海外の作家

2017年3月13日 (月)

葬儀を終えて

2548「葬儀を終えて」 アガサ・クリスティー   ハヤカワ文庫   ★★★★

「だって、リチャードは殺されたんでしょう?」・・・リチャード・アバネシーの葬儀を終えた後、末妹のコーラが放った一言。そして、翌日、コーラは死体となって発見された。ポアロが見出した真実とは。

名作との評価が高いということで、おおいに期待して読みました。そして、期待は全く裏切られませんでした。

クリスティの構成・描写の巧みさにうならされました。うーん、すごい。見事にしてやられました。そういうことか・・・。読み終えると、すべて納得できるのです。

最初は登場人物の人間関係が頭に入ってこず、冒頭の家系図を何度も見ながらでしたが、前半はエントウイッスル弁護士がうまく人物紹介をしてくれて、ポアロが登場する中盤以降はするすると物語の中に入っていけました。

リチャードは本当に殺されたのか? コーラを殺したのは誰なのか? 次々続く「事件」の犯人は? ・・・すべてがわかったときには、ちょっと鳥肌がたちました。

今まで読んだポアロものの中でも、一、二を争うおもしろさでした。

2017年2月 1日 (水)

鏡は横にひび割れて

2532「鏡は横にひび割れて」 アガサ・クリスティー   ハヤカワ文庫   ★★★★

セント・メアリ・ミード村にも、新しい時代の波は押し寄せてくる。新興住宅地に、新しい住人たち。そして、アメリカの女優がゴシントン・ホールに引っ越してきた。そこで行われたパーティで、招待客が不審な死に方をし・・・。本当に狙われたのは、誰だったのか? ミス・マープルが事件に挑む。

このタイトルになっているテニスンの詩。この一節を描いた絵が好きで。(その絵自体は、この話とは何の関係もありません。)なので、ずっと気になっていた作品だったのでした。

いやあ、おもしろかった。ミステリで、ここまで振り回されると、かえって気持ち良いですね。犯人は?手段は?動機は?と、次々と作者が繰り出してくるあの手この手に、すっかり翻弄されてしまいました。で、こういう事件には、ミス・マープルがよく似合います。

今回は、セント・メアリ・ミード村にも都会化の波が押し寄せてきて、我らがマープルもだいぶ年老いてしまって、ちょっともの悲しい気もしますが、事件が起こってからというもの、マープルが生き生きと活動するのが、なんともほほえましく。

それに、主人公にちゃんと歳を重ねさせて、「老い」もしっかり描くというの、私は嫌いじゃないです。

事件そのものはやりきれないのですが、ミス・マープルのキャラクターに救われる思いでした。

2016年12月22日 (木)

スリーピング・マーダー

2513「スリーピング・マーダー」 アガサ・クリスティー   ハヤカワ文庫   ★★★★

新婚のグエンダは、イングランドに新しい家を買って住み始めた。それから、奇妙なことが続き、ふいにある「記憶」がよみがえった。この家では、かつて人が殺された?・・・グエンダは、真相を究明しようとするが・・・。

学生時代、クリスティ読みの友人から借りて読んだはずなのですが・・・見事に覚えてませんでした(苦笑) おかげさまで、新鮮な気分で読むことができました。

ミス・マープルものの、「眠れる殺人」。グエンダが記憶をよみがえらせていく過程は、なかなかサスペンスフルで、ストーリーテラーとしてのクリスティの面目躍如。

そして、グエンダが夫・ジャイルズと謎解きを始めると、登場するのが我らがミス・マープル。若い人たちのことを心配しながら、世知に長けたその頭脳を活かして、グエンダたちをリードしていきます。

次々現れる「容疑者」たち。そして、現実の殺人まで・・・。まあ、読み応えのある展開で、最後まで少しも飽きることなく、引っ張っていかれました。

久しぶりにクリスティーを読みましたが、やはりいいですね。解説が恩田陸というのも、ナイスでした。まだ、いくつか気になっているものや、再読したいものがあるので、これからもちょこちょこ読んでいこうと思います。

2016年11月23日 (水)

戦地の図書館 海を越えた一億四千万冊

2497「戦地の図書館 海を越えた一億四千万冊」 モリー・グプテル・マニング   東京創元社   ★★★★

第2次世界大戦の中、戦地の兵士に本を送ろうとした人たちがいた。それは、国家プロジェクトとして、図書館員・軍・出版業界が挑んだ史上最大の図書作戦だった。いったいどのようにして、本は戦地へ届けられたのか。

話題のノンフィクションです。えらく時間がかかってしまいましたが、ようやく読了。

ナチスは焚書を行った。それに対して、アメリカは、本を兵士に与えようとした。すべてはそこから始まります。兵士の士気を高めるためというのが目的だったのですが、本は予想以上に兵士たちに「必要」とされます。彼らは、戦場でむさぼるように本を読んでいたのです。それは、退屈しのぎでもあり、現実逃避でもあり・・・ともかく、「本を読む」ことが、彼らの最高の娯楽だったのです。

やがて、「兵隊文庫」という戦地用ペーパーバックが作られ、戦地に配給されるようになります。これができるまで、あるいはその後も、数々の困難が立ちはだかるのですが、一貫して「兵士のために本を送る」ことをやりぬく関係者の姿勢には圧倒されます。

何より、胸を打つのは、戦地から送られてきた兵士たちの手紙です。彼らがどれだけ本を必要としていたかがひしひしと伝わってきます。人間にとって本がどれほど大切なものか・・・。

以前読んだ「親愛なるブリードさま」を思い出しました。強制収容所に送られた若者たちに本を送り続けた女性の話。私たちはつらいときほど、心の支えになる何かを必要とするものです。そして、「本」はその支えになり得るものなのですね。

訳者・松尾恭子さんのあとがきに、日本にも「兵隊文庫」があったことが書かれていました。江戸川乱歩とかだったそうな。どんな本があったのか、それを兵士たちはどんな思いで読んでいたのか知りたいものです。

2016年9月 1日 (木)

杉の柩

2465「杉の柩」 アガサ・クリスティー   ハヤカワ文庫   ★★★★

ロディーとエリノア。婚約中のカップルの前に現れた美しいメアリイ。ロディーはたちまちメアリィに心奪われてしまい、婚約は解消された。そして、エリノアの作った食事を食べたメアリイが死に、嫌疑は当然のごとくエリノアにかかった。果たしてエリノアは「黒」か「白」か。名探偵・ポアロが真相に挑む。

久しぶりのクリスティです。

ありがちな設定なのだけど、読んでいてドキドキしました。だって、どう考えても、エリノアが黒としか思えない状況なのだもの。しかし、そう簡単にはいかないだろうとは思うわけで。

じゃあ、犯人になり得るのは誰?と考えると、これがなかなか悩ましかったり。

ポアロ登場前の第一部でもじゅうぶんおもしろかったのですが、彼が登場して、それまで見えなかった「裏」が見えてくると、また・・・。

なんというか、恋愛と結婚というものの本質にせまってくるような話でしたねえ。

2016年5月15日 (日)

ナイルに死す

2431「ナイルに死す」 アガサ・クリスティー   ハヤカワ文庫   ★★★★

美貌で資産家のリネット・リッジウェイは、親友ジャクリーンの婚約者を奪い、夫とした。そのハネムーンの行く先々に、ジャクリーンが現れ、リネットはひどく動揺する。そして、ナイル河をさかのぼる豪華客船で、事件は起こった。船に乗り合わせたポアロがたどりついた真相とは。

昨年は月イチ・クリスティにトライしてましたが、さすがに今年は無理で。で、久しぶりに読んだのがこれ。「ナイル殺人事件」とか映画になってますよね。でも、見たことなかったので。ちょっと文庫の暑さにびびりましたけど、読み始めたらおもしろくて、やめられませんでした。

豪華客船の上という限定された場所で、限られた人物が容疑者で、という設定は、それだけでそそられるものがあります。そして、わけありの男女とか、いかにも怪しい人物とか、全然怪しくなさそうな人物とか(笑)、いろんな登場人物が入り乱れて、ちょっとしたロマンスもあって、ストーリーが錯綜しそうになるのは定番ですが。

実にさりげなく、丁寧に、伏線は張られていて、解き明かされるとそれしかないと納得するのですが、それまではいろんな「?」が頭の中を飛び交ってました。ちなみに、犯人はこれしかないだろうと思ってましたが、トリックはわからなかったです。そういうことか・・・。

読み終えてみると、「ナイルに死す」というタイトルは、なんとも意味深ですね。「ナイル殺人事件」ではこの余韻は味わえません。

2015年12月19日 (土)

白昼の悪魔

2386「白昼の悪魔」  アガサ・クリスティー   ハヤカワ文庫         ★★★

避暑地の島で、元女優のアリーナが殺された。滞在客の中に犯人がいるのは間違いないと思われたが、皆に鉄壁のアリバイが。ポアロは、犯人のトリックを見抜けるか?

今月のクリスティは、ポアロものです。

マープルもののある短編と、トリックの骨格は同じなのですが、長編として構成されています。

いつもながら、クリスティの人間観察の鋭さが、物語を動かしていきます。作品を読むにつれ、この作者はどういう目で人間を見ていたんだろうと思わされます。

「オリエント急行の殺人」ドラマ化をきっかけに、月に一冊クリスティを読むという課題を己に課して1年。無事、12冊を読み終えました。でも、まだ読み足りない気がします。月イチとはいかなくても、読み続けたいと思います。また、クリスティならこれがオススメというのがありましたら、教えていただけるとありがたいです。

2015年11月28日 (土)

予告殺人

2380「予告殺人」 アガサ・クリスティー          ハヤカワ文庫         ★★★★

「殺人お知らせ申し上げます」…新聞に載った奇妙な広告。そして、予告通りに事件は起こった!  ミス・マープルが謎に挑む。

今月のクリスティは「予告殺人」です。

日時を指定した殺人予告。その通りに殺人は起こる。
乱入してきた男が死んだのだ。ところが、自殺か他殺か判然としない。その場にいた皆が何だか怪しい。そこで我らがミス・マープル登場となるわけですが。

怪しい人物はたくさんいるわりに、決定打はなく、そうしているうちに第2・第3の事件が。いったい誰が真犯人なのか。

実は、途中で犯人はわかりましたが、真相はわかりませんでした。そういう意味で、なかなか読み応えがありました。

2015年10月31日 (土)

象は忘れない

2371「象は忘れない」 アガサ・クリスティー   ハヤカワ文庫   ★★★★

推理作家ミセス・オリヴァは、名づけ子のシリヤの両親はなぜ死んだのかを調べるはめに。合意の心中だったのか、夫が妻を殺して自殺したのか、それとも妻が? オリヴァは友人のポアロに相談をもちかけ、過去の記憶をもつ人々を訪ねることにする。

今月のクリスティーはポアロものです。

以前読んだ「五匹の子豚」と趣向は似ていて、過去の事件を知る人々を訪ね、その記憶するところから推理する、というもの。「象は忘れない」というのは、記憶力の良さを示すことわざで、多くの「象」たちが登場して、自らの記憶をミセス・オリヴァやポアロに語ってくれます。

しかし、記憶というものほど厄介なものもなく。不確かな情報もあり、それを精査するのがとても大変な作業なわけで。ポアロなくしてこの謎解きはなし得ないわけです。

明かされる「真実」は、なんとも哀しい現実ですが、ただの憎悪ではないところが救いでした。

解説によると、ポアロものとして実質最後に書かれた長編ではないかということでした。全体に漂う憂愁のようなものが感じられたのは、そのせいでしょうか。

2015年9月16日 (水)

牧師館の殺人

2356「牧師館の殺人」 アガサ・クリスティー   ハヤカワ文庫   ★★★

セント・メアリ・ミード村の牧師館で、嫌われ者のプロザロー大佐が殺された。画家のローレンス・レディングが自首したが、クレメント牧師たちは違和感を覚える。果たして、犯人は・・・。

今月のクリスティは、ミス・マープルの長編初登場作です。

「火曜クラブ」では安楽椅子探偵のごときミス・マープルですが、長編ではかなり活動的です。もちろん、彼女の人間観察力と洞察力とで、事件は解決するわけですが、村の人々に興味津々な老嬢の様子は、時にユーモラスでもあります。

今回は、殺されてもおかしくない人物が殺され、容疑者はたくさんいるものの、アリバイがある人物が大半。しかも、最初に自首したレディングの無実が証明されてしまい、では犯人は?という展開。奇怪な電話があったり、奇妙な手紙があったり、不審な人物がいたり、謎がてんこ盛りな感じでした。

犯人、わかりませんでした。悔しい・・・。

最近、歳のせいか、カタカナの登場人物がたくさん出てくると、なかなか覚えられなくて苦労するようになってきました。でも、めげずに来月もクリスティ読みます。

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