瓦礫の中から言葉を わたしの<死者>へ
1843「瓦礫の中から言葉を わたしの<死者>へ」 辺見庸 NHK出版新書 ★★★★★
震災後、大量の「震災関連本」が出版されています。その中で、どれを読むかというのも、その人の在り様を示すのだろうなと思っています。だから、その類の本の感想をここに記すのは、私にとってはけっこう勇気の要ることなのですが・・・。
辺見庸さんは石巻市の出身。故郷を襲った今回の災厄をどう受け止め、どう表現するか。「言葉」」でひたすら震災に向き合おうとした一冊です。
辺見さんといえば、「もの食う人びと」。あの中のチェルノブイリに生きる人の項は忘れられません。その辺見さんが震災をどのようにとらえたのか。
読んでいる間中、頭をガンガン殴られているような気分でした。今まで自分がどれだけ安易に言葉を使っていたのか、どれだけ安きに流れていたのか、それを突きつけられた気がしました。決まりきった表現、熟慮されることのない言葉(これを書いている今も)。そうすることで、思考まで安きに流れてしまっていること。・・・自分が恥ずかしくなりました。
これしかないという言葉を探し、選び、吟味し、発する。その意味を、あらためて考えさせられました(ああ、これもまた定型文だ・・・)。
この本のキーワードは
「言葉と言葉の間に屍がある」
「人間存在というものの根源的な無責任さ」
だそうです。
もちろん、この本は、あくまでも辺見庸という一人の人間の「私記」であり、すべてに頷けたわけではありません。そして、思想的な一面であり、「そんなことより生きていくことで精一杯なんだ!」というのもまた真実だと思います。
ただ、私がずっと感じていた震災後のCM放送に対する違和感など、これを読んで納得できたこともたくさんありました。
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