氷室冴子

2010年10月10日 (日)

クララ白書 Ⅰ

1587「クララ白書 Ⅰ」氷室冴子   集英社   ★★★

中学三年から寄宿舎に入ることになったしーの。途中入舎生は、与えられた課題をクリアしなければ、仲間に認められない。編入生のマッキ―と菊花と一緒に、寄宿舎の調理室に忍びこみ、ドーナツ45人分を作るという前代未聞の課題に挑むしーのだったが・・・。

「シンデレラ迷宮」を読み返してからというもの、無性に「コバルト文庫の氷室冴子」がなつかしくなって、図書館で借りてしまいました。

いや~、なつかしい。これを何度も読み返したっけなあ・・・と。妙にテンション高い登場人物と、漫画チックな展開。それなのに、読んでいると楽しくてしょうがないのです。氷室さんのわりと初期の作品なので、書き方が若いなあと感じるところも多々あるのですが、それもまた「クララ」の味になってるところがすごいです。

あらためて読んでみると、私もけっこう影響受けてるなあというところがいっぱいあって、ちょっと気恥ずかしかったり。

もちろん、携帯電話なんてなかった時代の話なので、友達同士でメモをまわして情報交換したり、男の子が身分を偽って寄宿舎に電話してきたり・・・そういう点にも懐かしさを感じてしまいます(笑)

あとがきによると、出版しなおすにあたって、時代にそぐわないもの等を中心に手を入れたそうです。読みながら、「あれ、ここの表現が違う気がする・・・」と思ったのは気のせいではなかったのね!と、自己満足に浸る私(どれだけ読みこんでたんだ)。たまには、こういう肩の力を抜いて読める本もいいですね。

2010年7月12日 (月)

シンデレラ ミステリー

1524「シンデレラ ミステリー」氷室冴子   集英社コバルト文庫   ★★★★

高校生になり、万里という親友もできて、楽しい生活を送っていたはずの利根。しかし、またしても、シンデレラの国にトリップしてしまう。そこでは、ジェインが行方不明になっていた。そして、ジェインがパリで知り合ったという人たちがやってきて・・・。

「シンデレラ迷宮」の続編は、利根の分身とも言うべきジェイン(「ジェイン・エア」の主人公)が謎の失踪をし、利根がその謎を解くお話。

「迷宮」のラストで、新しい人生に飛び込むことを約束した利根とジェインが、それぞれうまくやっていたはずなのに、どうやら何かでつまづいてしまったらしい。利根は全く自覚がないし、ジェインは何も言わずに姿を消してしまった。さて、いったい・・・という展開になるのですが。

他愛のないラブストーリーと言えばそれまでですが、恋と友情・・・というのは、永遠のテーマですね。そして、ジェインも利根も、人を激しく愛するのは、その生い立ちが大きく影響しているという点が、せつないです。

しかし・・・この物語では、ジェインはロチェスターと幸せになれず、ソーンフィールドの未亡人という設定なのです。私が「ジェイン・エア」はアンハッピーエンドな物語だと思い込んでいたのは、この話のせいだったのでしょうか。「ジェイン・エア」読み返して、あまりの大団円にぶっ飛んでしまったのですが・・・氷室さんはわかっててこういう設定にしたのかなあ。

2010年7月10日 (土)

シンデレラ迷宮

1523「シンデレラ迷宮」氷室冴子   集英社コバルト文庫   ★★★★

気がついたら、見知らぬ場所で眠りこけていた利根。そこで出会った4人の女性。奥方、姫君、踊り子、そして王妃。彼女たちは、利根に招待されてきたのだという。わけがわからぬまま、記憶喪失ということにして、彼女たちの世話になることにした利根だったけれど・・・。

「ジェイン・エア」を読んで以来、もうこれを読みたくて読みたくて。実家のどこかにうずもれているのはわかっていましたが、発掘する気になれず、古本で購入してしまいました。高くついたけど(苦笑)

私がこれを読んだのは(というか、氷室冴子にはまっていたのは)、高校生の頃です。その中でも繰り返し読んだ一冊。「誰かに愛されたい。自分だけを愛していると言ってほしい」というのは、人間の根源的な欲求の一つだと思うのです。それが、恋愛であっても、もっと広い意味の愛情であっても。主人公の利根は、父親に愛されているという実感がもてず、自分の世界に閉じこもっていた女の子。彼女が初めて恋をして、失恋して・・・というありがちな話がベースなのですが、ありがちなゆえに共感できてしまうのですね。しかも、利根が自分の存在感を認められないのは、根っこに父親との関係があるというのが、非常に説得力があります。だからこそ、人一倍愛情を求めてしまうのですね。まさに、ジェイン・エアのように。

利根が夢の世界で出会うのは、有名な物語の登場人物たち。白雪姫の継母。オーロラ姫。白鳥の湖のオディール。そして、ジェイン・エア。みんなそれぞれ報われない「愛」にとらわれ、時間のとまった世界で嘆き続ける、利根の分身。そうなってしまったのは、失恋した利根が、すべての恋物語を呪ってしまったから・・・。

一番せつないのは、オディールです。妹のオデットの恋人の前で踊るオディールに、恋人たちは心をうつしてしまう。そして、狂気に陥るオデット。妹を愛しているのか、憎んでいるのか、煩悶しながら踊り続けるオディールの姿は、痛ましいほど。

そして、クライマックスではジェインが登場するのですが・・・あきらかに、作者はジェインに一番思い入れがあるのに、ページ数足りなかったですね。書き足りなかったんでしょう、氷室さん!と言いたくなっちゃいました(笑) だから、次の「シンデレラ・ミステリー」が必要だったのでしょうね。

さて、利根は自分の分身たちを見て、最後には現実に戻る決意をします。他愛ないと言えば他愛ない話です。でも、四半世紀以上前に書かれたものと思えないくらい、今でも通用する物語だと感じました。

最初は話し言葉に近い地の文にちょっとクラクラしましたが、少し読み進めたら、大丈夫でした(笑) 「シンデレラ・ミステリー」も買ったので、次はそっちにいきます。

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