中島京子

2014年9月28日 (日)

かたづの!

2178「かたづの!」 中島京子   集英社   ★★★★

江戸時代初期。八戸南部藩主の妻・祢々は、一本角の羚羊と出会う。その羚羊は祢々の良き友となり、その死後は、南部の秘宝「片角」となる。一方、夫と息子の相次ぐ死により、女大名・清心尼となった祢々は、次々と降りかかる困難に立ち向かっていく。

書店でこの本を見つけた時、ビックリしました。どうして中島京子さんが、こんなマイナーなネタを・・・と。一応、地元(?)なもので、興味があり、買いましたが・・・八戸藩のことはあまりよく知らないしなあ、それに歴史ファンタジーってどういうもの?と、やや不安を覚えながら読み始めました。

いきなり「貴婦人と一角獣」が出てくるのには驚かされました。それがどういうことかは、最後にわかるのですが・・・。その後も予想外の展開に、驚かされることたびたび。片角だけでなく、河童も活躍するし。そういう意味でファンタジーなんですが。

祢々の人生は、決して幸せなものではありません。女性としても、大名としても、思うに任せないことの方が多く、読んでいてつらいことも多かったです。しかし、自分の信念に従って、ひたすら懸命に前に進み続けたその強さ、自分の人生をまっとうした生き方には、感銘を受けました。ちょっとしたことですぐへこんでしまう自分が情けなくなりました(苦笑)

2013年7月24日 (水)

桐畑家の縁談

2021「桐畑家の縁談」 中島京子 マガジンハウス ★★★

美人だけど、転職した上、現在無職で妹のところに居候している露子。研修医の恋人もいるけれど、何か物足りない。

妹・佳子は、露子の陰で地味に生きてきたタイプ。日本語学校の事務をしているが、そこの学生の台湾人と「結婚します」と宣言したことから、物語は動き出す。

正反対の気性の姉妹の対比がおもしろく、スルスルと読んでしまいました。すごくリアルなようでいて、なんとなく非現実な感じが、心地よい物語でした。

2013年4月28日 (日)

女中譚

1992「女中譚」 中島京子   朝日文庫   ★★★★

アキバのメイド喫茶に通う90すぎのばあさんが語る、かつて「女中」をしていた頃の思い出とは・・・。

「小さいおうち」も女中が主人公でしたが、これは女中の「すみ」が語る思い出話が中編3つに収められています。そして、それぞれ元ネタ(?)になる小説があるという趣向。

「ヒモの手紙」は、林芙美子「女中の手紙」、「すみの話」は吉屋信子「たまの話」、「文士のはなし」は永井荷風「女中のはなし」。

3編とも、元の小説を実にうまくアレンジして(解説によると、ですが)、戦争へと向かっていく時代の空気を織り込んでいます。元の小説も読んでみたくなりました。

2010年9月 2日 (木)

小さいおうち

1556「小さいおうち」中島京子   文藝春秋   ★★★★

昭和5年、山形から上京したタキは、女中奉公を始めた。そうして巡り合った「奥様」と、山の手の赤い三角屋根の家。ご主人さまと奥様と、坊ちゃんと・・・彼らとともにすごした充実した日々には、実は秘密があった。老境に入ったタキが思い出す、幸せな日々とは・・・。

こちらは、直木賞受賞作。中島京子さん、おもしろそうだなあとチェックし始めた矢先の受賞だったので、ビックリしました。で、これも新着図書を即ゲットしてきました。

期待にたがわぬおもしろさ、でした。女中という仕事に誇りをもっているタキ。戦前から戦中の山の手の生活が、その手記から浮かび上がってきて、それを読んでいるだけでも楽しいです。手記を盗み読みするタキの甥の息子の健史は、「当時の国民生活がこんな楽しく、のんきなはずがない!」とタキを責めますが、タキの実感と、健史の歴史上の知識との隔たりはものすごく大きいのです。それでも、徐々に、タキたちの生活にも戦争の色は濃くなっていくのですが・・・。

その狭間に起こる事件が、奥様の恋愛です。板倉という夫の会社に勤める若い男性と、どうやら道ならぬ恋に落ちたらしい・・・という気配が伝わってきます。やがて、板倉は徴兵されるのですが・・・。タキは、敬愛する奥様のことを思い、どうするのが女中として正しいあり方なのか、思い悩みます。そして、彼女がとった行動は・・・。

構成が、実にいいです。幸せな象徴のようなおうちの中で起こっていた秘密。そして、誰も知らなかった、ある事実。それが明らかになるラストは、なんとも言えないようなせつなさで胸が満たされ、それでいて幸せなような、不思議な気分になりました。

「聖なるもの/守られたもの」とは、いったい何だったのでしょう。それぞれが、本当に「守りたかったもの」とは、いったい・・・。そして、守りたいものがある場所が、それぞれの幸せのある場所なのでしょうか。タキにとって、それがあの赤い三角屋根の小さな家だったように。

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