ほしおさなえ

2020年6月18日 (木)

菓子屋横丁月光荘 文鳥の宿

3053「菓子屋横丁月光荘  文鳥の宿」  ほしおさなえ      ハルキ文庫      ★★★★

月光荘で暮らすようになり、川越の町と人々に馴染んできた守人。家の声が聞こえる守人は、町のあちこちで、残された人の思いに触れていく。それが彼を思わぬ世界に導いて…。


積ん読してた一作目・二作目を読んで、「続き出ないかなー」と呟いたら、まさにそのタイミングで出ました!

血縁とは早くに別れてしまい、孤独だった守人。川越に引っ越したことがきっかけで、彼の閉じていた世界がゆるゆると広がっていく。そんな物語。

今回は、「雛の家」「オカイコサマ」「文鳥の宿」の三話。どの話もよかったのですが、「雛の家」は、胸がギュウッとなるような切なさと、温かさにあふれていて、泣いてしまいました。

大学院の修了時期も近づいてきて、進路について思い悩む守人。しかし、いろんな出会いが、また守人の道を開きます。

今回印象的だったのは、シリーズを通して無駄な登場人物がいない見事さ。そして、不幸が重なり、心を閉ざしていた守人は、本当は人とつながりたいと切望していたのだと納得できたことです。

守人がこれからどうするのか、楽しみです。




2020年5月22日 (金)

菓子屋横丁月光荘 浮草の灯

3041「菓子屋横丁月光荘    浮草の灯」  ほしおさなえ      ハルキ文庫      ★★★

「家の声が聞こえる」守人が川越の古民家・月光荘の管理人になって数ヶ月。町に知り合いも増え、地に足がついてきた。守人は古書店「浮草」で、バイトの女子大生・安西から、店主が余命幾ばくもないと知らされる。


シリーズ第2作は、「浮草の灯」「切り紙」「二軒屋」の三話。物語の世界観にも慣れ、落ち着いて楽しめるようになってきました。

そして、「活版印刷三日月堂」とのリンクも、次々と。楽しいですね。

ほんわかした物語…と見せかけて、誰もが直面する大事な人の喪失や、家族ゆえの相克や葛藤など、描かれるものは重いです(「三日月堂」シリーズもそうでした)。それでも、生きていていいんだと思える何かが、描かれているのです。

シリーズはまだ続くのかな?  少しずつ自分の時間を取り戻してきた守人の姿を、もう少し見ていたいです。

2020年5月14日 (木)

菓子屋横丁月光荘 歌う家

3036「菓子屋横丁月光荘    歌う家」  ほしおさなえ      ハルキ文庫      ★★★

大学院生の守人は、川越にある古民家の住み込み管理人を依頼される。家の声が聞こえるという不思議な力をもつ守人は、川越の家を初めて訪れたときから、その声が聞こえていた。


「活版印刷三日月堂」と同じく、川越を舞台にしたシリーズ第一作。「歌う家」と「かくれんぼ」の二話。

主人公の守人は、幼い頃に両親を亡くし、近しかった母方の祖父母からも引き離され、父方の祖父のもとで育てられました。厳格な祖父とは心が通わないまま、その祖父も亡くなり、一人になった守人がやってきたのが、川越の古民家。通称「月光荘」。

ほんわかした話かと思いきや、守人の設定がなかなかハードで。大きな喪失・欠落を抱えた守人が、家の声を聞くことで、少しずつ変わっていくのですが…。こう書いてしまうとベタな感じですが、守人をはじめとする登場人物たちの思いは切実なものがあります。

川越の町や建物の特徴について具体的に描写されていて、ちょっと興味をもちました。

2020年2月20日 (木)

活版印刷三日月堂 小さな折り紙

3006「活版印刷三日月堂  小さな折り紙」  ほしおさなえ      ポプラ文庫      ★★★★★

祖父の活版印刷所を復活させた弓子。彼女と三日月堂が関わった人たちの「それから」の物語。


シリーズ6作目は、「未来」の物語。

「マドンナの憂鬱」「南十字星の下で」「二巡目のワンダーランド」「庭の昼食」「水のなかの雲」「小さな折り紙」の六話。

前作に続きスピンオフですが、こちらは後日談。三日月堂に関わった人たちが、その後どうなったのかが描かれます。

何度も泣いてしまいました。

このシリーズはほんわか感動ものなんていう甘いものじゃなくて。誰もが避けて通れない死と向き合い、それでも生きていく姿が描かれています。さらに、誰かに何かを「繋いでいく」ことが、繰り返し繰り返し描かれます。その重さが身にしみるのは、自分も年をとったからでしょうか。

「二巡目のワンダーランド」「庭の昼食」がすごく好きでしたが、最後の「小さな折り紙」が、このシリーズの掉尾を飾るにふさわしい物語でした。

前作とこれには、初版限定で活版印刷で刷られた扉ページがついています。これがすごくいい! 活版印刷の味わいを、実際に確認しながら読めるなんて。

2020年1月10日 (金)

活版印刷三日月堂 空色の冊子

2991「活版印刷三日月堂  空色の冊子」  ほしおさなえ      ポプラ文庫      ★★★★

「三日月堂」に弓子が帰ってくるまで、あの小さな印刷所でどんな時間が流れていたのか。本編では描かれなかった過去を紡ぐ番外編。


4巻で完結じゃなかったのっ?

…書店でこの本を見つけたとき、思わず叫びそうになりました(苦笑)  もちろん、嬉しくて。というわけで、シリーズ5冊目は、スピンオフ短編集。

「ヒーローたちの記念写真」「星と暗闇」「届かない手紙」「ひこうき雲」「最後のカレンダー」「空色の冊子」「引っ越しの日」の7編。弓子の父、祖父母、三日月堂に関わる人はたちそれぞるを主人公に、本編に至るまでの道のりを語ってくれます。

弓子の父が主人公の「星と暗闇」、祖母が語る「届かない手紙」は、号泣しました。自分にとって大事な人が亡くなることの重さが、わかりすぎて。本編は、肉親を失い、ひとりぼっちになった弓子の再生の物語。彼女が抱えた孤独の深さに、私は今更ながら気づいたのでした。

弓子は芯の強い女性です。その強さのもとには、祖父の姿があるのかもしれないと、「空色の冊子」から感じました。やけにならず、あきらめず、毎日を暮らしていく。その大切さ。

ところで、これで終わりかと思ったら、さらにもう一冊! 今度は三日月堂の「未来」だそうです。



2019年1月29日 (火)

三ノ池植物園標本室 下 睡蓮の椅子

2853「三ノ池植物園標本室 下 睡蓮の椅子」 ほしおさなえ   ちくま文庫   ★★★★★

有名な書家であった父を亡くした葉は、母の再婚でできた義兄の友人・古澤響と出会う。若くして天才の名をほしいままにする建築家の響と葉は恋仲になるが、その頃、葉に異変が・・・。彼らの思いは複雑に絡み合い、それが風里にも試練をもたらすことになる。風里は彼らの想いをほどくことができるのか・・・。

植物園のバイトで知り合ったイラストレーター兼陶芸家の日下奏とつきあい始めた風里。しかし、思わぬ展開が風里を待ち受けます。

上巻で登場した少女・葉の人生が、いろんな形で風里をとらえ、同時にそれを解きほぐす鍵をもっているのは風里だけということも明らかに。このあたりの、過去と現在とが複雑なジグソーパズルのようにつながり、形を成していく展開は、ものすごい緊張感でした。ミステリとしても、読み応えがあります。

ただ、それだけでなく。生きるということ。命をつなぐということ。それは人間だけでなく、さまざまな生き物も同様であるということ。それでもなお、人間がこの世に生を受けるということの意味とは何なのかということ。・・・物語全体に散りばめられた作者からのメッセージが、物語終盤になって、本当に腑に落ちるのです。

私自身もいろんな経験をして、こんな年齢になってもまだ迷ったり、悩んだりすることも多く。いまだに後悔していることも、思い出しただけで涙があふれるようなことも抱えて生きているのですが。それでも。

生きていることは、それだけで奇跡のように美しいもの。私の命は、私一人で完結するものではないのだ。

そんなことをしみじみと感じ、ちっぽけな私でも生きていていいんだと思えたのでした。

2019年1月26日 (土)

三ノ池植物園標本室 上 眠る草原

2852「三ノ池植物園標本室 上 眠る草原」 ほしおさなえ   ちくま文庫   ★★★★

勤めていた会社をやめた風里は、偶然見つけた古い一軒家に引っ越す。同時に、近くにある三ノ池植物園の標本室でバイトを始め、苫教授や院生の小菊ちゃん、イラストレーターの日下さんたちと出会い、また、かつてやっていた刺繍を再会することで、徐々に自分の居場所を見つけていく。

ほしおさんの作品で、いつか読もうと思ってそのままになっていた「恩寵」。それが大幅に改稿されて文庫化。ふうん・・・と思い、書店で手にとって頁をめくり、そのままレジに直行しました。これは、私が読むべき物語だ、と直感したので。

心身をすり減らすような生活から、自分がきちんと呼吸できる場所へ。それは、簡単なことではないけれど、風里は何かに導かれるように、新しい生活に溶け込みます。植物の標本づくりのバイト先は個性的な人たちが多いけれど、風里の性に合ったところ。収入は減ったけれど、心と時間に余裕のできた風里は、すっかりご無沙汰していた刺繍を再開します。

そして、引っ越した一軒家は、かつて華道の先生をしていた人が離れとして建てたもの。そこを手直ししてすみ始めた風里ですが、それが彼女を思わぬ世界へと連れて行くきっかけに・・・。

植物とか、刺繍とか、私の好きな要素がいっぱいつまっています。ああ、この話、好きだなあ、風里が刺繍で身を立てるようになる話なのかなあ・・・と、ぼんやり想像していたのですが、4章「星」で、いきなり全く違う世界の話が始まります。主人公は、葉という少女。有名な書家の父をもつ彼女が、その父を失うまでの物語。あまりに悲痛な世界が突然展開するので、これはいったい・・・?と、とまどいました。そして、次の章では、あっさり風里の物語に戻ります。どころが、これこそが大事な大事な、物語の骨格だったのです(下巻の感想に続く)。

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