津原泰水

2019年6月 5日 (水)

11

2908「11」 津原泰水   河出書房新社   ★★★★

 

津原泰水が描き出す、11の異界。「五色の舟」「延長コード」「追ってくる少年」「微笑面・改」「琥珀みがき」「キリノ」「手」「クラーケン」「YYとその身幹(むくろ)」「テルミン嬢」「土の枕」を所収。

 

幻冬舎との文庫化をめぐるトラブルで話題になった津原さんですが、そう言えばこれ未読だったなあ、と。刊行当時、かなり評価が高かったのに、すっかり忘れてたよ・・・と、手にとって、ぶっ飛びました。これ、すごい。

冒頭の「五色の舟」で、悪夢のような、それでいてものすごく美しい映像のような、奇妙な世界に誘われ、作者が紡ぎだす異界をさまようような読書を久々にしました。ジャンルとしてはSFになるのでしょうか。私のイメージするSFとはまたちょっと違う気が・・・。ホラーでもないし、うーん。

とにかく、禍々しいし、生理的に嫌悪感を抱く部分も少なくないし、もの悲しい気持ちになるし。それでいて、なんだか眼を離せないというか、読むのをやめられないのです。

恐ろしいのは11編それぞれに作品のもつ雰囲気とか、文体とか、違うのですが、作者がそれをきっちり計算してやっている(らしい)ということ。

「五色の舟」「琥珀みがき」「土の枕」といったあたりが、特に好きです。

 

なお、幻冬舎との出版トラブルについては、非は出版社側にあると思っていますし、「売れない作家」というレッテルを貼って人を見下そうとする出版人や作家は軽蔑します。

2014年5月29日 (木)

ルピナス探偵団の憂愁

2131「ルピナス探偵団の憂愁」 津原泰水   創元推理文庫   ★★★★★

私立ルピナス学園高等部で出会った彩子、キリエ、摩耶、そして祀島。卒業から数年後に、摩耶は亡くなってしまう。生前の彼女の不可解な言動の意味を、彩子たちは解き明かそうとするのだが・・・。

これは・・・。ミステリとしてはもちろんですが、連作短編としての構成がすばらしい。

彩子たちが25歳の摩耶の死「百合の木陰」から始まって、大学3年の時の「犬には歓迎されざる」、大学2年の時の「初めての密室」、そして彼らがルピナス学園を卒業する時の「慈悲の花園」と、時間をさかのぼっていきます。

ただ時間を逆行するだけでなく、そうすることで彼らの絆の深さと、摩耶を失った時の彩子たちの悲しみの深さが伝わってくるのです。また、最終話での彼らの「誓い」が、どれほどその後の彩子たちにとって大事なものだったか・・・。

もし、これを時系列に並べていたら、こんなふうに心に強く響く物語にはならなかっただろうと思うのです。そういう意味で、「やられた!」と感じました。思わず、彩子たちと一緒に泣きそうになりましたもの、最後の最後で。

この構成の妙については、石井千湖さんの解説で詳しく語られていますので、ぜひそちらを。

個人的には、ストライクど真ん中の青春ミステリでした。

2014年4月 5日 (土)

ルピナス探偵団の当惑

2108「ルピナス探偵団の当惑」 津原泰水   創元推理文庫   ★★★★

ルピナス学園高等部の生徒・吾魚彩子(あうお・さいこ)は、刑事の姉・不二子に殺人事件の推理を押し付けられる。友人のキリエと摩耶、さらには彩子が思いを寄せる祀島龍彦(しじま・たつひこ)も巻き込んで、彩子がたどり着く真実とは。

「冷えたピザはいかが」「ようこそ雪の館へ」「大女優の右手」の3篇を収録。

ずっと気になっていたシリーズの1作目。書かれたのが1994年から翌年にかけてということで、携帯電話も登場しません。それがまた、いい感じなのです。

それぞれのキャラが立っていると同時に、ミステリとしても正統的な本格もの。ミステリ好きにはこたえられないでしょう。実際、じゅうぶんに楽しめました。しばらくこんなミステリは読んでなかったなあという印象。トリックは苦手なのですが、その辺は彩子とキリエたちのやりとりや、祀島の独特なキャラに助けられて読みました。

続編もあるので、そちらも読もうと思います。

2012年2月10日 (金)

たまさか人形堂物語

1828「たまさか人形堂物語」 津原泰水   文春文庫   ★★★

会社をリストラされ、祖父の店を継いだ澪。その店とは、人形店。もちろん素人の澪には経営など難しく、今は修復中心の店になっている。というのも、たまたま居ついた職人たちがいるからだ。プライベートを一切明かさない師村と、人形マニアの冨永。腕のいい二人のおかげで、なんとか店を続けている澪だったが・・・。

最近気になっている作家さん。「ブラバン」とか、「ルピナス探偵団シリーズ」とか、「11」とか・・・で、わりと短めでとっつきやすそうなこれを購入。

澪を主人公に、「玉阪人形堂」を舞台にした連作短編。もっとほわほわした物語かと思っていましたが、ヒリヒリするような部分がどの話にもあって・・・ちょっと意外でした。人形については全然詳しくないですが、おもしろかったです。ちょっと興味をもちました。

師村さんと冨永くんという二人の「従業員」。これが全く正反対のキャラでいて、なかなかいい味出しています。無口な師村さんと、自由奔放な冨永くん。でも、それぞれにすばらしい人形づくりの技術をもっていて、澪とお店を守っているのです。

澪は、これといって強い個性をもたないキャラですが、この物語では、それが良いのでしょう。彼女が変に知ったかぶりをしないで、冨永くんにからかわれたり、師村さんに教えられたりするのに、読者は共感できるので。

これ、続編の構想があるそうなので・・・必ず読もうと思います。

しかし、人形ってかわいいけど、怖いです・・・。以前、ある人形博物館で、日本人形コーナーに入った時、怖くて怖くて、急いで逃げ出してしまったことがあります。あの「怖さ」の正体はなんだったんでしょう。

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