初野晴

2017年3月 3日 (金)

ひとり吹奏楽部

2544「ひとり吹奏楽部」 初野晴   角川文庫   ★★★★

清水南高校吹奏楽部の面々は、いずれも曲者ぞろい。ふだんはチカとハルタに振り回されている、彼らの素顔は・・・。「ハルチカ」シリーズ番外篇!

カイユと1年生の後藤朱里の「ポチ犯科帳」、芹澤と前部長・片桐の「風変わりな再会の集い」、マレンと演劇部部長・名越の「巡るピクトグラム」、成島の「ひとり吹奏楽部」に、掌編「穂村千夏は戯曲の没ネタを回収する」の計5編。

普段は脇に回っているキャラが活躍するのが、スピンアウトの醍醐味ですが、シリーズ読者なら、これは読まずにいられないでしょう。どいつもこいつも、おもしろいったら。特に、芹澤×片桐はいい取り合わせ。

読まなくても本編には影響しませんが、シリーズファンにはやっぱり読むことをおすすめしたいです。

さくさく読み進めていて、最後の「ひとり吹奏楽部」にやられました。思わずうるっと。そうなんです。このシリーズ、そういうとこ、あるんですよね。そこが好きなんですけど。

どうやら新年度は頼もしい後輩が入ってきそうな気配だし(しかし、ひと騒動あるんだろうな)。シリーズの今後がますます楽しみになってきました。

2017年2月11日 (土)

惑星カロン

2534「惑星カロン」 初野晴   角川文庫   ★★★★

文化祭が終わり、清水南高校吹奏楽部の3年生も引退した。いよいよ部を引っ張る代になったチカやハルタたち。まずは目の前にせまったアンサンブルコンテストに向けて練習を重ねるが、伸び悩む(?)チカの前に、「呪いのフルート」が・・・。

「チェリーニの祝宴」「ヴァルプルギスの夜」「理由(わけ)ありの旧校舎」「惑星カロン」を収録。ハルチカシリーズ第5弾。

今回は、「呪いのフルート」に始まって、怪しい音楽暗号、密室ならぬ鍵全開事件、そして、人間消失事件という謎。いつもながら、吹奏楽に一生懸命なチカたちの「寄り道」が語られます。

吉田大助さんの解説が的を射ていて、それ以上のことは書ける気がしないのですが・・・。感じたのは、このシリーズがじりじりと時を進めていっているということです。もともと、語り手(たぶん、チカ)が過去を回想する形で展開する物語なのですが(「イントロダクション」に明記されています)、徐々にこの物語のゴールに近づいていっていることを、痛感させられた今回でした。

がむしゃらに突っ走ってきたチカも、先輩の引退と、やがて入ってくる後輩の存在を目の当たりにして、自分たちの「ラスト」を意識し始めます。また、最大の謎であった「世界的な指揮者になるはずだった草壁信二郎は、なぜ南高の先生をしているのか」ということも、少しずつ明らかになりそうな気配が。

そんなこんなで、いつもとはまた少々違った意味で胸苦しさを感じる巻でしたが、「惑星カロン」のラストでは、思わず涙が・・・。いや、自分でもビックリしたんです。いきなり泣けてしまったので。自分の中にも、そういう純粋さがまだあったのか、と(苦笑) 

ところで、映画化されるんですよね。すごく気になっているのは、まさか、ありがちな吹奏楽ものの青春映画になるんじゃないですよね?ということ。これは、ミステリだというところが肝なんであって、ただの青春ものにしたら許さんで~と。

ただ、映画化にあわせてなんでしょうけれど、続刊が今月文庫書下ろしで刊行というのは、ちょっとうれしいかもです。

2013年11月30日 (土)

千年ジュリエット

2069「千年ジュリエット」 初野晴   角川文庫   ★★★★

ハルチカシリーズ第4弾。

今回は、チカとハルタの清水南高の文化祭のお話。女スナフキンこと山辺真琴が登場する「エデンの谷」、アメリカ民謡部(という名のハードロック&へヴィメタ)の発表をめぐる「失踪ヘビーロッカー」、あの演劇部の通し稽古にチカとハルタが巻き込まれる「決闘戯曲」、そして、文化祭にやってきた珍客のお話「千年ジュリエット」。

もう、学園もので文化祭といったらこれでしょう!というネタがてんこ盛りで、堪能いたしました。個人的には、やっぱり演劇部好きですね。あの「退出ゲーム」ではまりましたから。

生徒会長の日野原氏をはじめ、清水南の怪しいキャラも総出演です(笑) いや、アメ民の甲田とか、さらに増えた感も。

チカとハルタの夫婦漫才を楽しんでいると、不意打ちのように重いものが降ってきます。いつものことですが。明るい青春もののようでいて、どうにもやりきれない現実を突きつけられるのです。でも、そこで立ち止まらないチカたちのエネルギーに、いつも救われるのですが。

しかし、シリーズ最大の謎は、草壁先生の過去でしょう。教師になる前の彼に、いったい何があったのでしょうね。

2012年8月15日 (水)

空想オルガン

1904「空想オルガン」 初野晴   角川文庫   ★★★★

夢の普門館への第一歩。地区大会に初めてエントリーした清水南高校吹奏楽部。チカもハルタも、それぞれにベストを尽くして大会に臨む・・・はずだったのに、またしても事件に巻き込まれてしまう。果たして彼らは無事に解決して、コンクールの舞台に立てるのか。

ハルチカシリーズ3作目。待望の文庫化です。

今までの2巻で、無謀ともいえる「めざせ普門館」から始まって、一人二人と部員が増え・・・とうとう、コンクールです。とはいえ、コンクールの演奏場面はほとんどなく、そこに至るまでにチカたちが巻き込まれた「事件」が描かれます。

一番印象的だったのは、異色のライバル校の不可思議な言動に振り回される「十の秘密」。むちゃくちゃなようでいて、彼女たちの一途さに胸が痛くなりました。

それから、最後の「空想オルガン」。いつものことながら、この作品は軽いようでいて、重い題材を扱うことが多いので・・・。決していい人ではなかった「彼」が抱えていた思いに、ちょっと泣きそうになってしまいました。

「これは、人生に一回しかない貴重な時間について書かれた物語である。」・・・文庫解説の杉江松恋さんの言葉です。まさに、至言ですね。

2011年9月18日 (日)

初恋ソムリエ

1757「初恋ソムリエ」 初野晴   角川文庫   ★★★★

弱小吹奏楽部も徐々に部員が増えてきたが、憧れの普門館を目指すには、まだまだ人材不足。悩めるチカとハルタの前に現れた謎のクラリネット吹き。その存在が、吹奏楽部にまた新しい風を呼ぶことに・・・。

「退出ゲーム」に続く、ハルチカシリーズ第2弾。「スプリングラフィ」「周波数は77.4MHz」「アスモデウスの視線」「初恋ソムリエ」の4編。

元気娘のチカと、幼なじみのハルタのコンビは相変わらず健在です。さらに、成島さんやマレンといった前回加入してきたメンバーもいい味出していて、読み始めたら一気でした。少しずつ味わって読みたかったのに(苦笑)

前作で懲りて(?)いるので覚悟して読みましたが・・・日常の謎系青春ミステリなのに、とりあげているテーマの重いこと。学生の頃って、異空間に隔離されているような気がするけれど、そうじゃないのですよね。社会と、世界と、密接につながっている。そのことを忘れちゃいけないと言われているような気がしました。

そして、その重さにつぶされないように、物語を支えているのはチカの存在です。無駄にパワフルな彼女ですが、決して人を傷つけない。おそらく、ハルタたちも、私たち読者も、チカに救われているのでしょうね。

この中に宮沢賢治に関わる話があったのですが・・・。ちょうど、これを読む直前、夫と「宮沢賢治の名前の付け方って独特だよね。何が元なんだろう」という話をしていたので、「おお!」と。ああ、やっぱりそれだったのか、と。最近、こういうシンクロニシティがよく起こります。なんとなく、不思議な気分でした。

2010年9月 7日 (火)

退出ゲーム

1560「退出ゲーム」初野晴   角川文庫   ★★★★

高校1年生のチカは、廃部寸前の吹奏楽部のフルート奏者。そこで再会した幼なじみのハルタはホルン。草壁先生の指導のもと、どうにかこうにか吹奏楽の練習に取り組んでいた二人には、なぜだか次から次へと難題が降ってきて・・・。

『ハルチカ』シリーズっていうんですね。ずっと気になっていたの、やっと読めました。

吹奏楽もずいぶんメジャーになりましたね。まあ、私も好きですけど。もっと音楽の才能があったら、本当は吹奏楽部に入りたかったくらい。で、吹奏楽部・青春もの・ミステリ・・・とくれば、ストライクど真ん中という感じで。

まず、体育会体質のチカと、探偵役のハルタのコンビがいいです。ハルタはなんとも頼りなさそうなんだけど(ただし、見てくれはすごくいい)、謎解きにかけては天下一品。そして、まっすぐ直球勝負のチカと、実は「三角関係」という・・・。

事件そのものは日常の謎系ですが、けっこう重いものが多いです。どこにでもいそうな普通の高校生の日常が、そういうものにつながっていることに驚かされますが・・・そんなものかもしれません。

一番好きなのは、表題作「退出ゲーム」。演劇部と吹奏楽部が即興劇で対決するのですが・・・丁々発止のやりとりをするエチュードが実におもしろかったです。お芝居好きなもので。この事件の「動機」が、とてもいいですね。

これがシリーズ化されたのは当然という気がします。続編読むの、楽しみです。

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