湊かなえ

2017年5月 1日 (月)

ユートピア

2571「ユートピア」 湊かなえ   集英社   ★★★★

海辺の町・鼻崎町で出会い、ボランティア基金「クララの翼」を設立した菜々子、光稀、すみれ。しかし、三人の仲がきしみ始め、同時にかつての犯罪が明るみに・・・。

なんとなく苦手な設定だなあと思いつつ、一気読みしてしまいました。

地元民の菜々子、夫の転勤で5年前に鼻崎町に引っ越してきた光稀、陶芸家で芸術家たちが住むエリアに引っ越してきたすみれ。はじめは接点のなかった三人が、イベントを契機に親しくなる。菜々子の娘・久美香は足が不自由で、車いす生活。そんな久美香と仲良くなった光稀の娘・彩也子が書いた作文が新聞に載ったことから、事態は動き出す。

菜々子も光稀もすみれも、けっして悪意はないのです。それなのに、歪んでいく関係が恐ろしかった。でも、こういうのって実際にありがちだよなあとも思ったり。何より怖かったのは、全てを知っていたのは誰だったのかということ。ザワッとしました。

2016年2月 9日 (火)

リバース

2412「リバース」   湊かなえ           講談社           ★★★

「深瀬和久は人殺しだ」…その手紙が届いた日から、深瀬の日常は反転した。思い当たることはただひとつ。学生時代の親友が事故死した事件だ。しかし、秘密は誰にももらしていないはずだ。そう、あの秘密を知っている仲間たち、誰一人として。

久々に来ましたねぇ、湊さん(苦笑)

主人公の深瀬に共感できないし、深瀬以外の3人もあまりいい感じがしなくて、なんだかなあと思っていたら、そうきましたか。

美穂子に対しても、なんだかスッキリしないままです。

でも、読んじゃうんですよね(苦笑)

後味の悪い話を読みたくない方には、おすすめしません。それから、読んでいるとコーヒーが飲みたくなるので、ご注意を

2015年7月 5日 (日)

絶唱

2320「絶唱」 湊かなえ   新潮社   ★★★★

阪神淡路大震災で双子の毬絵は亡くなった。その後、雪絵は「雪絵らしく」と言われて育ってきたが、二十歳を前に、ある決断をする。それは、「楽園」に行くことだった。

「楽園」「約束」「太陽」「絶唱」の4話から成る連作短編。トンガを舞台にしています。ちょうど今、トンガ国王の戴冠式とやらで、テレビで目にする機会が増えているので、おもしろい偶然だな、と。

でも、単にトンガが舞台なのでなく、その背景には阪神淡路大震災があります。そこで被災し、傷ついた人たちが、生きていく力を得るきっかけになるのが、トンガの地。それぞれの物語の主人公たちの人生がゆるやかにつながって、それぞれの「再生」が描かれます。

「楽園」は、新潮文庫の「Story Seller」で読んだことがありましたが、そこで登場した家庭科の先生・理恵子の物語が「約束」、雪絵が同宿した親子の物語が「太陽」、そして、これらを書いた作家の物語が「絶唱」という構成。あの一作から、こんなふうに物語が広がっていくんだ・・・と、感動しました。

「あの日、さよならさえ、言えなかった」「喪失と再生。これは、人生の物語」という帯のコピーの意味が、読んでみてずしりと重く響きました。

2015年5月 8日 (金)

物語のおわり

2286「物語のおわり」 湊かなえ   朝日新聞出版   ★★★★

北海道を旅する人たちの手から手へ渡される、未完の物語。あなたなら、この物語にどんな「おわり」をむかえますか?

「空の彼方」「過去へ未来へ」「花咲く丘」「ワインディング・ロード」「時を超えて」「湖上の花火」「街の灯り」「旅路の果て」の8編の連作です。

ちょっとネタバレしちゃうと、最初の「空の彼方」が小説として、それ以降の登場人物たちの手をわたっていくのです。それぞれの主人公は、自分の人生を考えつつ、「自分ならこうする」と考えてみる、という。そして、物語の行き着く先は・・・。

この構成というか、発想がうまいなと思うのです。湊かなえを好きかときかれたら、ちょっと答えにつまるのですが、新作が出ると、読みたいなと思ってしまう。「読みたい」と思わせるような設定のおもしろさがあるのです。

今回も、「空の彼方」が手から手へ渡って、それで終わりかと思うと、まだ仕掛けがあって。その結末に納得できるかどうかはともかく、きちんと輪が閉じられます。まあ、私はこのラスト、わりと好きです。ちょっと甘いかもしれないけれど。

好きな話は「過去へ未来へ」。それから、「花咲く丘」「ワインディング・ロード」もよかったです。

2015年3月16日 (月)

高校入試

2248「高校入試」 湊かなえ   角川書店   ★★★

「入試をぶっつぶす!」・・・入試前日、試験会場の教室にはりだされたメッセージ。いったい誰が?何のために? 新人教師の春山杏子は緊張の中、入試当日を迎える。そして、事件は起きた・・・。

ドラマは見ませんでした。が、どんな話なのか気になってはいました。小説はドラマとは結末が違うそうですね。

地元の名門・県立橘第一高等学校。そこで起こった事件が、入試を大混乱に陥れます。いや、混乱しているのは、教師たち。入試問題がネットにアップされていく。試験中に鳴ったケータイ。答案用紙の紛失。どなりこんでくるモンスター・ペアレント。ネットでの実況中継。そして・・・。

読んでいて怖くなりました。なんというか、先生たちの反応がいかにもリアルで。もっとも、高校の現場というのは知りませんが。でも、こんな感じなんだろうなあ、と。いい意味でも、悪い意味でも。

この犯人の意図については、ちょっと共感できないものがあったのですが、たしかに入試というのは、人生の一大事です。関わる人が真摯であってほしいと思うのは事実です。

それにしても、高校の先生たちも大変だ・・・。

2015年2月 1日 (日)

山女日記

2227「山女日記」 湊かなえ   幻冬舎   ★★★★

私の選択は間違っていたのだろうか・・・。自分なりに一生懸命生きていて、人生の岐路に立ったとき、どうすればいいのだろう。彼女たちは山で、その答えを見つける。

たしか、北村薫さんの「八月の六日間」と同じころに出版されて、「おや、こちらも山?」と思ったのをおぼえています。ようやく、図書館でゲットできました。

人生の岐路に立った女性たちが、山に登り、そこで何かを見つける・・・そんな連作。明快な答えが得られるわけでもないけれど、日常から離れて山に登ることで、気付かなかった何かに気づき、ほんのちょっとだけ生き方を変えられたり、自分に自信がもてたり。

本人は、まじめにやっているだけなんだけど、はたから見ると息がつまるような生き方をしている彼女たちが、少し肩の力を抜いて生きられるような気がする話が多く、後味がよかったです。

登場人物がリンクしていくのも、読んでいておもしろかったです。

湊作品では「花の鎖」でも登山に関わる場面がありましたが、湊さんも登山されるんでしょうか。私はまったくですけど、これは読んでいてたのしかったです。ただ、どうしても山に持っていくおやつとか、山で沸かして飲むコーヒーとか、そういうものに心惹かれてしまいました(笑)

2014年7月23日 (水)

豆の上で眠る

2154「豆の上で眠る」 湊かなえ   新潮社   ★★★

幼いころ、絵本を読み聞かせてくれた姉・万佑子。彼女が姿を消したあの夏は、結衣子にとっても悪夢のような時間だった。そして、無事に戻ってきた「姉」に違和感を感じ続ける結衣子は・・・。

『えんどうまめの上にねたおひめさま』という話、本で読んだ記憶がないのです。そういう話があるのは知っていますが・・・。しかし、アンデルセン童話なんて今は知らない子が多いのでしょうか。ちょっとショック。アンデルセンとかグリムとか、あたりまえのように読んでたのに・・・。

さてさて、誘拐(?)されて無事帰ってきた姉に対する疑惑を拭い去れない結衣子。まあ、展開はおおよそ読めるのですが・・・正直、「え、そこで終わり?」という感じでした。結局、「ほんもの」って何なのでしょう。この家族は、いったいどんな思いで暮らしてきたのか・・・。結衣子だけでなく、父も、母も、万佑子も。なんともいえないやりきれなさと、心がザラつくような感触が残る物語でした。

2014年7月 2日 (水)

白ゆき姫殺人事件

2147「白ゆき姫殺人事件」 湊かなえ   集英社   ★★★

美人の会社員が殺された。その容疑者は、同僚の女なのか。同僚、同級生、故郷の人々、家族。彼らの「証言」は予想外に展開していく。さらに、噂はネットでも拡散して・・・。

怖い怖い。

湊かなえ作品も最近はだいぶ後味がいいものも増えましたが、これはじんわり嫌な気分になりました。もっとも、それが狙いなのでしょうから、成功しているのでしょう。

関係者たちの語りと、ネットや週刊誌、新聞の情報などの「参考資料」とで構成されるという、実験的な(?)ミステリ。最初はあっちを読んで、こっちを読んでがめんどくさかったのですが、すぐにはまりました。

こんなブログをやっておいてなんですが、基本的にネット情報って信用できない、怖い、という感覚があるので、あんなふうに他人をさらすというのは理解できないのですが・・・。実際、珍しくないのでしょうね。

むごい殺され方をした三木典子。容疑者のように祭り上げられる城野美姫。それぞれを語る人たちの姿が、むしろ怖かったです。

2014年5月26日 (月)

望郷

2130「望郷」 湊かなえ   文藝春秋   ★★★★

瀬戸内海に浮かぶ白綱島を舞台にした短編集。

「みかんの花」「海の星」「夢の国」「雲の糸」「石の十字架」「光の航路」の6編。

一番好きなのは、推理作家協会賞(短編部門)の受賞作「海の星」です。父が行方不明になり、それを待ち続けた母子と、彼らと偶然知り合った「おっさん」の物語。時間が経過して初めてわかる真実は、悲しいけれど、ほんの少しあたたかいもので・・・。

島という閉塞された場で生きる人たちのそれは、田舎育ちの私にはなんとなく共感できるところもあり。息がつまりそうになりながらも、そこがいい場所だという思いもたしかにあるのです。

どの話も、後味は悪くなくて、けっこう気持ちよく読めました。

2013年9月18日 (水)

サファイア

2050「サファイア」 湊かなえ   角川春樹事務所   ★★★

宝石をモチーフにした、7つの短編集。湊さんらしい「毒」と、構成の企みと。

非常に読みやすくて、サクサク読んでしまいました。話によっては、ちょっと作りすぎな感じもしましたが。「猫目石」なんか、かなり無理があるような気もしましたが、怖かったです・・・。

湊さん本人とデビュー作「告白」がモデルになっているような話もありました。たしかに、あの小説は、後味悪かったですもんねえ(苦笑)

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