楽園の烏
3142「楽園の烏」 阿部智里 文藝春秋 ★★★★
安原はじめは行方不明になった養父・作助から、山を相続した。莫大な維持費もおまけにつけて。その直後から山の買い手が次々現れ、あげくにはじめは絶世の美女によって、この世とは異なる理によって成り立つ世界に送り込まれる。そこは、山内。かの大戦から20年の月日が流れていた。
八咫烏シリーズ、新章。
何度もくり返しますが、第1作目を読んだときは、こんな世界に連れてこられるとは思わなかったのです。ストーリーのおもしろさに魅せられてひたすら読み進めるうちに、とんでもないところに来てしまった・・・というのが正直な気持ちです。
これ、八咫烏の話?というところから始まる話は、雪哉の登場で「やっぱり八咫烏だよね」と。しかし、雪哉もすっかり大人になり、さらに平和な山内をはじめと共に見て回るうちに、それまでずっと感じていた違和感の正体を突きつけられます。「それまで」というのは、シリーズ1作目からずっとです。そうして、雪哉が築いた「平和な山内」の欺瞞も明らかに。何が怖いって、他人事とは思えないのです。山内は、私たちのいる世界の映し鏡です。
物語は二転三転。さらに、シリーズ全体も根幹からひっくり返されそうな嫌な予感。はじめ、雪哉、はじめと共に山内を出た頼斗の思惑は・・・。
ということで、これは続きも読むしかないよねえ・・・。
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