愛川晶

2013年8月15日 (木)

三題噺 示現流幽霊

2036「三題噺 示現流幽霊」 愛川晶   原書房   ★★★★

リハビリ中の山桜亭馬春師匠を高座に復帰させる準備は少しずつ整っていく。一番弟子の福の助は、その首謀者として奔走するが、思わぬ事件に巻き込まれ・・・。

「神田紅梅亭寄席物帳」シリーズ4作目。今回は、本当に馬春師匠が復帰するのか?というところが焦点になりますが・・・意外な展開が次々起こる連作短編になっています。

いつもながら、落語が事件に深く絡んでくるので、それを読んでいるだけで楽しかったです。

そして、今回は「あれ?もしかして、これでシリーズ終わり?」と思いつつ読んでいたら、やっぱり・・・。しかし、作者・愛川さんは、震災をきっかけにして、このシリーズを書き継ぐ決意をされたようです。それは、シリーズの愛読者としては、とてもうれしいことです。

2012年12月 8日 (土)

うまや怪談

1947「うまや怪談」 愛川晶   原書房   ★★★★

寿笑亭福の助の妻・亮子の兄がとうとう結婚することに。しかし、お相手の父親はこの縁談に納得していない様子。お笑いも嫌いで、落語も怪談噺以外は聞いたことがないというこの父親を招いて、福の助が高座にかけた噺は・・・。

神田紅梅亭寄席物帳シリーズ、第3弾。

予告通り、怪談噺をネタにしたミステリ3編。とはいえ、あとがきによると、ずいぶん苦労なさったようで。作者の苦労を反映するように、福の助も難問を抱えて苦悩するし、亮子も相変わらず奇妙な事件に巻き込まれています。

より「日常の謎」系の色合いが濃くなっていますが、今回は福の助が師匠の馬春の力を借りずに謎を解いてしまったり、亮子も福の助に負けじと推理を展開したりと、なんだかみんなが名探偵になりつつあるような。

それにしても、落語というのは、つくづく「話芸」なんですね。一人で複数の人物を演じ分け、さらに説明もし・・・。このしりーうを読むごとに、その状況があたかも目に浮かぶようになってきて、「すごいなあ」とつぶやくことしきりでした。

今回は、最後に「待ってました!」の展開が。ここまで書いちゃったら、ここでやめるわけにはいかないですよね、愛川さん。続編、期待してます。

2012年11月23日 (金)

芝浜謎噺

1942「芝浜謎噺」 愛川晶   原書房   ★★★★

病気の母に、「芝浜」を聞かせたい。弟弟子の願いをかなえようと四苦八苦する寿笑亭福の助と、それを見守る妻の亮子。ところが、二人を悩ませる事件が次々と起こり・・・。

「神田紅梅亭寄席物帳」シリーズ第2弾。

八ちゃんこと福の助と亮子夫婦が、今度は人情噺の「芝浜」にからんだ謎を解き明かします。もちろん、安楽椅子探偵役の馬春師匠も健在です。

「野ざらし死体遺棄事件」「芝浜謎噺」「試酒試(ためしざけためし)」の3編ですが、大きく見れば、一つの長編とも言えます。それぞれ、日常の謎系の事件があり、さらに落語の噺を改作もしくはアレンジするような展開もあり、全体を通して「芝浜」にも負けない人情噺になっています。

前作を読んで、基礎知識が入っているので、なじみのない落語の世界にもスルスル入っていけました。何より、高座の場面は圧巻です。特に「試酒試」は、本を読んでいるにも関わらず、その場面を「見て」いる気分でした。

このシリーズを読んで、「落語を聞いてみたいと思った」という人が多いとのこと。その気持ち、よくわかります。

2012年10月26日 (金)

道具屋殺人事件

1930「道具屋殺人事件」 愛川晶   原書房   ★★★★

二つ目の噺家・寿笑亭福の助の妻・亮子は、私立高校の事務員で、落語はまったくの素人。それでも、福の助と知り合って以来、落語の世界にも足を踏みいれるようになった。ある日、元師匠である山桜亭馬春のもとを夫婦で訪れたが、福の助はなんだか浮かない顔で・・・。

落語には決して明るくないのですが、落語を題材にした話はけっこう好きです。この「神田紅梅亭寄席物帳」シリーズもずっと気になっていました。

福の助と亮子夫婦を中心にした日常の謎系ミステリ。探偵役は、福の助の元師匠で、三年前に脳こうそくで倒れた山桜亭馬春。後遺症があるため高座を下りたものの、話を聞いただけで真相を見抜いてしまうという「安楽椅子探偵」。

落語についても、かなり詳しい知識が語られますが、亮子の視点で展開するので、私みたいな素人でもじゅうぶんついていけます。噺家さんたちの名前と人間関係を覚えるのがちょっと大変でしたが。みんな同じような名前がついてるので。

「道具屋殺人事件」「らくだのサゲ」「勘定板の亀吉」の三話。あらためて振り返ってみると、内容的にはかなり盛りだくさんなのですが、読んでいるときは全然気にならなかったです。スルスルと読んでしまいました。

唯一気になったのは、誤植がけっこうあったこと・・・。

落語って、かなり自由度の高いものなんですね。古典落語なんかは、もっとギチギチに枠にはめられているのかと思っていました。

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