さだまさし

2013年8月28日 (水)

かすてぃら

2042「かすてぃら」 さだまさし   小学館   ★★★★

副題「僕と親父の一番長い日」。 父の死を描いた、私小説です。「精霊流し」の系列です。

NHKでドラマ化されていましたね。例によって、ドラマは見なかったのですが。

「精霊流し」の時は、初の小説ということで、たぶんさださんも力が入っていたし、こちらも「歌手の書く小説ってどんなもんじゃい」と、半ば疑ってかかるようなところがありました。今はさださんの筆も滑らかで、こちらもさださんの書き手としての力を信頼しているので、非常にすんなりと、気持ちよく読めました。

しかし・・・こういう親父がいたら、とっても嫌かも(笑) 信じられないような行動をする人だったようですが、なんというか・・・邪気がないのでしょうね。だから、みんなに愛される。こうして読んでるぶんには笑ってしまいますが、自分の身内だったら・・・(笑)

でも、さださんにも、やはりお父さんと同じ血が、流れているのですね。

最後の場面、思わずもらい泣きしてしまいました。

ただ・・・本としては、誤植?がちょっと多いです。初版本だったから、よけいかもしれないけど。読む方はテンション下がるので、きちんとチェックしてほしいものです。

2012年10月13日 (土)

はかぼんさん

1923「はかぼんさん」 さだまさし   新潮社   ★★★★

「良え子にしとかんと、はかぼんさんが来るえ・・・」 京都の旧家に伝わる「はかぼんさん」とはいったい・・・? たまたま往来で見かけた奇妙な「儀式」の意味とは? 全国各地でめぐりあった奇妙な話をつづった、現代の奇譚集。

「精霊ながし」「解夏」が予想外によかったさだまさしですが、最近はすっかりご無沙汰していました。こうやって読んでみると、すっかり作家としても定着した感じがします。もともとさださんの歌詞にはストーリーがあったので、物語を書くことにもあまり違和感はないのですが。

副題は「空蝉風土記」。各地を旅している作者が出会った「不思議」を記録するという趣向です。

京都の旧家を舞台にした「はかぼんさん」、能登の「夜神、または阿神吽神」、信州の「鬼宿」、津軽の「人魚の恋」、四国の「同行三人」、長崎の「崎陽神龍石」の六話。

一番インパクトがあったのは、やはり表題作。これで一気に世界に引きずり込まれました。真夏の京都で、たまたま見かけた奇妙な「儀式」。柳の木の下にたたずむ正装の着物姿の夫婦と、そこに現れる白装束の少年。それがいったい何を意味するのか・・・。非現実的な情景なのに、その様子がまざまざと目に浮かぶようでした。

一番好きだったのは、「夜神~」です。タイトルがイマイチですけど(苦笑) 能登の「神寄せ」という神事の話。その神事の意味がわかった瞬間、思わず涙ぐんでしまいました。

もともと「不思議な話」というのは大好きなので、こういう話にはすぐ食いつく私ですが、それだけでなく、さださんのなめらかな文章が非常に心地いい作品です。それぞれの土地の空気が織り込まれているのも素敵です。どの話も、ラストがちょっと甘いかなあと思うのですが、変に後味が悪いよりはこれでいいのかもしれないです。

2007年7月 8日 (日)

眉山

1137「眉山」さだまさし   幻冬舎文庫 ★★★★

 東京で働く咲子は、徳島に一人住む母が癌で余命いくばくもないことを知る。徳島に帰った咲子は、母が「献体」を申し込んでいたことを知り、驚く。残された日々の中、咲子はそれまで知らなかった母の生きざまを知ることになる。

 映画化されたのがわかる気がします(映画はみてません)。非常に映像的というか・・・クライマックスの阿波踊りのシーンは、まさに映画を見ているようでした。さださんは、こういうのうまいですね。「精霊ながし」のクライマックスも印象的でしたが、これもまた・・・。車椅子の二人がすれちがうところは、映像にしたらとてもすてきでしょうね。

 さて、これは読むのになかなか勇気がいりました。この年になると、親の死を扱うものはちょっと冷静に読めません。文庫化されてすぐに買ったものの、なかなか手に取れませんでした。
 もっとウエットなのかな・・・と予想してましが、思ったよりは抑制された筆で描かれていました。やはり、「神田のお龍」の異名をもつ母のきりりとしたたたずまいが、そうさせていたのかもしれません。
 愛した人の子を産み、その人の故郷で暮らし、それでもその人の妻となることはなかった母の人生。しかし、そんな翳を感じさせない彼女の生き方を知れば知るほど、咲子が母を誇りに思い、自らの人生も輝かせていく過程がよかったです。
 「ようやく母に辿り着いた。」という一文が、ずんと心に響きました。
 最後の寺崎の解剖実習の感想文にも泣かされました。

さくら > さだまさしさんらしい、透明感ある母と娘のストーリーでしたね。ただ、私は映画→原作の順番だったので、どうしても宮本信子さんが出てきて・・。原作だけだったら、私は凛としているけれどもうちょっと柔らかな人をイメージしていたような気がします。 (2007/07/09 22:53)
まゆ > さくらさん、そうそう、いかにもさださんらしい物語でしたね。宮本信子さんは嫌いじゃないですが、ちょっとイメージが違うかな、と。クライマックスの阿波踊りの場面は、どんなふうに映像化されていたのでしょう。ちょっと気になります。 (2007/07/10 21:06)

2003年12月18日 (木)

解夏

403「解夏」さだまさし   幻冬舎文庫   ★★★★

東京で小学校の教師をしていた隆之は、自分が難病に冒されていることを知る。近い将来、確実に失明すると知った隆之は、職を辞し、故郷の長崎へ帰ってきた。

 表題作「解夏」のほか、「秋桜」「水底の村」「サクラサク」を収録した短編集。
 美しい小説だ、とつくづく思いました。この人の描く物語を一言で表すならば、「美しい」という言葉がぴったりだ、と。それは、キレイゴトだという意味ではなくて。人間の醜さを描いても、それでもやはり「美しい」という言葉に集約される気がするのです。最近とみに聞かなくなった「珠玉の短編」という言葉を冠したいと思ったりもします。
 「解夏」とは、仏教用語で、雨期(夏)の間の行が終わる日をさすのだそうです。その言葉が隆之の運命とあいまって、深い深い意味を持って浮かび上がってきます。物語の最後に隆之は失明してしまうのですが、その場面は読んでいて鳥肌が立ちました。ものすごい密度でした。
 ほかの物語、いずれもよかったのですが、泣いてしまったのは「サクラサク」でした。家族の再生と言ってしまうとありきたりなテーマですが、惚けてしまった父親の一言一言が、胸にしみました。
 刊行からわずか1年で文庫化・・・。映画化にあわせてってことなんでしょうけど、あまりの早さにビックリしました。文庫化を待ちわびていた私には、とってもうれしかったんですけどね。

トントン > さだまさしさんって歌手だしなあ・・・と今まで敬遠していたんですが本プロでも評価高いですよね。映画化にもなるから気になっています。 (2003/12/18 21:45)
羽鳥 > 映画の予告の「あなたが失明するとしたら、最後に見たいものは何ですか」という言葉が印象深くて、凄く気になっています。しかし結構最近(去年?)刊行された本だったんですね。ずっと前のものかと思ってました。読みたいなぁ・・・ (2003/12/19 00:44)
ざしきぼっこ > まゆさんも読まれましたね。4編ともいい作品で、好きなのですが、やっぱり表題作だけが映画化されるんでしょうか。
>トントンさん。さだまさしは歌手のイメージが強いですが、作詞家でもあるので、やっぱりプロの文筆業なのだと思いますよ。一度読まれてみてはいかがですか。 (2003/12/19 12:30)
ココ > 私は「秋桜」が印象に残っています。舅の優しさとラストで見せた姑の本当の気持ちがよかったです。本当に美しい小説ですね。読んでいてとても気持ちいいです。 (2003/12/19 12:38)
まゆ > トントンさん、私も最初はそう思っていたんですよ。でも、小説もすごくいいです。「精霊流し」もとってもよかったですよ。
羽鳥さん、これはおすすめです。映画のコピーはちょっとセンチメンタルな匂いがしないでもないですが、小説は感傷的になりすぎず、そのへんのバランスがすごく私好みでした。おすすめしますよ。
ざしきぼっこさんも高い評価をされていたので、ずっと読みたいなあと思っていたのですよ。早い文庫化は嬉しい驚きでした。そして、とってもよかったです。映画はたぶん表題作だけなんでしょうね。
「秋桜」の最後のお姑さんの啖呵は気持ちよかったですね。ありがちな展開じゃないか・・・と思いつつ、感動している私がいました。 (2003/12/19 20:46)
れんれん > まゆさん読まれたのですね。私は「水底の村」に感動しました。物干し台や埋められた泉屋のクッキーの缶が目に浮かぶようでした。
(2003/12/20 12:07)
まゆ > はい、文庫化と聞いて、本屋さんに駆け込みました。「水底の村」もよかったですねえ。4編すべていい作品ばかりで、大好きです。 (2003/12/21 16:57)

2003年8月 9日 (土)

精霊流し

295「精霊流し」さだまさし    幻冬舎文庫    ★★★★

長崎に生まれた雅彦は、ヴァイオリンを習い始め、13歳の時親元を離れて上京する。しかし、雅彦は芸大に進むことをあきらめ、別の音楽の道を歩きはじめる。
 雅彦の半生に鮮烈な彩りを加えた、家族、友人、知人との別れ。幾葉かの写真をもとに、彼らの姿が描き出される・・・。

 読んでいて、何度も目頭が熱くなりました。 
 これが出版されたのは一昨年のことになるのですね。「さだまさしの小説」は大ヒットしたものの、例によって天邪鬼な私は手を出しませんでした。
 それなのに。文庫化されたとたん、何の抵抗もなく手にとって、しかも長崎原爆忌の今日読んだというのは、我ながら不思議と言うほかありません。
 作者の自伝的小説というとおり、あきらかに主人公・雅彦はさだまさし本人なのですが、自伝であろうがなかろうが、この小説はいい、と言ってしまいます。
 テーマは生と死というところに集約されるのでしょう。八つの連作短編から成るこの小説は、さまざまな「死」を描きます。その象徴として長崎の精霊流しが描かれます。特に第5話「精霊流し」は、それだけで短編小説として読める完成度で、二つの「精霊流し」が描かれます。この行事のもつ意味と、人の死とは、そして生きることにはどういう意味があるのかを、静かに訴えかけてきます。
 最終話は原爆のことが中心になって話がすすみます。いろいろ考えさせられるものがありました。ちょっとここには書ききれないくらい、です。8月9日にこの本を読んだというのはもちろん偶然なのですが、偶然とは言い切れない何かの力を感じています。

やぶ > NHKがドラマで放映してましたよね。ドラマは1話しか見てないのですが、イマイチだったので原作も読みませんでした。でもまゆさんの感想を読んで興味が湧いてきました。いつか読んでみようと思います。 (2003/08/10 00:25)
まゆ > そうだったんですか。今度映画化されるみたいですよ。映像化したくなる気持ちはよくわかるのですが、そうすると原作の言葉で言い表せないニュアンスみたいなものがうまく伝わらないのでは・・・という気がします。全然期待しないで、しかも内容に関する予備知識なしで読んだのが、かえってよかったのかもしれません。 (2003/08/10 00:39)
ココ > 番組の企画ものだったこの本、どうかなぁと思いつつ興味があったので刊行当初読みました。さだまさしさんの創る歌(歌詞)が大好きで、小説も期待以上のものでした。少し前に「解夏」を読みましたがこれもいいですよ。さださんの優しい視線を感じます。本当に涙がこぼれます。 (2003/08/10 15:22)
まゆ > なんと言うか・・・内容がストンと胸に落ちてきました。素直に物語りの中に入っていけたという感じでしょうか。「解夏」も読みたくなってきちゃいましたよ。 (2003/08/10 19:48)
EKKO > 中学生くらいの頃、さだまさしさんが好きでアルバムをよく聞いていました。(「関白宣言」「道化師のソネット」・etc
の頃です)とくに歌詞が心にしみるんですよね~。小説も書いておられるんですね、一度読んでみたいです。 (2003/08/11 08:30)
れんれん > 関口宏のバラエティがきっかけで執筆された本ですよね。番組を見ていたので、気にはなっていたのですがやはり良さそうですね。さださんの歌は私もココさんEKKOさん同様綺麗な日本語の歌詞に惹かれて、好んでよく聞きました。 (2003/08/11 11:12)
まゆ > EKKOさん、「道化師のソネット」、私も好きでした。もともとエッセイは書いてらっしゃいましたが、小説はこれが処女作だと思います。さださんの歌が好きな人なら、きっとこれも好きになると思います。
れんれんさん、私はこの本が執筆されるに至った経緯を知らないのですが・・・どういうことだったのでしょう? 本当にいい小説が生まれたものだと思うのですが。 (2003/08/11 20:24)
れんれん > 何人かのタレントがそれぞれが薦める本をゲストに売り込み、買い上げてもらった本の冊数を競い合う「本パラ関口堂書店」という番組で、立ち上げた企画だったと記憶しています。番組と幻冬舎の社長がさださんに本の執筆を持ちかけます。目標売上冊数もいきなり打ち立てられて、最初はビジネスライクのやり取りに正直げんなりもしました。一回目の脱稿で社長からNGが出され、全てを白紙に戻し書き直しを命じられていたのがとても印象的でした。流石ベストセラーを量産している出版社の社長とは、凄い眼力を持っているのだなぁとつくづく感心しましたが・・・二回目にOKが出て次に番組がした事は、売り込みです。長崎はもちろん、新宿紀伊国屋前等で行き交う人々にさださんと出演者たちが盛んにセールスを展開させます。その結果一週間に?冊かの売上目標を見事にクリアーしたという物でした。 (2003/08/12 15:05)
まゆ > れんれんさん、教えてくださってありがとうございます。そういう商業ベースの中で生まれたのに、こんなに純粋な物語だっていうところがすごいですねえ。単なる読者ウケする本とはちがいますよ。 (2003/08/12 18:18)

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