中山七里

2019年7月21日 (日)

静おばあちゃんにおまかせ

2927「静おばあちゃんにおまかせ」 中山七里   文藝春秋   ★★★

捜査一課の若手刑事・葛城公彦は、次々と厄介な事件を解決し、上司にも一目置かれる存在に。実は彼にはある協力者がいて・・・。

 

先日読んだ「もういちどベートーヴェン」に、元裁判官の高遠寺静という登場人物がいて。あれ、これってほかの作品の登場人物・・・?と探してみたら、ありました。で、「静おばあちゃん」が元裁判官で、自らの職責に厳しい人という下知識のもとに読み始めました。

葛城という若い刑事と、ある事件で知り合った女子大生・高遠寺円が、難事件を解決していくのだけれど、実は円に知恵を貸しているのは、円の祖母・静で・・・という設定。しかし、中山七里らしく、終盤に意外な展開を見せます。

要するに、安楽椅子探偵ものなのですが、そこに裁判官という立場にあった静さんのものの見方がさしはさまれることで、いい意味での重みが加わっています。

ラストの展開は、私的にはどうだろう・・・?という感じですが、まあ、これはこれで。

2019年7月11日 (木)

もういちどベートーヴェン

2924「もういちどベートーヴェン」 中山七里   宝島社   ★★★

己の才能の限界を感じてピアニストの夢をあきらめた天生高春は、猛勉強の末、司法試験に合格した。天生が司法修習所で出会ったのは、トップ合格したという岬洋介。あまりに優秀で、あまりに浮世離れした岬に、天生は強烈なライバル意識を抱くが、いつのまにか岬の保護者のようになってしまう。やがて、検察での実習で、天生と岬はある殺人事件に関わる。被疑者は犯行を否認するが、それは無駄なあがきに思えた。しかし、岬は取り調べの席上意外なことを言い出し・・・。

 

シリーズ0だった「どこかでベートーヴェン」の後の物語。岬洋介司法修習時代というか、ピアニスト岬洋介復活の物語、ですね。

岬洋介のとんでもなさは、シリーズを読んでいればよくわかるのですが、いきなりこれ読んだ人はついていけないかも(苦笑) というか、こんな修習生いたら嫌でしょうね、同期も、教官も。

事件そのものは意外な展開でおっと思いましたが・・・ただ、事件そのものがけっこう添え物っぽい感じで。ちょっと扱いが雑なのが気になりました。岬が犯人を糾弾(?)する場面も、え?そこでやる?という感じだったし。うーん。

とりあえず、次作が出るのを待ちます。

2017年6月26日 (月)

どこかでベートーヴェン

2595「どこかでベートーヴェン」 中山七里   宝島社   ★★★★

夏休み中、豪雨と土砂崩れのために校舎に取り残された音楽科の生徒たち。そんな状況下で、クラスの問題児・岩倉が殺された。警察に疑いをかけられた岬洋介は、嫌疑を晴らすために調査を開始する。

岬洋介・最初の事件簿・・・といったところでしょうか。17歳の岬洋介が、クラスメイト殺害事件を解き明かします。

十代の岬洋介がどんなだったのか、わくわくしながら読みました。いやあ、すごい。天才なんですね、やっぱり。こんな同級生、いたら嫌かも(笑)

才能を鼻にかけた嫌なやつではなくて、純粋なんですよね。だから余計に周りを刺激しちゃうんでしょう。一緒にいられる鷹村亮は、ピアノ教師の母という反面教師のもとで育ったぶん、冷静でいられたのかもしれません。

発病してからの岬は痛々しかったし、こういう決断をしてから、大人の岬洋介になるまでに、さらに紆余曲折があったのだなあ・・・と。

ラスト一行で「おっ!」と。そうきましたか~。続編、楽しみです。

2013年3月23日 (土)

いつまでもショパン

1983「いつまでもショパン」 中山七里   宝島社   ★★★★

五年に一度、ショパンの祖国ポーランドで開催されるショパン・コンクール。相次ぐテロ事件で開催が危ぶまれる中、決行されたコンクールの大本命は、地元のヤン・ステファンス。四代続く音楽家の家系につらなるヤンは、正統派のショパン弾き。一方、対抗馬と目されるのが、二人の日本人。盲目のピアニスト・榊場と、最年長の岬洋介。そして、コンクールの最中、殺人事件が・・・。

「さよならドビュッシー」「おやすみラフマニノフ」に続く、シリーズ第3作。今回は、ショパン・コンクールが舞台。岬洋介も、ピアニストとしてコンクールに出場します。

いきなり海外が舞台になって、最初はとまどいましたが、結果として、今までで一番読みやすかったし、わかりやすかったです。物語の構成としては、やや出来すぎの感もありましたが・・・まあ、そうでなくてはね、という感じで。

岬洋介のピアニストとしての能力がいかんなく発揮されるわけですが、それでも、やはり岬は「センセイ」なのですねえ。岬が何のために病をおしてステージに立つのか。その部分は、ちょっとうるっときてしまいました。そして、ヤンもまた、岬の教え子の一人といえるのでしょう。

しかし、音楽を言葉で表現するのって、とんでもなく難しいですが、毎回、よくこれだけ書くもんだ・・・と。正直言って、よくわからないところもありますが、いつのまにか演奏を聴いているような気分で読んでしまうから不思議です。

ただし、私はどうも中山七里さんの生々しいグロい描写は苦手です・・・。いや、ある意味、この物語には必要なんですが・・・。

2012年1月29日 (日)

要介護探偵の事件簿

1822「要介護探偵の事件簿」 中山七里   宝島社   ★★★★

脳梗塞の後遺症で下半身不随になった老人・香月玄太郎。立志伝中の人物であり、反骨精神の権化のような玄太郎は、要介護認定もなんのその、車いすで事件解決に乗り出してしまい、介護人のみち子さんはハラハラし通しで・・・。

「さよならドビュッシー」の中山七里さんの新作はユーモア・ミステリ風のテイストです。

「さよなら~」の記憶があやしくなっているのですが、実は「さよなら~」のスピンオフでした。遥とルシアの祖父・玄太郎が主人公です。これがまたいいキャラで。けっこう楽しんで読みました。ミステリとしてはまあまあという感じですが・・・。

正直、書店でこのタイトルを見た時、「いいのかなあ、こんなの」と思ったのですが、そう思うこと自体が至極失礼だと、痛感しました。実際、玄太郎さんは、動かなくなった下半身も自分の一部として、ごくごく当たり前に生きています。むしろ、健康な人よりも、精神的にはおそろしく健康です。こういう元気なおじいちゃんって、なんだか懐かしい感じです(玄太郎さんは元気すぎますが)。

遥たちも登場しますが、あの岬洋介も登場します。最終話、「要介護探偵最後の挨拶」では、玄太郎さんとタッグを組んで、謎解きをしてくれちゃいます。幕切れも、なんともいえない余韻が残って・・・。

それぞれのタイトルが、「要介護探偵の冒険」「要介護探偵の生還」「要介護探偵の快走」「要介護探偵の四つの署名」「要介護探偵最後の挨拶」。いずれもシャーロック・ホームズの作品になぞらえていますね。「回想」が「快走」になっているのが笑えますが。

2011年10月に刊行された本ですが、計画停電のことなんかが出てきます。なんというか・・・複雑な心境でした。

2011年8月26日 (金)

魔女は甦る

1748「魔女は甦る」 中山七里   幻冬舎   ★★

「僕は魔女の末裔です」・・・謎の言葉を残して、製薬会社の研究員だった青年は凄惨なバラバラ死体となった。刑事・槇畑啓介は、過去の捜査で心に傷を負っていたが、警察庁から出張ってきた宮條の執拗ともいえる捜査に圧倒される。そして、死んだ青年の恋人だという女性が現れ・・・。

「さよならドビュッシー」の中山さんの新作。あのシリーズとはまったく別物ということだったので、音楽から離れたらどんなものかしら・・・と思いましたが。

いやもう、見事に私が苦手な・・・(苦笑) スプラッタ系はダメなんです。いきなり冒頭で死ぬほど後悔しました(涙)

それでも、事件の謎解きじたいはかなりおもしろくて、第2章まではけっこう集中して読んだのですが。第3章、いよいよ「犯人」と槇畑たちが対決するところで、なんかもう気持ちが萎えそうになりました。怖いんだもん・・・。

そうなってくると、熱中して読んでいた時にはそれなりに感情移入していた槇畑の苦悩も、なんだか共感できなくなってきて。最後は全然スッキリしない気分で読み終えてしまいました。結局なんだったんだろう?と。

途中でいきなり登場して、いきなりいなくなった厚労省の七尾や、スタンバーグの元社員の松原玲子など、唐突に登場して消えていくキーパーソン(?)の多いこと。桐生の動機も釈然としないし(私だけ?)。で、これで終わり?という・・・。

ミステリと思って読むと、ちょっとフラストレーションたまりそうです。ホラー、もしくはサスペンス、あるいはSFと思った方がいいのかも。

2011年2月 5日 (土)

おやすみラフマニノフ

1658「おやすみラフマニノフ」中山七里   宝島社   ★★★

プロへの登竜門となる学生オーケストラの練習に励む晶と初音。晶は亡き母が望んでいたヴァイオリニストになることを夢見ていた。初音は、学長であり、日本を代表するピアニストである祖父・柘植明良の薫陶を受けて育ち、将来を嘱望されている。演奏会を前にして、音大に保管されていたストラディバリウスのチェロが盗まれた。時価2億円。しかし、それは事件のほんの序曲に過ぎなかった。

「さよならドビュッシー」でこのミス大賞を受賞した作者の、第2作。やはりクラシック音楽を題材に、またしてもピアニスト岬洋介が探偵役をつとめます。

音楽が何の役に立つのか・・・おそらく、「何の役にも立たない」と言う人もいるのでしょう。ただ、音楽を聴いてお腹がふくれることはなくても、心が癒されたり、励まされたりすることがあるのも事実。そしてまた、音楽家という人たちは、何かの見返りの有無でなく、魂を音楽に捧げざるを得ない・・・ただもう、音楽と共にあることでしか生きていけない人たちなのかもしれません。

読み終えて、そんなことをボーっと考えていました。

前作同様、演奏シーンは圧巻です。音楽を、特にもオケの演奏を言葉で表現するのは至難の業だと思うのですが、本当にすばらしい。読みながら、その音が聴こえてくるような気がしました。実際にその曲を聴きながら読んだら、どんな気持ちになるかしら?

ただ、ミステリとしてはやっぱりちょっと甘いかなあ、と。なんとなく見当ついちゃうんですよね。たぶん、そんなことなんだろうなあ・・・ああ、やっぱりね、と。

嵐の夜の演奏場面。出来すぎの感は否めませんが、それが晶の生き方を大きく左右するターニングポイントになったというのが、すごく好きな展開でした。

2010年8月 3日 (火)

さよならドビュッシー

1536「さよならドビュッシー 」中山七里   宝島社   ★★★

ピアニスト志望の香月遥は、突然の火事で祖父と従姉妹のルシアを失った。全身大やけどを負い、皮膚移植ののちに待っていたのは、莫大な祖父の遺産と、思うように動かない体だった。新進ピアニスト・岬洋介との出会いで、ピアノを弾き始め、驚異的な回復をみせたが、身辺では不穏な事件が相次ぎ・・・。

書店で題名を見てからずっと気になっていたのですが・・・「このミス」大賞作品だったのですね。どうも私は「このミス」と相性が悪くて(苦笑) 私の求めるミステリと、この賞はどこかずれているんです。

というわけで、ミステリとしてはあまり期待しないで読みました。状況が二転三転して、最後にそうきましたか・・・という感じでしたが、すいません、実は最初の方でわかっちゃいました。だから、「たぶんそういうことなんだろうなあ」と思って読んでいたので、その部分に対する驚きはなかったです。伏線の張り方もわかりやすかったし。すみません、すれっからしのミステリ読みなもので(苦笑)

ただ。一応、ピアノをかじったことのある身としては、非常におもしろかったです。私も鍵盤を強く叩くように教わりましたよー。それが日本独自の、あまりよくないやり方だったなんて・・・。ソフトウェアがスコアで、ハードが演奏者・・・とか、当たり前なんだろうけど、目からウロコでした。

それに、演奏場面を文字で表現するのって、すごく難しいと思うのですが、岬先生のベートーヴェンや、最後のコンクールは圧巻でした。こっちまでものすごい緊迫感で、金縛りにあったようになって読みました。

ちょっと気になったのは、「障害者」という言葉が何度も出てくるのですが、その定義がものすごくあいまいな気がして。時に主人公自身が「障害者」を特異なものとしているような言動があったのが気になりました。

その他のカテゴリー

「あ」行の作家 「か」行の作家 「さ」行の作家 「た」行の作家 「な」行の作家 「は」行の作家 「ま」行の作家 「や」行の作家 「ら」行の作家 「わ」行の作家 あさのあつこ いしいしんじ こうの史代 さだまさし その他 たつみや章 ほしおさなえ よしもとばなな アンソロジー 万城目学 三上亜希子 三上延 三島由紀夫 三木笙子 三浦しをん 三浦哲郎 三谷幸喜 上橋菜穂子 中山七里 中島京子 中田永一 中野京子 乃南アサ 乙一 井上ひさし 京極夏彦 伊坂幸太郎 伊藤計劃 伊集院静 佐藤多佳子 佐藤賢一 俵万智 倉知淳 光原百合 冲方丁 初野晴 加納朋子 加門七海 北大路公子 北山猛邦 北村薫 北杜夫 北森鴻 原田マハ 司馬遼太郎 吉村昭 吉田修一 向田邦子 坂木司 夏川草介 夏目漱石 大倉崇裕 大崎梢 太宰治 奥泉光 宇江佐真理 宮下奈都 宮尾登美子 宮部みゆき 小川洋子 小川糸 小路幸也 小野不由美 山崎豊子 山本周五郎 山白朝子 岡本綺堂 島本理生 川上弘美 平岩弓枝 彩瀬まる 恩田陸 愛川晶 戸板康二 日明恩 日記・コラム・つぶやき 有川浩 朝井まかて 朝井リョウ 木下昌輝 木内昇 朱川湊人 杉浦日向子 村山由佳 東川篤哉 東野圭吾 松本清張 柏葉幸子 柚木麻子 柳広司 柴田よしき 栗田有起 桜庭一樹 梨木香歩 梯久美子 森博嗣 森絵都 森見登美彦 森谷明子 横山秀夫 橋本治 氷室冴子 永井路子 永田和宏 江國香織 池波正太郎 津原泰水 津村記久子 浅田次郎 海堂尊 海外の作家 深緑野分 湊かなえ 漫画 澤村伊智 澤田瞳子 瀬尾まいこ 田中啓文 田丸公美子 畠中恵 石田衣良 磯田道史 福井晴敏 笹尾陽子 米原万里 米澤穂信 芥川龍之介 若竹七海 茅田砂胡 茨木のり子 荻原規子 菅野彰 菅野雪虫 藤沢周平 藤谷治 西條奈加 西澤保彦 角田光代 誉田哲也 辺見庸 辻村深月 近藤史恵 酒井順子 重松清 金城一紀 門井慶喜 阿部智里 青崎有吾 須賀しのぶ 額賀澪 高城高 高橋克彦 髙田郁 鷺沢萠

2019年11月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

カテゴリー