朝井リョウ

2016年2月27日 (土)

武道館

2416「武道館」   朝井リョウ         文藝春秋          ★★★★

歌って踊ることが好きな愛子は、アイドルグループNEXT  YOUの一員になった。いつか武道館でコンサートをするのを目標に、日々レッスンとステージに明け暮れていたが…。

子供の頃から、よくできたお話を読むと、しばらくその世界と現実との境目がわからなくなって、ポヤ~ンとしてしまう癖があるのですが…久々にその感じにはまりました。

アイドルブームの現在、私はあまりその流れに乗っていませんが、それでも妙なリアル感、生々しさは痛いほどに感じました。

ただ好きなことを追い続けたらアイドルになっていた愛子。彼女の葛藤は、なんだかすごく説得力があって。ある意味、メンバーの中で、彼女が一番地に足がついていて、アイドルなんだけど一人の女の子として、しっかり歩いているような気がしました。他のメンバーのエピソードは、痛々しかったです。

必然的に「期間限定」なアイドルというものになってしまった子達の葛藤とか自己矛盾が、フィクションと思えない感じで描かれているだけでなく、現在のネット社会の歪みも浮かび上がってきて、朝井リョウのすごさを実感しました。

この設定は、今の時代だから成立するのかもしれませんが…。素敵な青春小説だと思います。

2016年1月 2日 (土)

世にも奇妙な君物語

2393「世にも奇妙な君物語」 朝井リョウ   講談社   ★★★★

朝井リョウ版「世にも奇妙な物語」。

「シェアハウさない」「リア充裁判」「立て! 金次郎」「13.5文字しか集中して読めな」「脇役バトルロワイアル」の5編。

そのままテレビにできそうな、世にも奇妙な物語。朝井さんが本来もっている醒めた視線と毒が、いい感じに効いています。

「シェアハウさない」は、シェアハウスの取材をしようとしていたライター浩子が、たまたまめぐりあったシェアハウスの住人達の話。なんとなく不穏な空気を醸し出す彼らはいったい・・・。

「リア充裁判」は、「コミュニケーション能力促進法」が制定された世の物語。コミュニケーション能力を判断する通称「リア充裁判」で、姉をぼろぼろにされた知子は・・・。

「立て! 金次郎」は、幼稚園の男性教諭・孝次郎と、モンスターペアレントとの対決。理想に燃える孝次郎は、先輩教諭の忠告もきかず、自分の信念を貫こうとするが・・・。

「13.5文字しか読めな」は、ネットニュース配信の仕事をしている香織の話。充実した仕事をしている彼女だけれど、夫の態度にふとした疑念を抱き・・・。

「脇役バトルロワイアル」は、舞台の主役オーディションに集った脇役俳優たちの話。脇役の悲しい習性について語りつつ、彼らが至る結末は・・・。

おもしろかったのは、「立て! 金次郎」ですかね。身につまされました(笑) 「リア充裁判」もよかったです。けっして後味はよくないんですが、ついつい読まされました。

「脇役~」は設定はおもしろかったのですが、ちょっと私好みの「奇妙」さではなかったかな。しかし、これ、テレビで見てみたいですねえ。

2015年7月27日 (月)

時をかけるゆとり

2331「時をかけるゆとり」 朝井リョウ   文春文庫   ★★★★

直木賞作家・朝井リョウ。平成生まれのゆとり世代の学生時代って・・・。「学生時代にやらなくてもいい20のこと」改題。

EKKOさんのとこでこれを発見。おもしろそうなので読んでみようかな、と。実際、期待に違わぬおもしろさでした。読みながら、何度噴き出したことか。

笑えるんだけど、同時に「そうそう、学生時代ってこういう謎の行動とったよねえ」と思える部分もあり、なつかしいような気分になりました。

朝井さんのエッセイを読んでいて思ったのは、すごく冷静に客観視しているな、ということ。ご自分のことを、です。そうでなければ作家なんてなれないのかもしれませんけどね。

文庫には、年表と、直木賞受賞後の自伝的エッセイと、書き下ろしエッセイ2編を収録。お得な内容となっております。

ちなみに、全部読み終わってから、表紙カバーの折り返しにある「著者(自己)紹介」に気づいて、噴いてしまいました(笑)

2014年7月 6日 (日)

何者

2149「何者」 朝井リョウ   新潮社   ★★★★

ルームシェアしている光太郎が就活を始めた。拓人も光太郎の元カノ・瑞月への思いを抱えつつ、就活に挑む。瑞月の友人・理香とその彼氏・隆良も含め、就活に翻弄される彼らの行きつく先は・・・。

直木賞受賞作でしたっけ。ずっと気になっていた一冊です。

いわゆる就活というものをまともに経験していない世代なので、ついていけるかしら・・・?と思っていましたが、大丈夫でした。というか、我々バブル世代の就活もいろいろあったなあと思い出してしまいました。

今の学生さんたちのような苦労はしてませんが、売り手市場なだけに、どこから内定もらったかというランク付けはけっこう激しかったような。私はそういうのが嫌で、民間は受けなかったのですが、それも当時としてはかっこつけてたといわれても仕方ないような。新聞社に受かった同期が面接で、「学生生活でがんばったことは勉強です!」と言ったと聞いて、いい加減だった私はビックリしたり。なんというか、自分の黒歴史をあれこれ思い出して、けっこう凹みました(笑)

確かに、就職って実はすごく大きな節目で。そこからは「一人前」として扱われる。それって、瑞月が隆良に言ったように、「もう自分と同じ目線で見てくれる人はいない」、つまり、自分で責任もって自分の人生を切り開いていかなきゃならないってことなんですよね。のほほんと社会人になって、なんとなく世の中渡ってきてしまった私には、耳が痛かったです。

今の若い世代には就活って避けて通れないもの。面接で落とされるキツさは想像できるし、何度も不採用をくらうと自分が否定されたような気持ちになるでしょう。でも、その中でも、彼らは必死にあがいているし、生きているんだと、あらためて感じました。

就活小説だと思って読んだのですが、素敵な青春小説でした。

2013年11月 3日 (日)

世界地図の下書き

2063「世界地図の下書き」 朝井リョウ   集英社   ★★★★

児童養護施設で暮らすことになった太輔。同い年の淳也や、その妹・麻利、ひとつ年下の美保子、そしてみんなのお姉さんのような佐緒里。五人で過ごしてきた3年間が過ぎ、「別れ」の日が迫る中、太輔たちはある「作戦」を思いつく。それは、大切な人のために。

直木賞受賞後、第1作。「情熱大陸」で取材されていた時に触れていたのがこれですね、たぶん。

ベタといえばベタな設定。展開にも文章にも、それほどの技巧は感じないのだけれど・・・不覚にも、最後は涙ぐんでしまいました。

子どもにはどうにもできないことが、たくさんあって。でも、それは実は、大人にもどうにもできないことかもしれなくて。どうしてこんな息苦しいような、やりきれないようなことばかり、起こってしまうのか、と。それでも、生かされている間は、私たちは生きていくのだけれど。

表紙がジブリで、ちょっと抵抗あったのですが(売りに走っているようで)、読みながら、何度も表紙絵を眺めました。太輔、淳也、麻利、美保子、そして佐緒里・・・。ああ、こんな顔をしてるんだなあ、と。イメージ通りです。

2012年4月26日 (木)

少女は卒業しない

1856「少女は卒業しない」 朝井リョウ   集英社   ★★★

廃校が決まった高校の、最後の卒業式。その一日をめぐる、7つの「別れ」の物語。

「桐島、部活やめるってよ」以来の朝井リョウです。

朝日新聞の書評では、出久根達郎が「作者は女性だと思っていた」旨を述べていましたが・・・おいおい(苦笑) たしかに、「桐島~」の時もでしたが、どうして女子の気持ちをこんなふうに書けるのかなあと思ってしまいました。

卒業というのは、大きな区切りです。しかも、舞台になっている学校は、他校との統合が決まり、3月末の卒業式の翌日には、校舎の取り壊し工事も始まってしまう。卒業生だけでなく、在校生たちも新しい世界に出て行かなくてはならない。

そういう「非日常」の中で起こる小さなドラマ。「エンドロールが始まる」から、「夜明けの中心」までの、7つの物語。ものすごく狭い世界の出来事だけど、彼らにとってはそれが世界のすべてで・・・自分の中学・高校の頃の空気を思い出してしまいました。

なんとなくリアルを感じなかったのは、それだけ世代が隔たってしまったということでしょうか(苦笑) たとえば、卒業式で、送辞の代わりに先輩に告白するというのはどうなんだろうと思ってしまったり。まあ、これは職業病かもしれません。

朝井リョウは、これからどういうものを書いていくのでしょうね。私は2作しか読んでいませんが・・・ちょっと興味あります。

2010年10月26日 (火)

桐島、部活やめるってよ

1599「桐島、部活やめるってよ」朝井リョウ   集英社   ★★★

男子バレー部のキャプテン桐島が部活やめるらしい・・・。そういううわさが、同級生たちにかすかに波紋を広げていく。誰も知らないそれぞれの思いは・・・。

作者は1989年生まれ。若いというだけで話題にされる本にはあまり手を出すまい・・・と思うようになってきた40代の私ですが、どうにも気になってました。EKKOさんのブログでけっこう評価がよかったので、じゃあ読んでみようかな、と。

意外にも読みやすかったです。イマドキの高校生たちの「今」がリアルに描かれているのだと思いますが、視点人物が次々変わっていき、男女を問わずそれぞれの気持ちが語られていくのがおもしろかったです。印象的だったのは、実果の章。ちょっと意外な展開でした。

話題の「桐島」が、最後の最後までいっさい顔を出さず、どんな人物なのかもはっきりとはわからないのが、またうまいですね。

それにしても、高校生ってこんなに「上」とか「下」とか、ランク付けに過敏でしたっけ。自分の頃もたしかにそういう意識はありましたが・・・こんなにピリピリしていた気はしないんですが。私がのんびりしていただけかなあ。

その他のカテゴリー

「あ」行の作家 | 「か」行の作家 | 「さ」行の作家 | 「た」行の作家 | 「な」行の作家 | 「は」行の作家 | 「ま」行の作家 | 「や」行の作家 | 「ら」行の作家 | 「わ」行の作家 | あさのあつこ | いしいしんじ | こうの史代 | さだまさし | その他 | たつみや章 | よしもとばなな | アンソロジー | 万城目学 | 三上亜希子 | 三上延 | 三島由紀夫 | 三木笙子 | 三浦しをん | 三浦哲郎 | 三谷幸喜 | 上橋菜穂子 | 中山七里 | 中島京子 | 中田永一 | 中野京子 | 乃南アサ | 乙一 | 井上ひさし | 京極夏彦 | 伊坂幸太郎 | 伊藤計劃 | 伊集院静 | 佐藤多佳子 | 佐藤賢一 | 俵万智 | 倉知淳 | 光原百合 | 冲方丁 | 初野晴 | 加納朋子 | 加門七海 | 北大路公子 | 北山猛邦 | 北村薫 | 北森鴻 | 原田マハ | 司馬遼太郎 | 吉村昭 | 吉田修一 | 向田邦子 | 坂木司 | 夏川草介 | 夏目漱石 | 大倉崇裕 | 大崎梢 | 太宰治 | 奥泉光 | 宇江佐真理 | 宮下奈都 | 宮尾登美子 | 宮部みゆき | 小川洋子 | 小路幸也 | 小野不由美 | 山崎豊子 | 山本周五郎 | 山白朝子 | 岡本綺堂 | 島本理生 | 川上弘美 | 平岩弓枝 | 彩瀬まる | 恩田陸 | 愛川晶 | 戸板康二 | 日明恩 | 日記・コラム・つぶやき | 有川浩 | 朝井まかて | 朝井リョウ | 木内昇 | 朱川湊人 | 杉浦日向子 | 村山由佳 | 東川篤哉 | 東野圭吾 | 松本清張 | 柏葉幸子 | 柳広司 | 柴田よしき | 栗田有起 | 桜庭一樹 | 梨木香歩 | 梯久美子 | 森博嗣 | 森絵都 | 森見登美彦 | 森谷明子 | 横山秀夫 | 橋本治 | 氷室冴子 | 永井路子 | 永田和宏 | 江國香織 | 池波正太郎 | 津原泰水 | 浅田次郎 | 海堂尊 | 海外の作家 | 湊かなえ | 漫画 | 瀬尾まいこ | 田中啓文 | 田丸公美子 | 畠中恵 | 石田衣良 | 福井晴敏 | 笹尾陽子 | 米原万里 | 米澤穂信 | 芥川龍之介 | 若竹七海 | 茅田砂胡 | 茨木のり子 | 荻原規子 | 菅野彰 | 菅野雪虫 | 藤沢周平 | 藤谷治 | 西條奈加 | 西澤保彦 | 角田光代 | 誉田哲也 | 辺見庸 | 辻村深月 | 近藤史恵 | 酒井順子 | 重松清 | 金城一紀 | 須賀しのぶ | 高城高 | 高橋克彦 | 髙田郁 | 鷺沢萠

2017年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

カテゴリー