門井慶喜

2018年8月24日 (金)

新選組颯爽録

2787「新選組颯爽録」 門井慶喜 光文社 ★★★

浪士隊として京で産声をあげた新選組。その中で隊士たちは何を思い、どう生きたのか。

「馬術師範」「芹沢鴨の暗殺」「密偵の天才」「よわむし歳三」「新選組の事務官」「ざんこく総司」の六編から成る連作。

新選組にはまったのもずいぶん昔で、今はかつてのような熱はなくなりましたが、やはり興味ある題材であることには変わりなく。特殊な状況下で、特殊な生き方をした彼らの心の動きはどうだったのか。

近藤勇、土方歳三、沖田総司といった定番以外の人物にも焦点をあてているのが面白かったです。特に冒頭「馬術師範」の安富才助の話は、こういう視点で見たことがなかったので新鮮でした。

あとはやはり土方押しなので(笑)、「よわむし歳三」。原田左之助が登場しますが、土方とは相性よくなかった気がするんですけど…まあ、いいか。

「ざんこく総司」で描かれる山南敬助は、誰よりも熱い男で、これまた今までのイメージとは違って面白かったです。

2018年2月17日 (土)

天才たちの値段

2713「天才たちの値段」 門井慶喜   文春文庫   ★★★

美術品を見たとき、それが本物ならば舌に甘みを覚え、贋物ならば苦みを覚える・・・そんな体質の美術コンサルタント・神永美有。短大の美術講師・佐々木昭友は、ボッティチェッリの鑑定を巡って、神永と知り合い、その才能に魅せられて行く。

直木賞受賞となると、今までの作品も書店に並べられるのでいいですね。受賞作はすでに読んでいたので、前から気になっていたこちらを。

美術探偵・神永美有シリーズの1作目。「舌」で真贋を見分けるという美術コンサルタントの神永が、五つの難題を解き明かします。

そもそも美術作品とミステリは親和性が高いし、美術は大好物なので、この手のミステリは大歓迎です。

肩がこらずにサクサク読めますが、神永の「舌」の設定は本当に必要だったのかしら?という気がしないでもなく・・・。続編も文庫化されているようですが、読むかどうかは検討中です。

2017年12月25日 (月)

銀河鉄道の父

2685「銀河鉄道の父」 門井慶喜   講談社   ★★★★

岩手県花巻で質屋を営み、議員もつとめる、地方の名士である父・政次郎。小学校では神童とも呼ばれるが、大人になっても家を継ごうとしない、長男・賢治。二人は時に激しく反発しあうが、政次郎は「父」として賢治をいとおしみ続け・・・。

直木賞候補作。

こういう視点もあるのだなあ、と。非凡な才能をもって生れた人物の父親。おもしろかったです。

政次郎は真面目な「明治の男」。自分が育てられたように、賢治たちを育てます。父としての威厳や、家族の秩序を乱さぬよう。一方、子どもたち、特に賢治への愛情は深く、賢治が入院すると、医者がとめるのも聞かず付き添い、自分が病気になるほど。また、成績優秀ながら進学できなかった自分とは違い、賢治たちには上級学校への進学を許します。とにかく愛情があふれんばかりなのに、それを表面には出さないように必死でこらえている、そんな父。

一方の賢治は、質屋という仕事に引け目を感じているのか、家を継ごうとはせず。夢のようなことを口走っては、父をあきれさせるばかり。しかも、無下にできない父の心を知ってか、いつまでも金の無心は続けるしまつ。信仰の面でも賢治は父に逆らい、二人で激論を交わすことも。自分でも生きがいを見出せず、ふらふらしている賢治は、完全に「不肖の息子」。

やがて賢治が「書く」ことに目覚め、妹トシの死を経て、賢治の文章が結晶していくさまを、政次郎は父としてずっと見つめています。「永訣の朝」に描かれたトシの死はどのようなものであったか。「雨ニモ負ケズ」を賢治はどんな気持ちで書いたのか。政次郎の目を通して語られるそれらは、聖人のように描かれる「宮沢賢治」ではなく、人間として血肉をもった「宮沢賢治」の生き様です。

これ、宮沢賢治にあまり興味のない人にこそ読んでみてほしいです。

2017年11月 5日 (日)

マジカル・ヒストリー・ツアー

2660「マジカル・ヒストリー・ツアー」 門井慶喜   幻戯書房   ★★★★

「歴史ミステリ」とは何か? そもそも「ミステリ」なるものが成立した背景には何があるのか? 名作ミステリを通して、その時代背景を読み解く評論。副題「ミステリと美術で読む近代」。

軽い気持ちで読み始めましたが、ミステリに関する評論でした。ちょっと珍しいものを読んでしまった気分。

「時の娘」から始まって、「アッシャー家の崩壊」やシャーロック・ホームズ、「薔薇の名前」、「わたしの名は赤」などを経て、最後はまた「時の娘」で閉じられます。私は「アッシャー家」とホームズ物しか読んでいないのですが、ついていけました。(もちろん、ほかにもいろいろな小説の話が出てきます)

とにかく、おもしろかったです。こんなふうにして見えてくるものがあるんだ・・・という、新鮮な驚き。近代という時代の特性。ミステリを宗教や美術といった視点で見たときに浮かび上がる構図。

なるほど、こうなるべくしてなった「ミステリ」なのだなあ、と。それゆえの「歴史」と「ミステリ」の親和性などなど。実に興味深い話満載でした。

とりあえず、未読の「時の娘」「薔薇の名前」「わたしの名は赤」は、きっと読むぞリストに書き加えました。

2017年4月13日 (木)

家康、江戸を建てる

2561「家康、江戸を建てる」 門井慶喜   祥伝社   ★★★★

天正十八年。家康は父祖の地を捨て、関八州への国替えを余儀なくされた。しかし、それは家康にとって新たな挑戦の始まりであった。

おもしろい。この物語の構成が、実におもしろいのです。

「流れを変える」「金貨(かね)を延べる」「飲み水を引く」「石垣を積む」「天守を起こす」の5話を通して、治水工事上水道工事、貨幣経済への転換など、江戸が天下の町に変貌していく過程が描かれます。家康も随所に顔を出しますが、主人公になるのは実際に工事等に携わった名もない(あるいは歴史上あまり有名でない)人物。

何もない土地どころか、低湿地が広がる不毛の地だった江戸が、少しずつ都市としての機能を有していき、時代が移り変わっていく様子が、実によくわかるのです。

もちろん、そこに関わった人々の生き様も、生き生きと描かれています。

こういう角度から「江戸」を見るというのは、新鮮な感覚でした。

2015年9月13日 (日)

東京帝大叡古教授

2354「東京帝大叡古教授」 門井慶喜   小学館   ★★★★

明治の世。大学教授をねらった連続殺人が起こる。その容疑者は夏目漱石!? 東京帝大の宇野辺叡古(うのべ・えーこ)と、熊本五高からやってきた阿蘇藤太が、事件の謎に挑む。

直木賞候補作でした。候補になるのも納得の読み応えでした。

明治を舞台にした歴史ミステリといってもいいのかもしれません。連続殺人そのものの犯人はあっけなくわかるのですが、その事件そのものに黒幕がいて・・・という設定。7話から構成されていて、話はどんどん大きく深く広がっていきます。

政治学者である叡古教授が、事件の謎解きをしていくのですが、7話それぞれに工夫がされていて、読者をあきさせないようになっています。夏目先生も登場するし。

印象的だったのは、第四話「字が書けるということ」。字が書けるというのが何を意味するのか、当時の日本という時代、そこでの人々の生活といったものを考えさせられます。

最大の謎は、学生・「阿蘇藤太」の正体です。叡古教授が勝手につけた名前ですが、本当の名前は・・・。それは、読んでのお楽しみです。

2012年3月28日 (水)

おさがしの本は

1848「おさがしの本は」 門井慶喜   光文社文庫   ★★★

和久山隆彦は、市立図書館の調査相談係。レファレンス・カウンターで利用者の相談にのるのが仕事だ。いつのまにか機械的に仕事をこなすようになっていた隆彦だが、その心境に少しずつ変化が。その矢先、図書館廃止論を唱える副館長が着任し・・・。

レファレンスというのは、とても難しいと思うのです。依頼者が探している本や資料を、膨大な図書の海の中から探し出す。時には、探している本人すら、それがどんな本なのか、わかっていないこともあるのです。限られた手がかりをもとに、依頼者の「探し物」「必要なもの」を見つけ出す・・・これぞまさしくミステリです。

レファレンス係の司書を主人公にしたミステリとくれば、本好きの心をくすぐらないわけがない。・・・ということで、気になっていた本、買ってきました。

実際、レファレンスの多様さには驚いてしまいました。あらためて、司書さんは図書に関して豊富な知識が必要なのだなあ、と。

ただ、この話は、残念ながら主人公の価値観にイマイチ共感できずに終わってしまいました。あ、そっちにいっちゃうんだ・・・という感じで。まあ、ありがちな「図書館もの」で終わらない分、新しいと言えるかもしれませんが。

その他のカテゴリー

「あ」行の作家 「か」行の作家 「さ」行の作家 「た」行の作家 「な」行の作家 「は」行の作家 「ま」行の作家 「や」行の作家 「ら」行の作家 「わ」行の作家 あさのあつこ いしいしんじ こうの史代 さだまさし その他 たつみや章 ほしおさなえ よしもとばなな アンソロジー 万城目学 三上亜希子 三上延 三島由紀夫 三木笙子 三浦しをん 三浦哲郎 三谷幸喜 上橋菜穂子 中山七里 中島京子 中田永一 中野京子 乃南アサ 乙一 井上ひさし 京極夏彦 伊坂幸太郎 伊藤計劃 伊集院静 佐藤多佳子 佐藤賢一 俵万智 倉知淳 光原百合 冲方丁 初野晴 加納朋子 加門七海 北大路公子 北山猛邦 北村薫 北杜夫 北森鴻 原田マハ 司馬遼太郎 吉村昭 吉田修一 向田邦子 坂木司 夏川草介 夏目漱石 大倉崇裕 大崎梢 太宰治 奥泉光 宇江佐真理 宮下奈都 宮尾登美子 宮部みゆき 小川洋子 小川糸 小路幸也 小野不由美 山崎豊子 山本周五郎 山白朝子 岡本綺堂 島本理生 川上弘美 平岩弓枝 彩瀬まる 恩田陸 愛川晶 戸板康二 日明恩 日記・コラム・つぶやき 有川浩 朝井まかて 朝井リョウ 木下昌輝 木内昇 朱川湊人 杉浦日向子 村山由佳 東川篤哉 東野圭吾 松本清張 柏葉幸子 柚木麻子 柳広司 柴田よしき 栗田有起 桜庭一樹 梨木香歩 梯久美子 森博嗣 森絵都 森見登美彦 森谷明子 横山秀夫 橋本治 氷室冴子 永井路子 永田和宏 江國香織 池波正太郎 津原泰水 津村記久子 浅田次郎 海堂尊 海外の作家 深緑野分 湊かなえ 漫画 澤村伊智 澤田瞳子 瀬尾まいこ 田中啓文 田丸公美子 畠中恵 石田衣良 磯田道史 福井晴敏 笹尾陽子 米原万里 米澤穂信 芥川龍之介 若竹七海 茅田砂胡 茨木のり子 荻原規子 菅野彰 菅野雪虫 藤沢周平 藤谷治 西條奈加 西澤保彦 角田光代 誉田哲也 辺見庸 辻村深月 近藤史恵 酒井順子 重松清 金城一紀 門井慶喜 阿部智里 青崎有吾 須賀しのぶ 額賀澪 高城高 高橋克彦 髙田郁 鷺沢萠

2020年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

カテゴリー