向田邦子

2004年1月30日 (金)

阿修羅のごとく

440「阿修羅のごとく」向田邦子   新潮文庫   ★★★★

夫に先立たれ、妻子ある男と不倫を続ける綱子。夫が浮気しているのではないかと悩む巻子。融通のきかない性格が災いして縁遠い滝子。うだつのあがらないボクサーと同棲中の咲子。そんな四姉妹の父が浮気をしていることが発覚し、騒動が持ち上がる。

 文春文庫で小説としてリライトされたものが出ていますが、どうしても向田さんの生の言葉で読みたくて、アマゾンにてやっと入手。なぜか書店には一冊もなかったのです。
 テレビドラマのシナリオということで、小説とは異なり、会話主体で物語が進行していきます。実は、これがすごくおもしろかったのですね。四姉妹の会話のテンポがすごくよくわかる。姉妹のやりとりに夫がついていけない・・・という場面がありましたが、さもありなん。私は姉妹はいませんが、この雰囲気はわかります。
 姉妹の個性もさまざまで、それを生かしながら「女性」の本質を鋭くついてきます。さすが、向田さん。かなり痛いところをついてくるのだけど、どこかそういう彼女たちを微笑んで眺めているような、そんな作者の視線を感じます。
 第1話の冒頭、滝子が姉に電話をかけながら「父」という字を窓ガラスに書くところ、この文字の使い方がうまい!と思いました。ほかにも映像にしたら生きるなあ、さすがだなあという場面がたくさんあって、シナリオライターとしての向田さんの力量にあらためて脱帽です。
 なんとなく、向田邦子版「若草物語」って感じがするのは気のせいでしょうか?

さくら > アマゾンから届いたのですね!最初シナリオというのがちょっと読みにくいな~と思っていましたが、読み出したらすぐ慣れました。「若草物語」もそうですが、「細雪」の雰囲気とも通じていてとても好きな一冊となりました! (2004/01/31 09:26)
たばぞう > 文春文庫版と新潮文庫版の違いに気付かずに、文春文庫を購入して読みました。昔の物語なので、世相のずれみたいなものも感じましたが、恋をして阿修羅のようになったりなられたりする女たちの様子は、今も昔も変わらないものだと思いました。 (2004/01/31 12:31)
まゆ > さくらさん、やっと届きましたよ~。シナリオでもよくできたものはじゅうぶんおもしろいのは「北の国から」でわかっていたので、大丈夫でした。「細雪」は未読なんですよね。やっぱり読まなきゃダメかしらん。
たばぞうさん、お久しぶりです。時代の違いは感じますよね。映画化といっても今風の女優さんたちで大丈夫だったのかな?とちょっと心配してみたり。昔テレビでやったころの写真が載っているのですが、こっちはイメージにぴったりでした。 (2004/01/31 17:03)
nanako > 少しでも向田エッセンスを感じたくて私もシナリオ版で読みました。まゆさんが書かれている冒頭の窓ガラスに父の文字の場面の描写、私も凄く印象に残っています。ト書きを読んでいるだけど状況が目に浮かび、最低限の短い描写で風景を鮮やかに描く向田邦子の技に圧倒されて、ますますファンになりました。
「細雪」は私も最近読んだばかりですが、これまた物凄く良かったです。多分まゆさんもお気に召すと思いますよ~。是非是非読んでみて下さい。
(2004/01/31 21:02)
まゆ > 読んでいて、「うまいなあ」と何度もうならされました。会話の運びや食べ物の使い方なんかも。「細雪」も読まなきゃですね。谷崎ってあんまり読んでないんですよねえ。ちょっと食わず嫌いの作家なのですが。でも、チャレンジしてみます。 (2004/02/01 00:26)

2003年12月29日 (月)

眠る盃

411「眠る盃」向田邦子   講談社文庫   ★★★★

「荒城の月」の一節、「めぐる盃」を「眠る盃」と覚えてしまった話。戦争中、末の妹が学童疎開した際、父が持たせた「字のない葉書」の話。
 向田邦子、珠玉の第2随筆集。

 本プロのみなさま、あけましておめでとうございます。
 年末年始の休みには本を読むぞと大量に抱えて帰省した割には、半分ほどしか消化できませんでした。まあ、今年も自分のペースで「読みたい時に読む」を貫こうと思います。今年もどうぞよろしくお願いします。

 さて、2004年最初のアップは、向田邦子さんです。先日、「恋文」が山口智子主演でドラマ化されていましたね。私はビデオにとったまま、まだ見ていませんが。どんな感じだったのでしょう。
 この随筆集は、実は読むのは初めてでした。というのも、いろんな媒体に引用されることが多くて、知っているものがたくさん載っているからです。「父の詫び状」以上に、向田さんご自身の人となりに直接ふれる内容が多いからでしょう。ずいぶん前にテレビ「知ってるつもり」での向田邦子特集や妹・和子さんのエッセイなどにたくさん引用されていて、読みながら「ああ、これ知ってる知ってる」と一人うなずいていました。
 あらためて一冊通して読んでみると、向田邦子さんという人の魅力が浮かび上がってくるような気がします。しっかりしているようでおっちょこちょい。好奇心旺盛で、猫が大好きで・・・。そして、文章に品がある。おかしな話を書いていても、決して品を落とさない格の高さ。ただし、決して高飛車に人を見下すのではなく。そういうところが実に私好みなのでした。

トントン > 向田さんの本、今年こそ読んでみたいと思っています。エッセイにしようか小説にしようか迷っているところです。どちらも期待できそうですね。楽しみです! (2004/01/04 20:19)
nanako > 大ファンの向田邦子作品の中でも1.2を争う大好きな本です。面白いんだけど少し哀しくて鼻の奥がツンとしますよね。そういえばドラマは私もビデオ撮ったけどまだ観てないです。早く観なきゃ。 (2004/01/04 21:41)
まゆ > トントンさん、エッセイなら「父の詫び状」から読むのがおすすめです。小説なら「思い出トランプ」あたりでしょうか。読んで損はないと思います。ぜひ手にとってみて下さい。
nanakoさん、これはとってもいいですねえ。「字のない葉書」なんか、教科書に載っていて毎年読んでいるので、もう暗記してしまいました(笑) (2004/01/05 19:28)
あしか > 私も「字のない葉書」暗記してるクチです。そういえば何年か前の6年生で「葉書」を「はがき」と読めなかったせいで問題の意味がわからなかったという子がいましよ。ドラマ見ました。しんとした感じで、しかも山口智子がなんだかすごく向田邦子に似て見えました。ロンバケの山口智子とはまるで別人で、役者なんだなあって思いました。 (2004/01/05 20:38)
あしか > すみません「いましたよ。」です。たぬけだった。今年もよろしくお願いします。こんな私・・・。 (2004/01/05 20:40)
まゆ > あしかさん、よくあることです(笑)ドラマ、まだ見てないんですよ。気になってるんですけどね。そうか、「葉書」って読めないんですねえ。ちょっとビックリ。教科書では「はがき」という表記になってますよ、そういえば。 (2004/01/05 23:48)

2003年12月25日 (木)

思い出トランプ

409「思い出トランプ」向田邦子   新潮文庫   ★★★★

「女の物指しは二十五年たっても変わらないが、男の目盛りは大きくなる。」

 梅と桜の区別もつかないような夫に、常子は花の名前を教えて続けてきた。結婚して25年もたったある日、夫の愛人という女が現れて・・・。(「花の名前」)

 本の整理をしていたらひょこっと出てきました。ものすごく久しぶりに再読しました。やはり、直木賞をとった三作が非常に印象的です。
 日常生活の中の小さなひずみや、ふと魔がさす瞬間、人の弱さ醜さを短い文章の中で切り取ってみせる手腕はさすがです。たしか直木賞受賞のときに「いきなり現れてすでに名人芸」との賛辞を寄せられたのではなかったでしょうか。それも納得です。
 向田さんの描く人物は、すごく等身大で、ちょっとかっこわるくて、幸せになろうとしてもどこかでなりきれない・・・そんな印象を受けます。それが共感する部分なのかもしれません。

みな > 私もよくこの本を読み返しますが、いつもドキリとさせられます。
人間のずるいところとか醜いところも描いているのに、多分それはみんなが持っている部分のせいか、全然嫌な感じがしないんですよね。
むしろ、人物に共感したり、愛着を持ったりしてしまいます。
向田邦子さんは、本当にうまいですよね。
文庫の解説で、水上勉さんが「若い読者で、短編を勉強したい方があるなら、この『思い出トランプ』の一、ニ編を写して見られるといい。~』と書いていましたが、本当にそうだと思います。
短編で、ここまでのリアルな日常感や人物描写ができる作品ってなかなかないですよね。
若くして亡くなられたのが残念でなりません。。。 (2003/12/26 23:40)
まゆ > ほんと、みなさんのおっしゃるとおりだと思います。向田さんの人間観察の鋭さにはドキリとさせられます。もし生きていらしたら、今ごろどんなものをお書きになっていたんだろう、とついつい考えてしまいます。 (2003/12/27 18:56)
nanako > 私も大好きな本です。短編3作だけで直木賞というのにも納得してしまいますよね。「犬小屋」が一番印象的でした。柴門ふみが漫画家したものも原作の雰囲気を上手に伝えていてよかったです。
(2003/12/28 11:59)
まゆ > 私は「かわうそ」が一番印象的でした。柴門さんは、実にうまく漫画化してますよね。 (2004/01/04 16:42)

2003年11月28日 (金)

男どき女どき

385「男どき女どき」向田邦子   新潮文庫   ★★★

 塩村の家の台所に置いていかれた一匹の鮒。誰が持って来たのかわからぬまま、息子がその鮒を飼いたいと言い出す。塩村にだけはわかっていた。それは、かつての不倫相手のツユ子が飼っていた鮒だったのだ。ツユ子の真意がわからぬまま、塩村は鮒を飼い始める。(「鮒」)

 向田さんが亡くなる直前に連載していた小説4編と、エッセイを集めた作品集。
 柴門さんの漫画と読み比べたくなって、久々に再読。
 ちょっとビックリしたのは、漫画と小説はかなり違うということ。もっと原作に忠実なイメージがあったので。大筋は同じなのですが、細かなエピソードが違っていたりします。
 「三角波」という小説の中に、「陽画(ポジ)と陰画(ネガ)が、ぐるりと入れ替った」という表現があって、まさに向田作品の妙味はそこだなと思います。それまで気づかずに通り過ぎていたものが、ふいに見えてしまう怖さ。驚愕。
 まだ十代の頃、たしか「隣りの女」を読んでいて、なんだか毒に当てられたようで気分が悪くなってしまい、しばらく向田さんの小説は読めなくなった時期もありました。あの頃は若かったな(笑)今は、ひやりとさせられながらも、「ああ、わかる」と思うことが増えたような気がします。

nanako > 向田邦子の短編は、どことなく山本文緒に似ている気がします。文体なんかはまるで異なるんですけど、ありふれた日常生活の中に存在する怖さや毒が感じられる気がするところが共通してるかな~など。向田邦子が「昭和」で、山本文緒が「平成」って感じかな。勝手な感想なんですけど。
柴門ふみのマンガは立ち読み(スイマセン)しました。すごく上手にビジュアル化されていて驚いたことが印象に残っています。 (2003/11/29 20:14)
まゆ > 向田邦子=山本文緒ですか。なるほど。山本作品はそれほど読み込んでないのですが、山本さんの方が毒がストレートかなって気がします。私は向田さんは好きですが、山本さんは微妙です。 (2003/11/30 17:08)

2003年10月 7日 (火)

夜中の薔薇

348「夜中の薔薇」向田邦子   講談社文庫   ★★★

向田邦子さんの生前から準備が進められ、その死後、いちばん最初に出版された随筆集。

 好きなのは「夜中の薔薇」と「手袋をさがす」。さまざまな媒体に発表された随筆等を集めたもので、どちらかというと小品が多いなかで、この2作は読み応えがあります。前者はいかにも向田さんらしい視点が生きる名随筆だと思うし、後者は向田さんの生き方が見えてくるような。
 それにしても、向田さんの残された作品を読むたびに、もしこの人が生きていたなら、今ごろどんなものを書いていたのだろうと思わずにはいられません。つくづく、亡くなられたのが惜しいです。

2003年7月 3日 (木)

無名仮名人名簿

257「無名仮名人名簿」向田邦子   文春文庫   ★★★

週刊文春に連載されていたエッセイ集。
 向田さんの文章は、とても心地よいのです。決して人をおとしめるような書き方をなさらないからでしょうか。たとえ友人知人の失敗談を書いていても、読者に不愉快な印象を与えない。また、向田さんご自身の失敗談も数多く書かれているのだけれど、ご自分のこともおとしめていないので、こちらもすがすがしい気分で笑うことができるのです。
 また、目の付け所・・・着眼点の鋭さはさすがです。この中でとっても印象に残っているのが「麗子の足」というエッセイ。岸田劉生の「麗子像」の足の指に注目して話を起こすのですが、普通は足の指なんか見ないよなあ、と。
 使われている言葉も品が良くて、読んでいて本当に気持ちがいい文章です。

2003年5月18日 (日)

父の詫び状

227「父の詫び状」向田邦子   文春文庫   ★★★★★

 家の中では暴君となるが実は愛情あふれた父。笑い上戸でおおらかな母。祖母と弟妹たち。向田家のさまざまなスケッチとも言える向田邦子第一エッセイ集。

 もはやすっかり「私の愛読書」と化してしまった一冊。好きな部分は暗誦できるほど読んでいます。
 上質の日本語でつづられた文章は、読んでいて本当に心地よいです。書くのは速かったそうですが、乱雑な文章ではなくて、むしろ愛情込めて丁寧に書かれていて、読むと心が落ち着きます。
 乳がんの手術をされた後、エッセイの依頼がきて、「遺言のつもりで」書いたという初のエッセイ集。とりわけ家族への愛が強く感じられるのは、そのせいもあるのかもしれません。
 中学2年の教科書に「字のないはがき」が掲載されてから久しいですが、これは中学生にもとっても評判がよいのです(言葉は難しいといいますが)。やはりよいものはちゃんと伝わるのだなあと実感します。
 つくづく、亡くなられたのが惜しい作家さんです。

あさこ > もしかして、「字のないはがき」というのは、妹が疎開先から送ってくるマルかバツのはがきのお話ですか?(違ったらスミマセン・・)中学の時にやりましたー!!この本に収録されているんですね。 (2003/05/19 00:33)
Pぃ > 私が始めて読んだ向田邦子さんの本です。まゆさんと一緒で時々読みかえします。とがった気持ちも落ち着くんですよねーこれ読むと (2003/05/19 09:06)
まゆ > あさこさん、紛らわしい書き方してごめんなさい。「字のないはがき」はこれには入っていません! あの話、大好きなんで、ついつい並べて書いちゃいました。
Pぃさん、本当になんでこんなに心にしみてくるのかと思いますね。私は向田さんは小説よりもこういったエッセイが好きなんです。 (2003/05/19 20:47)
トントン > 母が向田邦子さん大好きで本も何冊か持っていますが、私は読んだことないんです。最初に読むとしたらどの作品がおすすめですか?
(2003/05/19 21:15)
Pぃ > 私もです。ほとんどが脚本を基に作られた小説なので結局この本を何度も読み返すことになりました。恵まれない育ちの父がおおらかな母を愛する気持ちが素敵で何度読んでもあきませんねー (2003/05/19 22:46)
あさこ > うわぁ!こちらこそ勘違いしていてすみません!「字のないはがき」は授業にも高校入試にも使われたのでとても印象深いです!懐かしい!! (2003/05/19 23:06)
まゆ > Pぃさんのおっしゃる通り、不器用なお父さんの愛情が伝わってくるところが魅力ですよね。
あさこさん、「字のないはがき」は今も教科書に載っていますが、やはり生徒たちも食いつくようにして読みます。ほかの教材は忘れても、これはおぼえてるって人多いですよ。
トントンさん、私だったらやはりこの「父の詫び状」をおすすめします。向田さんの随筆は絶品ですよ。 (2003/05/20 00:25)
nanako > 私が向田さんファンになったきっかけとなる本です。向田さんが手術をされた後、左手でこれを書かれたと聞いて本当に驚きました。
「字のなはがき」はこの本には入っていませんが、お父さんや妹さんとのエピソードがとても面白く、ちょっとしんみりしていてすごくよかったです。初めて向田さんを読む方には私もこの本をオススメしたいな。 (2003/05/20 08:38)
トントン > おすすめの「父の詫び状」図書館で探してみようと思います。ありがとうございました! (2003/05/20 10:38)
まゆ > nanakoさんもお好きでしたか。いいですよね、この本。「字のないはがき」は、最後にお父さんが声をあげてなく場面がすごく好きです。
トントンさん、読んだら感想アップしてくださいな。楽しみにしてます。 (2003/05/20 20:32)

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