朝井リョウ

2020年5月17日 (日)

風と共にゆとりぬ

3037「風と共にゆとりぬ」  朝井リョウ      文春文庫      ★★★★

「時をかけるゆとり」に続くエッセイ集第2弾。

思った以上にストレスがたまっていたのか、加齢ゆえか(苦笑)、突発性難聴を発症。病院通いしてました。

こういうときには、肩に力の入らないものを読みたいね~と思ったら、待望の文庫化! 

で、読み始めて…笑いました。いやもう、朝井リョウ、バカじゃない?っていうか、メンドクサイ(笑)  「時をかける~」よりは少し年をとったはずなのに、社会人になっても、専業作家になっても、変わってない。もちろん、いい意味で。

おかげさまで、これを読み始めてから難聴は改善し、体調もだいぶよくなりました。笑うの大事。朝井くん、ありがとう。

2019年12月11日 (水)

どうしても生きてる

2978「どうしても生きてる」  朝井リョウ      幻冬舎      ★★★★

一生懸命生きていても行き詰まる。普通に生きているだけなのに生きづらい。そんな人生の断片を切り取った六つの物語。

「健やかな論理」「流転」「七分二十四秒めへ」「風が吹いたとて」「そんなの痛いに決まってる」「籤」の六話を収録。

ごくごく真っ当な人生を送っていても、あり得ないような出来事に直面することはあります。普通の人、いい人にだって不幸は降りかかる。何かがきっかけで今まで気づかなかった闇を見てしまう。世の中がおかしいと喚いても、その中で生きていかなければならない私たち。

朝井リョウは、そんな「私たち」の物語を書き続けているのでしょう。

読んでいると、息がつまりそうになります。でも、絶妙なバランスで持ちこたえているというか…。ラストの「籤」を読んで、ああ、これかもしれない、と。要するに、作者が物語に酔いしれることを、朝井リョウは決して許さないのではないかと感じたのです。どれだけ登場人物の心情や感覚に肉薄しても、現実に足をつけて、冷静に描写する視点を捨て去らない。考えすぎでしょうか。

それにしても、女性心理の描きかた、凄すぎませんか?



2019年8月27日 (火)

死にがいを求めて生きているの

2940「死にがいを求めて生きているの」 朝井リョウ   中央公論新社   ★★★★

植物状態で病院で眠り続ける南水智也。毎日のように病院に通い、智也を見守り続ける親友の堀北雄介。そんな彼らに関わっていた人々の物語をたどって見えてきた二人の関係とは・・・。

 

気になってはいたものの、「なんか厚いな~」と敬遠してました(苦笑)が、「螺旋プロジェクト」作品と知って手に取りました。朝井さんが担当するのは、平成。

冒頭の看護師さんの章を読んだときは、「いい話系?」と思ったのですが・・・。智也と雄介の小学校時代の同級生・前田一洋の章で「どうやらそんな生易しいものではないらしい」と。さらに、中学校時代の同級生・坂本亜矢奈で「う~ん・・・」となり。大学時代の安藤与志樹で、完全に「これはアカン」となりました。そして、その後の弓削晃久の章でいろんなものが崩壊してしまうわけですが。

朝井さんが書く平成の若者は、本当に生きづらそうだなあと、つくづく思います。もちろん、我々の時代だってそういうのを強く感じている人もいたし、私も決してのびのびと呼吸していたわけではないのだけれど。閉塞感みたいなものが、昔とは全然違う。雄介や与志樹みたいな生き方は、なんだか常に悲鳴をあげているみたいに見えるのです。「若いうちはそういうときもあるさ」では済まされない追い込まれ方(自分が自分を追い込んでいるのだけれど)。そんなことをしていたら、いつか自分を滅ぼすよ?という切迫感。でも、止められない。そんな彼らの悲鳴が聞こえてくるようで。

「螺旋プロジェクト」なので、この話も海族と山族の対立構造に落とし込まれていくわけですが・・・その辺はちょっとストレートすぎるというか、物語の中に溶け込みきれない部分もあった気がします。

ただ、「どうしてもあいつとはうまくいかない」という相手っているもので。そういう相手とどういう距離感で、どう対応していくか。人類の永遠の課題だろうなと思うわけです。最終章では、智也の視点で語られ、冷静に見えた智也の側にも爆発するような感情があったことがわかってきます。争いたくない。でも、争うのもまた人間の本能の一つで。では、どうやっていくのか。・・・それを考えるのをやめたときに、分断は始まるのかもしれません。

ところで、本筋から外れますが、朝井さん描くところの「学校生活」の空気感の圧倒的なリアル感に、今回してやられました。特に、亜矢奈の章。読んでいると、中学・高校の頃の校舎のちょっと薄暗い廊下の感じとか、プールの匂いとか、生々しく思い出してしまいました。若くしてデビューして話題をさらった朝井リョウさんも三十歳。もちろん、まだまだお若いですが・・・これからさらに年を重ねて、どんな作品を書かれるのか、楽しみになってきました。

2017年5月17日 (水)

何様

2581「何様」 朝井リョウ   新潮社   ★★★★

直木賞受賞作「何者」のアナザーストーリー。

「水曜日の南階段はきれい」「それでは二人組を作ってください」「逆算」「きみだけの絶対」「むしゃくしゃしてやった、と言ってみたかった」「何様」の6篇。

残念ながら「何者」のストーリーをあらかた忘れてしまったので、アナザーストーリーというよりは、青春もの短編集といった感じで読みました。

朝井リョウって、こういう断片を切り取るのがうまいんだなあ、というのが感想。今まで長編しか読んでなかったので、ちょっと意外な感じでした。

「水曜日の~」が一番好きだったかな。こういう純粋さ、嫌いじゃないです。

2016年2月27日 (土)

武道館

2416「武道館」   朝井リョウ         文藝春秋          ★★★★

歌って踊ることが好きな愛子は、アイドルグループNEXT  YOUの一員になった。いつか武道館でコンサートをするのを目標に、日々レッスンとステージに明け暮れていたが…。

子供の頃から、よくできたお話を読むと、しばらくその世界と現実との境目がわからなくなって、ポヤ~ンとしてしまう癖があるのですが…久々にその感じにはまりました。

アイドルブームの現在、私はあまりその流れに乗っていませんが、それでも妙なリアル感、生々しさは痛いほどに感じました。

ただ好きなことを追い続けたらアイドルになっていた愛子。彼女の葛藤は、なんだかすごく説得力があって。ある意味、メンバーの中で、彼女が一番地に足がついていて、アイドルなんだけど一人の女の子として、しっかり歩いているような気がしました。他のメンバーのエピソードは、痛々しかったです。

必然的に「期間限定」なアイドルというものになってしまった子達の葛藤とか自己矛盾が、フィクションと思えない感じで描かれているだけでなく、現在のネット社会の歪みも浮かび上がってきて、朝井リョウのすごさを実感しました。

この設定は、今の時代だから成立するのかもしれませんが…。素敵な青春小説だと思います。

2016年1月 2日 (土)

世にも奇妙な君物語

2393「世にも奇妙な君物語」 朝井リョウ   講談社   ★★★★

朝井リョウ版「世にも奇妙な物語」。

「シェアハウさない」「リア充裁判」「立て! 金次郎」「13.5文字しか集中して読めな」「脇役バトルロワイアル」の5編。

そのままテレビにできそうな、世にも奇妙な物語。朝井さんが本来もっている醒めた視線と毒が、いい感じに効いています。

「シェアハウさない」は、シェアハウスの取材をしようとしていたライター浩子が、たまたまめぐりあったシェアハウスの住人達の話。なんとなく不穏な空気を醸し出す彼らはいったい・・・。

「リア充裁判」は、「コミュニケーション能力促進法」が制定された世の物語。コミュニケーション能力を判断する通称「リア充裁判」で、姉をぼろぼろにされた知子は・・・。

「立て! 金次郎」は、幼稚園の男性教諭・孝次郎と、モンスターペアレントとの対決。理想に燃える孝次郎は、先輩教諭の忠告もきかず、自分の信念を貫こうとするが・・・。

「13.5文字しか読めな」は、ネットニュース配信の仕事をしている香織の話。充実した仕事をしている彼女だけれど、夫の態度にふとした疑念を抱き・・・。

「脇役バトルロワイアル」は、舞台の主役オーディションに集った脇役俳優たちの話。脇役の悲しい習性について語りつつ、彼らが至る結末は・・・。

おもしろかったのは、「立て! 金次郎」ですかね。身につまされました(笑) 「リア充裁判」もよかったです。けっして後味はよくないんですが、ついつい読まされました。

「脇役~」は設定はおもしろかったのですが、ちょっと私好みの「奇妙」さではなかったかな。しかし、これ、テレビで見てみたいですねえ。

2015年7月27日 (月)

時をかけるゆとり

2331「時をかけるゆとり」 朝井リョウ   文春文庫   ★★★★

直木賞作家・朝井リョウ。平成生まれのゆとり世代の学生時代って・・・。「学生時代にやらなくてもいい20のこと」改題。

EKKOさんのとこでこれを発見。おもしろそうなので読んでみようかな、と。実際、期待に違わぬおもしろさでした。読みながら、何度噴き出したことか。

笑えるんだけど、同時に「そうそう、学生時代ってこういう謎の行動とったよねえ」と思える部分もあり、なつかしいような気分になりました。

朝井さんのエッセイを読んでいて思ったのは、すごく冷静に客観視しているな、ということ。ご自分のことを、です。そうでなければ作家なんてなれないのかもしれませんけどね。

文庫には、年表と、直木賞受賞後の自伝的エッセイと、書き下ろしエッセイ2編を収録。お得な内容となっております。

ちなみに、全部読み終わってから、表紙カバーの折り返しにある「著者(自己)紹介」に気づいて、噴いてしまいました(笑)

2014年7月 6日 (日)

何者

2149「何者」 朝井リョウ   新潮社   ★★★★

ルームシェアしている光太郎が就活を始めた。拓人も光太郎の元カノ・瑞月への思いを抱えつつ、就活に挑む。瑞月の友人・理香とその彼氏・隆良も含め、就活に翻弄される彼らの行きつく先は・・・。

直木賞受賞作でしたっけ。ずっと気になっていた一冊です。

いわゆる就活というものをまともに経験していない世代なので、ついていけるかしら・・・?と思っていましたが、大丈夫でした。というか、我々バブル世代の就活もいろいろあったなあと思い出してしまいました。

今の学生さんたちのような苦労はしてませんが、売り手市場なだけに、どこから内定もらったかというランク付けはけっこう激しかったような。私はそういうのが嫌で、民間は受けなかったのですが、それも当時としてはかっこつけてたといわれても仕方ないような。新聞社に受かった同期が面接で、「学生生活でがんばったことは勉強です!」と言ったと聞いて、いい加減だった私はビックリしたり。なんというか、自分の黒歴史をあれこれ思い出して、けっこう凹みました(笑)

確かに、就職って実はすごく大きな節目で。そこからは「一人前」として扱われる。それって、瑞月が隆良に言ったように、「もう自分と同じ目線で見てくれる人はいない」、つまり、自分で責任もって自分の人生を切り開いていかなきゃならないってことなんですよね。のほほんと社会人になって、なんとなく世の中渡ってきてしまった私には、耳が痛かったです。

今の若い世代には就活って避けて通れないもの。面接で落とされるキツさは想像できるし、何度も不採用をくらうと自分が否定されたような気持ちになるでしょう。でも、その中でも、彼らは必死にあがいているし、生きているんだと、あらためて感じました。

就活小説だと思って読んだのですが、素敵な青春小説でした。

2013年11月 3日 (日)

世界地図の下書き

2063「世界地図の下書き」 朝井リョウ   集英社   ★★★★

児童養護施設で暮らすことになった太輔。同い年の淳也や、その妹・麻利、ひとつ年下の美保子、そしてみんなのお姉さんのような佐緒里。五人で過ごしてきた3年間が過ぎ、「別れ」の日が迫る中、太輔たちはある「作戦」を思いつく。それは、大切な人のために。

直木賞受賞後、第1作。「情熱大陸」で取材されていた時に触れていたのがこれですね、たぶん。

ベタといえばベタな設定。展開にも文章にも、それほどの技巧は感じないのだけれど・・・不覚にも、最後は涙ぐんでしまいました。

子どもにはどうにもできないことが、たくさんあって。でも、それは実は、大人にもどうにもできないことかもしれなくて。どうしてこんな息苦しいような、やりきれないようなことばかり、起こってしまうのか、と。それでも、生かされている間は、私たちは生きていくのだけれど。

表紙がジブリで、ちょっと抵抗あったのですが(売りに走っているようで)、読みながら、何度も表紙絵を眺めました。太輔、淳也、麻利、美保子、そして佐緒里・・・。ああ、こんな顔をしてるんだなあ、と。イメージ通りです。

2012年4月26日 (木)

少女は卒業しない

1856「少女は卒業しない」 朝井リョウ   集英社   ★★★

廃校が決まった高校の、最後の卒業式。その一日をめぐる、7つの「別れ」の物語。

「桐島、部活やめるってよ」以来の朝井リョウです。

朝日新聞の書評では、出久根達郎が「作者は女性だと思っていた」旨を述べていましたが・・・おいおい(苦笑) たしかに、「桐島~」の時もでしたが、どうして女子の気持ちをこんなふうに書けるのかなあと思ってしまいました。

卒業というのは、大きな区切りです。しかも、舞台になっている学校は、他校との統合が決まり、3月末の卒業式の翌日には、校舎の取り壊し工事も始まってしまう。卒業生だけでなく、在校生たちも新しい世界に出て行かなくてはならない。

そういう「非日常」の中で起こる小さなドラマ。「エンドロールが始まる」から、「夜明けの中心」までの、7つの物語。ものすごく狭い世界の出来事だけど、彼らにとってはそれが世界のすべてで・・・自分の中学・高校の頃の空気を思い出してしまいました。

なんとなくリアルを感じなかったのは、それだけ世代が隔たってしまったということでしょうか(苦笑) たとえば、卒業式で、送辞の代わりに先輩に告白するというのはどうなんだろうと思ってしまったり。まあ、これは職業病かもしれません。

朝井リョウは、これからどういうものを書いていくのでしょうね。私は2作しか読んでいませんが・・・ちょっと興味あります。

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