羽州ものがたり
1723「羽州ものがたり」 菅野雪虫 角川書店 ★★★★
東北の地・羽州の村長の娘・ムメは、都から来た小野春風と、息子の春名丸と知り合う。羽州の民に心を寄せる春風から読み書きを教わり、新しい世界を知ったムメは、春名丸との友情を育ててゆく。しかし、時は過ぎ、苛烈な税の取り立てに耐えきれなくなった羽州の民は、ついに蜂起する。それは、ムメや幼なじみのカラスたちを、否応なしに巻き込んでいく・・・。
ときわさんからおすすめされていた本、ようやく借りられました~。いやあ、おもしろかったです。まさに、私のストライクゾーンど真ん中。ときわさん、ありがとうございます。
私は奥州の人間なので、「羽州」の方は疎いです。「元慶の乱」って、全然知りませんでした。うーん、もっと勉強しなくては。
主人公のムメの聡明さ・たくましさは、実に心地よかったですが、彼女のまっすぐさに対して、二人の少年~都育ちの春名丸と、素性のよくわからないカラス~の配置が、絶妙でした。
特に、カラス。後半、彼を利用するだけのジオに心酔していくカラスは、自分では物事を考えられないから、「正しいこと」を示してほしかったのだと告白します。あまりにも穢れのない心をもったカラスは、それでも「自分の頭で考える」ことをしなかったために、生きる道を誤りそうになった・・・これは、現代の私たちにも通じるのではないでしょうか。「どうすればいいか、教えてほしかった。言ってほしかった」というカラスに、ムメは言います。
「そんなこと誰も言ってくれないよ」「考えるしかないんだよ。一緒に考えよう」
考えるために必要なこと。それは、広い知識であり、考えようとする意志であり・・・。それを、この物語に託して語る作者の思いに、すごく共感したのでした。
菅野雪虫さん、初読みでしたが、「ソニン」を書いた方なのですね。すごく読みたいのですが、いまだ手に取れずにいるシリーズです。やっぱり読まなくては!!
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