くれなゐの紐
2879「くれなゐの紐」 須賀しのぶ 光文社 ★★★★
死んだと思っていた長姉のハルは生きている? 手がかりを追って田舎を出奔した仙太郎は、浅草の紅紐団という少女ギャング団の長・操に拾われる。ただし、女装するという条件で。男装の操をはじめ、副団長の倫子、女給をしている絹、花売りのあやたち、紅紐団の女性たちと関わる中で、仙太郎はそれまで見たことのない角度から世界をのぞくことになり・・・。
大正末期の浅草を舞台にした物語。かつては賑わいの中心であったろう浅草十二階こと凌雲閣はすっかり飽きられ、もはや展望台に登る人もまれ。そんな時代です。
仙太郎の上の姉・ハルは、優秀ながら女ゆえに上の学校に進めず、奉公に。やがて縁談が持ち上がったものの、嫁入りの矢先に崖から飛び降りてしまう。そんなハルが生きているらしいと知った仙太郎は、一路東京へ。そこでふとした縁で拾われたのが、今をときめく紅紐団。強い絆と操のカリスマ性に結び付けられた少女たちは、さまざまな手段で収入を得て、浅草で生き延びていた・・・というのが、基本設定。
とにかく、登場する女性たちがそれぞれに魅力的なのですが、皆、とても痛々しい。そして、女性特有の閉塞感が、読んでいてしんどい。前半は彼女たちの生き方と、それを見つめる仙太郎がどうにも歯がゆくて、爽快感がないのがつらかったのですが。
後半、仙太郎が内なる怒りに気づくと同時に、物語が大きく動き出して、第五章「白白明」はまさに息もつかせぬ展開! いや、だからといって彼女たちの人生に一気に光さすわけでなく、仙太郎がどう頑張っても、一朝一夕に何かが変わるわけでもないのだけれど。
それでも、そんな生きる術しか持たない女性たちがいることを仙太郎が知ったこと、そしてあやが新しい人生をスタートしたことは、救いでした。
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