湊かなえ

2019年5月17日 (金)

ブロードキャスト

2899「ブロードキャスト」 湊かなえ   角川書店   ★★★

 

中学時代、駅伝選手として全国大会を目指していた町田圭祐は、最後の大会で全国への切符を逃した。私立の陸上強豪校に進学するも、思わぬ出来事で陸上の道を断たれた圭祐は、なりゆきで放送部へ。全く興味のない世界だったが、なぜかラジオドラマに出演することになってしまい・・・。

 

いろんな意味で、湊さんっぽくない物語でした。挫折した主人公。新しい道を開いてくれる友人との出会い。新しいことへの挑戦。流されるままにやってきたけれど、それは本当に自分のやりたいことなのか。そして、主人公の出す結論は・・・という、青春小説の王道のような話。ちょっと異色なのは、放送部が舞台で、ラジオドラマを作るという、あまりなじみのない題材だということでしょうか。

圭祐の葛藤はわかる気がするし、放送コンテストやラジオドラマ作りの過程などは興味深かったです。放送部の三年生たちのダメダメっぷりにも呆れつつ笑ってしまったし。彼女たちの変わりそうで変われないところがリアルでした(苦笑)

ただ、声優志望(?)の久米さんの存在感がイマイチだったかな、と。キーパーソンなはずなのに、意外と印象薄いというか・・・ストーリーのために必要だからいるって感じで、正也ほどの存在感がないような気がしたので。

毒のある湊さんもいいですが、これはこれで嫌いじゃないです。でも、最後まで「何か裏があるんじゃないか」と思ってしまいました(苦笑)

2018年6月21日 (木)

未来

2760「未来」 湊かなえ   文藝春秋   ★★★★

父を亡くしたばかりの章子に届いた一通の手紙。それは、20年後の未来の自分が、10歳の章子に向けて書いた手紙だった。精神的に不安定な母との二人暮らし。学校でのいじめ。章子は苦しみもがきながら、未来の自分への返信を書き続ける。きっと幸せになると信じて。

読んでいる間、何度か「うわーっ」と大声で叫びたい気持ちになりました。父の死によって、章子が不安定な生活を強いられるのがつらくて。あまりにもえげつないいじめの描写に耐えられなくて。章子や同級生の亜里沙が置かれた状況がやりきれなくて。なんで、この子達がこんな目に遭わなきゃならないの、と。

いったいあの「手紙」は何なのか。本当に未来から手紙が届くわけもなく、いたずらにしてはずいぶん手の込んだやり方で。・・・物語の後半、章子が知らない三つの「エピソード」によって、全ての謎は明かされます。亜里沙に何があったのか。手紙は誰が何のために書いたのか。そして、章子の両親はなぜふるさとを捨てたのか。どれも胸がつぶれるような思いがするエピソードでした。

そうして、ボロボロになった章子と亜里沙が迎えたラストシーン。思わず涙がこぼれました。おそらく、そうすることは決して楽なことではないのだろうに。もっとつらい思いをするかもしれないのに。でも、「未来」を信じる章子たちの声が、きちんと大人たちに届きますようにと願わずにはいられませんでした。

おそらく、現実に存在するたくさんの章子や亜里沙たち。私も大人として、その声を受け止めるべき存在なのだと、自分に言い聞かせつつ。

書店で見たときは、表紙のデザインがずいぶん地味だなあと思ったのですが、これ、卒業アルバムの表紙ですよね。それに気づいたとき、胸がいっぱいになりました。

2017年5月 1日 (月)

ユートピア

2571「ユートピア」 湊かなえ   集英社   ★★★★

海辺の町・鼻崎町で出会い、ボランティア基金「クララの翼」を設立した菜々子、光稀、すみれ。しかし、三人の仲がきしみ始め、同時にかつての犯罪が明るみに・・・。

なんとなく苦手な設定だなあと思いつつ、一気読みしてしまいました。

地元民の菜々子、夫の転勤で5年前に鼻崎町に引っ越してきた光稀、陶芸家で芸術家たちが住むエリアに引っ越してきたすみれ。はじめは接点のなかった三人が、イベントを契機に親しくなる。菜々子の娘・久美香は足が不自由で、車いす生活。そんな久美香と仲良くなった光稀の娘・彩也子が書いた作文が新聞に載ったことから、事態は動き出す。

菜々子も光稀もすみれも、けっして悪意はないのです。それなのに、歪んでいく関係が恐ろしかった。でも、こういうのって実際にありがちだよなあとも思ったり。何より怖かったのは、全てを知っていたのは誰だったのかということ。ザワッとしました。

2016年2月 9日 (火)

リバース

2412「リバース」   湊かなえ           講談社           ★★★

「深瀬和久は人殺しだ」…その手紙が届いた日から、深瀬の日常は反転した。思い当たることはただひとつ。学生時代の親友が事故死した事件だ。しかし、秘密は誰にももらしていないはずだ。そう、あの秘密を知っている仲間たち、誰一人として。

久々に来ましたねぇ、湊さん(苦笑)

主人公の深瀬に共感できないし、深瀬以外の3人もあまりいい感じがしなくて、なんだかなあと思っていたら、そうきましたか。

美穂子に対しても、なんだかスッキリしないままです。

でも、読んじゃうんですよね(苦笑)

後味の悪い話を読みたくない方には、おすすめしません。それから、読んでいるとコーヒーが飲みたくなるので、ご注意を

2015年7月 5日 (日)

絶唱

2320「絶唱」 湊かなえ   新潮社   ★★★★

阪神淡路大震災で双子の毬絵は亡くなった。その後、雪絵は「雪絵らしく」と言われて育ってきたが、二十歳を前に、ある決断をする。それは、「楽園」に行くことだった。

「楽園」「約束」「太陽」「絶唱」の4話から成る連作短編。トンガを舞台にしています。ちょうど今、トンガ国王の戴冠式とやらで、テレビで目にする機会が増えているので、おもしろい偶然だな、と。

でも、単にトンガが舞台なのでなく、その背景には阪神淡路大震災があります。そこで被災し、傷ついた人たちが、生きていく力を得るきっかけになるのが、トンガの地。それぞれの物語の主人公たちの人生がゆるやかにつながって、それぞれの「再生」が描かれます。

「楽園」は、新潮文庫の「Story Seller」で読んだことがありましたが、そこで登場した家庭科の先生・理恵子の物語が「約束」、雪絵が同宿した親子の物語が「太陽」、そして、これらを書いた作家の物語が「絶唱」という構成。あの一作から、こんなふうに物語が広がっていくんだ・・・と、感動しました。

「あの日、さよならさえ、言えなかった」「喪失と再生。これは、人生の物語」という帯のコピーの意味が、読んでみてずしりと重く響きました。

2015年5月 8日 (金)

物語のおわり

2286「物語のおわり」 湊かなえ   朝日新聞出版   ★★★★

北海道を旅する人たちの手から手へ渡される、未完の物語。あなたなら、この物語にどんな「おわり」をむかえますか?

「空の彼方」「過去へ未来へ」「花咲く丘」「ワインディング・ロード」「時を超えて」「湖上の花火」「街の灯り」「旅路の果て」の8編の連作です。

ちょっとネタバレしちゃうと、最初の「空の彼方」が小説として、それ以降の登場人物たちの手をわたっていくのです。それぞれの主人公は、自分の人生を考えつつ、「自分ならこうする」と考えてみる、という。そして、物語の行き着く先は・・・。

この構成というか、発想がうまいなと思うのです。湊かなえを好きかときかれたら、ちょっと答えにつまるのですが、新作が出ると、読みたいなと思ってしまう。「読みたい」と思わせるような設定のおもしろさがあるのです。

今回も、「空の彼方」が手から手へ渡って、それで終わりかと思うと、まだ仕掛けがあって。その結末に納得できるかどうかはともかく、きちんと輪が閉じられます。まあ、私はこのラスト、わりと好きです。ちょっと甘いかもしれないけれど。

好きな話は「過去へ未来へ」。それから、「花咲く丘」「ワインディング・ロード」もよかったです。

2015年3月16日 (月)

高校入試

2248「高校入試」 湊かなえ   角川書店   ★★★

「入試をぶっつぶす!」・・・入試前日、試験会場の教室にはりだされたメッセージ。いったい誰が?何のために? 新人教師の春山杏子は緊張の中、入試当日を迎える。そして、事件は起きた・・・。

ドラマは見ませんでした。が、どんな話なのか気になってはいました。小説はドラマとは結末が違うそうですね。

地元の名門・県立橘第一高等学校。そこで起こった事件が、入試を大混乱に陥れます。いや、混乱しているのは、教師たち。入試問題がネットにアップされていく。試験中に鳴ったケータイ。答案用紙の紛失。どなりこんでくるモンスター・ペアレント。ネットでの実況中継。そして・・・。

読んでいて怖くなりました。なんというか、先生たちの反応がいかにもリアルで。もっとも、高校の現場というのは知りませんが。でも、こんな感じなんだろうなあ、と。いい意味でも、悪い意味でも。

この犯人の意図については、ちょっと共感できないものがあったのですが、たしかに入試というのは、人生の一大事です。関わる人が真摯であってほしいと思うのは事実です。

それにしても、高校の先生たちも大変だ・・・。

2015年2月 1日 (日)

山女日記

2227「山女日記」 湊かなえ   幻冬舎   ★★★★

私の選択は間違っていたのだろうか・・・。自分なりに一生懸命生きていて、人生の岐路に立ったとき、どうすればいいのだろう。彼女たちは山で、その答えを見つける。

たしか、北村薫さんの「八月の六日間」と同じころに出版されて、「おや、こちらも山?」と思ったのをおぼえています。ようやく、図書館でゲットできました。

人生の岐路に立った女性たちが、山に登り、そこで何かを見つける・・・そんな連作。明快な答えが得られるわけでもないけれど、日常から離れて山に登ることで、気付かなかった何かに気づき、ほんのちょっとだけ生き方を変えられたり、自分に自信がもてたり。

本人は、まじめにやっているだけなんだけど、はたから見ると息がつまるような生き方をしている彼女たちが、少し肩の力を抜いて生きられるような気がする話が多く、後味がよかったです。

登場人物がリンクしていくのも、読んでいておもしろかったです。

湊作品では「花の鎖」でも登山に関わる場面がありましたが、湊さんも登山されるんでしょうか。私はまったくですけど、これは読んでいてたのしかったです。ただ、どうしても山に持っていくおやつとか、山で沸かして飲むコーヒーとか、そういうものに心惹かれてしまいました(笑)

2014年7月23日 (水)

豆の上で眠る

2154「豆の上で眠る」 湊かなえ   新潮社   ★★★

幼いころ、絵本を読み聞かせてくれた姉・万佑子。彼女が姿を消したあの夏は、結衣子にとっても悪夢のような時間だった。そして、無事に戻ってきた「姉」に違和感を感じ続ける結衣子は・・・。

『えんどうまめの上にねたおひめさま』という話、本で読んだ記憶がないのです。そういう話があるのは知っていますが・・・。しかし、アンデルセン童話なんて今は知らない子が多いのでしょうか。ちょっとショック。アンデルセンとかグリムとか、あたりまえのように読んでたのに・・・。

さてさて、誘拐(?)されて無事帰ってきた姉に対する疑惑を拭い去れない結衣子。まあ、展開はおおよそ読めるのですが・・・正直、「え、そこで終わり?」という感じでした。結局、「ほんもの」って何なのでしょう。この家族は、いったいどんな思いで暮らしてきたのか・・・。結衣子だけでなく、父も、母も、万佑子も。なんともいえないやりきれなさと、心がザラつくような感触が残る物語でした。

2014年7月 2日 (水)

白ゆき姫殺人事件

2147「白ゆき姫殺人事件」 湊かなえ   集英社   ★★★

美人の会社員が殺された。その容疑者は、同僚の女なのか。同僚、同級生、故郷の人々、家族。彼らの「証言」は予想外に展開していく。さらに、噂はネットでも拡散して・・・。

怖い怖い。

湊かなえ作品も最近はだいぶ後味がいいものも増えましたが、これはじんわり嫌な気分になりました。もっとも、それが狙いなのでしょうから、成功しているのでしょう。

関係者たちの語りと、ネットや週刊誌、新聞の情報などの「参考資料」とで構成されるという、実験的な(?)ミステリ。最初はあっちを読んで、こっちを読んでがめんどくさかったのですが、すぐにはまりました。

こんなブログをやっておいてなんですが、基本的にネット情報って信用できない、怖い、という感覚があるので、あんなふうに他人をさらすというのは理解できないのですが・・・。実際、珍しくないのでしょうね。

むごい殺され方をした三木典子。容疑者のように祭り上げられる城野美姫。それぞれを語る人たちの姿が、むしろ怖かったです。

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

「あ」行の作家 「か」行の作家 「さ」行の作家 「た」行の作家 「な」行の作家 「は」行の作家 「ま」行の作家 「や」行の作家 「ら」行の作家 「わ」行の作家 あさのあつこ いしいしんじ こうの史代 さだまさし その他 たつみや章 ほしおさなえ よしもとばなな アンソロジー 万城目学 三上亜希子 三上延 三島由紀夫 三木笙子 三浦しをん 三浦哲郎 三谷幸喜 上橋菜穂子 中山七里 中島京子 中田永一 中野京子 乃南アサ 乙一 井上ひさし 京極夏彦 伊坂幸太郎 伊藤計劃 伊集院静 佐藤多佳子 佐藤賢一 俵万智 倉知淳 光原百合 冲方丁 初野晴 加納朋子 加門七海 北大路公子 北山猛邦 北村薫 北杜夫 北森鴻 原田マハ 司馬遼太郎 吉村昭 吉田修一 向田邦子 坂木司 夏川草介 夏目漱石 大倉崇裕 大崎梢 太宰治 奥泉光 宇江佐真理 宮下奈都 宮尾登美子 宮部みゆき 小川洋子 小川糸 小路幸也 小野不由美 山崎豊子 山本周五郎 山白朝子 岡本綺堂 島本理生 川上弘美 平岩弓枝 彩瀬まる 恩田陸 愛川晶 戸板康二 日明恩 日記・コラム・つぶやき 有川浩 朝井まかて 朝井リョウ 木下昌輝 木内昇 朱川湊人 杉浦日向子 村山由佳 東川篤哉 東野圭吾 松本清張 柏葉幸子 柚木麻子 柳広司 柴田よしき 栗田有起 桜庭一樹 梨木香歩 梯久美子 森博嗣 森絵都 森見登美彦 森谷明子 横山秀夫 橋本治 氷室冴子 永井路子 永田和宏 江國香織 池波正太郎 津原泰水 津村記久子 浅田次郎 海堂尊 海外の作家 深緑野分 湊かなえ 漫画 澤村伊智 澤田瞳子 瀬尾まいこ 田中啓文 田丸公美子 畠中恵 石田衣良 磯田道史 福井晴敏 笹尾陽子 米原万里 米澤穂信 芥川龍之介 若竹七海 茅田砂胡 茨木のり子 荻原規子 菅野彰 菅野雪虫 藤沢周平 藤谷治 西條奈加 西澤保彦 角田光代 誉田哲也 辺見庸 辻村深月 近藤史恵 酒井順子 重松清 金城一紀 門井慶喜 阿部智里 青崎有吾 須賀しのぶ 額賀澪 高城高 高橋克彦 髙田郁 鷺沢萠

2019年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

カテゴリー