朝井まかて

2015年1月25日 (日)

阿蘭陀西鶴

2224「阿蘭陀西鶴」 朝井まかて   講談社   ★★★★

歴史に残る著作の数々を遺した井原西鶴。彼はどんな人物だったのか。娘・おあいの目を通して描く、人間・井原西鶴。

直木賞受賞第1作。

帯のコピーには、こういう著者の言葉があります。

「日本初のベストセラー作家にして娯楽小説の祖・井原西鶴。娘との日々の暮らしから、謎に包まれたその人生に迫りたいと思いました。」

たしかに、西鶴とはどういう人なのか、全然知らないです。知識としてその作品のタイトルくらいは知っていても、読んだことないし。

盲目の娘・おあいを通して描かれる西鶴の物語は、その妻の死から始まります。談林派の俳諧師としての活躍。「好色一代男」をはじめとする草紙ものの執筆。何より破天荒で、常に異端児であり続け、それでいて人たらしな、なんとも「はた迷惑」な男の姿がつづられていきます。西鶴に反発するおあいの存在が効いていて、西鶴の放埓さと、その陰の隠された思いとが、印象的に描かれています。

なぜ芭蕉に異様なまでの対抗心を燃やしたのか、なぜ俳諧から戯作へと転じたのか、いったい何を描きたかったのか・・・不器用な男の生き様が、なんとも言えない余韻をもって胸にせまってきました。

2014年12月23日 (火)

ぬけまいる

2208「ぬけまいる」 朝井まかて   講談社文庫   ★★★★

「馬喰町の猪鹿蝶」と名を馳せた、お以乃、お志花、お蝶も今や三十路目前。幼なじみの三人が、ひょんなことから「抜け参り」に出ることに。お伊勢様を目指す三人の珍道中やいかに。

「恋歌」とは全く趣の異なる、ユーモアたっぷりの道中ものでした。

それぞれに鬱屈を抱えた三人が、いろんな出来事に巻き込まれつつ、それらを力づくで(?)解決しながら旅をしていく、なかなか痛快な物語。

小間物屋の女主・お蝶は、べっぴんで目端が利くけれど、常にトラブルメイカー。旗本の奥方になったお志花は、いちばんのしっかり者だけれど、何やら思いつめた様子で。そして、唯一の独り者・一善飯屋の娘お以乃には、旅の途中でロマンスも・・・。

旅の中で出会う人たちとも、ドラマがあったり、丁々発止のやりとりがあったり、とにかく飽きることなく、一気読みでした。

三人とも、旅から帰っても、したたかに生きていくんだろうなあ。

2014年5月25日 (日)

恋歌

2129「恋歌」 朝井まかて   講談社   ★★★★★

江戸の旅籠・池田屋の一人娘である登世は、水戸藩の若侍に激しい恋をし、その情熱のまま、水戸藩に嫁ぐ。しかし、幕末の水戸藩は天狗党と諸生党に二分し、内紛が絶えない状態が続いていた。登世の夫・林以徳もまた、天狗党の一員であった。水戸藩の動乱は、登世の人生をも否応なしに揺り動かして・・・。

第150回直木賞受賞作。ずっと気になっていた一冊です。

天狗党の乱の顛末を知っていれば、ハッピーエンドはありえないとわかっていましたが・・・。あらためて水戸藩の混乱を知ってみると、その凄惨さに言葉を失いました。

その中で登世が生き抜いたのは、いつか夫に会いたい一念に支えられて。武家の出ではなかったのことが、「生き延びる」選択を自然にしていたから。登世の野放図にも思える性質は、同時に生きる力でもあったのでしょう。

のちに女流歌人・中島歌子として名を成した登世の手記を、弟子の花圃と澄が偶然読んでしまう・・・という構成。こんな必要があるのか、登世を主人公にシンプルな物語にした方がよかったんじゃないの?と思いながら読んでいましたが・・・いや、ちゃんと意味がありました。登世の遺言の「鎮魂」という言葉に、思わず涙してしまいました。

なぜ、登世が歌を学ぼうとしたのか、その理由もせつなかったです。

戦というものが、人に何をもたらしてしまうのかということも、考えさせられます。憎しみの連鎖を断ち切るのは、簡単なことではないのです。

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