柏葉幸子

2016年7月 2日 (土)

岬のマヨイガ

2447「岬のマヨイガ」 柏葉幸子   講談社   ★★★★

萌花は、会ったこともない伯父にひきとられようとしていた。ゆりえは、暴力をふるう夫から逃れようとしていた。二人が偶然降り立った海辺の町の駅。そこで彼女たちの運命を変えたのは、あの大震災と大津波だった。避難先で、山名キワという老女と出会い、三人は家族として暮らし始めるのだが・・・。

「霧のむこうのふしぎな町」「つづきの図書館」・・・どちらも、私にとってはとても大事な物語です。その柏葉幸子さんのデビュー40周年記念作品。勇んで買ったのですが、読むにはやっぱり勇気が要りました。

震災のことを描くのは、きっとそれなりの覚悟が必要だったのでしょう。児童書というくくりであればなおのこと。子どもにどう届けるかは、悩ましいところです。しかし、柏葉さんは、いくつかのフィルターをうまく使いこなして、この物語を優しく届けてくれました。

ひとつのフィルターは、主人公がみな舞台となる狐崎の出身ではないということです。地元民ではないから、地元で被災した人たちの気持ちは慮るほかはないという設定になります。もっとも、三人とも被災はしたわけで、地元民ではないけれど当事者という、読者が寄り添いやすい設定になっています。

もうひとつのフィルターは、萌花が「ひより」、ゆりえが「結」と名を変えて生活することです。彼女たちはそうすることで自分らしい生き方を取り戻していくのですが、やはりそれはバーチャルな現実です。このバーチャルというのが、ほんの少し読者の気を楽にさせてくれるような気がします。

そして、一番大きなフィルターは、妖怪や座敷わらしや、お地蔵さんや・・・キワばあちゃんの「ともだち」である不思議なものたちです。これは、柏葉さんの得意とするところですが、この不思議なものたちは、あの当時「なんとかしたい」と思っていたたくさんの人たちの分身でもあります。私たちは、彼らの姿を借りて、狐崎の人たちを助けに行けるのです。

理屈っぽくなってしまいました。

震災はもちろんですが、それ以外にも私たちが直面する不条理はたくさんあります。それでも、生きていきたいのだと、この物語は語りかけてくれているようでした。

2010年4月30日 (金)

つづきの図書館

1479「つづきの図書館」柏葉幸子   講談社   ★★★★★

顔もおぼえていない伯母さんの世話をするために、故郷の町に帰ってきた桃さん。町の図書館で司書見習いとして働き始めるが、とんでもない出来事が。はだかの王様が絵本から飛び出してきたのだ。「青田早苗ちゃんのつづきが知りたい!」・・・桃さんは、仕方なく早苗ちゃんを捜し始めるが・・・。

「霧のむこうのふしぎな町」は、小学生のころの愛読書でした。その作者・柏葉幸子さんの本を、久しぶりに読みました。

四十過ぎの一人暮らしの桃さんが主人公。人付き合いも上手じゃなくて、仕事もうまくいかなくて・・・なんだかさえない女性ですが、絵本の登場人物たちにひっぱりまわされていくうちに、どんどん桃さんの世界が開けていきます。

これ・・・児童書ですよね? でも、これは、大人にも読んでほしい本です。絵本の登場人物(人じゃないのもいるけど)が、「つづき」を気にしていた子たちは、何かしらの事情を抱えていた子たち。その事情は、たいてい、子供には何の責任もないことです。それがすごく身につまされたし、せつなかったです。そして、桃さん自身のことも・・・。ラストで、思わず泣いてしまいました。本を読んで、こんなにあたたかい気持ちになったのは久しぶりです。

私が子供のころ読んだ本の登場人物たちも、私の「つづき」を知りたいと思ってくれていたらうれしいですね。うん、「霧のむこうのふしぎな町」のリナやピコットばあさんが、私のことを「どうしてるかな」と思ってくれてたら、うれしい。

人は、一人じゃないよ、あなたのことを気にかけている人たちはいるよ・・・と、そんなメッセージが伝わってきました。それは、子供でも、大人でも、同じだよ、と。

すごく、いいお話でした。こういう上質なファンタジーを、もっともっといろんな人に読んでほしいなあ。

2003年3月 3日 (月)

霧のむこうのふしぎな町

171「霧のむこうのふしぎな町」柏葉幸子   講談社   ★★★★★

 「たまにはかわったところもいいもんだぞ」…おとうさんの言葉にのせられて、リナは霧の谷を訪れた。いつのまにかたどりついたその町は、なんだか不思議な人たちばかり。彼らはみんな魔法使いの子孫なのだという。
 「働かざるもの食うべからず」というピコットばあさんの主義により、リナはいろんなお店に働きに出かけるのだが…。

 かの「千と千尋の神隠し」に影響を与えた物語として、ちょっとだけ有名になりましたが、私にとっては、小学生のころの愛読書です。
 久しぶりに読み返してみると、たしかに「千と千尋」とイメージがダブるところが。都会育ちのリナが異界に迷い込むところ。手伝いなんかしたこともないリナが、ひたすら働かされるところ。リナに小言ばかり言うピコットばあさんは、小柄だけども結い上げて髪のおかげで頭が大きく見え、黒いドレスを身にまとっている。
 それはともかく、やっぱりこの話が大好きです。リナと一緒になって、次々起こる出来事にドキドキしてしまうのです。変わり者の住人たちは、とっても心優しく(口の悪いオウムのバカメでさえ)、そのオーラに触れて、リナもどんどん魅力的な女の子に変わっていきます。
 最後の場面。霧の谷から帰ってきたリナには、住人たちからの贈り物が残されます。この場面がとってもとっても好きで、読むたびにうるうるしてしまうのでした。

アヤコ > 一ヶ月くらい前に買ったのですがまだ手を付けられていないのです。
これを機会に読み始めてみようかな、と思います。
(2003/03/04 01:51)
まゆ > 児童書ですので、読みやすくて、あっというまに読み終えてしまいます。でも、何回でも読み返したくなる、そんな本です。アヤコさんも、ぜひリナと一緒に霧の谷へ行ってみてくださいな。 (2003/03/04 21:32)
アヤコ > 読みましたよ!おもしろくて一気に読み終えてしまいました。
最後の場面もよかったです。 (2003/03/05 01:44)
まゆ > 早速読まれましたね~。私にとっては、とっておきの物語なんです。 (2003/03/05 18:54)

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