田丸公美子

2017年4月28日 (金)

シモネッタのどこまでいっても男と女

2569「シモネッタのどこまでいっても男と女」 田丸公美子   講談社文庫   ★★★★

イタリア語通訳の田丸公美子さんが、自分の夫や両親について初めて書いたエッセイ。

故・米原万里さんに、「あなたの使命は両親の話を書くこと」と言われていたそうで、たしかに、読み応えありました。家庭をかえりみない父と、万事におっとりしていながら夫の浮気だけはすごい嗅覚で見破る母。そんな破綻していたような夫婦が行き着いた先は・・・。泣きました。

ほかにも、今まであまり語ってこなかった公美子さんの旦那さまの話とか、本気で求愛してきたイタリア男たちの話とか。

公美子さんの半生を振り返るような、いつもとはちょっと違うテイストの話が多く、いつになくしみじみしてしまいました。

2014年8月 5日 (火)

シモネッタのアマルコルド

2159「シモネッタのアマルコルド」 田丸公美子   文春文庫   ★★★

副題「イタリア語通訳狂想曲」。

イタリア語通訳として40年、第一線を突っ走ってきた田丸さんだから書ける、そんなエッセイ集です。

田丸さんはすごく人がお好きなのだなと感じます。いろんな「人」を描写している部分が、実におもしろい。どこかの誰かではなく、田丸さんにとっての「アマルコルド(私は覚えている)」・・・記憶に残る、忘れられない人たちなのだと伝わってきます。

もう一つ印象的だったのは、イタリア人も変わってきたという話。日本だけではないのですねえ。

2011年5月28日 (土)

目からハム

1706「目からハム」 田丸公美子   朝日新聞出版   ★★★★

いまやイタリア語通訳の大御所になった「シモネッタ」こと田丸さんが、通訳の現場で経験したあれこれから、爆笑の誤訳、そして忘れられない人々。

まず、このけったいな題名はいったい何!?と思ったのですが・・・。日本では「目からうろこ」と言うところを、イタリアでは「目からハムが落ちる」と言うのだそうな。目からハムって・・・もう、その時点で日伊文化の相違を強く感じてしまうのですが(苦笑) 

相変わらず(と言っては失礼ですが)、下ネタ満載のイタリア語の話から始まって、30年以上現場で通訳を続けてきた方ならではの内輪話、さらに言語に関する考察まで、盛りだくさんの内容で、一気に読んでしまうのがもったいなくて、ちまちま読んでました。

田丸さんによると、「よい通訳になるためには、普通の人より美しい日本語が話せること」が条件なのだそうです。日本語を知らなければ、訳しようがないわけで。通訳が日本語を知らない(日本語ネイティヴなのに!)ゆえに、繰り出される誤訳の数々は、笑いを通り越して恥ずかしくなってきます・・・。

かく言う私も、職場に来る外国語指導助手さんに、日本語について質問されてうまく説明できず、「うーんとね、それは・・・なんて言ったらいいのかなあ・・・」と頭をかかえることが多いです。恥ずかしい限り。

言語の違いというのは、それぞれの文化の違いであり、メンタリティの違いであり・・・その「異なるもの」の橋渡しをする通訳という仕事は、いかに難しく、いかに意義深いものかと、田丸さんの本を読むたびに思います。結局、国籍や人種の違いを超えて、「人」を愛せる人が、よい通訳になれるのではないかという気がします。

ふと思ったのですが、イタリア人というのは相手に対する気持ちを強くアピールすることで思いを伝え、日本人は相手の気持ちを慮ることで思いを伝えようとする、そういう違いがあるのかもしれませんね。どちらがいい悪いではなく、そういう違いがあるのだ、と認識することが、まずわかりあう第一歩かもしれません。

2011年1月14日 (金)

シモネッタの男と女

1648「シモネッタの男と女」田丸公美子   文藝春秋   ★★★★

イタリア語通訳としてイタリア人たちとつきあう中でめぐりあった忘れられない人たち・・・。仕事で知り合ったやり手の社長、前世からの縁だと思わずにはいられない友人、イタリア美女にモテた日本人男性などなど。米原万里さんへの追悼エッセイも。

タイトルを見たとき、これは人前で読めないな・・・と苦笑しましたが。心の底から人を愛し、人生のエネルギーを燃焼し尽くすかのようなイタリア人を中心に、田丸さんが知り合った人たちの姿を描き出したこの本、非常におもしろかったです。

非現実的なほどにドラマティックな彼らの生きざまは、下手なドラマなんかじゃ対抗できません。財産目当てで良家の令嬢と結婚したり、イタリア女性を手玉にとったり。うわ、これ本当にあったんですか?と言いたくなります。

読んでいて気持ちいいのは、田丸さんが対象になっている人たちに対する感情を隠さないことです。ただの「いい人」として描くのではなく、田丸さんの好悪の感情によって、その人の多面性(それは人間なら当然のこと)が明らかになってきて、ああ、人間ってどこの国でもかっこ悪くていとおしい・・・と思えるのです。

最終章は米原万里さんのことです。思えば、彼女が、田丸さんが出会った「最強」の女だたのかもしれません。正直、いつまで「シモネッタ」を名乗り続けるのだろうと思っていましたが、田丸さんにとっては「名付け親」米原さんとの絆の象徴なのかもしれませんね。

2010年11月12日 (金)

シモネッタのドラゴン姥桜

1611「シモネッタのドラゴン姥桜」田丸公美子   文藝春秋   ★★★★

開成から東大に現役合格。そして、在学中最年少で旧司法試験に合格。エリート街道まっしぐらな息子を育てたイタリア語通訳の母は、放任主義・・・というか、独立心旺盛な息子を扱いかねていただけだった? 「シモネッタ」こと田丸公美子さんの、子育てエッセイ。

田丸さんがこういう本を出したことは知ってましたが、「なんだ、田丸さんも『東大生の母』なんだ~。」とちょっと意外かつガッカリした気分だったので、読む気はありませんでした。いや、東大が悪いというのではないのですけれどね。別のエッセイでの息子さんとのやりとりがものすごく印象に残っていて、おもしろい息子さんだなあと思っていたので、「え?東大?司法試験? ふつうのエリートじゃん」とガッカリ(笑)

ところが、図書館でふと手にとって2、3ページ読んでみたら・・・とんでもない、この親子(笑) 息子のユウタくんは、たしかにエリートなんだけど、お勉強しかしないような子になるわけがなかった。これはちゃんと読んでみなくちゃ!と借りてきました。

単なるお受験の話じゃなくって、ユウタくんの誕生から、親の元を巣立つまでの話です。通訳の仕事が忙しく、子供をもつ気はなかった田丸さんが、意外な展開で子供を授かり、「ほったらかし」の子育てを始める・・・。母親の海外出張が多いという環境は、決して一般的とはいえないと思うのですが、実際大変だったようです。が、それが変な苦労話にならず、出張中預けていた広島の祖父母の元からユウタくんを連れ帰る時号泣するので、人さらいの気分だったなんて書いてあると、思わず笑ってしまいます。

そう、とにかく笑えるのです。ユウタくんは誰の遺伝子をもらったのか、口が達者。なんたって、母親の布団にもぐりこむために「ママー、今僕の頭の中はママのことでいっぱいだよー。」なんて殺し文句を言う三歳児がいますか? 実にユニークな彼は、数々の武勇伝をつくりながら成長し、開成でも有名人として6年間を過ごし・・・実に、人生を謳歌しています。反抗期には「ママ」が「あんた」になり、茶髪を叱ると金髪にし、高校生の時には彼女の家に泊まり朝帰り・・・おそらくご両親は頭を抱えることも多かったのでしょうが、田丸さんは自分の価値観を押し付けず、ユウタくんと向き合っています。それは、「扱いかねていた」からだと言いますが、だからと言って誰にでもできることではありません。

ユウタくんの気持ちの優しさ、人を見る目の確かさ、自分で決めたことをやりとげる意志の強さ・・・そういう息子の良さをきちんと認めて、信じているご両親の姿が見えてきます。

しかし、この親子はユニーク。出張に行くとき、ヌードのポスターの顔の部分を自分のとすげ替え、息子の部屋に貼っていく母親がいますか?(笑) これでまっとうに育つユウタくんは、ある意味すごいです。そして、あまり多くは登場しませんが、こういう母子を許容できるお父さんも大物だと思うのですが・・・。

笑いながら読んできて、ユウタくんが巣立つ時には、なんだかホロリときました。私は子育て経験はないですが、これを読んでいるうちに、自分も一緒になって一人の男の子の成長を見守ってきたような気分になりました。親子のかたちは人それぞれ。子育てだって十人十色。何が正しいのかは誰にもわからないけれど・・・こんな素敵な息子に育つなら、子育ても悪くないなあと思えたのでした。

2008年2月29日 (金)

シモネッタのデカメロン

1267「シモネッタのデカメロン」田丸公美子   文春文庫   ★★★★

 イタリア語通訳・田丸公美子が見聞したイタリア人の生き方。バッコ(酒)、タバッコ(煙草)、ヴェーネレ(女)が三大悪徳だという彼らの、豊かな人生とは。

 「パーネ・アモーレ」に続く2作目のエッセイのサブタイトルは「イタリア的恋愛のススメ」。シモネッタ(米原万里さん命名)こと田丸さんの軽妙な語り口が楽しい一冊です。

 米原さんが「四冊分くらいのネタをつめこんでいる」と言うほど、いろんな話が満載。田丸さんが通訳をしていて知り合ったたくさんのイタリア人たちのエピソード。映画に出てきそうな世界が現実にあるの!?という感じです。

 特に、イタリア人男性の、女性に関する話題はおもしろかった!日本人とは根本的に違いますもんね。どちらがいいのかはよくわかりませんが。

 もちろん、通訳の話もおもしろかったし、田丸さんの学生時代の話もよかった。ほんと、盛りだくさんなエッセイです。

 解説代わりの米原さんとの対談も収録されていて、とてもおもしろかったのですが、「万里と私の最後の一年」というあとがきがあって、これには泣かされました。同じ通訳・物書きとして、共有する何かをもっていたお二人だからこそのエピソードです。つくづく、米原さんが亡くなられたことが残念でなりません。そして、田丸さんには、米原さんの分も、もっともっとこういう文章を書いて欲しいものです。

2003年3月16日 (日)

パーネ・アモーレ

181「パーネ・アモーレ」田丸公美子   文藝春秋   ★★★★★

 パーネ・アモーレ・ファンタジア…「パンと愛と夢」があれば生きていけるイタリア人と、「通訳」として関わってきた著者の奮闘記。

 かの米原万里さんのエッセイに「シモネッタ」なる別名で登場する田丸公美子さんの初エッセイ集。
 言語は違えど同業者ということで、米原さんのエッセイを髣髴とさせるユーモアに富んだ文章。けれど、米原さんより若干軽めで、ほんの少し華やかな感じがします。これはロシアとイタリアの違いかも。
 通訳としての体験談、通訳になるまでの道のりなど、読んでいて本当におもしろい!さらに、それらを通して、「日本とは」「国際化とは」なんてことをつい考えさせられてしまいます(こういうところも、米原さんのエッセイと似ているかもしれません)。
 でも、難しいこと考えずに、笑いながら読んじゃってもOKです。私は息子さんとの抱腹絶倒のやりとりに笑いっぱなしでした。そうそう、米原さんも登場します。これがまたオカシイ。
 パロマーさんのおすすめで読んでみましたが、大当たりでした。パロマーさん、ありがとうございます!

パロマー > まゆさん、読まれましたね(^^ 気に入っていただけたようで嬉しいです。私も息子さんとのやりとりには大笑いしました。米原氏のエッセイより「若干軽めで少し華やか」とのことですが、外国語を専門にしていると、その専門にしている外国語のお国柄(イタリア語ならイタリアの、ロシア語ならロシアの)反映されるようですよ-これ説明になってます???(^^;  (2003/03/17 08:19)
まゆ > なってます。よくわかります、そのお国柄が反映されるというの。パロマーさんのおかげでおもしろい本にめぐりあえました。ほんとに感謝!です。 (2003/03/17 20:47)

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