伊集院静

2013年12月22日 (日)

ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石

2073「ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石」 伊集院静   講談社   ★★★★

正岡子規と夏目漱石。日本近代文学史に輝かしい軌跡を残した二人は、かけがえのない友人同士であった。べーすぼーるを愛し、人々に愛され、奇跡のような35年の人生を全うした子規の人生を描く、青春小説。

司馬遼太郎「坂の上の雲」を読んだとき、一番印象に残ったのは、主人公の秋山兄弟ではなく、正岡子規の鮮烈な人生でした。子規は、全8巻の3巻目の冒頭で死んでしまうのですが。とにかく、否応なしに惹かれ、以来、ずっと追いかけ続けている人物なのです。

さらに、漫画「先生と僕」を読むに至って、子規と漱石の関わりにも興味をもつようになりました。だって、あの子規とあの漱石ですよ?(笑) 

というわけで、この本の存在を新聞広告で知った瞬間、「読みたい!」と。買ってしまいました。

最初は期待したほどではないかな・・・と思いながら読んでいましたが、後半、子規が根岸に移り住み、病状の悪化で寝たきりになったあたりからが、凄味が増したというか。資料を読んで書いてます・・・という感じがしないでもなかったですが。それでも、子規がなくなる前後は、ついつい泣かされてしまいました。

それにしても、この二人が出会わなかったら、日本の文学はどうなっていたのか、と。特に、子規がいなかったら、日本の近代文学は生まれてこなかったのかもしれません。それほどの「巨人」を、一人の青年として描いた物語が、これです。興味がおありの方は、どうぞ。

2011年9月21日 (水)

伊集院静の流儀

1760「伊集院静の流儀」 伊集院静   文藝春秋   ★★★

日本人の流儀、人生の流儀、恋愛の流儀、家族の流儀、青年の流儀・・・コラムやエッセイ、対談、新聞広告や新幹線車内誌の連載等々、伊集院静の粋を集めたムック。

なぜ今、伊集院静なのか。

私が伊集院静に注目したのは、震災がきっかけでした。仙台在住の作家である伊集院静は、被災地サイドから感じたことを発信していました。それを読んで、イメージよりずっと骨太な感じを受けて、なんだかおもしろそうな人だなあ、と。

最近、ちょこちょこ読んでみましたが、言っていることは至極真っ当。そういう真っ当なことを言える大人の男って、いまどき珍しいのだろうな・・・というのが、私の結論。それゆえ、伊集院静は読まれるのでしょう。

やはり白眉は、震災について書かれた「いつかその日は訪れる」ですが、ちょっと気になったというか驚いたのは・・・村山由佳との対談。村山由佳は、一時熱狂的にはまって、今はすっかり遠ざかっている作家さんですが・・・そうかあ、鴨川から引っ越したんだ、と。やはり作家という人種には、平穏な生活だけではやっていけない人たちが確実にいるのだなあ、と変なところで感心してしまいました(苦笑)

2011年9月10日 (土)

大人の流儀

1753「大人の流儀」 伊集院静   講談社   ★★★

こんなとき、大人ならどう考え、どう振る舞うのか。あまりにも「大人」になれない現在の日本において、人の在り方を説く伊集院流「流儀」とは。

私が「いねむり先生」を読んだのを知った友人が、「おもしろかった?」と聞くので、「まあまあかな」・・・想像してたのとちょっと違ったんだよね、もっと夏目雅子のことが書いてあるかなあと期待したんだけど、という話をしたら、「私が読んだ本に書いてあったよ」。

というわけで、借りました。そういえば、書店にいっぱいありました、これ。手に取ってみることもしませんでしたが、そうか、これに書いてあったのか、と。

「週刊現代」に連載していたエッセイ。その一節に「妻と死別した日のこと」があり、さらに、「愛する人との別れ~妻・夏目雅子と暮らした日々」という章が設けられています。今まで語ろうとしなかった夏目雅子と過ごした時間。その一端だけとは言え、伊集院静にとって、その時間がどれほどかけがえのないものだったのかが伝わってきます。

もっとも、このエッセイはそれがメインではなくて、あまりにも情けない今の日本人の在り方に、筆者が文句を言っているという感じです。まあ、ありがちな企画ですが・・・それは筆者の価値観なので、深くうなずく部分もあれば、「あっそう」と読み流した部分もあります。でも、以前はこういうことをバリバリ書くおじさんってたくさんいた気がするのですが、最近はあんまりいなくなりましたかね。みんなソフトな路線になっちゃって。

この本だけ読んだら「ふうん」で終わったかもしれませんが、「いねむり先生」を読んでいたので、筆者の言葉のバックグラウンドが見える気がして、なかなか興味深かったです。

2011年8月 5日 (金)

いねむり先生

1736「いねむり先生」 伊集院静   集英社   ★★★

女優だった妻をなくし、自らの内なる嵐に翻弄される「ボク」が知り合った、有名作家の「先生」。ギャンブラーの神様と称された先生との交流を通して、ボクの心は癒されていった。

私小説、自伝的小説というものを読むとき、こちらには好奇心と一抹のうしろめたさがあるのを否定できません。まるで週刊誌の記事を読み終えたあとのように「ふうん」で終わるものもあれば、作家のプライバシーなど二の次になり、何かが残るものもあります。

これは・・・やや後者寄りでした。

伊集院静の作品は、ほとんど読んでいません。ただ、震災後、仙台在住という立場からのメッセージがメディアで取り上げられることが多く、へえ、こういう人だったのか、と。それがなかったら、この小説も読んでいなかったかもしれません。私が知っているのは、「夏目雅子の夫だった人」ということだけです。

この小説を読んでいると、かなり険しい人生を送ってきた人で、むしろ「夏目雅子の夫」だった時期は、この人にとってかなり平穏な時間を過ごせた、数少ない時期なのではなかったのかと思えてきます。

その平穏を失った「ボク」が、「先生」と出会い、永遠に別れるまでの物語。「先生」とは、色川武大のこと。「いねむり」をしてしまうのは、ナルコレプシーという病気のせいなのですが。色川武大も、阿佐田哲也も未読ですが、吉行淳之介だったか北杜夫だったかが、よくこの人のことを書いていたので、なんとなくなじみがありました。一種、奇人のようにも思える人ですが、不思議なくらい皆に愛され、「ボク」もまたその魅力のとりこになっていくのです。

「先生」は、「ボク」の病を理解してくれ、小説を書き続けることをすすめてくれ、大切な人々を失っていく「ボク」の孤独を和らげてくれた人です。それを、淡々と描く筆が、かえって「ボク」の思いの深さを物語っているようでした。

妻を亡くしただけでもじゅうぶんすぎるほどなのに、「ボク」の抱えているものはあまりにも大きく・・・そんじょそこらの人では、とうてい太刀打ちできません。それを理解してくれるのは、「先生」だけ。「ボク」にとって、「先生」がかけがえのない存在になっていくのが、ひしひしと伝わってきます。ああ、そうだったのか、と。

伊集院静もですが、色川武大も読みたくなってしまいました。

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