アンソロジー

2019年12月20日 (金)

てのひら怪談

2983「てのひら怪談」加門七海・福澤徹三・東雅夫・編      ポプラ社

800字という字数の中で、怖い話・不思議な話・奇妙な話を創作するビーケーワン怪談大賞の名作100選。

創作なのか、実話なのか。書き手はプロも素人も混在していて、それぞれ趣向をこらしています。しかも、原稿用紙二枚以内。どれだけエッジの効いた話に仕上げるか、皆さんお見事です。

私はどうにも怪談が好きで、怖がりのくせに読みたくなるのです。こういう「よくわからないこと」を、怖がりつつも受容するのって、大事な気がします。息がつまりそうな世の中だからこそ。

2019年11月27日 (水)

決戦!賤ヶ岳

2974「決戦!賤ヶ岳」  天野純希・他      講談社      ★★★

賤ヶ岳七本槍の七人を主人公にした「決戦!」シリーズ第七弾。

木下昌輝「槍よ、愚直なれ」、簑輪諒「糟屋助右衛門の武功」、吉永永青「しつこい男」、土橋章宏「器」、矢野隆「ひとしずく」、乾緑郞「権平の推理」、天野純希「孫六の刀」

以前読んだ、今村翔吾「八本目の槍」が、七本槍たちを主人公にしたものだったので、読み比べてみよう、と。書き手が変われば、どう変わるのか。

個々の性格は、書き手の解釈によって変わるのは当然…と思いきや、虎之助(加藤清正)と市松(福島正則)のキャラは誰が書いてもあまりぶれないのに笑ってしまいました。それだけ定着しているということでしょうか。

むしろ、その二人以外を描いた物語の方が、羽柴家の脆さが浮き彫りになってきて、のちに豊臣政権が崩壊する理由がわかる気がします。

また、歴史ものは「史実」があるわけで。その何を拾いあげて、また史実の空白をどう補うのか…それぞれの書き手の意識が感じられるところかもしれません。

2019年10月27日 (日)

ザ・ベストミステリーズ2019

2962「ザ・ベストミステリーズ2019」 日本推理作家協会・編   講談社   ★★★★

澤村伊智「学校は死の匂い」(日本推理作家協会賞短編部門受賞作)、芦沢央「埋め合わせ」、有栖川有栖「ホームに佇む」、逸木裕「イミテーション・ガールズ」、宇佐美まこと「クレイジーキルト」、大倉崇裕「東京駅発6時00分 のぞみ1号博多行き」、佐藤究「くぎ」、曽根圭介「母の務め」、長岡弘樹「緋色の残響」

 

選りすぐりの作品だけあって、どれも質の高いミステリばかり。読み応えありました。

インパクトあったのは、「学校は死の匂い」。比嘉姉妹もので、ホラーでもあるのですが、ミステリとしてもなかなかの仕上がりです。そして、学校というフィールドならではの「怪談」であり、「事件」であるというところが、実に上手い。

芦沢さんの「埋め合わせ」も学校ものですが、こちらは教師が主人公。自分のミスを隠すためにとる行動が、自らをさらに深みに追い込んでいく・・・という、サスペンスミステリ。あほなことを・・・と思いつつ、その心理がわかる気がしてしまうのが怖かった。

「イミテーション・ガールズ」は、女の子どうしの駆け引きがおもしろかったし、「クレイジーキルト」は物語の構成自体がキルト作品のようで好きです。

大倉さんの「東京駅~」は、福家警部補ものの一編。このシリーズの醍醐味を味わえるさすがの完成度。有栖川有栖さんは手練れの領域に入ってきましたね。

長編ミステリも好きですが、短編小説というのは本来ミステリの基本だと思うので、こういう上質な作品を読めるアンソロジーは実にありがたいです。

 

2019年10月10日 (木)

戦国の教科書

2953「戦国の教科書」 天野純希・他   講談社   ★★★

小説で歴史が学べる? 六人の作家による、戦国時代を舞台にした短編集。

 

矢野隆「一時の主」(下克上・軍師)、木下昌輝「又佐の首取り」(合戦の作法)、天野純希「悪童たちの海」(海賊)、武川佑「鈴籾の子ら」(戦国大名と家臣)、澤田瞳子「蠅}(宗教・文化)、今村翔吾「生滅の流儀」(武将の死に様)の6編に、末國善巳によるテーマに関する解説とブックガイドがついた、「教科書」。

まあ、いろんな企画を考えるものだなあというのが、一番の感想です。そして、新しい学説やら、新しい知識やらを仕入れるのは、なかなかおもしろい。歴史学は、研究が進むにつれて、わかることも増えていくわけで。それを下敷きにして、古い「定説」を覆すストーリーができていくのは、私なんかは単純におもしろいのです。

当時の人々が、何に価値を見出して、どういう規範に沿って生きていたのか。今と違うのか、それとも同じなのか。そういうところに興味があるので。

そういう意味では、武川佑「鈴籾の子ら」が新鮮でした。上杉景勝に反旗を翻した新発田長家が主人公。景勝の臣下とはいえ、国衆という立場であり、絶対的な主従関係ではない。その辺りが、「真田丸」を髣髴とさせ、なるほど、こういう感じか・・・と。米作りという観点を用いたのも、おもしろかったです。ただ、新潟の方言は、文字で読んでもよくわかりませんでした(苦笑)

それから、澤田瞳子さんは安定の書きっぷりで、大仏づくりに携わる僧侶たちの生き様を描きます。この大仏は大地震で倒壊してしまうのですが。戦国時代といえば、武将が主役ですが、それ以外の人たちも当然いたわけで。最近、個人的にヒーロー的な人物の描き方に抵抗を感じるようになってしまって。こういう作品の方が、私は好きです。

 

2019年6月23日 (日)

もの書く人のかたわらには、いつも猫がいた

2916「もの書く人のかたわらには、いつも猫がいた」 角田光代・他   河出書房新社   ★★★★

 

NHK「ネコメンタリー 猫も杓子も」で取材した作家とその猫たちが、本になりました。

角田光代とトト。吉田修一と金ちゃん銀ちゃん。村山由佳ともみじ。柚月裕子とメルとピノ。保坂和志とシロちゃん。養老孟司とまる。それぞれの短編またはエッセイつき。

全てではないのですが、番組を見ていたので、あの独特の空気感を思い出しながら読んでいました。すごく静かな番組なんですよ。余計な音がない、というか。

猫といっても性格もさまざまで、作家さんたちとの距離感もさまざまで、実におもしろかったです。テレビで見たとき、吉田修一さんが全然猫たちに話しかけないので、「へえ、こういう人もいるんだなあ」と驚いたのを覚えてます。(私はうるさくかまって、猫にうざがられるタイプ)

角田さんとトトちゃんの回は見逃しちゃったので、これ、見たかったなあ。

 

 

2019年5月 6日 (月)

美女と竹林のアンソロジー

2894「美女と竹林のアンソロジー」 森見登美彦・他   光文社   ★★★★

 

森見登美彦リクエストによるアンソロジー。

阿川せんり「来たりて取れ」、伊坂幸太郎「竹やぶバーニング」、北野勇作「細長い竹林」、恩田陸「美女れ竹林」、飴村行「東京猫大学」、森見登美彦「永日商品」、有栖川有栖「竹迷宮」、京極夏彦「竹取り」、佐藤哲也「竹林の奥」、矢部嵩「美女と竹林」

私にとって「定番」の作家さんたちが5人、初めましての方が5人。アンソロジーならではの楽しい読書でした。ただやっぱり、慣れている作家さんたちのが読みやすかったかな。

伊坂さんは設定からぶっ飛んでいて笑ってしまったし。恩田さんはタイトルから「は?」となりましたが、やっぱり恩田さんの世界に連れて行かれました。世間話みたいな導入から、気づくと異世界に・・・というパターン。落語みたいです。森見さんの物語のうす明るいような、ひんやりした感じとほっこりする感じが同居する不思議な世界が健在。有栖川さんと京極さんも、実に「らしい」世界が展開します。

初めての作家さんでは、冒頭の阿川せんり「来たりて取れ」のインパクトにやられました。突拍子もないようでいて、いつのまにか心地よくなっている、独特の感覚でした。

本家「美女と竹林」を読んだとき、正直言って「なんじゃ、これ(笑)」だったのですが、このテーマで物語を書くとこんなになっちゃうんですねえ。ちなみに、私は竹林、怖いです。嵯峨野に行ったとき、ちょっと具合悪くなりました(苦笑)

2019年4月19日 (金)

十年交差点

2887「十年交差点」 中田永一・他   新潮文庫nex   ★★★

「10年」をテーマにした五人の作家によるアンソロジー。

中田永一「地球に磔にされた男」、白河三兎「白紙」、岡崎琢磨「ひとつ、ふたつ」、原田ひ香「君が忘れたとしても」、畠中恵「一つ足りない」

 

白河三兎「白紙」にやられました・・・。

これはもう、個人的な事情なんですが、この展開はなかなかきつかったです。最後の最後に、足元からすくわれてしまった感じ。いや、きちんと伏線があったし、そうなるべくして進んできた物語なんですけど・・・。元教師としては、つらい話でした。

そして、岡崎琢磨「ひとつ、ふたつ」もまたしんどかったです(苦笑) いい話・・・ではあるんだけど、やっぱり読んでいると、胸が痛かったです。

原田ひ香さんは、以前アンソロジーで短編を読んでからずっと気になっている作家さん。でも、いまだきちんと読んだことはないです。この「君が忘れたとしても」は、主人公の結実子にそれほど共感したわけではないのですが、彼女の心の揺れ動きに引き込まれるように読みました。

2019年3月31日 (日)

日本怪談集 取り憑く霊

2878「日本怪談集 取り憑く霊」 種村季弘・編   河出文庫   ★★★★

時に人に、時に物に。霊はなにゆえ取り憑き、私たちの前に姿を見せるのか。江戸川乱歩や小松左京、芥川龍之介ら、錚々たる作家による怪談アンソロジー。

1989年刊行の「日本怪談集(下)」を復刊。

 

これ、持ってました。かなり気に入ってたのですが、度重なる引越しで行方不明に。特に、小松左京「くだんのはは」は、ある意味トラウマになりそうなくらいインパクトがあって、忘れられない作品だったので、いつか読み返したいと思っていたのです。それが、丸善ジュンク堂書店の企画で復刊!

収録作品は、以下の通り。

森銑三「猫がものいふ話」、小松左京「くだんのはは」、内田百閒「件」、結城昌治「孤独なカラス」、藤沢周平「ふたたび 猫」、岡本綺堂「蟹」、三浦哲郎「お菊」、岡本綺堂「鎧櫃の血」、橘外男「蒲団」、森銑三「碁盤」、柴田錬三郎「赤い鼻緒の下駄」、藤本義一「足」、舟崎克彦「手」、江戸川乱歩「人間椅子」、田中貢太郎「竈の中の顔」、三島由紀夫「仲間」、芥川龍之介「妙な話」、久生十蘭「予言」、吉田建一「幽霊」、正宗白鳥「幽霊」、折口信夫「生き口を問ふ女」

この豪華なラインナップ! そして、種村季弘の解説!

学生時代、種村季弘にはまって、そこからこれを手に取り、ホラーというか、幻想文学というか、そういうジャンルにしばらく没頭していたの、懐かしく思い出しました。

やはり、「くだんのはは」は圧巻だと思うのですが、ここ数年愛読している岡本綺堂にもこの本で出会っていたのですねえ。乱歩を読んだのも、このアンソロジーが初めてだったと思います。なんというか、自分の根っこを再確認した気分でした。

しかし、因果が明らかにならない話って、後に残るモヤモヤ感が半端なくて、怖いです。

2018年11月 4日 (日)

あのひと 傑作随想41編

2812「あのひと 傑作随想41編」 新潮文庫編集部・編   新潮文庫   ★★★★

決して忘れられない「あのひと」との思い出を語った随筆41編。

第一章は父親、第二章は母親、第三章はそれ以外の人々、という構成でした。

ラインナップがなかなか豪華で、読み応えありました。森茉莉で始まって、須賀敦子で終わるという・・・。

全体的に、父を語るよりも母を語る方が、なんというか湿度が高い感じで、その違いがおもしろかったです。岡本太郎が母・岡本かの子を描いた随筆のあとに、岡本かの子がその母を語っていたり。

印象的だったのは、澤地久恵「おせいさんの娘」。これは、向田邦子さんのことでした。邦子さんとの旅の思い出から、彼女の遭難後の「おせいさん」の振る舞いへの転換が鮮やか。かけがえのない人を失った悲しみがズシンとこたえました。

もう一つ、石原慎太郎「虹」。弟・石原裕次郎の死に至るまでを丁寧に描いた一篇。石原慎太郎の書くものに感心したことは一度もないのですが、これは心に響きました。傲岸不遜な石原慎太郎ですが、弟は特別な存在だったのですね。

2018年9月20日 (木)

鍵のかかった部屋

2794「鍵のかかった部屋」 似鳥鶏・他   新潮文庫nex   ★★★★

同一トリックを用いて書かれた5つのミステリ競作。

似鳥鶏「このトリックの問題点」、友井羊「大叔母のこと」、彩瀬まる「神秘の彼女」、芦沢央「薄着の女」、島田荘司「世界にただひとりのサンタクロース」

おもしろかった~。

古典的すぎて「カビが生えてしまった(by 似鳥鶏)密室トリック。そのトリックを使ったお話を作りましょうという企画に、島田荘司という大御所のおまけがついた豪華版。

作家さんそれぞれの持ち味が出ていて、一篇たりとも退屈しませんでした。そこで使ってくるか!とか、そう使うか!とか。

友井さんの「大叔母のこと」が、物語として好きでした。   

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