類
3104「類」 朝井まかて 集英社 ★★★★
森鷗外の末子・類は、幼いころから繊細で、ふわふわと頼りないところのある子だった。父母に愛され、姉たちと幸せな時間を過ごしてきた類。しかし、その時間は、父の死を契機に一変する。
最近、漱石関連のものはよく目にするけれど、鷗外は少ないねえ…というのが、近年、我が家の会話でした。そしたら、出ました! しかも、まかてさん!
文学はろくでなしのもの、作家なんてろくなもんじゃない…というのが、文学をこよなく愛する夫氏の口癖です。鷗外の三男・類はろくでなしというか、甲斐性なしというか、生活能力が恐ろしく低い人で…。そういう人があるがままでいることが許されず、特に後半は生活のために苦闘する姿が描かれます。苦闘しても、ダメなんですが(苦笑) それでいて妙に魅力的な人なのが困ったところで(苦笑)
父、母、姉たち(茉莉、杏奴)との関係を通して、切なくも愛情深い森家の人々が、余すところなく描かれていると思います。一番つらかったのは、姉たちとの関係に亀裂が入るところ。それまでは、姉たちにとって、類は御しやすい相手だったのでしょう。ところが、書くためなら全く躊躇わない、純粋さに直面して、恐慌を来したのでしょうか。忖度や書かれた人がどう思うかは、類にとっては埒外のこと。ただ、書くために必要だから、書く。これは怖い(笑)
あくまで小説なので、これイコール史実ではないよ…と自重しつつ、そう言えば、類も杏奴も読んだことないなあ。茉莉もエッセイをいくつか読んだくらいだなあ、と。
というか、久しぶりに鷗外を読まないといかんかな?という気になっています。
今は、類のような人は、ますます生きづらいのでしょうね…。
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