界の狭さ。・・・確かに、私にもそういう時期があった(いや、今でもそうかもしれない)と思うほどに、サトルや南の言動が、とても痛かったです。

一言で言ってしまえば、サトルが無駄なプライドを粉々にされるのがこの「独奏」なのですが・・・これに「独奏」というサブタイトルがついているその理由が、なんともせつなかったです。サトルのプライドは砕かれるべきだと思うけれど、周りを傷つけた以上に、やっぱりサトルが傷ついたのだと(たとえ甘いと言われようと)、「独奏」という言葉から伝わってきました。ある意味、サトルも、南も、「独奏」をしていたのかもしれません。

南も、結局自分のコンプレックスから逃れられなかったわけだし、サトルのことも「育ちがよくて、チェロが上手くて、演奏ではほぼ対等に弾けるけど、でも自分の方がちょっと上」という、自分にとってちょうどいい相手というとらえ方をしていたのでしょう(この見方は意地悪すぎるかな?) だから、サトルの留学で、南は壊れてしまったわけで。それは、二か月離れ離れになるのが寂しいという理由だけじゃなく。南がよく口にする「悔しい」という言葉。結局、それが彼女をあそこまで追い込んでしまったのでしょう。

もちろん、その後サトルがとった行動は、「卑怯者」とののしられてもしかたないものです。彼を擁護する気は全くないですが・・・それでも、彼がこの後どうしていくのか、気になってしかたないです。続けて、3巻いきます。   

2010年9月20日 (月)

船に乗れ! Ⅰ 合奏と協奏

1569「船に乗れ! Ⅰ 合奏と協奏」藤谷治   ジャイブ   ★★★

音楽一家の出である母をもつ津島サトルは、チェロ弾きだ。受かるのが当然と思っていた芸大附属高に落ちてしまい、祖父の学校に入学する。元女子高で、今も圧倒的に女子が多いその学校で、サトルはヴァイオリン専攻の少女に目を奪われる。一方、オーケストラで、今までやったことのない「人に合わせる」経験をするサトル。彼の音楽は、ゆるやかに変化していく・・・。

音楽って、いいですね。聴くのも好きですが、自分で奏でるのは、もっと楽しい。残念ながら、自分の思うように歌ったり弾いたりする才能はないので、こういう話が好きなわけです。

高校生のサトルと、彼が恋をした南枝里子が軸になって展開する物語。それなりに、青春ものではあるのですが、演奏場面がとにかく圧巻です。サトルと南と北島先生のトリオの場面は、特にも。これは、やったことがある人にしかわからない感覚ですね。私は、今まで協奏曲というのがあんまりピンとこなかったのですが・・・なるほど、そういうものかと納得しました。オケとはまた違う楽しみがあるのですね。

なんとなく、サトルに共感しきれなかったので、★3つにしときましたが・・・これから彼にはまだ何か起こりそうですね。これから、自信家の彼がどうなっていくのか、楽しみです。

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