深緑野分

2018年10月23日 (火)

ベルリンは晴れているか

2807「ベルリンは晴れているか」 深緑野分   筑摩書房   ★★★★★

1945年7月、焦土と化したベルリン。ドイツ人少女・アウグステは米軍の兵員食堂で働いていた。ある日突然、彼女にもたらされた訃報。戦時中、アウグステをかくまってくれた恩人が殺されたという。アウグステは彼の甥に訃報を伝えるべく旅立つ。なぜか道連れになった陽気な泥棒と一緒に。

読みながら打ちのめされるような思いで、ただただ何かに憑かれたかのように頁を繰りました。

アウグステの置かれた環境、状況が過酷すぎて、「かわいそうに」なんて言葉も不遜に思えるほどでした。これでもか、これでもかと繰り出される設定に、ただもう言葉を失いました。

これはフィクションだとはいえ、多くの事実を下敷きにして作り上げた物語です。アウグステは作者が生み出した少女ですが、実際にこんな子が当時のベルリンにはいたのだろうと想像できます。また、当時の日本にも、きっと。

ただ、これは戦争と戦後いう非常時の物語ではありますが、同時に戦争がなくても、「あなたは人としてどうするのか」という根源的な問題を突きつけてきます。差別とは。人の良心とは。アウグステはそれらに直面しているのです。もうずっと。

アウグステは、当時のドイツの人々の象徴であり、当時戦火に逃げ惑った一般庶民の象徴であり・・・現代を生きる我々すべての象徴でもあります。だから、アウグステにずっと問われている気分でした。「あなたはどうする?」と。

「歴史ミステリ」ではありますが、現代にも通じるテーマの物語です。もっとも、当時のベルリンの状況も私はほとんど知らないので(去年「スウィングしなけりゃ意味がない」を読んで、こんなだったのか!と驚きました)、それを知るだけでも読む価値は十分にあります。

アウグステの本当の思いを知ったとき、タイトルの「ベルリンは晴れているか」がとても身にしみ、涙が出そうになりました。そして、彼女の相棒はどういう選択をするのでしょうか。彼がどちらを選んでも、責める気はないですが・・・後悔しない生き方をしてくれと願うばかりです。

「戦場のコックたち」で一目ぼれ(?)して、以来、「オーブランの少女」「分かれ道ノストラダムス」と読んできました。どの作品も好きですが、この「ベルリンは~」は、作者の覚悟のようなものを感じました。次作が楽しみです。

2017年6月23日 (金)

分かれ道ノストラダムス

2593「分かれ道ノストラダムス」 深緑野分   双葉社   ★★★★

中学時代の友人・基の三回忌で、基の日記をもらってしまった日高あさぎは、それ以来、どういう選択をすれば基は死ななかったかを考え始める。あさぎはクラスメイトの八女に、その「もしも」を聞いてもらうことに。しかし、それが思わぬ方向にあさぎたちを導いていく。

「戦場のコックたち」の深緑野分さんの、青春ミステリ。

いやー、これ、好きだわー。

初めて身近な人の死を経験したあさぎ。しかもそれが、仲のいい(実は好きだった)友達で、けんか別れしたまま、彼は突然死んでしまう。あさぎの後悔とか、いろんな感情がぐちゃぐちゃになってしまう感じ、すごくわかります。

話はパラレルワールドから、題名にもあるノストラダムスがらみのカルト集団まで発展して、あさぎと八女くんは、とんでもない事件に巻き込まれてしまうのですが・・・。

子どもから大人になるまでに誰もが経験することを、「頭で考えるよりからだが動いてしまう」あさぎの視点から描いた物語。あさぎの突発的な行動には、「おいおい・・・」と思うのですが、自分もこういう道を歩いてきたなあと、懐かしく、気恥ずかしい思いでいっぱいになりました。

いろんな要素が盛り込まれていますが、物語が破綻することもなく、あさぎが視野を広げて大人になっていく過程が、すごくよくわかります。

題名からもっとSFっぽい話かと思っていましたが、全然違いました(笑) 深緑さんの書く物語、好きだなあ。これからも追いかけようと決めました。

2017年4月19日 (水)

オーブランの少女

2564「オーブランの少女」 深緑野分   東京創元社   ★★★★

美しい庭園オーブラン。そこには、秘められた過去があった。集められた病や障害をもつ少女たち。謎めいた規則。外の世界から完全に隔絶された彼女たちを待っていた運命は・・・。

遅ればせながら、深緑野分デビュー作です。

「オーブランの少女」「仮面」「大雨とトマト」「片想い」「氷の皇国」のミステリ5編。

秀逸なのは、やはり表題作。物語の始まりからいろんな謎がちりばめられていて、それが思いもしない形で解き明かされていきます。その謎解きの方向性の意外さと、描写のすさまじさで、読み終えてしばらくぼうっとしてしまいました。

どの作品も「少女」に焦点があたっているのですが、彼女たちのしたたかさやはかなさ、その年代ゆえの強烈な個性が印象的な作品ばかり。

「戦場のコックたち」を読んで、これはすごい!と唸らされたのですが、デビュー作からじゅうぶんすごかったです。

2016年2月14日 (日)

戦場のコックたち

2413「戦場のコックたち」    深緑野分           東京創元社           ★★★★

なぜ、やつは予備のパラシュートを集めているのか?  「キッド」ことティモシーと、「メガネ」ことエドワードは、戦場の謎に取り組む。戦争の進行とともに見えてきたのは、信じられない事実だった。

直木賞候補にして、本屋大賞ノミネート作品。そのどちらも納得です。

第二次世界大戦下のヨーロッパ戦線。合衆国の空挺団の兵士兼コックとなったキッドが出会う小さな謎たち。同僚のエドが鮮やかに謎解きをして…という、日常の謎系ミステリ。

戦場という究極の「非日常」において、「日常の謎」とは?と、読む前は思っていたのですが、これが見事に成立しています。まず、その着想に敬服します。

そして、戦場の描写。ヨーロッパ戦線には詳しくないのですが、やはり戦争は人間にとって耐え難い苦しみを生むのだと、改めて感じました。

ミステリとしても、戦争ものとしても、キッドたちの青春ものとしても、読みごたえのある一冊でした。

初めはなかなか世界に入り込めなかったのですが、途中から夢中になって読みました。早くも今年のベストにランクインしそうな作品に巡りあいました。

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