中山七里

2013年3月23日 (土)

いつまでもショパン

1983「いつまでもショパン」 中山七里   宝島社   ★★★★

五年に一度、ショパンの祖国ポーランドで開催されるショパン・コンクール。相次ぐテロ事件で開催が危ぶまれる中、決行されたコンクールの大本命は、地元のヤン・ステファンス。四代続く音楽家の家系につらなるヤンは、正統派のショパン弾き。一方、対抗馬と目されるのが、二人の日本人。盲目のピアニスト・榊場と、最年長の岬洋介。そして、コンクールの最中、殺人事件が・・・。

「さよならドビュッシー」「おやすみラフマニノフ」に続く、シリーズ第3作。今回は、ショパン・コンクールが舞台。岬洋介も、ピアニストとしてコンクールに出場します。

いきなり海外が舞台になって、最初はとまどいましたが、結果として、今までで一番読みやすかったし、わかりやすかったです。物語の構成としては、やや出来すぎの感もありましたが・・・まあ、そうでなくてはね、という感じで。

岬洋介のピアニストとしての能力がいかんなく発揮されるわけですが、それでも、やはり岬は「センセイ」なのですねえ。岬が何のために病をおしてステージに立つのか。その部分は、ちょっとうるっときてしまいました。そして、ヤンもまた、岬の教え子の一人といえるのでしょう。

しかし、音楽を言葉で表現するのって、とんでもなく難しいですが、毎回、よくこれだけ書くもんだ・・・と。正直言って、よくわからないところもありますが、いつのまにか演奏を聴いているような気分で読んでしまうから不思議です。

ただし、私はどうも中山七里さんの生々しいグロい描写は苦手です・・・。いや、ある意味、この物語には必要なんですが・・・。

2012年1月29日 (日)

要介護探偵の事件簿

1822「要介護探偵の事件簿」 中山七里   宝島社   ★★★★

脳梗塞の後遺症で下半身不随になった老人・香月玄太郎。立志伝中の人物であり、反骨精神の権化のような玄太郎は、要介護認定もなんのその、車いすで事件解決に乗り出してしまい、介護人のみち子さんはハラハラし通しで・・・。

「さよならドビュッシー」の中山七里さんの新作はユーモア・ミステリ風のテイストです。

「さよなら~」の記憶があやしくなっているのですが、実は「さよなら~」のスピンオフでした。遥とルシアの祖父・玄太郎が主人公です。これがまたいいキャラで。けっこう楽しんで読みました。ミステリとしてはまあまあという感じですが・・・。

正直、書店でこのタイトルを見た時、「いいのかなあ、こんなの」と思ったのですが、そう思うこと自体が至極失礼だと、痛感しました。実際、玄太郎さんは、動かなくなった下半身も自分の一部として、ごくごく当たり前に生きています。むしろ、健康な人よりも、精神的にはおそろしく健康です。こういう元気なおじいちゃんって、なんだか懐かしい感じです(玄太郎さんは元気すぎますが)。

遥たちも登場しますが、あの岬洋介も登場します。最終話、「要介護探偵最後の挨拶」では、玄太郎さんとタッグを組んで、謎解きをしてくれちゃいます。幕切れも、なんともいえない余韻が残って・・・。

それぞれのタイトルが、「要介護探偵の冒険」「要介護探偵の生還」「要介護探偵の快走」「要介護探偵の四つの署名」「要介護探偵最後の挨拶」。いずれもシャーロック・ホームズの作品になぞらえていますね。「回想」が「快走」になっているのが笑えますが。

2011年10月に刊行された本ですが、計画停電のことなんかが出てきます。なんというか・・・複雑な心境でした。

2011年8月26日 (金)

魔女は甦る

1748「魔女は甦る」 中山七里   幻冬舎   ★★

「僕は魔女の末裔です」・・・謎の言葉を残して、製薬会社の研究員だった青年は凄惨なバラバラ死体となった。刑事・槇畑啓介は、過去の捜査で心に傷を負っていたが、警察庁から出張ってきた宮條の執拗ともいえる捜査に圧倒される。そして、死んだ青年の恋人だという女性が現れ・・・。

「さよならドビュッシー」の中山さんの新作。あのシリーズとはまったく別物ということだったので、音楽から離れたらどんなものかしら・・・と思いましたが。

いやもう、見事に私が苦手な・・・(苦笑) スプラッタ系はダメなんです。いきなり冒頭で死ぬほど後悔しました(涙)

それでも、事件の謎解きじたいはかなりおもしろくて、第2章まではけっこう集中して読んだのですが。第3章、いよいよ「犯人」と槇畑たちが対決するところで、なんかもう気持ちが萎えそうになりました。怖いんだもん・・・。

そうなってくると、熱中して読んでいた時にはそれなりに感情移入していた槇畑の苦悩も、なんだか共感できなくなってきて。最後は全然スッキリしない気分で読み終えてしまいました。結局なんだったんだろう?と。

途中でいきなり登場して、いきなりいなくなった厚労省の七尾や、スタンバーグの元社員の松原玲子など、唐突に登場して消えていくキーパーソン(?)の多いこと。桐生の動機も釈然としないし(私だけ?)。で、これで終わり?という・・・。

ミステリと思って読むと、ちょっとフラストレーションたまりそうです。ホラー、もしくはサスペンス、あるいはSFと思った方がいいのかも。

2011年2月 5日 (土)

おやすみラフマニノフ

1658「おやすみラフマニノフ」中山七里   宝島社   ★★★

プロへの登竜門となる学生オーケストラの練習に励む晶と初音。晶は亡き母が望んでいたヴァイオリニストになることを夢見ていた。初音は、学長であり、日本を代表するピアニストである祖父・柘植明良の薫陶を受けて育ち、将来を嘱望されている。演奏会を前にして、音大に保管されていたストラディバリウスのチェロが盗まれた。時価2億円。しかし、それは事件のほんの序曲に過ぎなかった。

「さよならドビュッシー」でこのミス大賞を受賞した作者の、第2作。やはりクラシック音楽を題材に、またしてもピアニスト岬洋介が探偵役をつとめます。

音楽が何の役に立つのか・・・おそらく、「何の役にも立たない」と言う人もいるのでしょう。ただ、音楽を聴いてお腹がふくれることはなくても、心が癒されたり、励まされたりすることがあるのも事実。そしてまた、音楽家という人たちは、何かの見返りの有無でなく、魂を音楽に捧げざるを得ない・・・ただもう、音楽と共にあることでしか生きていけない人たちなのかもしれません。

読み終えて、そんなことをボーっと考えていました。

前作同様、演奏シーンは圧巻です。音楽を、特にもオケの演奏を言葉で表現するのは至難の業だと思うのですが、本当にすばらしい。読みながら、その音が聴こえてくるような気がしました。実際にその曲を聴きながら読んだら、どんな気持ちになるかしら?

ただ、ミステリとしてはやっぱりちょっと甘いかなあ、と。なんとなく見当ついちゃうんですよね。たぶん、そんなことなんだろうなあ・・・ああ、やっぱりね、と。

嵐の夜の演奏場面。出来すぎの感は否めませんが、それが晶の生き方を大きく左右するターニングポイントになったというのが、すごく好きな展開でした。

2010年8月 3日 (火)

さよならドビュッシー

1536「さよならドビュッシー 」中山七里   宝島社   ★★★

ピアニスト志望の香月遥は、突然の火事で祖父と従姉妹のルシアを失った。全身大やけどを負い、皮膚移植ののちに待っていたのは、莫大な祖父の遺産と、思うように動かない体だった。新進ピアニスト・岬洋介との出会いで、ピアノを弾き始め、驚異的な回復をみせたが、身辺では不穏な事件が相次ぎ・・・。

書店で題名を見てからずっと気になっていたのですが・・・「このミス」大賞作品だったのですね。どうも私は「このミス」と相性が悪くて(苦笑) 私の求めるミステリと、この賞はどこかずれているんです。

というわけで、ミステリとしてはあまり期待しないで読みました。状況が二転三転して、最後にそうきましたか・・・という感じでしたが、すいません、実は最初の方でわかっちゃいました。だから、「たぶんそういうことなんだろうなあ」と思って読んでいたので、その部分に対する驚きはなかったです。伏線の張り方もわかりやすかったし。すみません、すれっからしのミステリ読みなもので(苦笑)

ただ。一応、ピアノをかじったことのある身としては、非常におもしろかったです。私も鍵盤を強く叩くように教わりましたよー。それが日本独自の、あまりよくないやり方だったなんて・・・。ソフトウェアがスコアで、ハードが演奏者・・・とか、当たり前なんだろうけど、目からウロコでした。

それに、演奏場面を文字で表現するのって、すごく難しいと思うのですが、岬先生のベートーヴェンや、最後のコンクールは圧巻でした。こっちまでものすごい緊迫感で、金縛りにあったようになって読みました。

ちょっと気になったのは、「障害者」という言葉が何度も出てくるのですが、その定義がものすごくあいまいな気がして。時に主人公自身が「障害者」を特異なものとしているような言動があったのが気になりました。

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