辻村深月

2016年1月15日 (金)

きのうの影踏み

2401「きのうの影踏み」   辻村深月         KADOKAWA         ★★★★

13話の怪談・不思議な話を集めたホラー短編集。

辻村さんは、絶対ホラー好きでしょう、と思っていましたが、やはり書いてらっしゃいましたね。

一番好きだったのは、最終話の「七つのカップ」です。交通事故で亡くなった女の子をめぐる話。亡くなった人と、それを慕う人とのせつない思いを描く、どこかあたたかい物語でした。

妙に印象的だったのは、「手紙の主」です。作家のもとに届く奇妙な手紙。それはだんだん変化していって…。じわじわと怖くなってくる話でした。

2015年11月30日 (月)

朝が来る

2381「朝が来る」 辻村深月   文藝春秋   ★★★★

夫と、息子と・・・栗原佐都子は、満ち足りた毎日を送っていた。あの電話がかかってくるまでは。「子どもを、返してほしいんです」・・・片倉ひかりという女性は、たしかに息子・朝斗の産みの親だった。

辻村深月のテーマの一つに「家族」があると思うのですが、これはまた特別な「家族」の物語。赤ちゃんの時に実子として養子縁組をする「特別養子縁組」によってできた家族。そして、そこに現れた産みの母。なんだかとても不穏な気がする設定ですが、行き着いた先は予想外のものでした。

佐都子たちの不妊治療に関するくだりは、なんというか、身につまされました。望んでも子どもに恵まれないつらさが、ひしひしと伝わってきました。朝斗が栗原家に来ることで、佐都子も夫の清和も、たしかに救われたのでしょう。

そして、片倉ひかり。彼女が妊娠し、出産にいたる過程は、あまりに幼く、浅はかですらあります。その生き方にダメ出しをするのは簡単なのですが、彼女が痛々しくて、読んでいるのがつらかったです。ひかりが自分を追いつめてしまう原因の一つが親との関わりで、そこから解放されようとして、どんどん深みにはまっていくのが、なんとも・・・。

でも、そんなひかりを救ってくれたのが、朝斗であり、朝斗に救われた佐都子。思わず涙が出ました。もっとも、ひかりの人生はまだまだ険しいものですが・・・。少なくとも、「ちびたん」が、ひかりに生きる力を与えてくれたと思いたいです。

2015年4月21日 (火)

ハケンアニメ!

2272「ハケンアニメ!」 辻村深月   マガジンハウス   ★★★★

伝説の天才監督・王子千晴が9年ぶりに取り組むアニメ「運命戦線リデルライト」。プロデューサーの有科香屋子は、王子の才能に惚れ込んでいて、念願の仕事、のはずだった。王子がとんでもないことをしでかすまでは・・・。

アニメってあんまり見ないしな~と思っていたのですが、本屋大賞ノミネート作品なので、読んでみました。いやいや、予想以上におもしろかったです。

プロデューサー・有科香屋子と、天才監督・王子。その新作と同時期にオンエアされるアニメを手掛ける監督・斎藤瞳と、プロデューサー行城。そして、それらのアニメの原画を描くアニメーター・並澤和奈と地方公務員の宗森。これらの人々が悪戦苦闘するさまが描かれていきます。

現在のアニメ界の状況ってよくわかってないのですが、これを読んで、「へえ、そうなんだ」と、想像以上の厳しさにびっくり。その中で、香屋子や瞳や和奈がいい仕事をしよう、質の高いものを創ろうとしている姿には、なんだかワクワクしてしまいました。香屋子は監督に作らせる側で、瞳は最前線でつくる側で、和奈は自分を「軍隊アリ」と称する現場のプロで・・・それぞれ立場は違えど、仕事にかける情熱は誰にも負けてなくて。かっこよかったです、3人とも。

そして、アニメが決して一人でできるものではない、ということが繰り返し描かれていて、ああ、それってどんな仕事でもいっしょだなあと、しみじみしてしまったのでした。

アニメに興味のある人はもちろん、興味のない方ほどおすすめです。

2014年9月18日 (木)

時の罠

2173「時の罠」 辻村深月 万城目学 湊かなえ 米澤穂信   文春文庫   ★★★★

辻村深月「タイムカプセルの八年」、万城目学「トシ&シュン」、米澤穂信「下津山縁起」、湊かなえ「長井優介へ」・・・四人の作家による、「時」をテーマにしたアンソロジー。

こういうアンソロジーですべての作家さんが既読というのはあまりないです。四人という少なさもありますが、いずれもある程度は追いかけて読んでいる作家さんなので、迷わず購入。

辻村さんのは、小学生の時に埋めたタイムカプセルを掘り返した青年の父親の物語。学者であるこの父親、世間一般からはひどくずれていて、読んでいてイライラするのですが・・・という。辻村さんというと、若い人が主人公というイメージがあったので、ちょっと意外でした。着地も心地よい物語です。

万城目さんは、いかにもという感じで、いきなり神様が登場します。縁結びの神様が頼まれてやった仕事の意外な展開とは・・・。いったいどこからそういうことを考えつくのかなあ、といつもながら感心してしまいました。

米澤さんは、この中では異色作。遠江の国にあった上津山と下津山にまつわる出来事を、過去から未来に至って断片的に描いていく、SFもの。スケールが大きすぎて、唖然としましたが・・・まさか、宮沢賢治をそう解釈するとは。

湊さんもタイムカプセルもの。ええ、かぶってるじゃん・・・と思いましたが、辻村さんとは全く異なるテイストで、こちらはタイムカプセルを掘り返しに行く話。ベタな設定ですが、それが気にならないほど読ませられました。「三秒」って長いですよね。

しかし、「時」と一言でいっても、それをどう料理するか、四人それぞれの切り口がおもしろかったです。手ごろな厚さなので、この作家さんたちに興味がおありの方にはおすすめです。

2014年7月21日 (月)

島はぼくらと

2153「島はぼくらと」 辻村深月   講談社   ★★★★

瀬戸内海の小さな島・冴島に住む高校生、朱里、衣花、新、源樹。同級生の四人は、高校を卒業したら、それぞれの道に進む。朱里たちは島を出ていく。網元の娘の衣花だけは、島に残ることに。今しか一緒にいられない彼らが過ごす、最後の季節。

ずっと気になっていた一冊。今回は直球の青春ものでした。とはいえ、単に四人の恋愛とか進路のことを描くだけでなく、島の現状や、きれいごとですまない大人たちのゴタゴタとかにかなり重点がおかれていて(まあ、それでも、みんな悪人ではないのですが)、そういうところが私好みではありました。

島という環境だから成立する物語といえばそれまでですが・・・。そういう環境を知らない者としては新鮮な驚きもありました。Iターンの多さとか。それに、朱里たち四人の純粋さが素敵でした。物語を引っ張っていったのは、彼らのまっすぐな心ですね。

ちょっと気になったのは、テレビ騒動の決着。そういう理由でその結論に達するなら、最初から引き受けるわけないじゃん・・・と。そこだけは納得できませんでした。

最後の衣花の決断は蛇足な気がしないでもないけど、彼女らしいのかもしれません。彼女の行動が、島をまた新しいステージに導くのでしょうね。まさに、「島はぼくらと」。

2013年10月24日 (木)

鍵のない夢を見る

2061「鍵のない夢を見る」 辻村深月   文藝春秋   ★★★

「仁志野町の泥棒」「石蕗南地区の放火」「美弥谷団地の逃亡者」「芹葉大学の夢と殺人」「君本家の誘拐」の5編。

どの話も、主人公の女性がなんとも・・・。はっきり言って友達になりたくないタイプ。でも、読んでいて嫌ではなかったのが不思議でした。彼女たちのことを、まったくの他人事とは思えないからかもしれません。

辻村さんもこういう感じの作風になってきたんだなあ、としみじみ。デビュー作の雰囲気は、狭い世界で閉じていて、「芹葉~」の主人公とその彼氏みたいな感じだったのに。

なんて、ちょっと上から目線で読んでいたら、最後の「誘拐」でやられました。・・・ちょっと、私には痛すぎました。読み終えて、微妙にへこんでます(苦笑)

2011年8月15日 (月)

本日は大安なり

1741「本日は大安なり」 辻村深月   角川書店   ★★★★

県内では老舗の結婚式場、ホテル・アールマティ。11月22日、日曜日。大安吉日のこの日、4つの披露宴会場はすべて埋まる盛況ぶり。しかし、それぞれのカップルは、何かしら不穏な事情を抱えていた。さあ、チャペルの鐘が鳴った。果たして、無事に一日は終わるのか?

辻村さんもこういうのを書くようになったんですねえ。

単純に、おもしろかったです。四つの結婚式がそれぞれカギを握る人物の視点で進んでいく物語。時間ごとに区切って、それぞれの展開を見せるやり方は、あの「24」みたいでした。そして、限定された空間で事件が進行していく感じは、恩田陸っぽいかも。

とにかく普通にことが済みそうなカップルが一つとしてない。新郎新婦だけでなく、ウエディングプランナーやら、招待客やら・・・いろんな人が絡んで、状況が二転三転。でもまあ、最終的には行きつくところに行きつくので、安心して読めます。ただ、あの双子姉妹は怖かった(苦笑) それに、彼女たちとつきあえる英一は、もっと怖い。それから、危うく犯罪者になるところだった陸雄は、どうしても好きになれませんでした。ほんとにそんな男でいいんですか、貴和子さん!?と聞きたくなりました。

プランナーの多香子が一番感情移入しやすかったですが・・・彼女もすごく重要な人物設定があって、ビックリしました。私ならそういう状況で、仕事できるだろうか・・・。でも、彼女に関わるエピソードが一番好きです。

ところで、遅い結婚をしたおかげで(さらに、年甲斐もなく、しっかり結婚式&披露宴をやったおかげで)、この話、すごくリアルに感じました。結婚式にかかる費用ってピンキリだし、同時にすごくバブリーです。旦那は当時、「一生に一度のことですからって言われると、嫌と言えないよなあ」とよくボヤいてました(笑) 実際、他人にとってはどうでもいいことでも、当人たちにはそれなりの思い入れがあってのチョイスなわけで。式場やドレス、料理、引き出物、テーブルクロスの色やお花、BGM・・・。私はあまりこだわりがない方なので、わりあいシンプルにやったと思うし、プランナーさんも必要以上にあおったりしない方だったので、それほど準備に手間はかけていないと思いますが。それでも、当時は仕事の合間に準備するのがけっこう大変だったし、旦那ともめたり、いろいろあったなあ・・・なんて、懐かしく思い出しながら読んでました。

さらに余談ですが、私たちの結婚式は友引でした。できれば大安か友引がいいなあ、くらいの気持ちでしたが。大安だからどうということはないでしょうけれど、その日を選ぶのも、これからの幸せを祈る気持ちの表れではありますね。

2011年7月20日 (水)

オーダーメイド殺人クラブ

1729「オーダーメイド殺人クラブ」 辻村深月   集英社   ★★★★

「私を、殺してくれない?」・・・中2の小林アンは、同級生だけど全く親しくない徳川勝利に、自分を殺すことを依頼する。のちのちまで語り継がれるような「事件」を起こすために。二人は、真剣に事件の「計画」を練り始めるが・・・。

夢中になって読んでしまいました。主人公のアンにはあまり共感できなかったのですが、どう展開するのか、すごく気になって、頁を繰る手を止められませんでした。

女の子にもてそうもなく、何を考えてるかわからない、「昆虫系男子」の徳川と、彼に「リア充女子」と言われるアン。全く接点のなさそうな二人が、共通の趣味(というか、嗜好?)をもっていることを偶然知り、秘密の計画を立て始めるのですが・・・。

二人とも中学2年。自分の手の届くところが世界のすべてで、自分の価値観で地球は回っている(と信じている)。ああ、こんな感じだったかもなあ、なんて思いながら読んでいました。(もっとも、今もあまり成長していないかも)

自分が、何者でもないことが許せなくて、何者かになりたくて。そして、大切な人を守りたくて、でも、それがうまくできなくて。さらに、嫌なことから逃げ出してたくて。

大人になって当時の自分を振り返ってみると、「何をそんなことで、人生かかってるような深刻な顔してるの?」と言いたくなるのですが、でも、狭い世界の中で生きている十代の頃って、そんなもの、なのですよね。当時は、それが本当に深刻な問題だったわけで。大人になった今だから、違う視点をもてるだけの話で。

そういうせつなさや、恥ずかしさみたいな感覚を、ものすごくリアルに感じながら読みました。

辻村さんは、デビュー作の頃は、小説の登場人物と同じサイドにいる感じでしたが、今回は完全にそこを抜けて、大人の視点で書いているなあと感じました。もちろん、いい意味で。

2011年1月30日 (日)

ツナグ

1656「ツナグ」辻村深月   新潮社   ★★★★

たった一人と一度だけ。死者との再会をかなえてくれる。その仲介者を「使者(ツナグ)」という。そんな都市伝説のような話を頼りに使者に接触してくるのは、死んでしまったタレントに会いたいファン、亡くなった母親に会いたい息子、そして死なせてしまった親友に会いたい女子高生。彼らの前に現れた使者は・・・。

死んでしまった人にもう一度会いたいと思うのは、人間ならば誰しも同じなのかもしれません。それゆえ、「死者との再会」を扱った小説はたくさん存在するのでしょう。だから、正直言って、この本が出たときに思ったのです。「辻村深月も一般受けするネタに走ったのか」と。

結論から言うと・・・ごめんなさい、辻村さん。これは、辻村深月らしい物語でした。

最初の2話は、むしろありがちな大団円で、やっぱりそんなものかと思っていましたが、「親友の心得」のところで、いかにも辻村深月という感じの、女の子どうしの生々しさ、やりきれなさ、そして救いのないラストに茫然としました。続く「待ち人の心得」では、失踪した婚約者を待ち続けた男と、その婚約者の思いのせつなさに思わず涙ぐんでしまい・・・。

そうして迎えた「使者の心得」。この最終章にやられました。それまでの4話がすべて伏線になって、使者とは何なのか、死者と生者との関わりとは何なのか、ということが描かれていきます。

おそらく、どんな人間も、苦い後悔や消えない悲しみを背負わなくてはならないのだけれど、それでも死んでしまった人たちの思いを受け継いで、生きていくものなのでしょう。そうしていくことで、苦しみ悲しみだけでなく、喜びも、幸せも、味わうことができるはず・・・そんなメッセージが伝わってくるようでした。

2011年1月12日 (水)

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。

1647「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」辻村深月   講談社   ★★★★

母親が包丁で腹を刺されて死んでいた。娘のチエミは行方不明。銀行のATMで金をおろす姿が確認されたのが最後だった。チエミの「親友」だったみずほは、あることをきっかけに、チエミの行方を探し始めるのだが・・・。

これは、直木賞候補になったのでしたか。辻村深月はデビュー作に熱狂して、その次でちょっと微妙になり、その後どうも読む気がしなくなり、ずっと遠ざかっていました。久しぶりに読みました。

デビュー作にあった妙な幼さ・・・世界が自分を中心に回っているというような感覚・・・は、だいぶ薄れましたが、自意識過剰な女の子たちは相変わらずでした。あの「冷たい校舎~」に出てきた彼らの世代(つまり、作者の世代)を、ずっと書き続けているのでしょうか。

おそらく、みずほやチエミたちが感じたような閉塞感は、私たちの世代も感じていることです。仕事のこと、親との関係、恋愛、結婚、そして発展性のない女同士の友情。しかし、みずほたちの閉塞感の、なんと強いことか。「私には何にもない」という思い、もしかしたら若い子たちの方が強いのでしょうか。

それにしても、彼女たちはいつまでたっても「女の子」「女子」なのですね。最近、「女子力」なんて言葉が普通に使われますが、個人的にすごく違和感があります。いつまで「子」なの?って。「女性」になることはないのでしょうか?

さて、物語自体は、最初ちょっととっつきにくい気がしましたが、みずほの「動機」がはっきりしてくるにつれて、のめりこみました。「友人」たちの姿とか、ちょっとベタかなあとも思いましたが。チエミが語り手になる第二章ですべてが明らかになるにつれ、なんともやりきれない気持ちに・・・。

誰がというより、みんながいろんなものを抱えていて、でもそれは形が違うので、ほかの人には理解できなくて・・・。そうやって生まれた悲劇。題名の意味がわかったときの感情は、うまく言葉にできません。

辻村深月、もう少し読んでみようかなあ。

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