小説

2009年6月27日 (土)

ブラザー・サン シスター・ムーン

1400「ブラザー・サン シスター・ムーン」恩田陸   河出書房新社   ★★★★

三人がいたあの夏の日。空から蛇が降ってきたあの日は、今ではもう遠い時間になってしまった…。綾音と衛(まもる)と、一(はじめ)。学生時代を通りすぎた三人が語るあの時間。

さて、1400冊目はやっぱり恩田さんです。恩田フリークを自認する私ですが、最近はご無沙汰してました。だって、恩田さんを読み始めると、ほかのことは何もできなくなるので。なので、久々の恩田陸。
意外にもというか、恩田風「青春小説」は、ものすごく淡々としていて、いつも感じる物語のうねりはありませんでした。なんか、散文詩を読んでる気分。
綾音→衛→一と話が進むうちに見えてくるものもあって、その辺は恩田さんらしいのですが…。一番今の恩田さんに近いであろう綾音の章が、一番照れくさそうでした。
なんとなく、恩田さんの中で、学生時代ってまだ客観視できないのかな…なんて思いながら読んでました。
小説と音楽と映画。そういうものに時間を費やし、没頭できた時代、確かに私にもありました。この三人は、恩田さんの分身であり、私たちの分身でもあるのでしょう。
懐かしく、恥ずかしく、思い出すとちょっとせつない…かと言って、感傷に浸る気にはなれない時間。私の中にも確かに存在したあの時間を、まざまざと思い出してしまった…そんな物語でした。

さてさて、どうにか1400冊に到達しました。結婚して、自分のことだけにかまけてるわけにいかなくなったので、本を読むペースはガクンと落ちてしまいましたが、ここまでなんとか続けてきました。これからも細々と続けていくつもりです。よろしくお願いします。

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2009年6月11日 (木)

フライ,ダディ,フライ

1398「フライ,ダディ,フライ」金城一紀   文藝春秋   ★★★★

平凡だが幸せな生活を送っていた中年男・鈴木一の人生は、ある日一変した。娘が故ない暴力にさらされたのだ。復讐しようとした鈴木は、ひょんなことから奇妙な高校生たちと知り合い…。

さて、手術の合間の読書その2。
これ、ずっと読みたかったのです。というわりには、読みかけで止まってましたが。
ゾンビーズ再び、です。今回は瞬臣メインですが、南方も、間の悪い山下も活躍します。
それにしても、読んでてすごいスピード感でした。鈴木が南方たちと知り合ってからは、本当に一気でしたね。余計なまわりくどさはなく、でも、シーパラダイスでの場面とかはいい感じで…。
最後に南方たちの用意周到さがわかり、「さすが、ゾンビーズ!」と叫びたくなりました。

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2009年5月14日 (木)

ひかりの剣

1393「ひかりの剣」海堂尊    文藝春秋    ★★★★

1988年。東城大学医学部剣道部の猛虎・速水。帝華大学医学部剣道部の伏龍・清川。医鷲旗をめぐる彼らの戦いは、意外な展開をみせる…。

「ジェネラル・ルージュ」速水と、「ジーン・ワルツ」の清川との、青春時代を描いた物語です。
剣道ものなので、ずっと読みたかったのです。さらに、あの速水が登場とあっては。正反対な二人が互いを好敵手として成長していく話で、これ単体でも読めますが、医師になった二人を知っていると、さらに楽しめます。
やっぱり私は速水が好きですねぇ。かっこいいです。こうして「ジェネラル」ができたのですね。
それにしても、高階はやっぱり食えない人ですね。
まさにこの当時学生で、剣道をやっていて、大会の主管も経験した私には、とても懐かしい感じのする物語でした。

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2009年5月 8日 (金)

プリンセス・トヨトミ

1392「プリンセス・トヨトミ」万城目学    文藝春秋    ★★★★★

会計検査院の松平、鳥居、旭の三人は、大阪に実直調査に向かった。そこでの調査対象「OJO」との関わりが、思わぬ事態を引き起こす。5月31日、大阪全停止!?…大阪に隠された謎とはいったい?

いや〜おもしろかったです!「ホルモー」も「鹿男」もおもしろかったですが、ストーリー運びのしっかりした感じ、スケールの大きさ、クライマックスの緊迫感、今までの最高峰ではないでしょうか。
会計検査院サイドと、大阪の中学生・真田大輔サイドで話が進行しますが、どちらもキャラが立ってて退屈しません。物事を表と裏から見ていく感じになるのだけど、それが合流して、真実が明らかになる瞬間は快感でした。
後日譚のエピソードも効いていて、絶妙なせつなさがなんとも言えなかったです。
男たちの思いの連鎖と、それを見守ってきた女たちの歴史と…感動しました。
個人的には旭がすごくお気に入りです。頭のいい美女って好きなので(笑)
それにしても、万城目さんの発想ってすごいですね。どうすればこんなこと思いつくのでしょう。次の作品が楽しみです。

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2009年4月23日 (木)

レヴォリューションNo.3

1389「レヴォリューションNo.3」金城一紀    講談社    ★★★★

新宿にある落ちこぼれ高校の生徒たち。世界に「革命」を起こそうと立ち上がったメンバー「ザ・ゾンビーズ」がめざすは、近くの名門女子校の文化祭に乱入すること!数々の作戦を練り、ゾンビーズがたどり着いたのは…。

ずっと読みたかったんです。ゾンビーズ、最高!読みながら何度笑ったことか。
爽快というか、痛快というか、とにかくおもしろい!おバカな高校生なんだけど、かっこいい!!
ゾンビーズ主要メンバーのキャラがたってて、話はメリハリがあって、でもちょっとだけせつなくて…。ありえないだろうと思うんだけど、夢中になって読みました。
金城作品のもつ雰囲気とかスピード感、好きです。

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2009年3月16日 (月)

ジーン・ワルツ

1383「ジーン・ワルツ」海堂尊   新潮社   ★★★★

東城大出身で、現在は帝華大の産婦人科医・曾根崎理恵。32歳。美貌の彼女につけられた異名は「クール・ウィッチ」・・・冷徹な魔女。顕微鏡下人工授精のエキスパートの彼女が担当している5人の妊婦。そして、先輩医師の清川のもとには、理恵が代理母出産に関わっているとの情報がもたらされ・・・。

「ひかりの剣」が読みたくて、それとこの「ジーン・ワルツ」がリンクしているので、まずこれを読んでおかなくては・・・と手にとりました。とりあえず・・・くらいの気持ちで読みましたが、おもしろかったです。

妊娠・出産というのは、今、自分自身が関心があることなので、ついついアンテナが高くなってしまいます。そこにピンポイントで入ってきた感じなのが、この話でした。

お産は命がけ・・・と言われなくなって久しいのでしょうけれど、やはり新しい命を生み出すのは、私たちが思っている以上に大変なことで、無事に産まれてくるのは奇跡にも近い出来事なのだと痛感しました。そして、それにかかわる産婦人科医の過酷な現状・・・。

ただ、これを読んでいて私の心に強く残ったのは、「母親」たちの強い思いでした。もし、私が同じ立場なら、どんな選択をするだろう?・・・そんなことを思いながら、読んでいました。「クール・ウィッチ」の行為が許されるか否かはわかりませんが・・・気持ちだけならわかる気がします。

ところで、これもまたバチスタ・シリーズとちゃんとリンクしてますね。極北市の事件・・・というのは、白鳥の部下・姫宮が潜入捜査すると言ってたやつですよね。それが作品化されるんのが楽しみです。

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2009年3月11日 (水)

陰日向に咲く

1381「陰日向に咲く」劇団ひとり   幻冬舎   ★★★

わたしはホームレスだった。一人の青年と出会うまでは。・・・さまざまな人たちが織りなす人間模様。

遅ればせながら読みました。劇団ひとりは、テレビで見てると「この人、頭がいいなあ」と思うので、そういう人が小説を書くとどうなるのかな?と、けっこう興味があったのです。評判もいいみたいだったし。

一話ごとに主人公が変わって、でも、すべての話が微妙にリンクしていって・・・。「伊坂幸太郎とか好きですか?」と聞いてみたくなるような構成でした。ただ、いかにも「作りました」「計算してます」って感じで、正直言って好みではなかったです。こっちも頭で読んじゃうんですよね。

ただ、物語として破たんしてるわけではないので、まあ読み進めていって・・・最終話でやられました。

そうきますか・・・という感じで。それまでの話は全て、この最終話のためにあったというか、この最終話を書きたくて、その前の話を考えたんじゃないの?と感じました。違いますかね?

それだけ、最終話の鳴子と雷太の話はよかったです。最初はちょっとひいたけど(苦笑)最後の最後で、心に響きました。

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2009年3月 9日 (月)

ワーキング・ホリデー

1380「ワーキング・ホリデー」坂木司    文藝春秋    ★★★★

ホストのヤマトのもとにやってきた一人の少年。「初めまして、お父さん」…ホストから宅配便のお兄さんになった大和は、「息子」の進と、夏休み限定で暮らし始めるが…。

「ひきこもり探偵」シリーズの坂木さん。あのシリーズよりだいぶ軽いノリでしたが、テンポよく読めて、私は好きでした。ちょっとセンチメンタルな感じも嫌味がなくて。
宅配便のお兄さんになってリヤカー引いてる大和は、憎めないキャラだし、小姑・進もありがちな設定だけど、かわいかったし。
ちょっとウルッときそうになった場面もあったりして、単純だけど好きな話でした。

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2009年2月21日 (土)

走れ!T校バスケット部

1379「走れ!T校バスケット部」松崎洋   彩雲出版   ★★★

名門・H校バスケ部をいじめで退部、転校した陽一は、T校バスケット部で全く新しいバスケに出会う。それは、チームメイトとともに、バスケを楽しむということだった。仲間たちと陽一の、快進撃が始まる!

出来すぎと言えば、出来すぎ。ありがちと言えば、ありがち。おいおい、そんなにうまいこといくんかい・・・と突っ込みたくなるのですが。なんか、けっこうな勢いで読んでしまいました。

はっきり言って、深みはありません。でも、陽一をはじめ、バスケ部に集う面々のキャラが、気持ちのまっすぐさが、読んでいて心地よいのです。もっとも、いい子たちすぎて、いいことずくめで話が進んでしまうのもどうかと思うのですけどね。

ただ、書かれていることはシンプルで、かつとても大事なことだと思うのです。「仲間との和」。楽しむということ。陽一の父の言葉も。若い子たちにちょっと読んでほしいかもしれません。

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2009年2月15日 (日)

草原からの使者  沙髙樓綺譚

1378「草原からの使者 沙髙樓綺譚」浅田次郎   徳間文庫   ★★★★

各界の名士が集うサロン「沙髙樓」にて、今夜も繰り広げられる不思議譚の数々。女装の主人の口上にのって、今宵語られる秘密の物語は・・・。

シリーズ第2弾も文庫化されました。今回は4編を収録。それぞれに趣が違っていて、楽しめました。

それにしても、浅田さんの趣味、いや、興味関心が、作品の中に実にうまく結実してますね。ロンドンのカジノとか(「終身名誉会員」)、競馬の話とか(「草原からの使者」)。浅田さんならでは、という感じで。

今回、好きな話は、やはり表題作の「草原からの使者」でしょうか。競馬は私も嫌いじゃないですし、何より、ハッピーエンドに近い終わり方で、読み終えてホッとしました。

最後の「星条旗よ永遠なれ」は、艶笑譚のようでいて、本当に書きたかったのは、最後の一段落ですね? 浅田さんらしいなと思いました。

それにしても・・・「浅田版百物語」というのがあおり文句のようですが、私に言わせれば、ストーリーテラー浅田次郎の玉手箱(古い!)という印象です。浅田さんには、もっともっといろんな種類の物語を紡いでいただきたいものです。

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2009年1月21日 (水)

ゴールデンスランバー

1374「ゴールデンスランバー」伊坂幸太郎   新潮社   ★★★★

仙台でパレード中の金田首相が暗殺された。犯人は、青柳という元宅配ドライバー。しかし、彼は本当に犯人なのか?ケネディ暗殺犯のオズワルドにたとえられた彼の足跡は・・・。

ようやく読みました(最近、こればっかりだな)。

2007年の本屋大賞1位でしたが、今さら本屋大賞でプッシュしなくてもいいだろう、伊坂作品・・・と思いつつ、題材がすごく私好みだったので、これは読みたい!とずっと思っていたのでした。なにせ、伊坂作品未読のものがたまっていて、昨年コツコツと読破していき、今ようやく「ゴールデンスランバー」にたどりついた・・・と思ったら、「モダンタイムス」が出るし。伊坂作品を追いかける旅は、まだまだ続きそうです。

さて、突然「首相暗殺犯」にされてしまった青柳と、彼をめぐる人々の物語。こんなことが現実に起こりうるかもしれない・・・という怖さと、妙なリアル感。あくまでパラレルワールドなのに、このリアルさは何!?という感じです。私が仙台に土地勘があるだけじゃないですよね。現に、ケネディ暗殺という下敷きになった事件があるのですから・・・。

でも、これが単なる逃走劇じゃなくて、ちゃんと青春ものになっているところが、伊坂さんらしいと思うのです。森田やカズ、樋口晴子や・・・それから、青柳を助けてくれるいろんな人たち。そういうのが、ちゃんと浅春群像とか、人と人とのつながりを描いているのが、なんとも言えず胸にせまります。青柳が追い詰められればおいつめられるほど。

いったい、これがどこに着地するのだろう・・・と思いながら読んでいたのですが、そうきましたか、という感じでした。その是非を問う気は、まったくないです。得体のしれない大きなものに巻き込まれたとき、人がどう生きるのか(いや、生きることができるのか)。それを思うと、青柳の出した結論をどうこう言う気にはなれません。すごく伊坂さんらしい終わり方だと感じました。

タイトルの「ゴールデンスランバー」って何だろうとずっと思ってましが、ビートルズでしたか。なんだか、すごく胸に迫りました。

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2009年1月11日 (日)

イノセント・ゲリラの祝祭

1372「イノセント・ゲリラの祝祭」海堂尊   宝島社   ★★★

田口は突然東京出張を命じられる。厚生労働省主催の会議出席。彼がまたしても突然巻き込まれたのは、医療事故調査委員会。田口を引っ張り出したのは、厚労省の鬼っ子、「火喰い鳥」白鳥だった。そこで田口は、この国の救いようのない医療行政の現実に直面する・・・。

シリーズ最新刊です。今度の表紙は緑。思ったより早く読むことができました。年末に「ジェネラル・ルージュ」を読んだばかりだったので、その勢いで読みましたが・・・。

ほとんどが会議の場面で進行します。論理の応酬で、それはそれでおもしろいのだけれど、「バチスタ」や「ジャネラル」のような派手さは全くありません。一癖も二癖もあるキャラが登場したりして、それなりに読みごたえはあるのですが、医療現場が舞台ではなく、官僚の世界等がメインで、私が求めるおもしろさとはまたちょっと違う・・・。

何より、これで終わってないのですよね。白鳥の部下・姫宮はまだどこかで潜入捜査をやっているみたいだし、この話自体も、まだこれから転がっていきそう。なんとなく消化不良というか、すっきりしない。次を早く書いてください・・・という気分です。

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2008年12月24日 (水)

ジェネラル・ルージュの凱旋

1367「ジェネラル・ルージュの凱旋」海堂尊   宝島社   ★★★★

東城大学病院救急センターを背負って立つ速水。彼が収賄に手を染めているという内部告発文書が、愚痴外来の主にしてリスクマネジメント委員長の田口のもとに届けられた。同期の速水に対する告発文に困惑する田口のもとに、ロジカルモンスター・白鳥がまたしても登場して・・・。

バチスタシリーズですが、ようやく読めました~。もう次の「イノセント・ゲリラ」が出ているというのに。

これ、「ナイチンゲール」と、連続してるんですね。「ナイチンゲール」読んだのがだいぶ前だったので、ちょっと苦戦しました。ただ「螺鈿迷宮」を読んだのがわりと最近なので、姫宮とか白鳥はまだ記憶鮮明だったので、楽しめましたが。

「バチスタ」に熱狂し、「ナイチンゲール」でイマイチ・・・と思い。そして、この「ジェネラル・ルージュ」は、またしても熱狂しました。最高です、速水。かっこよすぎ。そして、ICUに集うスタッフのみんなかっこいいこと。

また、田口・白鳥コンビを中心とした論理のやりとりも、今回はスカッとしました。あ、でも、これも速水の力が大きいか・・・。

最後はラブロマンス調でしたが、なんだかそれもまたよかたです。

個人的には猫田師長が着々と存在感を高めてるのが楽しみ。今後に期待したくなっちゃいます。

とにかく、エンタテイメントとして、楽しんで読めますね。

ところで、「バチスタ」のドラマ、たまにちらっと見てたんですが、原作とイメージが違いすぎて・・・どうなんでしょう、あれ。

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2008年12月15日 (月)

ラブコメ今昔

1365「ラブコメ今昔」有川浩    角川書店    ★★★

広報官に「奥様とのなれそめ」を取材された第一空挺団の今村二佐。今さらそんなことを話せるか!とつっぱねたものの、一見可愛い女子広報官はなかなかしつこくて…。

「クジラの彼」に続く、自衛隊もの恋愛小説。表題作のほか、「軍事とオタクと彼」「広報官、走る!」「青い衝撃」「秘め事」「ダンディ・ライオン」。
自分のテンションのせいか、有川ノリに慣れてきたのか、今までほど「ベタ甘」な感じはしませんでした。いや、じゅうぶん甘かったですけどね。
一番印象的だったのは、ブルーインパルスを題材にした「青い衝撃」でした。ブルーインパルスはやっぱり華ですよね。夫がヒーロー並みにモテるってのも大変ですね。

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2008年11月26日 (水)

別冊図書館戦争Ⅱ

1362「別冊図書館戦争Ⅱ」有川浩   アスキー・メディアワークス   ★★★★

 郁と堂上は無事にゴールイン。二人が夫婦であることに周りも慣れてきた頃、柴崎がしつこいストーキングに悩まされるようになり・・・。とりあえず、手塚がガードすることになったのだが。

 

 すみません。ずっと開店休業状態でしたが、ようやく少しずつ本を読める程度に落ち着いてきました。結婚式からこっち、嵐のような日々でしたが・・・、なんとか。ぼちぼち更新していきますので、またよろしくお願いします。ただ、みなさんのブログにお邪魔する余裕はまだないので、ごめんなさい。でも、コメントは大歓迎です。

 さて、「図書館戦争」シリーズも、これが最後。そう思うとさびしいですねえ。

 前回はベタ甘でしたが、今回はちょっとシリアスな話が多かったかな。緒方の話もでしたが、なんといっても柴崎と手塚。この二人がくっつくことをずっと願ってきた身としては、うれしかったです。柴崎好きだし。手塚みたいなキャラが変わっていくのも楽しかったし。

 柴崎が幸せになりたいと思う気持ちが、すごくわかるというか・・・そう、あんただって幸せになる権利はあるんだよ!!という気持ちでいっぱいでした。柴崎がちゃんと好きになれる相手がいてよかったー、と、しみじみしちゃいましたよ。

 とりあえず、これで完結ですね。でも、欲を言えば、玄田と折口の話ももう少し読みたかったかなあ。

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2008年10月20日 (月)

少女七竈と七人の可愛そうな大人

1360「少女七竈と七人の可愛そうな大人」桜庭一樹   角川書店   ★★★★

わたくし、川村七竃は遺憾ながら美しく生まれてしまった・・・。いんらんな母のおかげで、複雑な生い立ちをした七竃は、美しい少年雪風と、二人のせかいで生きていた。たった一つの疑念・・・二人はきょうだいではないのか・・・を抱きながら。

桜庭さんの描く「少女」は、本当に純粋で、鋭敏で、痛々しい。どの作品を読んでいても、そう思います。いずれ大人になっていく直前の、あやういバランス。それを切り取ってみせることに関しては、桜庭さんの筆は異様な冴えを見せます。

スキャンダラスなというか、ショッキングなというか・・・そういう設定が多い桜庭作品ですが、読んでいるうちにそれが必然のように思えてくるから不思議です。七竃にも、母の優奈にも決して共感できないのに、最後の七竃と雪風の別れのシーンでは胸がいっぱいになってしまって・・・。このせつなさを言葉で表現するすべを、私はもちません。

不思議でせつなくて、すてきな、恋愛小説でした。

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2008年10月15日 (水)

武士道セブンティーン

1358「武士道セブンティーン」誉田哲也   文藝春秋   ★★★★

磯山香織は、東松学園で順調に剣道のキャリアを重ねていた。一方、甲本(西荻)早苗は、強豪・福岡南に転校し、自分の目指す剣道とのギャップに悩む。ともに全国大会の常連校。全国の舞台で活躍しながら、自分たちの武士道をめざす二人は・・・。

読みました、「セブンティーン」。「シックスティーン」では香織の方がジタバタしていましたが、今回は早苗の方が葛藤しています。「勝つための剣道」を徹底し、そのシステムにのっとって練習している福岡南と、同級生の黒岩(これがまた、香織と因縁があったりして)に対する違和感が、早苗を悩ませます。

1年前とは二人とも全く違う立場になっていて、それがまたおもしろかったです。香織も変わったなあ〜と思ったし、早苗が強くなるためには、こういう試練も必要だったかなと思えたし。

それにしても、香織視点と早苗視点と、交互に語られるわけですが、この全く異なる雰囲気を表現するのって、なかなか難しいと思うんですが・・・。それがブレずに描かれてるのってすごいですね。

しかし、この終わり方は、絶対「エイティーン」もありますよね?大いに期待します!

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2008年10月10日 (金)

ひゃくはち

1357「ひゃくはち」早見和真    集英社    ★★★★

野球の名門・京浜高校に一般入試で入った雅人は、同じ立場のノブと、甲子園を目指していた。野球に情熱を傾けつつ、普通の高校生であることにこだわった雅人たちの夏は、意外な展開をみせ…。

ずっと気になっていた本です。
高校野球と聞くと、なんとなく落ち着かない気分になります。私にとって、甲子園は憧れの場所であり、本当に甲子園に立った時の感動は忘れられません。
この物語は、甲子園を夢見ながら、そんなことを口に出せず、でも野球のことで必死な高校生たちの物語。一般入試組の雅人やノブと、野球エリートたちの対比や、その友情、野球だけでなく合コンに明け暮れたりする彼らの姿が描かれます。
彼らが甲子園出場を果たすのと、その後訪れた亀裂と…。青いし、痛いんだけど、不思議なくらい、胸に迫るものがありました。
雅人の回想の形で語られますが、最後の再会のシーンが、とにかくよかったです。
それにしても、試合のシーンはすごくリアルというか…作者も野球経験があるのでしょうか。

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2008年10月 6日 (月)

別冊図書館戦争Ⅰ

1355「別冊図書館戦争Ⅰ」有川浩    アスキー・メディアワークス    ★★★★

「図書館革命」で無事カップルになった郁と堂上。甘々ラブラブな二人が結婚するに至るまでの顛末とは…。

「図書館戦争」シリーズのスピンアウト企画です。
もう、甘々てんこ盛りの(笑)
郁はともかく、堂上!鬼教官的なキャラはどこにいったんだ?っていうか、どんだけ郁のこと好きなんだー!(笑)
いや、作者も「ダメな人はスルーして」と訴える通り、こんなの読んでられっか!という方もいると思います。が、私はけっこう楽しんでしまいました。
続きも出てるので…手塚と柴崎の仲に進展があると嬉しいなあ。手塚、苦労しそうだけど。

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2008年9月25日 (木)

武士道シックスティーン

1351「武士道シックスティーン」誉田哲也   文藝春秋   ★★★★

剣道で全中2位の磯山香織は、小さな剣道大会で、思わぬ完敗を喫する。その相手と再戦すべく、東松学園に進んだ磯山だったが、相手の西荻早苗は意外なほどに手ごたえのない相手で・・・。

剣道、やってました。一応、選手として10年間。指導者として3年間。「シックスティーン」の頃は、まさに剣道に明け暮れてました。そんな私にとって、これは快哉を叫びたいような青春小説です。

兵法をおさめんとし、勝ち負けに徹底的にこだわり、自分以外のものはすべて敵、目の前にいる者すべてぶった斬る・・・という磯山。剣道は好きだけど、勝敗にはこだわらず、自分の技の上達に精進する西荻。全く対照的な二人の姿が、交互の視点で描かれていく物語。その違いがすごくおもしろかったし、決して相容れないはずの二人の距離が徐々に近づいていく感じが好きでした。

時代錯誤でキリキリしている磯山の姿は痛々しくもあり、こっけいですらあるのですが、それをやさしく包んでいるふうな西荻も、実は傷を抱えていて・・・というのが後半わかって、その辺でちょっとグッときました。磯山がどんどん変わっていく過程も、予定調和とわかっていても感動してしまったし。

物語のラストは意外な展開を見せましたが、なんだか気持ちのいい終わり方で、清々しい気分になりました。

「武士道セブンティーン」も出たようなので、そちらも読みたいです。

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2008年9月21日 (日)

あの夏を泳ぐ 天国の本屋

349「あの夏を泳ぐ 天国の本屋」松久淳+田中渉    新潮社    ★★★

高校の水泳部で一緒だった麻子と朝子。名前もイニシャルも同じ、種目も同じ、タイムも同じ、そして好きになった人も…。ある日、麻子は天国の本屋へと連れていかれ、朝子はあるものを渡された。そうして、止まっていた時間が動き出した…。

「天国の本屋」シリーズ、数年ぶりの新刊です。
やはりこのコンビはこのシリーズが一番しっくりきます。
今回は高校の水泳部の同期二人が主人公。常にライバルどうしだった麻子と朝子。高校時代のあまりにまっすぐな二人の思いがせつなかったです。特にコーチの三沢への思いが…。
止まってしまった二人の時間を再び動かすために、天国の本屋の店長・ヤマキが活躍?するのですが、この辺はシリーズ読んでないとわかりにくいかもしれません。
相変わらず、本の朗読が要所要所で効きますが、「クララ しあわせを さがして」というのがすごくよかった…と思っていたら、訳者が鷺沢萠さんでした!この本読みたいなあ。

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2008年9月12日 (金)

ホルモー六景

1347「ホルモー六景」万城目学    角川書店    ★★★★

「ホルモー」に否応なしに青春をかけるはめになった若者たち。青春といえば、やはり恋。はてさて、彼らの恋模様は…。

「鴨川ホルモー」続編…というより、スピンアウト企画みたいな感じですね。ホルモーに関わってしまった彼らの恋のお話六編。
短編ゆえ、「鴨川ホルモー」の濃さには欠けますが、それぞれにいい味出してて、楽しめました。
いや〜、凡ちゃんいいですね。こんな子に惚れられるなんて、果報者だよ、安倍くん。
京都だけじゃなかったのね…という「丸の内サミット」も、芦屋の元カノの話も好きでした。
最終話の「長持の恋」は、しみじみとよかったです。信長好きだし。高村のチョンマゲにはそういう意味があったのですねぇ…。
また続き書いてくれないですかね。無理かなあ。

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2008年9月 9日 (火)

クジラの彼

1346「クジラの彼」有川浩    角川書店    ★★★★

合コンで出会った彼は潜水艦乗りだった。そうして始まった超遠距離恋愛の行方は…。

表題作をはじめ、自衛官の恋愛もの六編。
有川浩のほかの作品のスピンアウト作品もあり、楽しいです。
私は正直言って、自衛隊にはいまだに抵抗あります。要するに職業軍人ですもんね。
でも、自衛官ゆえのいろんなしがらみがスパイスになっているこのベタ甘なラブロマンスは…すいません、かなり好きです(苦笑)
特に表題作。彼氏が国内にいるのか、いつ帰ってくるかもわからない遠距離恋愛ってハードすぎますが、私も一応遠恋だったので、気持ちわかります。
彼氏のメールが短くてあっさりしてる…というくだりには、激しく共感してしましました。うちなんか、いまだにそうですもん。
それにしても、甘々な世界を堪能させていただきました(笑)

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2008年8月31日 (日)

鴨川ホルモー

1344「鴨川ホルモー」万城目学    産業編集センター    ★★★★

それは葵祭から始まった。京大青龍会なる怪しげなサークルの新歓コンパで、早良京子に一目惚れした時から、安倍は「ホルモー」に引き込まれてしまったのだった…。

遅ればせながら読みました。おもしろかったー!
京都を舞台にした学生もの…というと、森見登美彦を思い浮かべる私ですが、これも負けず劣らず奇妙な物語でした。
とにかく、「ホルモー」って何?なわけですが、この非現実的なゲームに、読んでいくうちに違和感を感じなくなっていくのです。
代替わりの儀のバカバカしさには笑ってしまいましたが、総じて青春もののテイストが維持されてるとこが好きでした。楠木ふみ、いいキャラですね。
けったいな話なんだけど、妙に楽しくて、一気読みしちゃいました。

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2008年8月27日 (水)

フィッシュストーリー

1342「フィッシュストーリー」伊坂幸太郎   新潮社   ★★★

おれの声は届いているのか・・・。あるバンドの最後のアルバムにこめたそれぞれの思い。不思議な曲となったその歌は、紡ぐ運命の輪は・・・。

伊坂ワールドのサイドストーリーとも言うべき短編集。ほかの伊坂作品とリンクしている(らしい)四つの短編です。

それぞれに伊坂さんらしい雰囲気があって好きですが、物足りない感じもしました。やっぱり、長編で伊坂さんの仕掛けにやられるのが好きかもしれません。

黒澤のことはおぼえていますが、ほかのリンクがいまいちわからなかったのも悔しかったです。チラッと、「あ、これはあの話だよね・・・」というのもありましたが。

表題作が時空を超える不思議な感じがして、一番好きでした。

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2008年8月20日 (水)

下北サンデーズ

1339「下北サンデーズ」石田衣良   幻冬舎    ★★★

ゆいかは生まれて初めて見た舞台に心奪われ、その劇団「下北サンデーズ」に入った。下北沢にひしめく売れない小劇団の一つだったサンデーズは、ゆいかの入団以来人気が出始め…。

ドラマ、ちょこちょこ見てました。私はけっこう好きだったけど、視聴率低くて打ちきりになったらしいですね。まあ、小劇場とかマニアックな世界ですから。
ドラマが終わってから、原作があって、しかも石田衣良だと聞き、ちょっと読んでみたいなぁ…と思っていたのでした。
で、読んでみて。ドラマとの違和感はなかったです。ストーリーはさくさく展開して、深みはないけどおもしろい。主人公のゆいかより、サンデーズの劇団員がキャラが立ってて好きでした。
ドラマでは座長のあくたがわ役の佐々木蔵之介が好きだったのですが、原作でもなかなかでした。
演劇好きなので、小劇場にも興味あるのです。サンデーズはどんどんサクセスしちゃうのですが、もっと貧乏な時代の話も読んでみたいような気もしました。
しかし、この劇中劇がすごくおもしろそうで…石田さん、脚本書かないかな。

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2008年8月17日 (日)

Run! Run! Run!

1337「Run! Run! Run!」桂望実   文藝春秋   ★★★

 岡崎優は、アスリートになるために生まれてきた。中学・高校とみごとな記録を残し、最先端のスポーツ科学を導入している大学へ進学。箱根駅伝を通過点に、オリンピックで金メダルをとることが目標だった。そう、兄が死んでしまうまでは・・・。

 佐藤多佳子「一瞬の風になれ」、三浦しをん「風が強く吹いている」と同時期に出され、話題になった作品です。ようやく読みました。陸上が題材になっていて、主人公の成長物語なところは、先の二作品と同様ですが、ちょっとテイストが違います。

 優はもしかしたら、遺伝子操作をされて、走るのに適した体をもって生まれてきたのではないか・・・。ある意味、自分が生まれる前に、親にドーピングされたわけで。その疑惑と闘う中で、箱根駅伝を経験し、優が変わっていく過程を描きます。

 最初は小生意気な優がなんともにくたらしかったですが、遺伝子操作という意外な展開にひきつけられて読みました。なかなかおもしろかったです。箱根をサポートの立場から見るのも。

 ただ、ちょっとツメが甘いなあ・・・という点も。岩本と小松コーチのキャラがかぶりすぎてたり、佐野コーチの役割があいまいだったり。もうちょっと書き込んでほしいなあという気がしました。

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2008年8月14日 (木)

砂漠

1336「砂漠」伊坂幸太郎   実業之日本社    ★★★★

大学生になった北村は、鳥井、西嶋、南、東堂の四人と親しくなった。コンパをしたり、麻雀をしたり、それなりに過ぎていく学生生活の中で、北村たちが得たものとは…。

「新しい青春小説」のあおり文句の通り、たしかに学生生活を描いた青春ものです。
そこに通り魔とか超能力が絡んでくるところが伊坂テイストで。
正直、麻雀はわからないので、ちょっと苦痛なとこもあったし、最初は西嶋のキャラが苦手だったのですが。
なんか、最後はうっかり感動してしまったのでした。こういう仲間って、いいな、と。
伊坂さんらしい味わいのある青春ものでした。

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2008年8月 3日 (日)

仏果を得ず

1330「仏果を得ず」三浦しをん   双葉社   ★★★★

 文楽の大夫・健は、師匠の人間国宝・銀大夫に、三味線の兎一郎とコンビを組むよう命令される。腕は確かだが変わり者の兎一郎とコンビを組むことに抵抗があった健だが、兎一郎の三味線に魅せられ、文楽の道を極めようという思いは強くなっていく。そんな修行中の健に恋の嵐も吹き荒れて・・・。

 ずっと読みたかった物語。やっと読めました。

 日本の古典芸能は好きですが、文楽・・・というのは、ちょっと苦手なのです。あの人形が怖くて(苦笑) でも、話の筋立ては歌舞伎に近いものがあるので、意外と抵抗なく読めました。ただ、その場面を想像しちゃうと怖かったですね。人形が切腹している場面とか。

 さて、ストーリーは、文楽に魅せられた健の修行物語なわけですが。彼が相三味線の兎一郎と出会って、互いに成長していく過程に恋も絡めて、それが文楽の演目とリンクして展開していく・・・という。青春ものとしても、文楽の魅力も楽しめました。

 健が演目の中の人物にぐーっと迫っていく感じが、読んでいてひきこまれるようでした。すごい迫力で。それから、兎一郎とのコンビぶりもいい感じでした。しをんさん、男二人のこういう感じ、うまいですよね。全体的に軽妙な雰囲気なんだけど、時々ドキッとする言葉があって。

 生きて生きて生き抜いて・・・という健の言葉が印象的でした。

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2008年7月23日 (水)

復讐プランナー

1326「復讐プランナー」あさのあつこ   河出書房新社    ★★★

 中学生になった雄哉は、初めて親友と呼べる友人・章司にめぐりあう。しかし、二人ともいじめの標的になってしまい…。

 雄哉たちがいじめにつぶされないためにとった手段。先輩の山田が教えてくれた方法は、復讐計画を立てること。思いついた計画をノートに書き出すだけでも、雄哉の気持ちは軽くなって…。
 この感じは、すごくわかります。書くって行為にはそれだけの力があるし、自分と周りを客観視するから、冷静になれる。余裕が生まれる。なるほど〜と思いました。
 しかし、この話、小説としては「えっ!そこで終わり?」という感じ。そして、あさのさんによる『復讐プランナー養成講座』が始まるのです。
 実はこれ、「14歳の世渡り術」というシリーズもの。あさのさんのテーマはいじめ。
 追いつめられるな。逃げてもいいよ。無理しないで。ひとりじゃないよ。そういうメッセージが伝わってきます。いじめをなくすのは難しいけど、いじめる側にまわるな、傍観者になるな…そんなあさのさんの願いも。
 一風変わった本ですが、中学生に読ませてみたいかも。

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2008年7月16日 (水)

熱球

1323「熱球」重松清    徳間書店    ★★★★

 仕事をやめ、娘の美奈子とともに故郷の周防に帰ったヨージ。学者の妻はボストンに単身赴任中。年老いた父とこのまま同居すべきか、それとも…。苦い思い出のあるふるさとで、ヨージの心は揺れる。

 タイトルから、野球ものかな?と予想してましたが、予想以上に苦い物語でした。でも、私は、この話が好きです。
 ヨージは元高校球児。高3の夏、ヨージたちは信じられないようなツキに恵まれ、県大会の決勝まで勝ち進んだ。しかし、部員の不祥事で、決勝戦を辞退。周防高校(シュウコウ)の歴史に泥を塗った代になってしまう…。
 20年たった今も、その時の傷が癒えないヨージが、それを乗り越えるまでの物語でした。過去だけでなく、現在のヨージが抱える問題もリンクして、なかなか重い設定なのですが、重松さんらしくサラリと、それでいて感動的に読ませます。
 ヨージの元チームメイトたちとの関わりがよいです。みんな、それぞれに過去のことは傷になっているし、現状もうまくいってるわけじゃないけれど。不器用に生きている姿が、なんだか好きでした。
 そして、シュウコウを応援し続けるザワ爺の存在。「熱球」という言葉にこめられた思い。なんだか、涙が出そうになりました。
 重松さんは、決して弱者を切り捨てない。逃げてもいいんだよ、その代わり生きなさいというメッセージに、素直に共感できました。

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2008年7月15日 (火)

種をまく人

1322「種をまく人」ポール・フライシュマン    あすなろ書房    ★★★

 クリーヴランドの貧民街の一角。ごみ溜めになっていた空き地が、人々の手で変わり始める…。

 原題は「SEEDFOLKS」。訳者は片岡しのぶ。
 ある年の春、一人の女の子が空き地にマメをまく。それが始まりとなって、年齢も人種も立場も異なる人々が次々と種をまき、いつしかそこは菜園になっていく…というお話。
 いわゆるマイノリティの人たちが暮らす一角での物語は、いかにもアメリカらしい雰囲気に満ちています。種をまく人たちがいつのまにか仲間になりました…というのは、現代のおとぎ話的ですが、それが嫌みじゃないのは、彼らが種をまく理由です。決してごたいそうな理由があるわけでなく、ただ自分の都合で植えたいものを植えるだけなのです。
 たったそれだけのことなのに、そこに何かが生まれていく…。その過程が、菜園に関わった当事者たちの語りでリレーされていきます。
 おしつけがましくなく、淡々と語られる物語は、読んでいて不思議と心地よいものでした。

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2008年6月30日 (月)

オテル モル

1316「オテル モル」栗田有起    集英社文庫    ★★★★

 リハビリ施設にいる双子の妹の代わりに、姪とその父親と暮らす希里。「最高の眠りと最良の夢」を提供する会員制地下ホテルで働き始めるが…。

 以前に、「栗田有起は一作ごとによくなる」と聞いたことがあったので、期待して読みました。うん、期待に違わぬおもしろさでした。
 希里は双子の妹・沙衣とまったく対照的。病弱で、やがてスピンアウトして、薬物中毒になり、希里の恋人を寝とって妊娠してしまった沙衣。施設に入った彼女の代わりに、姪を育て、元恋人と暮らす希里。
 かと言って、希里は耐え忍ぶタイプでもなく、なんだか淡々と日々を過ごしているように見えるのです。
 そんな希里の中に渦巻いているいろんなものが、勤め始めた不思議なホテルに抱きとめられていく…。読んでいて、とても心地よい物語でした。すごく眠りたくなるほどに。
 誰もが割りきれない思いや感情を抱えていて、それは理屈ではどうにもならなくて、そんなものに飲み込まれそうになった時に、オテル・モルは必要になるのかもしれません。
 オテル・モルに訪れる人たちが、安らかに眠れますように。もちろん、希里も。それから、沙衣も。

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2008年6月27日 (金)

終末のフール

1315「終末のフール」伊坂幸太郎   集英社   ★★★★

 地球に小惑星が衝突します・・・残された時間はあと3年。一時のパニック状態が過ぎ、小康状態を迎えた世界の中で、生きている人々。「最後の瞬間」まで、人はどうやって生きていくのか・・・。

 世界の終わりまで3年と区切られた時間。仙台市郊外の住宅地を舞台に繰り広げられる8つの物語。こういう設定が、いかにも伊坂さんらしいというか・・・。すごく刹那的な状況なのだけど、なんとなく、あたたかい。こういう世界観って、好きです。

 一番好きなのは、「太陽のシール」。あと3年で地球が終わるとわかっているのに、子供ができてしまった夫婦の話。優柔不断の代名詞のような夫は悩みに悩むのですが・・・。その過程のサッカーの場面もよかったし、何より「もし仮に、三年しか一緒にいられなくても、生まれてくる子供は幸せだ」という言葉に、泣きそうになりました。ラストの「それならオセロを二組に分かれて、できるじゃないか」というせりふは、いかにも伊坂さんらしいですねこういうところが、いい意味でスタイリッシュだと思うのです。

 それから、「鋼鉄のウール」も好きでした。毎日変わらず練習に明け暮れるボクサー。もし、現実にこんな状況に陥ったとしても、こういう人ってきっといる。で、こういう人が、実は一番幸せな人なんじゃないかという気がします。「深海のポール」の渡部のお父さんとかね。

 伊坂さんがつくりだす世界は、けっこう「痛い」ことが多いのだけど、最後のギリギリの線で救いがあるというか、「生きてるのは悪くない」と思わせてくれるようなところがあると思うのです。この連作集は、それが顕著にあわられた例かもしれません。

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2008年6月26日 (木)

古道具 中野商店

1314「古道具 中野商店」川上弘美    新潮文庫    ★★★★

 古道具屋の主人・中野さん。その姉のマサヨさん。アルバイトのタケオと、ヒトミ。古道具・中野商店を舞台にした、四人それぞれの恋と日常の物語。

 久々に川上ワールドを堪能しました。
 古道具屋(骨董屋、ではない)の雑然とした、それでいて安心できるような独特の雰囲気の物語。テーマは、恋愛。
 語り手のヒトミは、バイト仲間のタケオとつきあっているような、そうでないような、微妙な関係。店主の中野さんは、妻のほかに女性がいるのが常。その姉・マサヨさんは五十代にして独身。ところが最近男ができたらしい。それぞれの年代の、一筋縄ではいかない恋愛が、川上さんらしい上品な「淫靡さ」でえがかれていきます。
 登場人物のテンションの低さというか、淡々とした感じが、今の私には心地よかったです。
 そうだよねー、いくつになっても、恋愛はね、簡単にはいかないよねー…などとしみじみ思ってしまいました。
 中野商店がリニューアルされてしまうくだりは寂しさを感じましたが、幕切れは幸せな感じで、とても好きです。

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2008年6月20日 (金)

口笛吹いて

1310「口笛吹いて」重松清    文藝春秋    ★★★

 26年ぶりに再会した幼なじみの晋さん。僕にとってヒーローだった晋さんは、あまりにも変わってしまっていて…。

 「口笛吹いて」「タンタン」「かたつむり疾走」「春になれば」「グッド・ラック」の五編の短編を収録。
 「かたつむり〜」は、「はじめての文学」で読んでました。ほかのは初めて読みましたが、粒が揃っているなぁという印象。重松さんの短編って手堅いですね。
 表題作と「春になれば」が印象的でした。
 表題作は、かつての憧れの存在と再会した主人公の心の揺れが描かれています。甲子園のヒーローになるはずだった晋さん。変わり果てた彼に困惑する主人公。苦い物語ですが、重くなりすぎず、かすかに明るさを残す幕切れが良いです。
 「春になれば」は、産休代理で教壇に立った主人公が、子どもに振り回される話。キレイゴトじゃない世界を描きつつ、最後は希望を感じさせる終わり方で、ホッとしました。
 重松さんは、人を見る目が温かいなといつも感じます。人生に失敗したり、うまくいかずジタバタしていても、決して見捨てない。今回も、その優しいまなざしに救われる思いでした。

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2008年6月18日 (水)

セカンドウィンド Ⅰ

1309「セカンドウィンド Ⅰ」川西蘭    ピュアフル文庫    ★★★★

 自転車が大好きな洋は、ある日峠でロードバイクの一団と出会う。それがきっかけで、本格的な自転車の練習に参加することになった洋。しかし、たった一人の家族である祖父は、洋が自転車に乗るのを快く思っておらず…。

 ほんの短期間でしたが、ツール・ド・フランスを見ていたことがあって、そのおもしろさとレースの過酷さに圧倒されたものでした。なので、自転車を題材にしたスポーツ青春ものって、ツボだろう!という確信のもと、手にとった一冊です。
 主人公・洋は、実に普通の少年。自転車にかける情熱と才能は確かにすごいものはあるけど、祖父に自転車練習のことを言い出せずにあきらめてしまったり、必要以上に人と争うのが嫌だったり。でも、洋にケンカを売ってくる昇には、かなり熱くなったり。そういうところが、等身大の中三という感じで、とても好きでした。
 そのせいか、スルスルと物語に入っていきました。でも、第一部のチーム内のサバイバルは、洋がつらそうで、こっちもしんどかったです。第二部は、岳という仲間ができ、洋も楽しそうにヒルクライムに挑戦していて、気持ちよく読めました。
 しかし、心底すごいと思ったのは。私は自転車に乗れないんですが、読んでると乗っているような気分になるんです。乗ってる感じを体感してるような。活字でそれができるのは、すごい!

 さて、「Ⅰ」とついてるからには、当然続きがあるのでしょうね。洋も岳も高校生になっているのかな。続きが楽しみです。

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2008年6月12日 (木)

魔王

1307「魔王」伊坂幸太郎    講談社    ★★★

 人に思い通りのことを口にさせることができる…ある日突然、そんな能力を得た安藤は、それをなんとか有効に使おうとする。時代の悪い流れを止めるべく、努力する安藤だったが…。

 安藤を主人公にした「魔王」と、その弟・潤也の物語「呼吸」の2作品。
 どちらかといえば、「呼吸」の方が好きでした。「魔王」は息苦しい感じで。もちろん、意図的なものなんでしょうけど。
 「呼吸」の透明感と、あとに残る寂しさのようなものが、お気に入りです。
 宮沢賢治の詩は好きなのですが、こういうふうに使われると、また印象が違います。
 「死神の精度」とリンクしてましたね〜。伊坂作品は、こういうところもお楽しみの一つですよね。

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2008年5月25日 (日)

プラネタリウムのふたご

1300「プラネタリウムのふたご」いしいしんじ   講談社文庫   ★★★★

 プラネタリウムに捨てられていたふたごの兄弟は、彗星にちなんでテンペルとタットルと名づけられた。不思議な運命に導かれるように、テンペルは手品師に。タットルは郵便配達をしながら、養父と同じ星の語り部に。そんなふたごを襲った運命とは・・・。

 「でも、それ以上に大切なのは、それがほんものの星かどうかより、たったいま誰かが自分のとなりにいて、自分とおなじものを見て喜んでいると、こころから信じられることだ。そんな相手が、この世にいてくれるってことだよ」・・・泣き男(テンペルとタットルの養父)のこの言葉がすぅっと心にしみこんできました。

 最終章は、思わず涙がこぼれました。テンペルの死に接したタットルの思いが、その行動があまりに・・・。そもそも手品師になったテンペルも、プラネタリウムで語るタットルも、それは間違いなく天職なのだけど、自分のためだけでなく見てくれる(聴いてくれる)人たちのために、一心にやっていたのです。その心根の純粋さに、私は心打たれてしまったのでした。だからこそ、タットルはああいう行動をとったのでしょうし、それはテンペルがもっとも喜ぶことだったのでしょう。

 私はいしいしんじを読むと、いつも宮沢賢治を読んでいるような気分になります。現実から一歩ずれたような物語世界。古いものを大事にしているようで、技術の革新にも無関心ではないところ。文学的かと思うと、理系っぽい表現が出てくる。独特の比ゆ表現。

 賢治の作品が、自他との関わりを描きつつ、最後は自己の内面に収束していくのに比べて、いしいしんじは最後に他を優しく包む込むようなところがあると思うのです。悲しいようなせつないような、泣きたい気分にさせられるけれど、不思議にほんのり幸せな気分になる・・・それがいしい作品の魅力だと思うのです。

 

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2008年5月24日 (土)

図書館内乱

「図書館内乱」有川浩   メディアワークス   ★★★★

 初読の感想は1091「図書館内乱」

 職場の図書館に、「図書館シリーズ」全4冊が完備してあるので、嬉々として再読してます。こんなにはまっていいのかしら・・・ってくらい、はまってるんですけど。でも、誰も借りてないんですよね。おもしろいのになー。

 さて、「内乱」は、郁と堂上だけでなく、柴崎や小牧、手塚といったメンバーがそれぞれメインになる話がちりばめられています。じゃあ、番外編っぽいのかというとそうでもなくて、ここから派生していったものが最終巻の「革命」まで続いていくのです。そういう意味では、大事な巻。

 再読してみて、けっこうきたのは柴崎の話でした。女子の人間関係の難しさって、自分でも思い当たるだけに・・・。もちろん私は柴崎タイプではないのですが、そういうのが苦手だという点においては、すごく共感しちゃいました。そして、バカ正直にまっすぐな郁が、どれだけ柴崎の救いになってるのかも。

 このシリーズ、最初に読んだときには、正直言って、郁の熱血ぶりがうざかったりもしたのですが・・・。再読してみたら、むしろ気持ちいいというか。郁が最終的に行き着くところを知っているせいか、安心して読めるのかもしれません。

 そして、この辺りからすでに、郁と堂上はベタ甘なムードを醸し出していたことを再確認(笑) なんたって、「王子様」ですもんねえ。

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2008年5月22日 (木)

サンネンイチゴ

1299「サンネンイチゴ」笹尾陽子    理論社    ★★★

 文芸部でおとなしめのキャラってことになってるあたし、森下ナオミは、ひょんなことからクラスでやたら目立つ強面のアサミと、その彼氏(?)ヅカちんと親しくなってしまう。なぜかアサミたちと「マスコット狩り」を追うはめになり…。

 笹尾さんというと、少年が主人公のイメージが強いのですが、これは女子の一人称で語られる物語。テンポの良さと、重くなりすぎないバランス感覚は、いつも通り。
 ナオミが家族と馴染めない感じとか、小学校時代の事件とか、すごく共感できました。そういうのってあるよね…という。
 彼女が自分らしさをつかんでいく過程は、読んでて心地よかったです。
 ただ、サンネンイチゴのエピソードがもうちょっと生きてもよかったかな。少し物足りない気がしました。

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2008年5月18日 (日)

ナラタージュ

1295「ナラタージュ」島本理生   角川文庫   ★★★★

 大学生の泉は、出身高校の演劇部に客演することになる。演劇部の顧問の葉山先生は、泉がかつて恋焦がれた相手だった。再会し、自分の思いが過去のものではないと自覚した泉。しかし、葉山先生は泉を受け入れようとはしないのだった。

 「ナラタージュ」というのがどういう意味なのかわからず、調べました。映画などで、主人公が過去のことを振り返って語ることをいうのですね。この物語はタイトルどおり、大人になり、結婚を目前に控えた泉が、過去の恋を回想するという構成になっています。

 刊行当時、かなり売れた本だと記憶しています。島本さんはわりと好きなのですが、これを読むのは正直怖かったです。なぜかは自分でもわかりませんが・・・なんか、「やばいぞ」サインがチカチカしてて。

 読み終えて、わかりました。おそらく、読んでしまったら、ものすごく引きずられるだろうという予感だったのです。そして、それは当たりました。

 いい歳をして何を今さら・・・という感じなのですが。そして、私は先生にあこがれたことすらないのですが。人を恋うる思いというのは、きっとシチュエーションこそ違え、誰もが経験するものだから、ここまで共感してしまうのでしょうね。

 葉山先生にまっすぐな思いを傾ける泉。そんな泉を愛しながらためらう葉山先生。泉に恋してしまって苦しむ小野君。それぞれの思いがあまりにせつなくて、痛いほどそれぞれの気持ちがわかってしまって、最終的に行き着くところがわかっていても、ページを繰る手を止められませんでした。

 読み終えてから、しばらくボーっとしてました。いろんなことを考えてしまって。

 恋愛ものって苦手なんですが、これは読んでよかったと思います。 

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2008年5月17日 (土)

イギリス海岸

1294「イギリス海岸」木村紅美   メディアファクトリー   ★★★★

 東京で暮らしている双子の妹・梢のもとを訪れることになった翠。お土産に選んだのは、盛岡でしか売っていない福田パンの「アンバター」。一卵性双生児なのに、全く対照的な性格の姉妹。梢は東京で夢を追い、翠は岩手で静かに暮らすことを望んでいた。

 私は生粋の岩手人です。岩手が好きで、一生岩手で生きていこうと決めています。けれど、岩手県人ではない人が、妙に岩手を美化して見るのは、あまり好きではありません。もっとも、観光で訪れるのと、生活の場にするのとでは、捉え方が違って当たり前なのですが・・・。

 そんなちょっとひねくれ者の私が読んでいて、とても心地よかったのがこの物語です。

 「イーハトーヴ短篇集」というサブタイトルがつけられている通り、岩手を題材にした6つの連作です。軸になるのは、翠と梢という双子の姉妹。彼女たちは、高校から岩手に移り住んだという経歴の持ち主。彼女たちとそれに連なる人々のスケッチが、淡々と描かれます。

 岩手人の私であれば、「ああ、あれ」と思う物や場所が題材になっているのですが、それが変に美化されず、かと言って貶められることもなく、ありのままに描かれていて、とても好感がもてました。そして、それらを通して描かれる翠たちの生活が、あっさりしていて、それでいてどこか優しい視線を感じて、ほっとするのです。

 ずっと翠と梢が語り手でいくのかな・・・と思ったら、途中でそれが裏切られていくのもいい感じでした。最終話、宮古の浄土ガ浜でのシーンは、とても好きです。

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2008年5月16日 (金)

てるてるあした

1293「てるてるあした」加納朋子    幻冬舎文庫    ★★★★

 親が借金をこさえたせいで、夜逃げするはめになった照代。行き先は佐々良という田舎町に住む、遠縁の久代さんという人の家。親とも離ればなれですさんだ照代のもとに、ある日不思議なメールが届く。

 「ささらさや」の姉妹編。サヤは脇役になり、照代という十五歳の女の子が主人公。「ささらさや」に登場した三婆の一人、元教師の久代さんが、重要な役割を果たします。
照代はかなりかわいくない性格ですが、その大元は、親からの愛情を実感できないというところにあるのです。そして、その原因は…。
 最初はけっこう照代と両親にイライラしたのですが、話の仕掛けが見えた辺りから、どうしようもなく哀しくなってきて…最終話では思わず泣けてしまいました。 

 加納さんって、人のピュアな部分を書くのがうまいと思うんですが、同時に素直になれない不器用な人の、一瞬見せるあたたかさを描くのもうまいなぁと感じました。

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2008年5月 9日 (金)

四畳半神話大系

1292「四畳半神話大系」森見登美彦   角川文庫   ★★★

 大学三回生の春まで、ばら色のキャンパスライフとは縁遠い生活を送ってきた。二年前の春、もしあのサークルを選んでいなかったら、私は悪友の小津と知り合うこともなく、幸せな生活を送れていたのではないか・・・?四つのパラレルワールドがおりなす、森見流青春ストーリー。

 「太陽の塔」に続く第2作。「夜は短し~」のヒットに伴い、最近文庫化されました。

 「太陽の塔」を読んだときは、「なんじゃこれ」と思いつつ、そのおもしろさにはまったのですが、当時は森見作品がこんなに市民権を得るとは思いませんでした。だって、妄想に次妄想なんだもん。

 この「四畳半~」もまた、妄想ワールドです。大学入学当時に心惹かれた四つのサークル(いずれもちょっとあやしい・・・)。その四つそれぞれを選んだ場合の学生生活が、一話ごとにパラレルワールドとして描かれます。似て非なる世界が展開するわりには、基本的な流れは同じだったり。大差ないけど、微妙に違う世界が四つ描かれるわけで、読んでいるうちにこっちの頭の中までおかしくなってきます。

 というか、書いてておかしくならないんでしょうかね。「太陽の塔」に負けず劣らずの「奇書」だと思うのですが(苦笑)

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2008年4月30日 (水)

霧笛荘夜話

1289「霧笛荘夜話」浅田次郎    角川文庫    ★★★

 運河のほとりに建つ古いアパート・霧笛荘。何かにひかれるようにそこの住人になった人々は、決して不幸ではなかった…。老管理人が案内してくれる彼らの人生とは。

 七つの連作短編から成る物語。
 浅田次郎お得意の、社会の「底辺」で生きる人々の人生をすくいとるような物語。住人たちの人生がそれぞれ交錯して、モザイクのような物語世界をつくりだしています。
 考えさせられるのは、幸福とは何かということ。霧笛荘の住人たちは、とうてい幸せだとは思えないのだけど…。でも、人として大事なぬくもりのようなものを失わない彼らは、やはり幸せなのかもしれません。

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2008年4月28日 (月)

いつかパラソルの下で

1287「いつかパラソルの下で」森絵都   角川文庫   ★★★★

 厳格な父が死んだ。父に反発し、家を出た野々と兄。父に従って生きてきた妹。きょうだいたちは、父の死後、意外な事実を知る。父に愛人がいたのだという・・・。あの厳格な父の中にいったい何があったのか?きょうだいは、父のルーツである佐渡へ向かった。

 待望の文庫化です。

 森絵都の「大人向け」小説。前半は、こんなもんかなあ・・・と思って読んでいましたが、野々と恋人の達郎の間がぎくしゃくし、佐渡へ向かう辺りからなんとなくひきこまれるように読んでいました。

 異常なほど厳格な育てられ方をして、それぞれに何かが欠けたようになってしまった野々たちきょうだい。それは、「父のせいだ」という思いがぬぐえずにいて・・・。それって、実は親離れしてない証拠なのですよね。そう言ってしまうと、身も蓋もないのですが。森絵都は、そんな言い方をせず、野々たちを優しく導いて、「大人」にしてくれます。

 佐渡へ行ったからといって、何がわかるわけでもありません。わかることと言ったら、父もまたジタバタして生きた、一人の人間だったということだけ。でも、それを通して、野々たちは、「父のせい」にするのをやめて、ちょっとだけ人生に前向きになります。

 その過程が、説教くさくなくて、読んでいて心地よいのです。「カラフル」や「つきのふね」など、児童書を読んだときにも感じましたが、読者に価値観をえらそうに押し付けないのです。すーっと読み手の心に入ってくる。私が森絵都を好きな理由の一つです。

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2008年4月26日 (土)

阪急電車

1286「阪急電車」有川浩   幻冬舎   ★★★★

 たまたま乗り合わせた人たちそれぞれの人生を乗せて、電車は走る。ある人の恋の始まり、あるいは別れ。そして…。

 阪急電車の今津線。片道15分の八つの駅に一人の主人公を配置した物語。それがリンクしていくところもおもしろいのですが、単行本書き下ろしの後半戦「折り返し」が、めっちゃおもろかったです。
 芽生えた恋の顛末がどうなったのかとか、あの男と無事に別れられたのかとか。用意された「その後」のエピソードが、いずれもすごく好みでした。

 一番インパクトがあったのは、寝取られた元カレの結婚式に討ち入った翔子の話。でも、こういうの書いても、有川さんって変に重くならないんですよね。そういうとこが好きです。
 それから、漢字の読めないおバカな彼氏の話。爆笑しました。でも、すごくいい人。大好きなエピソードです。

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2008年4月23日 (水)

ヘヴンリー・ブルー

1285「ヘヴンリー・ブルー」村山由佳    集英社    ★★★

 夏姫が恋をした歩太は、姉の春妃を愛した。そして、夏姫の心をズタズタにしたまま、春妃は死んでしまった。「天使の卵」と「天使の梯子」を夏姫の視点で結ぶアナザーストーリー。

 たぶん、夏姫視点の物語が書かれることを、どこかで予想していた気がします。だから、これが刊行された時、ああやっぱり…と思いました。
 もともと、春妃より夏姫の方に共感していたので、彼女の内面は描いてほしかったのです。ちょっと物足りない気もしますが、これ以上書きすぎても嫌みなだけかもしれません。
 これでやっと、シリーズが完結したなという感じです。

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2008年4月18日 (金)

図書館戦争

「図書館戦争」有川浩   メディアワークス   ★★★★★

 初読の感想は1087「図書館戦争」

 先日、コミックス版「図書館戦争」(弓きいろ/白泉社)を購入したら、これが意外なほどにおもしろかったのです。で、どの程度アレンジしてあるのか気になって、原作を再読してみました。

 結論からいって、すごくうまくコミカライズされています。大事なエピソードはきちんとおさえた上で、漫画でより生きるようにアレンジされていて。原作ファンの私でも、なんの違和感もなく漫画が読めるという・・・。今、1巻が出たのですが、続きも買ってしまいそうです。

 さて、改めて読み直してみて、原作そのものが、やはりよくできているということを再確認。主人公の郁をはじめとして、堂上、小牧、手塚、柴崎、玄田・・・というキャラが立っていて、それぞれのやりとりがめちゃくちゃテンポ良くておもしろい。さらに、ストーリーも笑える部分と、シリアスな部分が絶妙のバランスで配分されていて、気持ちよく読めるのですね。

 それでも、初回は物語のスピードにあおられて、ガーッと読んでしまいましたが、今回はけっこうじっくり読みました。実は、忘れてるエピソードもけっこうあって、漫画を読んで「あれ、こうだったっけ?」というところもあったので(チョコレートの罰ゲームとか)。今回ツボだったのは、郁を案じる堂上のモノローグでした。なんだかんだ言って、堂上教官好きなんですよねー(笑)

 「日野の悪夢」は、再読してもつらいです。でも、こういうところをキチッと書いてくれてるところが、この物語の支えですね。

 しかし、続きも再読したくなってきて、困ってます。さらに、恋愛モード全開らしい「別冊 図書館戦争」も読みたい・・・。

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2008年4月15日 (火)

クレオパトラの夢

「クレオパトラの夢」恩田陸   双葉社   ★★★★

 初読の感想367「クレオパトラの夢」

 無性に読み返したくなって、手に取りました。そして、一気読み。おおまかなストーリーは頭に入っているので、初読の時にあいまいなままだったとことか、しっかり読めました。

 恵弥というキャラを活躍させるために生み出された話ではないかという感じなのですが、話が進むにつれて、彼が振り回されてしまって、いったいどうなるの??という展開に。函館を舞台にして、サスペンスフルなミステリが展開するわけですが・・・。

 あらためて読み返してみると、けっこういろんな要素がつまった物語でしたね。まず、「クレオパトラ」の謎があるわけだけど、それ以前に、恵弥と双子の妹・和見との絡みがあって、和見の恋愛沙汰があって。誰が敵で味方かわからない、サスペンスな展開があって。そういうのを一つの物語にして、スラッと読ませてしまうところは、さすが恩田さんです。

 この物語を象徴するのが、終盤出てくる「冷凍みかん」のたとえ話なのですが・・・これって、今読むと、いっそうリアルに怖さを感じますね・・・。ゾッとします。どれだけあやうい均衡のうえで私たちは生活しているのでしょうね。

 それにしても、恵弥というキャラは、もっと生かしてほしい。ぜひまた、彼が登場する話を書いて欲しいものです。

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2008年3月20日 (木)

【新釈】走れメロス 他四篇

1273「【新釈】走れメロス 他四篇」森見登美彦   祥伝社   ★★★

 芽野史郎は激怒した・・・友との約束を「守らない」ために奔走する芽野。きっと芽野は来ないと確信する芹名。京都に生息するどうしようもない学生たちの物語。

 「山月記」「藪の中」「走れメロス」「桜の森の満開の下」「百物語」の5篇を収録。いずれも文学史上に燦然と輝く名作のパロディ。

 京都を舞台にした、大学生もの。これでもかと繰り広げられる森見ワールド。特にも「走れメロス」は、その馬鹿馬鹿しさにおいて、森見ワールドの真骨頂。読んでいて、「やれやれ・・・」という気分になるのですが、つい読んでしまうんですよね。

 5篇が微妙にリンクしているのも楽しいです。

 すごいと思ったのは、それぞれが原作の文体やムードを忠実になぞっていること。こんなふうに書き分けられるなんて、さすがです。

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2008年3月12日 (水)

私の男

1272「私の男」桜庭一樹   文藝春秋   ★★★★

 花は、9歳の時に家族を失い、親戚の淳悟に引き取られた。その時淳悟は25歳。若い養父と子供は、二人だけでひっそりと寄り添うように暮らしてきた。北の地から、東京へ・・・。そして、花は、15年の養父との生活に終止符を打ち、嫁ごうとしていた。

 話題の直木賞受賞作。ようやく読めました!

 桜庭一樹歴はまだ浅い私ですが、直木賞の選考過程を聞いて、すごく納得するものがあったのです。「物語の整合性はともかく、読ませる力がある」という点において。それは、「赤朽葉家の伝説」を読んだ時に、私が感じた桜庭一樹の魅力でした。つまり、物語を編む力が強烈なのです。

 「私の男」も、冒頭の一行で囚われました。「私の男は、ぬすんだ傘をゆっくりと広げながら、こちらに歩いてきた」・・・「盗んだ」ではなく「ぬすんだ」と書くだけで、この物語のもつ隠微で、濃密なくせに妙に空虚な雰囲気を描き出していると感じたのは気のせいでしょうか。桜庭一樹のこういうところに、私は弱いようです。

 物語は、過去へ過去へとさかのぼり、徐々に花と淳悟の暮らしがどんなものだったか、明らかになっていきます。それはこちらの予想を上回るものでした。そして、二人の愛の物語かと思いきや、私たちに突きつけられるのは「家族って何?」という問いなのです。淳悟が間違っていたのか?それとも、花が?でも、間違ったのはいつからなのか?どこまでさかのぼれば、修正できるのか?・・・読みながら、頭がグラグラしました。

 どの章もそれぞれにインパクトがありましたが、最終章(時間的には一番古い)の津波の場面は印象的でした。花が一人だけ助かったのはそういう状況でだったのか・・・と。花はその時抱いた怒りを、ずっとかかえているのかも。それから、小町の章の「おかあさぁん」は、衝撃的でした。これを、小町視点で語らせるところが絶妙です。

 「死体」については、どうなの?と思わないでもないけれど、そんなことが気にならないくらい、強烈な何かに支配された感じでひたすら読みました。読み終えて、深い海の中から浮かび上がったような・・・ようやく深い呼吸ができるような感覚を味わいました。それまでは、深海の中を漂っているような気分でした。

 桜庭一樹は、物語を堪能する醍醐味を感じさせてくれる作家です。

 

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2008年3月 9日 (日)

図書館革命

1271「図書館革命」有川浩   メディアワークス   ★★★★★

 原発を狙ったテロが勃発。そして、その事件とよく似た小説を書いた作家が、執筆の自由を奪われそうになる。図書隊は彼を守るために立ち上がるが、それは同時に図書隊が新しい戦場に出て行くことも意味していた。

 図書館シリーズ最終巻。やっと読めました~。地元図書館にようやく入ったのですよ。前作を読んでから1年。どれだけ待ち焦がれていたことか。

 最終作ということで、いろんなことにある程度の決着がつけられます。郁と堂上の関係とか、手塚と兄の関係とか、そして、本を愛する人たちを苦しめてきた「良化法」のこととか。すべてが完全に大団円・・・とはいかないのですが、それなりにハッピーエンドでホッとしました。

 相変わらず、読みながら笑ったり泣いたり、忙しかったです(笑)郁と堂上のラブラブ度は上昇中(最初の「デート」の場面からもう全開ですから)。それがクライマックスでああいう展開になるとは! 郁、あんた成長したねえ・・・と、読みながらうるうるきてしまいました。

 手塚と柴崎麻子の関係も、前作あたりでそんな感じになってきましたが、こうきたか~と(笑)いいカップルだと思うんだけど。互いに弱みをさらせる相手って大事ですよね。

 ドンパチ全開だった前作に比べると、わりとおとなしめな事件ですが、そのリアルさに関しては、今までで一番かもしれません。こういうこと、今の時点で起こっても不思議じゃない気がする・・・。作家狩り、みたいな。そういう意味で、読んでいて怖かったです。

 まさに一つの「革命」になった事件で、図書特殊部隊も徐々に変化していくのでしょうが・・・本来、図書を守るために武装すること自体が「正義」ではないので、その変化は必要なものなのでしょうね。できれば郁たちが、普通の司書さんになれる日が来ることを祈りつつ。

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2008年3月 6日 (木)

はじめての文学 浅田次郎

1270「はじめての文学 浅田次郎」浅田次郎   文藝春秋   ★★★★

 ブラジルへ移民する・・・そう言っていたふくちゃんは、お金をだましとられてしまう。恋人をキャバレーで働かせ、そのお金で移民しようとするふくちゃんを、皆が白い目で見ていたが、とうとう出航の日がやってきて・・・(ふくちゃんのジャック・ナイフ)

 「はじめての文学」シリーズを読むのも3冊目。宮部みゆきに続き、浅田次郎もすべて既読の作品ばかり。「ふくちゃんのジャック・ナイフ」「かくれんぼ」「夕暮れ隧道」「獬(シエ)」「立花新兵衛只今罷越候」の5つ。

 先の3つは、初読の時にはあまり印象に残らなかったのですが、こうして改めて読んでみると、やっぱりいいです。浅田次郎らしい、心に沁みてくる佳品だと感じました。

 「獬(シエ)」「立花新兵衛只今罷越候」は、初読の時からかなり好きだった話です。特に「立花~」のインパクトはすさまじいものがあります。「はじめての文学」は、若い人対象なのでしょうか。「立花~」はちょっと難しいのかなと思ったりもしましたが、読んだ人に何かを残す物語なので、いろんな人に読んで欲しい作品です。

 こうして読んでみると、浅田次郎の書くものは、とても私の肌に合うというか・・・すごくすんなりと入ってくる感じなのです。苦労して読むってことが、あまりない。読んでいてとても心地よいのです。そういう作家にめぐりあえるのって、幸せなことだなと感じました。

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2008年2月28日 (木)

十二の嘘と十二の真実

1266「十二の嘘と十二の真実」あさのあつこ   徳間書店   ★★★

 国が飢饉におそわれ、貧しい者たちは次々に死んでいった。しかし、国王と后はそんなことは意に介さず、豪奢な生活を送っていた。

 后を主人公にした十二の話と、なんとなく奇妙な老女の話を紡いだ十二の話。それが不思議な融合をして・・・。

 なんとも奇妙な味わいの二十四話。しかし、独立した話ではなくて、全体で環をなしています。こういう構成は決して嫌いではないですが、あさのさんの描写は時に生々しすぎて、ちょっとしんどいなあ・・・と思うところもありました。

 「バッテリー」の頃から感じていましたが、あさのさんは「こういう話を書きたい!」という熱い思いは人一倍強いのではないでしょうか。でも、それに筆がついていかないというか・・・。今回も、「こういうことを書きたいんだよね」というのはわかるのですが、それを描ききっていないようなもどかしさを感じました。

 なんとも言えない怖さが漂う物語です。「ツル」っていったい何なのでしょう・・・?

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2008年2月26日 (火)

町長選挙

1264「町長選挙」奥田英朗   文藝春秋   ★★★

 あやしい神経科医・伊良部が看護師のマユミと共にやってきたのは、千寿島。そこは島を二分した町長選挙の真っ最中だった。伊良部も両陣営に取り込まれそうになるのだが・・・。

 名医なのかただの馬鹿なのかよくわからない、伊良部先生シリーズ3作目。今まで文庫で読んでいましたが、これは図書館で借りてきました。

 今回は表題作のほか、「オーナー」「アンポンマン」「カリスマ稼業」の3作も収録。この3つは、モデルがわかりやすすぎて・・・。球界の中心となる球団のオーナー、有名IT企業の社長、そして歌劇団出身の女優。それぞれ、妙にリアルに想像できて、おかしかったです。

 でも、一番おもしろかったのは表題作かも。伊良部がいつもの診察室を出て、離島の診療所へ。そこでの町長選の様子がオーバーに描かれているのだけれど、ラストは妙に清々しい感じで好きでした。伊良部もなんか生き生きしてましたね。

 このシリーズって、まだ続くんでしょうか。なんだかんだ言って、つい読んでしまうんですけど。

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2008年2月20日 (水)

はじめての文学 宮部みゆき

1261「はじめての文学 宮部みゆき」宮部みゆき   文藝春秋   ★★★★

 蓮見探偵事務所の飼い犬は、元警察犬のマサ。彼が大好きな糸子ちゃんが巻き込まれた奇妙な事件の顛末は・・・。(心とろかすような)

 このシリーズは「重松清」に続いて2冊目です。「宮部みゆき」は収録作品がすべて既読だったためスルーしていたのですが、なぎさんの感想を拝見したら読みたくなって、図書館から借りてきました。

 マサシリーズの短編「心とろかすような」、『鳩笛草』所収の超能力もの「朽ちてゆくまで」、『本所深川ふしぎ草紙』の一編、回向院の茂七が登場する「馬鹿囃子」、そして『堪忍箱』から「砂村新田」の計4編を収録。

 現代ミステリ、SF、時代物・・・と、宮部ワールドが堪能できる構成です。そして、シリーズ物の一編でも、じゅうぶんおもしろく読めるものばかり。

 初読の時にすごく好きだったのは「砂村新田」。これはテレビドラマにできそうな話です。さりげないんだけどドラマティックで、読み終えて一抹の寂しさと、温かさが残る物語。

 こうして読み返してみると、「心とろかすような」がなかなかよいです。このシリーズでは長編の「パーフェクト・ブルー」が好きだったのですが、それよりはちょっと力が抜けていて、ユーモラスな感じが漂っているのがいい感じでした。もっとも、事件そのものはやりきれない感じですけどね。

 「朽ちてゆくまで」は、ちょっと悲しい話です。宮部さんの超能力ものは、こういうテイストが多いですね。

 「馬鹿囃子」は捕物帖風の物語。一応、ハッピーエンドなのですが・・・ちょっとひんやりした感じが後に残ります。

 宮部ワールド初心者には、なかなかいいセレクションだと思いました。

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2008年2月17日 (日)

かたみ歌

1259「かたみ歌」朱川湊人   新潮文庫   ★★★★

 昭和40年代。東京下町のアカシア商店街では、時折不思議な出来事が起こる。昭和の時代の「かたみ」の歌にのせて、7つの奇跡がここに・・・。

 アカシア商店街を舞台にした7つの連作短編です。

 こういう「昭和」を舞台にした物語は、朱川さんが得意とするところ。今回は、昭和の流行歌もからめながら、物語が展開します。

 「死」に関わる物語が多いので、ちょっと悲しい展開をするものが多かったです。中でも、一番印象的だったのは「夏の落し文」。兄が弟を守る話なのですが、このお兄ちゃんがなんともけなげで・・・。わずか10歳の子供が、こんなことを・・・と。こんな新幹線の中で読んでいたのですが、泣きそうになってちょっと恥ずかしい思いをしてしまいました。

 あとは「栞の恋」が好きでした。古本屋の本にはさんだ栞が起こす奇跡。古本屋の本って、一度は誰かの所有物だったのだから、何かがありそうな気がしますよね。せつない結末ですが、お気に入りの話です。

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2008年2月12日 (火)

優しい子よ

1257「優しい子よ」大崎善生   講談社   ★★★★

 ある春の日、妻のもとに一通のメールが届いた。病におかされた子供が、女流棋士である妻の大ファンなので、子供のために色紙を一枚いただけないかという内容だった。その一通のメールがきっかけで、茂樹という子供との交流が始まったのだった・・・。

 作者とその妻が経験した、一人の少年との交流と別れを描いた「優しい子よ」。敏腕テレビプロデューサーで、作者の年上の友人・萩元晴彦の死と足跡を描いた「テレビの虚空」「故郷」。そして、作者が父親となるまでを描いた「誕生」。

 作者の妻が女流棋士で、茂樹少年がその大ファンで。彼が見て感動したテレビドラマ「聖の青春」の原作者が、夫である作者で(茂樹くんは、そのことを全く知らなかった)。そして、そのドラマのプロデューサーが、萩元老で・・・というふうに、4作が環をなすように構成されています。それはまた、生と死をめぐる環でもあるのです。

 表題作が、圧倒的な緊張感と深さをもって胸に迫ってきます。何より、自らも耐え難い苦痛の中にあって、「高橋先生の足が痛みませんように」と祈り続ける少年の「優しさ」には、言葉もありません。とうてい生きられぬと宣告されていた10歳の誕生日を迎えるまでがんばった彼の人生は、作者夫妻の生き方にも大きな影響を与えていきます。

 この作品をノンフィクションと私小説と、どちらにカテゴライズすればいいのか迷いましたが・・・作者が「小説」としているようなので、それに倣います。しかし、大崎さんの書くものは、こういう「事実」を下敷きにしたものの方が、私の好みには合うようです。ノンフィクションの「聖の青春」や「将棋の子」には泣かされましたが、小説の「パイロットフィッシュ」はイマイチでした。小説になると、大崎さんのもっているセンチメンタリズムやエモーショナルな面が過剰になりすぎる気がするのです。ノンフィクションの方が、事実がうまく感情をセーブしてくれて、読みやすいかなあ、と感じました。

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2008年2月 4日 (月)

もう起きちゃいかがと、わたしは歌う

1253「もう起きちゃいかがと、わたしは歌う」西田俊也   幻冬舎文庫   ★★★

 不倫に疲れた東子は、山奥の廃墟のホテルで自殺を図ったところを、近くに住む日葉に助けられる。そのまま日葉の家で厄介になりながら、東子は少しずつ自分を取り戻し始める。

 この人の書いた「やんぐとれいん」が、すごくツボだったので、期待して読みました。 

 あらすじを読んで想像していたのとは全く異なる雰囲気で、かなり苦戦しました。いや、ストーリーはベタなんだと思うのですが。すごくいろんな喩えが用いられていたり、回想が独特の雰囲気で語られていたり、妙に観念的なところがあったり・・・読むのにかなりてこずりました。正直言って、途中で読むのをやめようかと思ったほど。

 たくさんのエピソードがパズルのようにちりばめられていて、それがだんだん形になってくる終盤近くになって、ようやく物語のリズムに頭がなじんだ、という感じでした。

 自殺未遂をした東子が出会うのは、生きるのがへたくそな人たち。みんな、過去に何かを背負っていて、そして現在もいろんなものとうまく折り合いがついていなくて。なんだか痛々しいほどに、不器用な人たちなのです。そして、やはり不器用な東子は、そういう人たちと関わる中で、少しずつ自分の生き方を取り戻していくのです。

 これを読んでいると、人を好きになることがちょっとだけ怖くなります。そして、それでも人とつながっていたいと思うのが人間なのだよね・・・と思わせられます。 

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2008年1月31日 (木)

肩ごしの恋人

1252「肩ごしの恋人」唯川恵   マガジンハウス   ★★

 クールで恋愛にものめり込めない萌と、結婚三度目、ほしいものは我慢しないるり子。全く対照的な二人は、5歳の頃からの幼なじみ。女27歳。それぞれの恋愛と生き方は・・・。

 初・唯川恵です。直木賞受賞作だったんですね。米倉涼子と高岡早紀でドラマ化されたとき、1回目の途中まで見てやめました。

 ふと思い立って読んでみたんですが・・・う~ん(苦笑) 今から8~9年くらい前に連載されてたみたいなんですが、もっと古いような印象を受けました。どうしてこれを去年ドラマ化したんでしょうね??

 正直言って、萌にもるり子にも共感できないまま、でした。そして、ラストも、「え?それでいいの?」と。男を手に入れてしまうとつまらなくなってしまうるり子にとっては、ゲイのリョウを追いかけるのは、幸せなこと。ゲイだから、永遠に手に入らないわけで。男と正面から向き合うことができない萌には、シングルマザーというのはちょうどいいわけで。なんだか、二人とも自分が楽な道を選んでいて、結局この人たちは変わらないわけね・・・と思ったら、脱力しました。じゃあ、ここまでのすったもんだは何だったの?と。

 この物語、私にはちょっと合わなかったみたいです。

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2008年1月27日 (日)

サウスバウンド(上・下)

1249「サウスバウンド(上・下)」奥田英朗   角川文庫   ★★★★

 上原二郎の父・一郎は元過激派。そして、母・さくらも元過激派!? 仕事もせずぶらぶらし、「官憲の世話にはならん」と年金の支払いも拒否する父と、喫茶店を切り盛りし、家計を支える母。二郎にとっては、父は何を考えてるのかよくわからない人だ。その父がこともあろうに逮捕されてしまい、一家は西表島に移住することに・・・。

 前半は東京編、後半は西表島編という感じですが、私は後半の方が好きでした。東京での生活は、ものすごく息がつまるというか・・・。読んでいてしんどかったです。

 西表に行ってからの方が、みんなが生き生きしているように思えて、読んでいて気持ちよかったです。もっとも、上原一郎行くところ騒動ありという感じで、西表でも思わぬ騒動に巻き込まれてしまうわけですが。西表編でのさくらさんがとってもいい感じでしたね~。本来の自分に戻ったというか。二郎も桃子も、西表に来てからの方が健やかな感じだったし。

 クライマックスから一郎たちが旅立つ場面にかけては、不覚にも感動してしまいました。

 本来、人が生きるということはとてもシンプルなことなはず。そして、今の私たちは、安易に妥協しすぎなんですよね・・・。そんなことを考えながら、とても楽しんで読みました。 

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2008年1月25日 (金)

ホームレス中学生

1247「ホームレス中学生」田村裕   ワニブックス   ★★

 「解散!」・・・父のその一言で、家族は住む家を失い、離散した。僕は公園で野宿することにした。今ではすっかり有名になったエピソード満載の、麒麟の田村の自伝小説。

 芸人本ブームですが、読むのはこれが初めてです。

 テレビでも何度も語られているので、知ってるエピソード満載でした。想像を絶するというか、「こんなこと、ほんとにあったの?」と言いたくなることばかりなのですが。

 亡くなったお母さんが大好きで、お母さんに守られている・・・という気持ちはわかるのですが、それ以上に、周りの人たちの信じられないような好意とか愛情にもっと感謝しろよ!と思ってしまいました(苦笑)いや、感謝はしているのでしょうけどね。二言目には「お母さん」というのはどうか、と。まあ、それだけ田村にとっては、お母さんの存在とその死は大きかったということなんでしょうね。

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2008年1月17日 (木)

戦場のニーナ

1242「戦場のニーナ」なかにし礼   講談社   ★★★

 ソ連軍によって殲滅されたトーチカで、ただ一人生き延びた女の子。ソ連兵に助けられたその子は、ニーナと名づけられ、ソ連で生きていくことになった。養母たちの手から手へ、そして孤児院暮らしも経験したニーナは、劇場付きのピアニストとなり、ユダヤ人指揮者のダヴィッドと運命の出会いを果たす。運命に翻弄されるニーナは、自らのルーツを狂おしいまでに求め続ける。

 最初は全くのフィクションだと思って読んでいました。もちろん話そのものはフィクションなのですが・・・モデルになった人がいたんですね。ロシア残留孤児のニーナ・ポリャンスカヤさん。ロシアにも残留孤児がいるということ、恥ずかしながら知りませんでした・・・。

 何度も命を落としかけ、そのたびに再生するような激動の人生において、ニーナが思い続けたのは、「私は誰?」ということ。両親の名もわからず、日本人だということすら隠され、中国人として登録されていたニーナ。最初の養母には捨てられ、二人目の養母とも別れを余儀なくされ、孤児院でも学校でもいじめられ・・・。自分のルーツがわからないということが、どれほど人を不安にし、孤独にすることか。

 三人目の養母のもとでようやく平穏な生活が送れたものの、初めての恋と別れがニーナに最大の幸福と、最悪の苦痛を与えるのです。生と死のはざまで、ニーナは自らのルーツにつながる「記憶」を呼び覚まします。そして、ニーナは戦後60年近くたって、ようやく「日本人」であることを認められるのです。

 ニーナの生き様を通して、戦争とは何か、国家とは何か、人とは何かを問いかけてくる物語です。これが、事実を下敷きにして書かれたということに、大きな衝撃を受けました。

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2008年1月16日 (水)

天涯の花

1241「天涯の花」宮尾登美子   集英社   ★★★★

 捨て子だった珠子は、養護施設で育った。やがて中学卒業と同時に、剣山の神社の宮司の養女となる。人の訪れも少ない山での静かな暮らしは、想像以上に珠子の性に合った。しかし、山で遭難したカメラマン・久能を助けたときから、珠子の平穏な生活は一変する。

 ずっと読みたいな~と思っていた物語です。宮尾作品は読み流すということができないので、ずっと二の足を踏んでいましたが、やっとチャレンジできました。

 時代は昭和三十年代後半。舞台は徳島の剣山。タイトルの「天涯の花」とは、剣山だけに咲くキレンゲショウマのことですが、うつくしい心根をもって成長した珠子のこととも思えます。珠子が養女となり、山の暮らしになじみ、初めての激しい恋を経験し、やがて自らの生きる道を見出すまでの四年間を描きます。

 「女の一代記」を描くのが得意な宮尾さんには珍しく、珠子二十歳の時点で物語は終わります。それは、「この先珠子は読者を裏切ることはあるまい」という、作者の確信によるものだったようです。たしかに、珠子の人生はまだまだこれからなのですが、幕切れはいっそ清々しく、彼女がこれからもまっすぐに生きていくのだろうなと思わせられます。

 捨て子だ、施設育ちだということに傷つきながら、ひねくれることなくまっすぐに育った珠子。彼女には、野の花を愛でながら暮らす霊峰での生活は、ひどく似つかわしいものでした。そんな珠子が身元もはっきりしない久能に恋をして、養父を捨てて山を降りようと思いつめるさまは、圧巻でした。そして、久能が山を去ってからの珠子の苦悩も。久能はもう戻らないと思い定め、典夫との結婚を考えるくだりも、ものすごくリアルで・・・。きれいごとではなく、人の心の揺れ動くさまを描ききる宮尾さんの筆に圧倒されました。

 今日で冬休みも最終日。最後にいい読書ができました。

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2008年1月15日 (火)

空中ブランコ

1240「空中ブランコ」奥田英朗   文春文庫   ★★★

 伊良部総合病院の神経科の医師・伊良部一郎のもとには、今日もいろんな患者がやってくる。跳べなくなった空中ブランコ乗り。尖端恐怖症のヤクザ。ボールを投げられなくなったプロ野球選手などなど。強烈な個性で患者を翻弄する伊良部は果たして名医なのか?

 これ、直木賞受賞作でしたね。前作の「イン・ザ・プール」よりおもしろかったです。

 相変わらず伊良部はぶっ飛んでるし、看護師のマユミちゃんも相変わらず。治療する気あんのか、この人たち・・・って感じですが。

 生活していく中で、本人も無意識のうちに無理してる部分があるんだけど、伊良部の5歳児なみのめちゃくちゃな思考・行動に触れているうちに、すーっと力が抜けていく。どの話もそのパターンなんだけど、そのパターンが気持ちよかったです。「義父のヅラ」とか、ばかばかしすぎて笑ってしまいました。 

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2008年1月 9日 (水)

風が強く吹いている

「風が強く吹いている」三浦しをん   新潮社   ★★★★★

 初読の感想は1052「風が強く吹いている」

 初めて読んだのが2006年の12月ですから、ほぼ1年ぶりの再読です。こんな短期間に読み直すってことはあまりしないのですが・・・箱根を見て読みたくなりました。

 初読の時は、ハイジや走たちの無謀な挑戦がいったいどうなるのか、とにかく話の先を追いたい一心で読み進め、最後の箱根本番の場面で泣きっぱなし。ものすごい興奮状態で読み終えたのでした。

 今回は筋立てがわかっている分、冷静に読めたと思います。で、感じたのは「こりゃすごい」ということ。

 走は何度も問います。「走るとはなんなのか」・・・答えは出そうで出ません。でも、物語の中に答えはあります。走ることは、生きること(なんとも陳腐な言い回しですが)。「箱根」を通して、走の、ハイジの、ほかの8人の生き方が、実に鮮やかに浮かび上がってくるのです。走ることとのそれぞれの関わり方は、そのままその人の生き方につながります。それを決して重くなく、エンタテイメントとして描ききったしをんさんの技量に感服しました。

 本番のレースの部分が圧倒的な迫力なのですが、そこに行くまでの8章(8区間と言った方がいいのかな)の積み重ねが、最後の2章で結晶していることを改めて感じました。襷を手渡し手渡したどりついた最後のみんなの涙、ハイジと走の咆哮・・・本当に胸が熱くなりました。

 今年の箱根を見た後だけに、神童が5区でふらふらになっているシーンは、読んでいてつらかったです。最近は箱根の報道も過熱気味で、いろんな「ドラマ」を追っているようですが、私はあの「ドラマ」という言葉が好きじゃないのです。選手は、ただただ純粋に走っているだけなのに・・・と、いつも思ってしまいます。

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2008年1月 3日 (木)

間宮兄弟

1232「間宮兄弟」江國香織   小学館文庫   ★★★

 「そもそも範疇外、ありえない、いい人かもしれないけれど、恋愛関係には絶対ならない」間宮兄弟。兄の明信と弟の徹信は、二人暮し。マイペースな二人はそれなりに楽しく暮らしているのだけれど、気になる女の子がいないわけでもなくて・・・。

 これは刊行された当時から「読んでみたいな」と思っていた一冊。江國さんが男の人を書いたら(しかも、さえない男の人たちらしい)どうなるのかなあ?と。

 なんか、この二人って、世間から見れば変だし、なんか気持ち悪かったりするんだけど・・・本人たちは幸せなんですよね、きっと。いや、好きになった人にふられたりすると、もちろん傷ついたりはするんだけど。ものすごく、二人で満ち足りている・・・って気がしました。それでいいのか?とも思ったけど。兄弟で歌いながら道を歩くか?とか(笑)

 映画化もされましたね。そちらは見てませんが、あのキャスティングのイメージが強すぎて。読んでいても、どうしても佐々木蔵之介と塚地の顔が浮かんできてしまいました。

 どうなのこの二人!?と思いつつ、なんとなく引き込まれて読んでしまう・・・そんな物語でした。

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2007年12月30日 (日)

つむじ風食堂の夜

1229「つむじ風食堂の夜」吉田篤弘   ちくま文庫   ★★★

 集う客たちが「つむじ風食堂」と呼ぶ名無しの食堂がある月舟町。そこに住む雨降り先生や、舞台女優の奈々津さん。不思議な帽子屋に、イルクーツクに行きたい果物屋。奇妙な人々が織りなす物語。

 なんとなく。吉田篤弘さんの書くものを読んでいると、いしいしんじさんを思い出します。登場人物の現実感のなさと、寂しさを含んだ懐かしさみたいなものが似ているのかもしれません。どちらもそんなに読み込んでいる作家さんではないですが。

 これは静かに物語が進んでいくのですが・・・それほど長い物語ではないけれど、一気に読んでしまうのがもったいないような感じでした。少しずつ少しずつ、味わいながら読みたい物語です。

 読み終えて、温かいスープを飲んだ後みたいに、気持ちがちょっとだけほっこりしました。

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2007年12月28日 (金)

いのちのパレード

1228「いのちのパレード」恩田陸   実業之日本社   ★★★★★

 あなたはパレードの目撃者に選ばれました・・・。 恩田陸の原点「異色作家短編集」へのオマージュとして書かれた「奇想」短編集。

 恩田陸は長編でなくっちゃ!と思うのですが、これは恩田陸の短編集では今までで最高です。というのも、寄せ集めの作品群ではなく、奇想というテーマに沿って書かれているので、一貫性があるのです。ご本人も「長編として読んでほしい」とおっしゃってるし。

 「一貫性がある」と書きましたが、一つ一つの短編は、それぞれ全く異なります。SFあり、ファンタジーあり、ミステリ風あり、サスペンスあり・・・。15の短編それぞれが全く異なる味付けがされています。私は一時「奇妙な味」の小説というのに凝ったことがあり、こういうのは大好き。

 たとえば、第一話の「観光旅行」。奇妙な村への観光ツアーの話。どこにあるのか、場所も秘密にしている村。なのに、村役場がツアーを組むのはなぜなのか。そして、想像を絶する村の「不思議」。そして迎えるラスト。もうこれ一作で、「恩田陸の奇想ワールド」のとりこになってしまいました。

 好きな話は「蝶遣いと春、そして夏」「夕飯は七時」「かたつむり注意報」「SUGOROKU」。ミュージカルのパロディ「エンドマークまでご一緒に」は笑ってしまいました。書き下ろしの「夜想曲」は、この奇妙な短編集をしめくくるにふさわしい幕切れで、よかったです。

 それにしても、恩田さんが大好きだったという「異色作家短編集」は、複数の作家の「奇想」を集めたものでしょう? 恩田さんはたった一人で、全く味わいの異なる15の「奇想」を書いちゃうんだから・・・やっぱり、すごいです。いつも思うことだけど、恩田さんの頭の中を見てみたい。

 この本、装丁もしぶくて、好きです。

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2007年12月27日 (木)

手紙

1227「手紙」東野圭吾   文春文庫   ★★★★

 弟の進学資金に・・・そう思って盗みに入った武島剛志は、はずみで人を殺してしまう。弟の直貴は、その日から「強盗殺人犯の弟」として生きることになった。刑務所の兄から毎月届く手紙。しかし、それは直貴を「殺人犯の弟」という立場に縛り付けるものになっていった。犯罪を犯した者は、その家族は、許されることはないのだろうか・・・。

 白状します。泣けませんでした。

 すごく重い話のようで、ずっと読むのをためらっていたのですが・・・思い切って読んでみました。「ハンカチが必要」と以前誰かに言われましたし、文庫の帯にも「涙の大ベストセラー」とかあるんですが。人一倍涙腺の弱い私が、泣きませんでした。

 なんか、「感動」とかしてる場合じゃない気がして。すごく、考えてしまったのです。罪を犯すということの意味について。

 直貴のもとに来る剛志からの手紙には、本当にイラッとさせられました。何を一人で罪を償ってる気になってるんだよ!と思って。直貴のことはかわいそうだと思ったし、彼が差別を受けるたびに苛立っていたのですが。

 直貴の就職先の社長・平野の言葉「差別はね、当然なんだよ」というのに愕然としてしまったのです。そこから先は、自分の価値観が揺さぶられて、くらくらしながら読んでいました。そして、剛志が書いていたある手紙。なんというか・・・自分の中でどう受け止めていいのか、いまだによくわからずにいます。

 誰が正しいとか正しくないとか(もちろん、殺人は正しくないけど)、簡単に結論が出ないこういうテーマを、よく取り上げたなあと・・・東野さんのその勇気に敬意を表したいです。これ、被害者側から描いたら、また全く違うドラマが展開しますよね。あえて加害者側から「罪」を描くのがすごいな、と。それも、容赦なく。ラストだって、直貴にしろ剛志にしろ、何か救われたわけではないので。

 先日、映画が地上波でも放送されてましたけど、私は見ていません。映画ではどんなふうに描かれていたんでしょう。

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2007年12月23日 (日)

ひとがた流し

「ひとがた流し」北村薫   朝日新聞社   ★★★★★

 初読の感想は1000「ひとがた流し」

 NHKでドラマ化したのを初回だけ見ました。原作を知らなければそれなりにいいドラマだったと思うのだけど・・・見ながら「なんか違う」とずっと思っていて。千波たちが「友情」とか「友達」とか、こんなに口にしたかしら?と。で、気になってしょうがないので、再読してみました。

 初読の時は、感動してボロボロ泣きまくったのですが、再読したらどうなるかなあ~と思っていました。あの当時と、今とでは、私の立ち位置も微妙に違ってきているので。

 で、再読。結論として、初読の時ほど大泣きはしませんでした。前は千波にぴったり寄り添って読んだ感じでしたが、今回は牧子や美々の方に近いポジションだったかもしれません。千波を取り巻いている人たちの営みや大きな愛情が、ひしひしと感じられました。

 牧子たちのことを友達だと思いながらも孤独を感じていた千波。牧子や美々は、それをどう感じていたんだろうとか・・・。「家族」と「友人」の違いとか。いろんなことを考えながら読みました。

 ドラマみたいに友情の安売りはしてない、むしろ素っ気ないほどの千波と牧子と美々の関係ですが、私にはすごくこの距離感はわかるし、私でもやはりこうするだろうなというところが多かったです。だから、千波のこの言葉が、とても印象的でした。

「……でも、今、考えれば、そんな時でも、あなたが……この世のどこかに、確かにいてくれるってことが、ずっと……わたしの、支えだった。」

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2007年12月12日 (水)

REVERSE

1222「REVERSE」石田衣良   中央公論新社   ★★★

 ファッション関係の輸入商社で働く丹野千晶。仕事は順調。でも、彼女のいちばんの楽しみは、「アキヒト」という男性になって、「キリコ」という女性とメールすること。性を偽っていることにかすかな罪悪感はあるけれど、キリコとは心が通じ合っている、と感じている。

 ところが。「キリコ」は、実は大久保秀紀という男性。お互いに実体を知らぬまま、心の距離を縮めていく二人は、とうとう「会いたい」と思うようになり・・・。

 ありがちというか、できすぎというか・・・なんともいえない設定なのですが、それぞれの「リアル」とネットでのやりとりがそれなりにおもしろかったです。

 ネットで心が通い合っていると思った二人が実際に会ったらどうなるのか・・・?というのは、今では珍しくない状況だと思います。しかも、これは男女逆転というややこしい状態になっているので、話はちょっと複雑に。まあ、二転三転ののちに、なんとなく収まるべきところに収まる・・・という感じですが。

 ただ、やっぱり、石田衣良の描く女性が、私は苦手なのだと再認識してしまいました。リアルじゃないんですよ。「そんなこと言う女なんていないよ~」と思ってしまうのですね。うーん。私が合わないだけかもしれませんが。

 

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2007年12月10日 (月)

予定日はジミー・ペイジ

1221「予定日はジミー・ペイジ」角田光代   白水社   ★★★

 子どもができた。なのに、ちっともうれしくない。夫は手放しで喜んでいるけれど。どうしても、幸せな気分になれない。こんなんでいいんだろうか・・・。

 妊婦日記といった感じの小説。妊娠しても、全然テンションあがらない・・・どころか、産婦人科で「おめでとうございます」と言われても「めでたいですかねえ」なんて言ってるマキが主人公。

 前半のマキのテンションの低さが、最初はしんどかったです。でも、マキの気分のアップダウンとか、読んでいるうちにだんだんと心地よくなってきて・・・。私は未婚だし、出産経験もないのでわかりませんが、こういうもんなのかしら?と思ったり。

 で、驚いたのは、これが全くの「小説」だということ。私、角田さんが自分の経験をもとにした書いたのかなあ?と思ってました。想像でこういうことが書けるんだ! 小説家ってすごいなあ・・・と、しみじみ。

 角田さん自身が書いた挿絵もあって、それがいい味出してて好きでした。

 角田作品マイベストは「対岸の彼女」です。あれを読んだ時ほどの感動はありませんでしたが、ふっと心にひっかかる場面がいくつかあって、けっこう好きです。

「最後の次は、なにもないんじゃなくて、はじめての何かがやってくるのだ。」

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2007年12月 3日 (月)

やってられない月曜日

1217「やってられない月曜日」柴田よしき   新潮社   ★★★

 大手出版社にコネ入社して数年。高遠寧々は、150分の1スケールのドールハウス模型を作るのが趣味。仕事は、まあそこそこ。友人は、同期コネ入社の弥々。恋人なし。コネ入社ということで、冷たい視線で見られるのが不満なのだけれど・・・。

 最初は、寧々のキツイというか、余裕のない性格が、ちょっと前の自分を見ているようで、嫌でしかたなかったです(苦笑)あんた、そんなカリカリしなくたって・・・と、自分も思われていたんだろうなあ・・・とか、読みながら考えてしまって。

 でも、いろんな出来事を通して、寧々が少しずつやわらかく優しくなっていくのが心地よかったです。けっこう、楽しんで読みました。会社というのは、私には未知の世界なんですが。

 寧々のいとこの翔子が強烈なキャラで、かなり好きでした(笑)

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2007年11月29日 (木)

孫文の女

1216「孫文の女」西木正明   文藝春秋   ★★★

 孫文の日本滞在中、彼の身の回りの世話をしていた浅田ハル。しかし、数年ののち、孫文は別の女性・大月薫と婚約していた。薫は孫文の子を産んだが、二人が結婚することはなく・・・。

 「アイアイの眼」「ブラキストン殺人事件」「オーロラ宮異聞」「孫文の女」の4編。

 あとがきによると、「わたしは長い間、この狂瀾怒濤の時代に生き、自らはまったく意図せず、あるいは気がつかないままに、歴史の裏側から祖国の、さらに黎明期の東アジアの運命を左右するような他つばに置かれた日本女性を書いてみたいと思い(以下略)」・・・というわけで、実在した女性の資料を集め、書かれたもの。

 ドラマ以上にドラマティックな話ばかりなのですが、こんな女性たちがいたという事実に、まず圧倒されます。そして、無力でありながら、なかなかにたくましい彼女たちの姿が印象的です。娼婦だったり、愛人だったり、馬賊の頭目(!)だったりと、立場はそれぞれ違いますが。

 たまたま「中原の虹」と同じような時代の話を読んでしまいました。浅田次郎が描くところの張作霖や孫文とはまた違う描き方で、それも興味深かったです(というか、浅田次郎の描き方の方がイレギュラーだよなあ)。

 

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2007年11月11日 (日)

The MANZAI 4

1209「The MANZAI 4」あさのあつこ   ピュアフル文庫   ★★★

 「相談したいことが」・・・大好きな恵菜に言われて舞い上がる歩。ところが、現実はそうそう甘くない。秋本との漫才コンビ「ロミジュリ」は、不本意ながら好評なのに、歩の恋は思うに任せず・・・。

 4巻は、「恋」です。ラブです(笑) 3巻以上に恋がテーマです。

 高原と森口はつきあいはじめ、蓮田と篠原もいい感じに。それなのに、歩は恵菜が好きで、恵菜は秋本が好きで、秋本は歩が(?)という三角関係は相変わらず。そういう状況下での出来事に、歩たちは一喜一憂するわけで。

 今回、物語のほとんどが歩の部屋で、秋本たちとしゃべっている状態で展開します(夏祭りのロミジュリ漫才の回想はありますが)。だからこそ、ラストの夕暮れのシーンは印象的。

 秋本と歩の素の状態でのボケ・ツッコミ・トークは、今までで一番すごいです。もう、しつこいくらい。でも、歩がここまで楽にしゃべれるようになってきた・・・ということに、ちょっとホッとします。そして、ずっとおふざけ状態でしゃべっていたからこそ、クライマックスで秋本がふざけていないところが、なんとも言えずよかったです(一瞬だけどね)。

 歩視点で描かれているので、どうしても歩中心で話が進みますが、秋本がもっている影の部分(彼が決して表面に出そうとしない部分)が、非常に気になる私でした。

 

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2007年11月 5日 (月)

まぼろしハワイ

1207「まぼろしハワイ」よしもとばなな   幻冬舎   ★★★★

 父を亡くしたオハナは、父の奥さんだったあざみさんと、ハワイにやってきた。父の思い出がたくさんあるハワイ。自殺した母との思い出があるハワイ。あざみさんの育ての親がいるハワイ。まぼろしのように美しい島で、オハナは夢のようにゆったりとした時間を過ごす。

 表題作のほか、「姉さんと僕」「銀の月の下で」を収録。

 ばななさんの作品には、海外を舞台にしたものも多いけれど、これはいずれもハワイが舞台。何かを失った人たちが、南の島で、泣いたり笑ったりして、心を満たしていく物語。

 私はハワイに行ったことがないけれど、南の島の開放感とか、この世のものとは思えないほど(そう、「天国ってこんな感じ?」と思う)美しい景色とか、その中にいて、気持ちが恐ろしいほど純粋になっていく感じは、わかります。私のそういう経験は沖縄で・・・ハワイとはまた違うんだろうけど。

 だから、この物語に登場する人たちが、日常では有り得ない気持ちの変化を経験するのって、わかるような気もするし、すごくあこがれる部分があるのです。

 ばななさんは、5年かかってこの短編集を完成させたらしい。実際に、何度もハワイに足を運んで。だから、ここに描かれているハワイは、ものすごく説得力があります。

 ばななさんの小説を読むと、いつも「ああ、またこのパターンか」と思ってしまうところがあって。でも、それをすごく求めている自分にも気がつくのです。たとえば、オハナのこんな言葉を。

「もしかして、人ってそういうものなんじゃないの? どこまでもひとりぼっちだけれど、どこまでもだれかといっしょにいられるんじゃないの? そういうふうにうつくしくつくられているんじゃないの?」

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2007年10月27日 (土)

天使の梯子

1204「天使の梯子」村山由佳   集英社文庫   ★★★★

 慎一は、高校時代憧れていた担任の夏姫に偶然再会した。八歳年上の彼女に、どうしようもなく惹かれる慎一。夏姫もそれを受け入れてくれたが、夏姫には忘れられない男がいるらしい。不安と焦燥に駆られる慎一は・・・。

 ものすごく久しぶりの村山由佳です。「天使の卵」の10年後を描いた続編。あの時、彼氏・歩太を8歳上の姉に奪われた夏姫が、今度は8歳下の男性に愛される・・・という物語。

 読んで、納得しました。これは、書かれるべくして書かれた物語なのだ、と。「天使の卵」は、とても美しく完結した物語でしたが、歩太のため、夏姫のためには、「天使の梯子」jは必要な物語でした。

 私はもともと、村山由佳の描く女性は、春妃タイプよりも、たくましい夏姫タイプが好きだったので、夏姫のことはずっと気になっていたのです。だから、夏姫が本当に解放されたクライマックスは、とてもよかったです。時間がたったからもういいんだ・・・ではなくて。夏姫が春妃や歩太のことを憎む気持ちも肯定した上で、そこを乗り越えるというのが、すごく納得できました。子どもみたいに泣きじゃくる夏姫といっしょに、思わず泣いてしまいました。

 そんなんできすぎ!と突っ込みたくなるような、ドラマティックな展開は相変わらずですが、それでも、村山さんが「書きたいものを書いている!」というエネルギーを感じるのです。そして、以前に比べると、地に足が着いたというか・・・ああ、村山さんも大人になったなあと(えらそうにすいません)、思った一冊でした。

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2007年10月25日 (木)

はじめての文学 重松清

1203「はじめての文学 重松清」重松清   文藝春秋   ★★★★

 少年野球チームの監督をして6年間。最後の試合を迎えた徹夫は葛藤していた。息子の悟を試合に出すかどうか・・・。6年生だけどへたくそな息子を、親としての情で試合に出すのは抵抗があったからだ。しかし・・・。(卒業ホームラン)

 この「はじめての文学」シリーズはずっと気になっていました。シンプルな装丁も目を引くし。ただ、好きな作家さんのは読んだことあるし、そうでない人のはなかなか手が出ないし・・・で、今まで一冊も読まずにいました。が、重松清本に収録されているのは、すべて未読だったのと、短編ばかりだったので、読みやすそうだと思い、借りてきました。

 「卒業ホームラン」「モッちん最後の一日」「ウサギの日々」「かたつむり疾走」「カレーライス」「タオル」「あいつの年賀状」「ライギョ」の8編。

 いちばん好きだったのは、「卒業ホームラン」。この感じは、誰でも書けそうでいて、重松さんにしか書けない気がします。「がんばってもいいことないじゃん」という娘の典子の存在が、苦いんだけど効いています。

 サッカー部の話の「ウサギの日々」と、祖父の葬式を描いた「タオル」も好きでした。

 重松さんの、人を見る視線の優しさが胸にしみる物語でした。

 

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2007年10月 8日 (月)

ハチ公の最後の恋人

1198「ハチ公の最後の恋人」吉本ばなな   メタローグ   ★★★★

 真夜中のドーナツ屋で、ハチと出会った。家にいられなくて、ハチの家に転がり込んだけれど、ハチの恋人だった人は死んでしまった。「あんたはハチの最後の恋人になる」・・・おばあちゃんの予言に導かれるように、再びハチのもとへ向かったが、ハチと一緒にいられるのはあと1年しかなかった。

 図書館で書架をボーッと眺めていて、ふと気づいたのです。これ、読んでないや・・・。ばななさんの13年前の本。その頃までのは、ほとんど読んだつもりでいたのですが。

 力のあるおばあちゃんを教祖として、家が宗教をやっているマオ。母親は教団の運営にかかりきりで、父親が誰かもわからない。自分を守るために、心をバラバラにしてかろうじてバランスを保っているマオ。そんなマオが、きちんと世界に向き合えるまでが、ハチというちょっと風変わりな男との恋を通して描かれます。

 ばななワールドとも言うべき世界観と文章表現が満載で、詩を読んでいるような気分でした。さらさらと流れていく物語ですが、ばななさんがこの世界で生きていくことを愛していること・・・その大切さを強く強く訴えているのが伝わってきて、ちょっとうるっときました。祈り、とでも言ったらいいんでしょうか。じわっとしみてきました。

「なんでこんなにすばらしいことをみんな、毎日してるのに、みんな特別には幸せそうじゃないの?」

 マオの言葉が心に残りました。

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2007年10月 5日 (金)

てのひらの中の宇宙

1196「てのひらの中の宇宙」川端裕人   角川書店   ★★★★

 妻の今日子は入院中。息子のミライと娘のアスカと三人の生活の中で、僕は忘れていた子供の頃の感覚を再び味わう。「ぼくらは、しなないんだ。ぜったい、しなない。でも、しぬんだ。」・・・子供は、広い広い世界を知っているのかもしれない。 

 ちょっと気になっている作家さん。図書館で見かけたので借りてきました。

 まだ何も知らない。けれど、ものごとを受け止める純粋な心をもっている。そんな子供が、好奇心旺盛にいろんなことを知りたがる。その結果、「真実」とでも言うべきものに到達する。そんな奇跡みたいなことが、実は私にもあったのかも・・・。そんな気持ちで読みました。それにしても、子供の可能性ってすごいです。まさに、無限。

 微妙にノスタルジックな雰囲気と、過剰になり過ぎない温かさが、物語をほんわかと包んでいて、読んでいてとても心地よかったです。少しだけ、せつない感じも・・・。

 私たちは、大人になって、いろんなことを忘れてしまっているのでしょうね。

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2007年9月26日 (水)

奇跡の島

1189「奇跡の島」鷺沢萠・文 稲越功一・写真   角川文庫   ★★★

 「この風景を忘れないでいような」・・・彼の言葉は、何度もマリアの耳によみがえる。どれだけ時間がたっても。
 奇跡は決して起こらないから奇跡なのだ。そう思わないではいられないのに。

 稲越さんの写真と、鷺沢さんの小説のコラボレーションってことでいいんでしょうか。文庫なのにフルカラー。ちょっとぜいたくな一冊です。
 なんとも言えない雰囲気のある写真と、とってもせつないラブ・ストーリー。この物語はごく短いのですが、よけいなものがそぎ落とされているぶん、かえって人を恋うるギリギリの気持ちが印象的です。鷺沢さんらしいです。
 文庫化された当時に買って読んで、久しぶりに再読しました。今の方が、マリアの過去やその思いが、切実に感じられます。写真もとっても素敵なので、しばし見入ってしまいました。

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2007年9月25日 (火)

ほたる館物語1

1187「ほたる館物語1」あさのあつこ   ピュアフル文庫   ★★★  

 温泉町にある老舗旅館「ほたる館」の一人娘・一子は小学5年生。なんでもはっきり言わないと気がすまない性質の一子は、仲良しの雪美とけんかしてしまうのだが・・・。

 
解説の佐藤多佳子さんによると「ヤング・アダルトではない、正統派の児童書」。あさのさんのデビュー作です。
 一子の白黒はっきりつけなきゃ気がすまなくて、おなかにためておけない性格が、気持ちいいです。いや、いいことばっかりじゃなくって、人にもそれを要求するので、トラブルになったりするんだけど。一子のまっすぐさは心地よいです。
 それから、ほたる館の面々。女将のおばあちゃんと、若女将のお母さん。天才的な腕をもつ板前のお父さん。この3人をはじめ、一子を取り巻く大人たちも魅力的です。
 わけあり風の客が来る「土曜日のほたる」と、元芸妓を母にもつ雪美との友情を描く「雪美ちゃん」の2編。それぞれで、素朴でまっすぐな一子が、生き生きと描かれています。
 これ、妙な改訂なんかしないで、発表当時のままでいいと思うんですけど。へたに「現在」の話にしてしまうと、かえって違和感があるんですが・・・。

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2007年9月21日 (金)

ジェニーの肖像

1179「ジェニーの肖像」ロバート・ネイサン   偕成社文庫   ★★★

 画家のイーベンは、ある冬の日、美しい少女・ジェニーと出会う。時の流れを超越したジェニーは、ときおりイーベンの前に姿を現し、二人は強く惹かれあうのだった。

 
梶尾真治に、この作品へのオマージュがあり、そのイメージで読み始めたのですが・・・。かなり、違いました。
 時間の流れが違う恋人、しかもごくたまにしか会えない・・・という設定は、せつなさ感がたまりません。恩田陸の「ライオンハート」をSFメロドラマと呼んでいますが、これもまさにメロドラマ風。とはいえ、単なるベタベタな恋愛小説になっていないところは、私好みでした。
 ただ、全体的に文章が詩的すぎて、ちょっと世界に入っていけなかったかなあ、と。
 クライマックスの津波の部分は劇画調で、これどうよ・・・という感じでしたが、ラストがよけいなものをそぎとってストンと終わっていて、いっそ清々しかったです。

ときわ姫 > まゆさんは水野英子という漫画家さんを知ってますか?もうずいぶん昔ですが「セシリア」というマンガがあり、読んだときとても感動しました。「ジェニー~」のストーリーのままだったことにはその後気がつきました。私はマンガの方を先に読んだのでした。当時はあまりマンガと版権について厳しいことを言ってなかったので、もしかして無断でやったのかもしれません。実は原作よりそのマンガの方が素敵だったと今でも思います。 (2007/09/22 13:30)
まゆ > ときわ姫さん、水野英子さんは知っていますが、その漫画は読んだことがありません。そうなんだ~。この話、設定はとてもロマンティックなのですが、文章が観念的すぎて・・・。ちょっと苦手でした。 (2007/09/22 18:31)

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2007年9月16日 (日)

包帯クラブ

1176「包帯クラブ」天童荒太   ちくまプリマー新書   ★★★★★

 高校生のワラは、学校をさぼって病院の屋上で町を眺めていた時、ディノと出会った。ディノが屋上の金網に包帯を巻いた時、ワラの心の傷が少し癒された気がした。
 それがきっかけで、ワラは「包帯クラブ」を作ることを思いつく。


 
映画化されましたね。買ったまま積読していたのを思い出して、探し出しました。天童荒太ってすごく好きなんですが、同時にすごく痛いので・・・読むのをためらっていたのです。
 早く読めばよかった!と思います。「永遠の仔」なんかに比べるとサラッと書かれていますが、心に響いてくる感じは、さすが天童荒太!そして、後味も悪くない。とっても気持ちいい物語です。
 その傷の深さは、本人にしかわからない。だから、その傷に関係のある場所に包帯を巻いて、「傷の手当て」をする。荒唐無稽にも思える行為ですが、「ああ、そんな方法があったのか」と思いました。思わず、私も包帯巻きに行こうかと思ってしまった(笑)
 「包帯クラブ」設立にいたる経緯をワラが報告し(この時点で、ワラたちは大人になっているらしい)、それに対して他のメンバーからコメントがメールで届く・・・という構成も、とってもよかったです。特にも、最後のディノに関わる部分は。
 ワラたちが、大人になって、それぞれにたくましく生きているのが、なんだかすごくうれしかったです。傷を負っても、手当てしながら、強く生きていけるんだよな、と。

さくら > 私も覚悟して読んだのですが、重くなくてとても素敵な青春ものでしたね!大人になってからのエピソードが効いていてラストも気持ちよくて好きです。
映画も早速見てきました。柳楽くんは今までのイメージとガラリと違うので最初「ちょっと・・」と思ったのですが好演していて素敵なディノでしたよ~ (2007/09/21 12:15)
ほっそ > こんにちは。私もこの本を読みましたが、もう少し若いときに読みたかったと、歯がゆい思いでした。傷つきながらも大人になった彼らに、暖かい拍手を贈りたいと思います。 (2007/09/21 19:13)
まゆ > さくらさん、レスありがとう!最近、気が滅入っていたので、見逃さずレスをつけてくれたのが、すごくうれしかったです。
さて、これは映画のCMを見て、「なんかよさそう」と思って読み始めました。すごく、好きな話。ワラとディノ、うまくいってほしいなあ。 (2007/09/21 19:39)
まゆ > ほっそさんも、レスありがとうです!私も、もっと若いときにこれを読みたかった!そうしたら、癒されたこと、もっとあった気がします。ワラたちがすごく素敵な大人になっていることが、とてもうれしかったです。 (2007/09/21 19:40)
青子 > まゆさん、私もこれ好きです♪ 世の中には、包帯を巻くことだけで癒されないことがたくさんあるけれど、彼らの行動は清清しく感じました。まゆさんの<私も包帯巻きに行こうかと思ってしまった>に納得します。 (2007/09/21 20:17)
まゆ > 青子さんもありがとう!包帯巻いたってどうしようもないんだけど・・・その行動が、きっと人の心の救いになるのですよね。 (2007/09/21 20:26)

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2007年9月 9日 (日)

反自殺クラブ 池袋ウエストゲートパークⅤ

1172「反自殺クラブ 池袋ウエストゲートパークⅤ」石田衣良  文春文庫  ★★★

 頻発する集団自殺。それを止めようと活動している反自殺クラブの三人に、協力を要請された池袋のトラブル・シューター、マコト。インターネットの掲示板で、自殺を呼びかけるクモ男を追ったマコトたちは・・・。

 IWGP5作目。文庫買いしてるのですが、Ⅳの「電子の星」を読んだのはいつだったかな?と調べてみたら、ちょうど2年前でした。2年のブランクがあっても、マコトは相変わらず。物語世界に、何の違和感もなく入っていけます。
 初期の頃の石田衣良には、ものすごくはまったのですが、最近は「う~ん、なんか違う・・・」と思うことが増えていて。特に恋愛ものは。石田衣良熱は冷めたかな・・・という感じでしたが、これはよかったです!

 表題作を含む四つの短編。いつものことながら、「現在」起こっている出来事を題材にしたもので、後味がいいものばかりではありません。救いようがない、というか。その事件に巻き込まれたマコトが、傷つきながらも軽快な足取りで事件を解決していく過程がよいのです。
 マンネリといえばそうですが、それでも読みたくなってしまうんです。このシリーズだけは読み続けようと思います。

kanakana > 私も石田衣良の恋愛小説は「うーん。。。」と思います。短編はそうでもないんですが、長編はダメですね。登場する女性が共感できなくって。。。「下北サンデーズ」は読まれましたか?恋愛小説でないせいか、最近の作品の中では私が面白いと思った1冊です。 (2007/09/09 21:30)
まゆ > kanakanaさん、そうそう、女性に共感できないんですよ!「いねーよ、こんな女!」と思ってしまう・・・。
「下北サンデーズ」は未読です。ドラマはちょこっと見ましたが。文庫化されたら読んでみようと思ってます。 (2007/09/10 20:31)

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2007年9月 7日 (金)

明日この手を放しても

1171「明日この手を放しても」桂望実   新潮社   ★★★ 

 事故で視力を失った凛子は、漫画家の父と、兄との三人暮らし。看護師だった母は、半年前に事故で亡くなった。
 潔癖症で完全主義の凛子は、母の代わりに家事をしようと、歩行訓練を始めた。兄の真司は、凛子のつらさを全くわかろうとしない。そして、父までがいなくなってしまい、心の通わない兄妹だけが残された。


 
1995年から2006年までを、兄妹交互の視線で語った物語。

 会話文多目の文章で、テンポよく読みやすい。桂さんの本は「県庁の星」しか読んでませんが、あちらもそういう印象でした。
 今回は、主人公の一人が視覚障害者という設定でしたが、必要以上に深刻ぶることもなく、時間の経過とともに、凛子も真司も成長していく姿を、心地よく読めました。
 杓子定規なところのある凛子の心が柔軟になっていく過程とか。文句ばっかり言ってた真司のいいところが見えてきたり。父の失踪を契機に、兄妹の心の距離が縮まっていくのです。
 ただ、気になったのは、その父のこと。結局、どうなったのか、わからないままなんですよね。いったいどうしちゃったのか、そこだけは決着つけてほしかったです

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2007年9月 5日 (水)

マジカル・ドロップス

1170「マジカル・ドロップス」風野潮   光文社   ★★★★

 15歳の時、タイムカプセルに入れた缶入りドロップ。真由美は言った。「15歳に戻れる魔法の薬。効き目は2時間17分」・・・時が過ぎ、亡くなった真由美に代わり、菜穂子の元に、そのドロップが返ってきた。食べたとたんに、42歳の菜穂子は15歳になってしまい・・・。

 
風野さん初の「児童書」じゃない小説・・・なのかな?荒唐無稽な話と言われればそれまでですが、私は好きでした。
 42歳の主婦、子供2人の菜穂子が、ドロップを食べるたびに15歳になって(ただし、2時間17分限定で)、息子のバンドにボーカルとして入っちゃう(笑) バンド仲間には告られるし、初恋の人とは再会しちゃうし、ボーカルとしても大活躍しちゃうし・・・夢のような話なのです。
 軽めのノリのようでいて、その時々の菜穂子(ナオ)の気持ちがとてもリアルで、説得力があるのです。一緒になってドキドキしたり、悲しくなったり、せつなくなったり。風野作品の最大の魅力は、この感情の揺れのリアルさだと思うのですが、これもまさにそうでした。
 ラストのあたりでは、北村薫の「スキップ」をなんとなく思い出しました。展開は全然違うんですが。菜穂子の夫の対応とか。
 15歳になって楽しんで終わり!じゃなくって、42歳の菜穂子や子供たちが変わっていくのがよかったです。

すもも > こんにちわ。>風野作品の最大の魅力は、この感情の揺れのリアルさ、まさにそうですね。ずっと感じてたことを、まゆさんが上手く文章に現してくださったので、すっきりしました(^^)「スキップ」わたしも連想しちゃいました。 (2007/09/08 11:34)
まゆ > すももさん、家族が菜穂子を受け入れてくれるあたりとか、年下の子に告白されるあたりが、なんとなく「スキップ」とダブったのです。あれも大好きな話なので。 (2007/09/09 20:07)

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2007年9月 2日 (日)

黄色い目の魚

1169「黄色い目の魚」佐藤多佳子   新潮文庫   ★★★★★ 

 家族とうまくいかないみのりは、漫画家の叔父の家に入り浸っていた。同級生の木島は、一度だけ会った父親にひかれるように、絵を描いていた。
 美術の時間、木島がみのりのデッサンをして以来、二人の世界が交錯し始めた。友達というには強い、でも、つきあっているわけでもない。名づけようのない思いに、二人の心は揺れる。


 
積読してました。職業柄、中学生や高校生が主人公のものは、どうしても読む気になれない時があります。今はふっとスイッチが入った感じで、手に取りました。
 「絵」を媒介にして、互いの存在を強く意識するようになったみのりと木島。もっとも、みのりは叔父の通ちゃんが大好きで。木島にも憧れてる人がいて。最初は恋愛感情なんてなくて。木島にはみのりのとってもキレイなところが見えていて。みのりにも、木島のとってもピュアなところが見えていて。当然、惹かれていくでしょう?と思うのだけど、その過程が、実によいのです。
 木島が、ロクデナシの父親とたった一度会った日を描いた「りんごの顔」。中学時代、すべてにイライラして、いろんなものが大嫌いだったみのりを描いた「黄色い目の魚」。この2編が、高校2年になった二人の物語に、じわじわと効いてくるのです。
 親にサッカークラブに連れて行かれ、テッセイに対抗するように絵を描いていた木島が、自分の意志でサッカーをし、絵を描く道を模索し始める。嫌いなものばっかりだったみのりが、「好き」なものを見つけられるようになる。その変容が、実にゆるやかに、自然に、描かれています。
 みのりが見つけた「好き」の一つが木島。そして、木島も・・・。この恋は、読んでいて、胸がキュウッとなるくらい、せつなかったです。この年になって、こんな思いに共感するとは思わなかった(笑)まっすぐに見つめ合う二人の姿が、とても好きでした。

 木島のサッカーの場面も、かなり好きでした。へたくそなゴールキーパーが悪戦苦闘する姿が。

「マジになるのは恐かった。マジになると結果が出る。自分の限界が見えちまう。マジで勝負をしなければ、なくすものもない。負けてみすぼらしくなることもない。すべて曖昧なままにしておけば、誰に何を言われてもヘラヘラ笑っていられる。」

 みのりは、木島のこういう気持ちを許さない存在なのです。佐藤多佳子さんも、そういう方なのだろうなと思います。私は、佐藤さんのそういうところが好きなのです。

three bells > まゆさん、スイッチはいってよかったですね♪佐藤さんサッカーに詳しいな~とこの頃から感心していました。
純粋、純真、まぶしい小説でした。 (2007/09/02 20:26)
まゆ > three bellsさん、読めてよかったです。こういう物語に感動する気持ちは、いくつになってもなくしたくないなと思いました。 (2007/09/03 20:13)

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2007年8月24日 (金)

モデラートで行こう♪

1166「モデラートで行こう♪」風野潮   ピュアフル文庫   ★★★★

 元男子校だった高校に入学した奈緒は、かっこいい男の子につられて、吹奏楽部に入った。その少年は実は・・・。
 
 
「ビート・キッズ」の風野潮さんの、いかにも「らしい」吹奏楽もの。奈緒をはじめ、女子吹奏楽部員8人の、それぞれの視点で物語が進行します。
 一つ一つのエピソードは短くて、あっさりしすぎているのは否めません。が、そこに書かれている「女の子の気持ち」が、とってもよいのです。ああ、わかるわかる、と(笑)演奏のこともだけれど、先輩への恋心とか。奈緒が片思いの先輩に手編みのマフラーとメルアドを渡したけど、メールが来ない・・・というくだりなんか、特に。
 「ビート・キッズ」もそうでしたが、読んでいると、楽器を演奏できるのって気持ちいいんだろうなあと思います。私も吹奏楽部に入りたかったんですが、音楽的な才能が決定的にないので、あきらめたんですよね・・・。でも、リズム感ないのに、リズムを口ずさみながら必死でドラムを叩くノリコの姿に、私もあきらめなきゃよかったのかなあ~と思わされました。

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2007年8月20日 (月)

中等部超能力戦争

1165「中等部超能力戦争」藤野千夜   双葉社   ★★★

 小清水さんにちょっとでも意地悪すると、急に気分が悪くなったり、床下からガタガタ音がしたりする・・・。
 おかしな力をもっていると噂の小清水さんと親しくなったはるか。だけど、小清水さんが書いた小説が、二人の友情にヒビを入れて・・・。


 
初・藤野千夜です。気になってたけど読んだことない、という作家さん。
 まず、非常に読みやすかったです。イマドキの女子高生の言葉遣いには疲れますが、そこはおいといて。すごくいいテンポで話が展開していきます。
 そして、語り手のはるかも、キーパーソンの小清水さんも、どこにでもいそうでいないタイプ。だけど、リアル。裕福な家庭に生まれて、ふわふわと幸せに育ち、それなりにしたたかなはるか。強烈な自意識をもっていて、自分の世界を構築している、だけど世間からはどこかずれている小清水さん。この二人が仲良くなり、そしてずれていく感じが、すごくよくわかりました。たぶん、女性なら、「ああ、こういう時期ってあるよね」と思えるのでは。
 小清水さんだけじゃなくて、女の子なら誰もがもっている強い自意識。やっぱりそうだった10代の頃のことを思い出しました。

nanao > >女の子なら誰もがもっている強い自意識
男子には分からない、怖い一面を知らされました。
中等部だからこその作品ですね
(2007/08/21 23:23)
まゆ > nanaoさん、男性にはちょっとわからない世界でしょうね。私は共感できるところが多かったです。中学・高校という、この時期だから成立する物語ですね。 (2007/08/22 21:05)

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2007年8月19日 (日)

ぼくは悪党になりたい

1164「ぼくは悪党になりたい」笹生陽子   角川文庫   ★★★★

 エイジはシングルマザーの母と、異父弟のヒロトとの三人家族。母が海外へ仕事に行っている間、ヒロトが水ぼうそうに。困ったエイジは、母の知り合いらしい杉尾に助けを求めた。予想外にいい人な杉尾と接するうちに、エイジはある疑問を抱き始める。杉尾はヒロトの父親じゃないのか・・・?

 
今までの笹尾作品(文庫化されたもの限定)で、これが一番好きです。
 普通の、というよりも、普通よりももっと落ち着いた若年寄みたいなエイジが、どんどん壊れていっちゃうのですが。それが非常に淡々と描かれています。でも、よくよく考えてみれば、エイジが我を失ってしまうようなショックな出来事があったわけで。そのあたりをサクサクッと書いてしまう笹生さんのバランス感覚が好きですね~。
 奔放な母とわんぱく盛りの弟のために、家事全般引き受けるというけなげな高校生が、人生最大の衝撃を受けて、「悪党」になっちゃう。エイジ、どこまで行っちゃうんだよ?と思いつつ、最後の収束の仕方もお見事でした。
 感動的な親子の心の交流なんてのもないけど、ラスト一文の締め方がとても好きでした。

three bells > 遅ればせながら5周年おめでとうございます!
笹生さん、男の子をうまく書いている人だと思います。
エイジの壊れ方が半端じゃなくってドキドキしました。奔放な母にも憧れます。 (2007/08/21 20:30)
まゆ > three bellsさん、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
笹生さんの描く男の子は、なんでもないようでいて、ちょっといいですよね(笑)エイジの壊れ方には私もドキドキしました。ユリコさんと「彼」は、昔どんな恋愛をしたんでしょうね~。 (2007/08/21 20:41)

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2007年8月14日 (火)

グラスホッパー

1160「グラスホッパー」伊坂幸太郎   角川文庫   ★★★

 元教師の鈴木は、妻を殺した男に復讐するために、ある会社に入った。ところが、その男は、鈴木の目の前で「押し屋」により、車にひかれてしまう。鈴木は押し屋を追う。
 一方、自殺させるのが専門の鯨と、ナイフ使いの蝉も、押し屋を追う。

 伊坂作品は文庫で読んでいるので、ようやくここまで到達しました~という感じなのです。
 で、これはかなり苦手な部類でした。鈴木、鯨、蝉の三者からの視点で、それぞれ物語が進み、さらにその三者が交錯するおもしろさというのは確かに感じたのですが・・・。容赦のない描写とか、冷徹な感じも、今までの伊坂作品にもあったことなので、どうして今回はこんなに「苦手」だと感じるのだろうと不思議だったのですが。
 杉江松恋さんの解説で納得しました。これって、伊坂流ハードボイルドだったのですね。私、ハードボイルドは苦手なんです。
 ただ、ラストシーン、駅のホームでのあの兄弟とのやりとりは、ちょっとだけなごみました。あれがなかったら、つらかったです。

さくら > 大好きな伊坂さんですが、これはちょっとキツかったですね~。重くてもいいのだけれど、もっと違った展開であって欲しかったです。 (2007/08/17 15:03)
じょせ > まゆさん、こんにちは。確かに最後の駅のシーン、あれがなかったらもっと評価は低かったですね。私も3でした。 (2007/08/17 17:10)
青子 > まゆさん、私もこれ落ち込みました。ダークですね。ラストのどちらが現実でどちらが小説か?の問いかけにぞっとしました。 (2007/08/17 20:15)
わった > 私の初井坂がこの作品でした。ダークな内容ですが、鈴木がダークになりきれずにいるところがさわやかでした。「劇団」が一番ひっかかる職業で今でも気がかりです。 (2007/08/18 12:39)
まゆ > さくらさん、伊坂作品のもってる重くて暗い部分が前面に出てきたようで、ちょっと苦戦しました・・・。 (2007/08/18 16:18)
まゆ > じょせさん、あの駅のシーンでやっと息がつけたような気がしました。あれがなかったら、★1個減ってたかもしれません。 (2007/08/18 16:19)
まゆ > 青子さん、ダークでもいいんですけど、救いがないような気がして、読み終えて複雑な気分でした。 (2007/08/18 16:20)
まゆ > わったさん、「劇団」はいろんな意味ですごいですね。伊坂作品はリンクが多いけど、どこかでまた出てきたりしないでしょうかね。 (2007/08/18 16:21)

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2007年8月13日 (月)

クライマーズ・ハイ

1159「クライマーズ・ハイ」横山秀夫   文春文庫   ★★★★

 昭和60年8月12日。御巣鷹山に日航機が墜落。
 未曾有の惨事に直面した地元・北関東新聞では、遊軍記者の悠木を全権デスクに任命した。世界最大の航空事故という大事件に立ち向かった記者たちは・・・。

 積読していました。あの事故に関するものは、読むのに気合がいるからです。読むぞ!という気持ちができあがらないと、読み通せない。今回、1年以上かかりました。
 そして、どうせ読むのなら、8月12日にしよう、と。結局、2日がかりになってしまいましたが・・・。あの暑い夏を思い出しながら読みました(読んでいる間、あの夏以上に暑かったですが)。

 さて、主人公の悠木は、ひとくせある人物です。決して「いい人」ではありません。息子とはうまくいかず、職場でもちょっと特殊な立場にいる。上司とも同期とも折り合いがよくない。別の部署の安西と山登りをするのが、唯一の息抜き。
 そんな彼が任された「日航機事故全権デスク」。ところが、これが悠木をますます追いつめます。事件そのものの大きさに振り回され、部下たちと軋轢が生じる。記事の扱いをめぐり、上司と衝突。また、突然倒れた安西と、社の派閥争いとの関連もわかり・・・。
 これでもかと悠木を揺さぶる出来事が連発し、きれいごとではない、男たちの闘いが描かれます。
 それでも、人と人との心が通い合う、ほんの短いシーンがとても印象的でした。
 悠木が社を去るかどうかの決断を迫られる場面。佐山の「おれたちの日航デスクは悠さんですから」という言葉に、うるっときました。
 また、衝立岩を登る悠木を助けた一本のハーケンのエピソード。それにも泣かされました。

 あの事故の際、たくさんのジャーナリストが御巣鷹に入ったこと、そこに想像を絶する光景が広がっていたことは知っていました。この物語では、その部分は決して多く書かれていません。が、山から降りてきた記者の異様な興奮や、泥だらけのありさまなど、ものすごくリアルで、説得力がありました。猛暑の中、「こんな暑さの中、記者や救助隊、いろんな人が、道なき道を登ったのだ」と、実感しながら読みました。

mi > まゆさんはちょうどこの事故を思い出す季節にお読みになったのですね。私もこの本、読みました。心にぐっと迫る重みのある作品という印象でした。臨場感があり、ドキドキしながら読み進めたのを覚えています。御巣鷹山の事故の裏にはこのような世界があったのですね。男同士ぶつかりあうことも多かったみたいですが、その中での佐山の言葉に私も感動しました。 (2007/08/16 21:23)
すもも > 読む気合い、なるほどと思いました。読みたいのだけれど、なぜか手が出せない本だったので。体力・気力が充実したら、ぜひ挑戦したいと思いました。 (2007/08/17 11:25)
さくら > 私は手記にかなり泣かされました。この関係の小説を読むと、やっぱり「沈まぬ太陽」を思い出してしまします。 (2007/08/17 15:07)
わった > 私も読みました。焼肉屋でのやり取りや「この先ずっと新聞紙を作ることになる」といったあたりが痺れました。男の人たちは良いなぁ。ちゃんとぶつかり合えて・・・。
現場って、どんな事故でも事件でもすごく特殊な空気を放つものなのでしょう。今年の猛暑の中、新潟の被災者の方々のために黙々頑張った自衛隊の炊き出し班をはじめとする多くの方々に敬意を表します。
一本のハーケンは私も感動しました。父と息子ってそんなふうに繋がっているんですね。 (2007/08/18 12:36)
まゆ > miさん、あの事故当時、ものすごい衝撃を受けて、報道に釘付けでした。横山さんは当時新聞記者ということで、あのニュースを発信する側にいたのだなあ、と思いながら読みました。あの山場での佐山の言葉は、とてもよかったです。 (2007/08/18 16:10)
まゆ > すももさん、あの事故に関するものは、ちょっとかまえてしまうところがあって、「読むぞ!」と思えないとダメなんです。すももさんもぜひ! (2007/08/18 16:11)
まゆ > さくらさん、「沈まぬ太陽」は傑作ですよね。あの事故に関してはフィクション・ノンフィクション問わずいろいろ読んでいますが、これは何気ない描写にすごく説得力があって、印象的でした。被害者の遺書を読んだ時の新聞記者たちの反応・・・きっと、実際にああいうことがあったんでしょうね。 (2007/08/18 16:14)
まゆ > わったさん、悠木をヒーローにしない書き方が横山さんらしいなと思います。だからこそ、あのハーケンが生きるんですよね。 (2007/08/18 16:16)

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2007年8月12日 (日)

私が語りはじめた彼は

1158「私が語りはじめた彼は」三浦しをん   新潮文庫    ★★★★

 多くの女性に愛され続けた大学教授・村川融。彼はいったい誰を愛し、何を求めたのか。

 待望の文庫化です。
 村川という一人の男性を核にして、彼を取り巻く人たちの視点で語られた連作短編。愛とは何か? 家族とは? 幸せとは?・・・それぞれ年齢・性別・立場の違う5人が描き出す物語。
 不思議なのは、村川という人物がいったいどういう人なのか、全くわからないことです。物語の中に登場するのもごくわずか。なぜ彼がそれほど女性に愛されるのか、具体的にはわからないまま。
 彼の周囲の人たちは、彼に振り回されているようにも見えます。妻も、愛人も、娘も息子も・・・。でも、それは村川のせいではなくて、誰もが感じる壁や閉塞感なのかも・・・。
 読んでいて、息がつまりそうでした。登場人物をギリギリまで追いつめていく、緊張感のある文章だったので。ここまで物語をつきつめて書こうとするしをんさんの筆力に、ただただ圧倒されました。

 
 さて、本日で本プロ5周年になりましたー!
 まる5年か~、すごいなあ・・・と、思わず自画自賛(笑)
 三日坊主の私でも、ここまで続けられるものなのだなあと、ちょっと感動してしまいました。
 これもひとえに管理人さん・うら管理人さん、そして、本プロのみなさんのおかげです。ありがとうございました。
 そして、これからもよろしくお願いします。

じょせ > まゆさん、5周年おめでとうございます。三浦しをんさんの作品は多田便利軒~以外に何を読んだらいいものか模索中です。まゆさんの三浦さんのおすすめ作品、あれば是非お聞かせ下さい。 (2007/08/12 12:22)
EKKO > まゆさん、5周年おめでとうございます!もうそんなになりますか・・・(ということは私も来月5周年・・)まゆさんのきめ細やかな感想記事と優しさあふれるレスに、いつもとても励まされています。これからもよろしくお願いいたします。 (2007/08/13 00:30)
わった > 祝☆5周年!本当におめでとうございます。大・大先輩ですね。私はまだまだですが皆さんを見習って本プロ道を歩みたいと思います。これからもよろしくお願いいたします。 (2007/08/13 11:28)
ほっそ > まゆさん、5周年おめでとうございます(*^_^*) 1158÷5=???? 一年200冊以上は、私としてはどう考えてもすごいと思います。これからも楽しみにしています。 (2007/08/13 12:20)
さくら > まゆさん5周年おめでとうございます~♪
・・ということは私も五年過ぎたのか~とはたと気付かされました。でも読んでる量が違う!同じ年数読んできて私の1.5倍は軽い~。
これからも宜しくお願いします!! (2007/08/13 17:47)
まゆ > じょせさん、EKKOさん、わったさん、ほっそさん、さくらさん、レス遅くなってごめんなさい。お盆休みで実家に帰っていました。

じょせさん、ありがとうございます。しをんさん小説のおすすめはたくさんありますが、「風が強く吹いている」「月魚」「秘密の花園」あたりはいかがでしょう。それぞれテイストが違いますが。エッセイもすごくおもしろいですよ。

EKKOさん、ありがとうございます。そうなんです。そんなになっちゃうんですよ。早いですね、5年って。新選組ネタで盛り上がったのが、ついこの間のことのようなのに。これからもよろしくお願いします。

わったさん、ありがとうございます。気がついたら古株になっちゃってますねえ。あまりたいした感想は書いてないですが、これからもよろしくお願いします。

ほっそさん、ありがとうございます。ここ3年ほどは読むペースを落としているんですけどね。恩田陸さんを見習って、年に200冊は読みたいと思ってはいるんですが・・・。これからもよろしくお願いします。

さくらさん、ありがとうございます。そうですよ、さくらさんも5周年おめでとうございます♪ 読書量が多いのは、ヒマだからです(笑)長いおつきあいになってきましたが、これからもよろしくお願いします。 (2007/08/16 17:51)

すもも > まゆさん、5周年、おめでとうございます~。まゆさんの日記、いつも楽しく拝読しています。三浦しをんさんを始め、恩田陸さんの本も、これから読み進めていきたいので、大いに参考にさせてください。これからも、よろしく。 (2007/08/17 11:22)
まゆ > すももさん、ありがとうございます。私の感想が少しでも参考になるならうれしいです。これからもよろしくお願いします。 (2007/08/18 16:07)

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2007年8月 6日 (月)

夢を与える

1156「夢を与える」綿矢りさ   河出書房新社   ★★★

 チャイルドモデルとして世に出た夕子は、やがて芸能界で大ブレイクし、もてはやされる。子供の頃から大人たちの間で育ち、友達もいない夕子は、やがて初めての恋におちる・・・。

 今まで、綿矢りさに★を幾つつけていたかな・・・と、自分の日記を振り返ってみました。「インストール」も「蹴りたい背中」も★2つ。綿矢りさが描く閉塞感やもどかしさみたいなものを理解はできても共感できない・・・と。どうしても、「子どもが書いた小説」って気がしたのです。私はどうも合わないなあと思っていました。
 そして。「蹴りたい背中」から3年たって書かれた「夢を与える」。綿矢さんも大人になったなあという感じです。自分の感覚のままに言葉を連ねるんじゃなくて、きちんと物語の流れを作りながら、描きたいものを形にできるようになった、と(うわあ、私えらそうですねえ)。
 このお話、展開は非常にベタです。筋立てだけなら、30年前でも成立しそう。その中で、主人公・夕子の恐ろしいまでの純粋さと空虚さが、現在(いま)のリアルを感じさせるのです。それが、「夢を与える」というタイトルに結晶されていて・・・物語として、きちんと成立しているのです。
 今までの綿矢作品は、どうしても一歩ひいたところから眺めていたのですが、これは物語の中に入って楽しめました。
 これから綿矢さんがどういう作品を発表していくのか、ちょっと楽しみになってきました。

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2007年7月31日 (火)

バラ色の怪物

1151「バラ色の怪物」笹生陽子   講談社文庫   ★★★

 中学2年の遠藤は、壊れたメガネを買いなおすために、友人の宇崎に誘われてバイトを始める。他校生の三上が代表をつとめる「行動する中学生の会」だ。そのバイトのために、遠藤は夜、こっそり家を抜け出すようになる。
 一方、学校では変わり者の吉川ミチルと言葉をかわすようになった。私服を着て、髪をピンクに染めているミチルは、問題児として有名で、遠藤も初めは敬遠していたが・・・。

 久しぶりの笹尾作品です。
 いつものことながら、何気なく書いているようでいて、読んでいるうちにじわじわ効いてくるのです。
 主人公の遠藤は、中学2年。体がどんどん成長していて、外見はたくましいけれど、気持ちはおとなしい方で、自分でもそのアンバランスにとまどう少年です。
 夏休み明けすぐに、三上とミチルという対照的な二人と親しくなり、遠藤は急激に「変化」していきます。
 そう、「変化」なのです。成長なんて生易しい言葉では表せない変化。変貌といってもいいかもしれません。外見もだけれど、むしろ内面の。遠藤自身、制御しきれないほどの。
 自分をコントロールできない。その状態が、さらりと書かれています。さらりと書いているからこそ、生々しいと思うのは私だけでしょうか。
 読んでいて、三上が登場する場面は息がつまるようで、ミチルの場面はすがすがしい気持ちになりました。

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2007年7月29日 (日)

晩夏のプレイボール

1149「晩夏のプレイボール」あさのあつこ   毎日新聞社   ★★★★

 9回裏。二死ランナーなし。4点差。それでも、まだおれたちは終わっていない。
 肩を痛めて投手から野手に転向した真郷は、この場面で代打に指名された。(「練習球」)

 帯のコピーには、「『バッテリー』の著者が贈る、野球を愛する者だけに見えた10の物語」とあります。
 野球を題材にした短編集。「サンデー毎日」に連載されていたようです。読んでいると、あさのさんがいかに「野球を愛する者」を愛しているのかが伝わってきます。
 どの物語も「甲子園」につながっています。甲子園をめざしている人。甲子園に手が届いた人。最高の夢をかなえた人。挫折を味わった人。これから野球に関わろうとする人。それぞれの人生が、野球と甲子園を通して浮かび上がってくる・・・そんな物語。
 唯一連作になっている「練習球」が、とても印象的でした。
 オーソドックスな小説だと思います。その分、あさのさんが描きたいものがストレートに伝わってきて、心地よかったです。ほかのスポーツでも成立する物語のようでいて、やっぱり野球でなければ、甲子園でなければ、これらの物語は成立しないのです。
 私自身、野球が好きで、甲子園に憧れていました。実際に、野球部が県大会で優勝してくれたおかげで、私も甲子園に行くことができました。あの野球に熱中していた頃のことを、この本を読みながら鮮明に思い出しました。 

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2007年7月26日 (木)

Dojo-道場

1147「Dojo-道場」永瀬隼介   文藝春秋   ★★★

 空手の黒帯だけど、優柔不断で優しすぎる藤堂。会社でもあっさりリストラに応じてしまう。職探しをしていた藤堂は、道場の先輩・神野から高円寺にある自分の道場を1週間あずかってくれと頼まれる。快く引き受けた藤堂だったが、陣野はいつまでたっても戻らず・・・。

 格闘技が好きです。
 というわけで、手に取った一冊。おそらく極真をモデルにしたと思われる無双塾というフルコンタクトの空手の流派が出てきます。空手の技とか言葉で説明するのは難しいと思うんですが、健闘してます。
 その無双塾で300人に一人という黒帯をとったほどの実力者の藤堂。そのわりには、なんとなく煮え切らない。いつも悩んだり迷ったりして、周りにハッパをかけられる、そんな男が主人公の連作短編です。
 藤堂に道場を預けていなくなった陣野は、全日本チャンピオンの天才空手家。ところが、自分の道場はうまくいかない。空手をまじめに追求しようとすると、道場生が集まらず、かといって妥協も出来ず。
 預けられた藤堂の方は、尊敬する神野のためにがんばるのだけど、これまたトラブル続きで・・・。
 事件の一つ一つにメリハリがあって、エンタテイメントとして楽しく読みました。不器用なんだけど、ひたむきな人たちって嫌いじゃないし。
 あんまり強そうに見えないけど、実は強い藤堂のキャラもよかったです。
 ただ、不満だったのは、藤堂の恋人・悠子のあつかいです。え、それで終わり!?と思ってしまいました。結局、藤堂は悠子の過去を乗り越えられるのか? そこのところを、ちゃんと書いて欲しかったです。

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2007年7月22日 (日)

きみはポラリス

1145「きみはポラリス」三浦しをん   新潮社   ★★★

 私が誘拐されたのは、八歳の冬だった。あれを誘拐と呼ぶならば。いや、あれは誘拐としか呼べないものだった・・・。(「冬の一等星」)

 「恋愛をテーマにした短編」集。巻末には、しをんさんが依頼された「お題」、もしくは自分なりに設定した「自分お題」が掲載されていて、「ほほう、それがテーマでしたか」と楽しみました。
 「森を歩く」はアンソロジー「結婚貧乏」で、「春太の毎日」は同じく「最後の恋」ですでに読んでいました。
 好きなのは「冬の一等星」と「裏切らないこと」かな。
 恋愛小説なんだけど、しをんさんのもってるものすごく暗い部分が出ている話が多くて、読んでいてゾクゾクしました。軽快なエッセイが人気のしをんさんだけど、この暗さが私はけっこう好きです。
 ただ、やはり三浦しをんには長編を書いてもらいたい!短編だと物足りない気がしちゃうんです。
 ちなみに、「きみはポラリス」というのは総タイトルで、そういう短編はありません。「ポラリス」は「北極星」のことなんですねー。表紙に英題がついていて、「something brilliant in my heart」というのです。なんかいいなあ、と。

ゆんゆん > これは最新刊なのでしょうか?しをんさんの恋愛小説も読んでみたいです。英語の題いいですね! (2007/07/24 23:28)
まゆ > ゆんゆんさん、発行は5月になっています。しをん作品未読のものも多くて、自分でもどの順で刊行されたのかわからなくなってきましたが・・・。しをんさんらしい恋愛小説ですよ。 (2007/07/25 18:18)
すもも > 本プロで初めて出会った三浦しをんさんですが、今では好きな作家さんのひとりになりました。エッセイと小説の温度差みたいなものも、読んでいて楽しいですね。この本チェックしておきたいと思います。 (2007/07/26 13:24)
まゆ > すももさん、小説でもエッセイに近いテイストのものと、全く異質に感じるものとあって、どちらも好きな作家さんです。しをんさんらしい恋愛ものですので、ぜひどうぞ。 (2007/07/26 22:24)

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チルドレン

1144「チルドレン」伊坂幸太郎   講談社文庫   ★★★★

「俺たちは奇跡を起こすんだ」・・・突拍子もない言動で、周囲を混乱に陥れるけれど、なぜか憎めない男・陣内。彼が巻き込まれた&巻き起こした不思議な5つの事件とは。

 みなさんからおすすめ度が高かった「チルドレン」。買ってあったので、読んでしまいました。
 いやー、おもしろい! 陣内、最高!! 彼のひと言ひと言に読みながらふきだしてしまったり、「う~む」とうなってしまったり。「陽気なギャング」の響野を思い出したのは私だけでしょうか?
 時系列がバラバラな5つの短編がみごとにつながっていて、さすが伊坂!な物語。そして、「重力ピエロ」や「アヒルと鴨」みたいなどこかやりきれない読後感ではなく、あくまでさわやか、です。
 陣内だけでなく、友人の鴨居や永瀬、優子、武藤といったキャラもいい味出してます。特に、永瀬とベスは秀逸だと思う。そして、彼らの会話のテンポがとっても心地よいのです。
 それにしても、陣内って、端で見てる分にはおもしろいけど、自分の家族もしくは友人・恋人だったら、大変迷惑な存在ですね(笑)でも、陣内、最高!(笑)

kanakana > まゆさんも、気に入ってくれて嬉しいです!陣内のあの根拠のない自信がいいんですよねー。「俺は生まれてから一度もダサかったことなんてないんだよ」とか。作者が言っている「短編集のふりをした長編」という構成もすっごく良かったです。 (2007/07/22 22:42)

あしか > この陣内については、私とときわ姫さんで好みが別れたことを思い出します。私は100%OKなんです。彼氏としても。ときわ姫さんは、「好きだけど、遠くで見ていたい」とかそういう事言われてたんじゃなかったかな・・。まゆさんも、この感想の感じじゃ、ときわ姫さん派?私の中では今でも伊坂さんのベストはこれなんですよね。 (2007/07/22 23:00)
さくら > キャラもいいですし、時系列がバラバラなのに、ちゃんとラストでああ、そういうことか~と納得させてくれるのがいいですよね!本当に巧い~
陣内は実際に周りにいたら・・私も苦手、離れていたい派に一票です。 (2007/07/23 11:53)
めみ > 陣内の言動はスカッとしますね。デリケートな問題にも、何の計算もなく純な気持ちで対処できる彼はスゴイ!と感じました。でも、私は響野さんの方が好きです(笑)。 (2007/07/23 13:03)
まゆ > kanakanaさん、一番お気に入りというこの物語、とてもおもしろかったです。陣内の言葉にいちいち反応してました(笑)読後感がいいのもよかったです。 (2007/07/23 20:07)
まゆ > あしかさん、100%OKっすか!私は・・・ときわ姫さんと同じく、「遠くで見ていたい」派ですね。好きだけど、こういう人が身近にいたら振り回されそうで・・・。陣内って、口だけでなく行動も突飛だからなあ。 (2007/07/23 20:09)
まゆ > さくらさん、けっこう間をおいて書かれた短編なのに、ちゃんと伏線が張ってあって、連作になってるのがすごいです。
さくらさんも「離れていたい」派ですね! (2007/07/23 20:11)
まゆ > めみさん、陣内最高ですよ~。永瀬に対する態度とか、素敵すぎて笑ってしまいました!
めみさんは響野派ですかー。あ、でも、響野となら暮らせるかもしれない・・・。話は聞いてあげないけど(笑) (2007/07/23 20:13)
mi > まゆさん、読まれたんですね!やっぱり面白いですよね。そして陣内最高です!言われてみれば響野さんに似てますね~。 (2007/07/23 21:14)
まゆ > miさん、読みました!おもしろかったです!いつも思うけど、伊坂さんって言葉の使い方のセンスが最高ですね。 (2007/07/25 18:16)

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2007年7月18日 (水)

ぐるぐるまわるすべり台

1143「ぐるぐるまわるすべり台」中村航   文春文庫   ★★

 大学をやめた僕は、塾の講師をするかたわら、バンドのメンバーを探していた。ベース、そしてギターとドラム。最初の曲はビートルズの「へルター・スケルター」。メンバーがそろったとき、新しい物語が始まった。

 これもずーっと積読してた本。中村航は2冊目です。以前に読んだ「100回泣くこと」はそれなりによかったのですが・・・これは、私にはピンときませんでした。
 というか、正直言って、主人公の「僕(小林)」についていけなかったです。何を考えてるのか、よくわからない。塾の生徒のヨシモクとのやりとりは、なんとなく好きだったのですが。肝心のバンドのところが「え?なんでそういうことするの?」という・・・。
 姉妹編の「月に吠える」は、もっと苦手でした。主人公が自己完結しちゃってて、入っていけませんでした。
 単に私と波長が合わないだけなのか、今日の私のコンディションがよくないせいなのか・・・。うーん。

buudy > こんにちは、まゆさん。 僕もこれはよく分からなかったです。何がしたかったのか全然分かりませんでした。
中村航さんの本では 100回泣くことの他には リレキショっていう本もけっこう良かったと思うので、参考までに。 (2007/07/19 18:10)
まゆ > buudyさん、私だけじゃなかったのねとホッとしました(苦笑)「リレキショ」とこれともう一作で「三部作」といわれているようですが、つながりがあるのでしょうか。 (2007/07/19 20:56)
buudy > つながりは無いですね。三作とも独立した話です。 (2007/07/21 13:23)
まゆ > buudyさん、ありがとうございます。あとの2作も読んでみようかな。 (2007/07/22 19:01)
あしか > 私、本プロ始めた年の夏に読んで一年かけて三部作読んだらしいですが、概ね好評って感じのようです。18番と164、165です。期待するとかいったまま、その後まったく手に取ってない・・・・んです。 (2007/07/22 23:21)
まゆ > あしかさん、書評拝見しましたー。私はこれどうにもダメだったのですが、とりあえず「リレキショ」あたりにチャレンジしてみようかなと思います。 (2007/07/23 20:06)

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2007年7月14日 (土)

四度目の氷河期

1140「四度目の氷河期」荻原浩   新潮社    ★★★★

 母と二人暮らしのワタル。日本人離れした容貌と、「ふつう」とは違う感性をもつ彼は、「検証」のすえ、自分の父はクロマニヨン人だという結論に達する。シベリアで発見された「アイスマン」が、父なのだと・・・。
 氷河期を生きたクロマニヨン人の子らしく生きようとするワタルは、ある日、サチと出会う。

 あしかさんの感想を読んで、「おもしろそう!」と思った本です。そして、期待は全く裏切られませんでした。
 明らかに日本人以外の血が流れているワタル。薄茶の瞳、明るい色の髪、白い肌。日本人としては異質な彼は、友達もできず(彼の言動もまた、「ふつう」ではなかったので)、一人で石器を作ったりして遊ぶ子どもでした。
 ワタルの孤独感は、成長してもずっと埋められることがない。その原因は、「父親」の欠落なのです。そんなワタルが「友達」という言葉に強く反応する様子は、彼の孤独な心を感じて、せつなかったです。自分が人とは違う・・・という意識を捨てられず、人より早い第二次性徴に悩んだり、学校の枠に収められることに苦しんだり。ワタルの成長の過程は、読んでいてこちらまで苦しくなりました。
 それでも。サチと出会えたことが、ワタルにとっては大きな幸せだったのでしょう。この物語はワタル視点ですが、サチにとってもワタルと出会えたことはとても幸せだったと思うのです。
 母の死を経て、父に会いに行くくだりは、読んでいて何度も涙ぐんでしまいました。物語のラストも、すごく好きです。
 孤独なワタルが、孤独じゃないと気づいていく・・・それを成長というのかもしれません。一人の少年の心の軌跡を、丁寧に描いたこの物語、夢中になって読みました。 

buudy > こんにちは。最初は図書館で借りた本なのですが、今では本棚に入っています。
最後の陸上の場面はいいですよねー。 (2007/07/15 19:25)
あしか > まゆさん、良かったですよね。私の中では「荻原浩」の一オシとなりました。作品自体のグレードもぐんと上がった気がします。ラストも本当に秀逸でしたよね。 (2007/07/15 23:20)
まゆ > buudyさん、買っちゃいましたか!その気持ちわかります。陸上の場面は私も大好きでした。 (2007/07/16 17:51)
まゆ > あしかさん、おかげさまで素敵な本に出会えました。荻原さんはまだ数冊しか読んでないのですが、その中でもこの物語の完成度は高いと感じました。 (2007/07/16 17:53)

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2007年7月 8日 (日)

眉山

1137「眉山」さだまさし   幻冬舎文庫   ★★★★

 東京で働く咲子は、徳島に一人住む母が癌で余命いくばくもないことを知る。徳島に帰った咲子は、母が「献体」を申し込んでいたことを知り、驚く。残された日々の中、咲子はそれまで知らなかった母の生きざまを知ることになる。

 映画化されたのがわかる気がします(映画はみてません)。非常に映像的というか・・・クライマックスの阿波踊りのシーンは、まさに映画を見ているようでした。さださんは、こういうのうまいですね。「精霊ながし」のクライマックスも印象的でしたが、これもまた・・・。車椅子の二人がすれちがうところは、映像にしたらとてもすてきでしょうね。

 さて、これは読むのになかなか勇気がいりました。この年になると、親の死を扱うものはちょっと冷静に読めません。文庫化されてすぐに買ったものの、なかなか手に取れませんでした。
 もっとウエットなのかな・・・と予想してましが、思ったよりは抑制された筆で描かれていました。やはり、「神田のお龍」の異名をもつ母のきりりとしたたたずまいが、そうさせていたのかもしれません。
 愛した人の子を産み、その人の故郷で暮らし、それでもその人の妻となることはなかった母の人生。しかし、そんな翳を感じさせない彼女の生き方を知れば知るほど、咲子が母を誇りに思い、自らの人生も輝かせていく過程がよかったです。
 「ようやく母に辿り着いた。」という一文が、ずんと心に響きました。
 最後の寺崎の解剖実習の感想文にも泣かされました。

さくら > さだまさしさんらしい、透明感ある母と娘のストーリーでしたね。ただ、私は映画→原作の順番だったので、どうしても宮本信子さんが出てきて・・。原作だけだったら、私は凛としているけれどもうちょっと柔らかな人をイメージしていたような気がします。 (2007/07/09 22:53)
まゆ > さくらさん、そうそう、いかにもさださんらしい物語でしたね。宮本信子さんは嫌いじゃないですが、ちょっとイメージが違うかな、と。クライマックスの阿波踊りの場面は、どんなふうに映像化されていたのでしょう。ちょっと気になります。 (2007/07/10 21:06)

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2007年7月 3日 (火)

ランナー

1133「ランナー」あさのあつこ   幻冬舎   ★★★

 加納碧李(あおい)は、高校1年の秋、1万メートルのレースで惨敗した。そして、碧李は陸上部をやめた。走ることをあきらめてでも、守りたいものがあったから。しかし、碧李の心は揺らぐ。そして・・・。

 「あさのあつこの陸上もの!?」・・・書店で見つけて、思わず声をあげそうになってしまいました。野球(バッテリー)の次は陸上かぁ。佐藤多佳子「一瞬の風になれ」は短距離だったけど、こっちは長距離。ものすごくわくわくしながら読みました。
 うーんと。期待しすぎたでしょうか、私・・・。
 あさのあつこの書くものって、観念的だと思うのです。「一瞬の風になれ」が徹底的にリアルに、肉体的に「走る」ことを描こうとした小説なら、こちらは頭の中でのイメージが中心、という感じで。で、「一瞬の~」を読んでいなければ、これはこれでよかったと思います。ただ、「一瞬の~」のもつエネルギーに圧倒され、まだそれを引きずっている状態では、これは観念的すぎるなあ、と。
 もっとも、走ることそのものよりも碧李やその母、陸上部のマネジャーの杏子の心の動きが大事なのであって、それはそれで、とてもあさのさんらしい描き方がされているのですが。
 自分の心をうまくオープンにできない人を描くのが、あさのさんはうまいです。そして、そういう人の気持ちを解きほぐすキャラクターの配置も。
 ただ、つくづく思うのは。「一瞬の風になれ」の後だというのが・・・。どうしても、比べちゃうんですよ。それが、残念でした。

three bells > あさのさんの陸上ものでましたか!講演会で今書いていますとおっしゃっていて楽しみにしていました。でもちょっと遅かった感アリなんですね。この本が先で一瞬の…が後でも一瞬の…に一票ですか?でも早く読みたいです。 (2007/07/04 23:36)
まゆ > three bellsさん、「一瞬の」とは全く別物なので(いろんな意味で)、比べたりしなければいいのだとは思うのですよ。でも、どちらを先に読んだとしても、私は「一瞬」の方が好きですね。ただ、これはこれで、すごくあさのさんらしい物語だと思います。 (2007/07/05 19:17)

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2007年6月23日 (土)

GO-ONE

1130「GO-ONE」松樹剛史   集英社文庫   ★★★

 廃止寸前の地方競馬のジョッキー・一輝は、持ち前の豪腕で勝ち星を重ねていた。しかし、落馬事故に遭い・・・。

 「ジョッキー」がおもしろかったので、これもおおいに期待して読みました。競馬そのものの臨場感は、「ジョッキー」の方が数段上だったかなあ。
 岩手競馬も赤字続きで、ここ数年、存続か廃止かでもめているので、他人事じゃないなあ・・・と思って読み始めたのですが。地方競馬そのものというよりは、一輝をはじめとする若手ジョッキーたちの話でした。
 それなりにおもしろかったのですが、どうも登場人物がいまいちつかみきれないというか。女性ジョッキーの早紀の話が一番わかりやすかったかな。一輝の妹・一那は、私には謎でした。

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2007年6月18日 (月)

ぎぶそん

1128「ぎぶそん」伊藤たかみ   ポプラ社   ★★★

 ギターのガクと、ベースのマロと、ドラムのリリイ。中学2年の3人のバンドに、ギターがめちゃくちゃうまいらしい「かける」を入れようと、リーダーのガクは思い立つ。大好きな「ガンズ・アンド・ローゼス」のコピーをするためだ。
 かけるとどんどん仲良くなるガクに、心穏やかではいられないマロとリリイ。そして、バンドは動き出したが・・・。

 ポプラ社の「ティーンズ・ベスト・セレクション」の1冊。同じシリーズにあさのあつこ「ガールズ・ブルー」なんかも入ってます。
 バンドものなんだけど、ガクとリリイの幼なじみの恋とか、男の子どうしの友情とか、キレやすいかけるの家庭のこととか、いろんな要素がいっぱい。風野潮の「ビート・キッズ」をちょっと思い出しました。あちらよりはバンドの比重は軽めです。
 昭和63年から64年という時代設定(なんとなく、もう少し古い気もしたけれど)。かけるのおじいちゃんが戦争に行ってないのに「行った」と嘘をついてたりして、あの頃はまだこういう時代だったのだなあ、と。かけるたちの住んでいる「さやま団地」とか。携帯電話が全然出てこないとことか。私はその当時はもう中学生ではないですが、なんか懐かしい気がしました。
 個人的には、ガクとリリイが、互いにすごく意識しながら、徐々に距離をつめてく過程がほほえましくて好きでした。

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2007年6月10日 (日)

赤朽葉家の伝説

1127「赤朽葉家の伝説」桜庭一樹   東京創元社   ★★★★

 山の人たちに置き去りにされた子ども・万葉は、未来を見る不思議な力をもっていた。成人した万葉は、村の旧家・赤朽葉家の嫁となる。
 製鉄業を営む一族を「千里眼奥様」として支えて生きた万葉。その娘で漫画家になった毛毬。そして、その娘の瞳子。三代にわたる赤朽葉家の女たちを描く。

 ・・・と、あらすじを書きましたが、いわゆる「女性の三代記」とか「旧家もの」ではありません。いや、そういう要素もありますが・・・それぞれの時代の空気や価値観と、その中で生き抜いた「真っ赤な魂」たちの物語、とでも言いましょうか。抽象的過ぎて、なんだかわかりませんね(苦笑)

 物語は、瞳子の視点を基準に、大きく三部に分かれています。
 第1部が、祖母・万葉の「最後の神話の時代」。これは、いわゆる「戦後」の物語。万葉はサンカの出で、外見も気質も、周りの人たちとは違っていたけれど、それが逆に赤朽葉家に望まれて、旧家の若奥様に。万葉は、夫の死も、舅の死も、息子の死も予見してしまいます。が、万葉は赤朽葉家の重鎮として、きっちりと自分の人生を全うします。彼女の生きざまは、見事です。私の両親の世代になるのですが、たしかにこの世代の人たちは、シンプルでいて、地に足の着いた生き方をしてきたと思います。
 
 第2部は、「巨と虚の時代」で、万葉の長女・毛毬の話。中学校時代から暴走族の頭として鳴らした毛毬は、丙午の女。兄の突然の死、親友の死、腹違いの妹との確執、そして、漫画家デビュー。毛毬の人生も波乱万丈ですが、万葉とは違い、非常にあぶなっかしく、いつまでも大人になりきれないような不安定さがつきまといます。これは、私の世代の物語。さすがにレディースなんてのは、漫画やテレビの世界でしたが、毛毬の危うさは私も持っているものだと思います(自分では、よくわからないけれど)。この章は非常に漫画チックな展開なのだけど、それはあの時代がそうだったのだと思うのです。

 第3部。瞳子が主人公の「殺人者」は、現在。まさに、「今」の物語。瞳子は、祖母とも母とも違う、なんの「力」もない自分にコンプレックスを持っています。ニートの瞳子は、人生に目的も情熱もなく、ただ淡々と日々を送っていたのですが、万葉の死によって、ある疑念を抱きます。それが彼女を動かしていって・・・という話。
 意外にも、この瞳子の章で、かなり彼女に感情移入してしまいました。あまりに強烈な祖母や母の生い立ちを聞いて育った瞳子だから、よけいに今の自分のよるべなさが身にしみるのでしょう。この先、いったいどうなっていくんだろう・・・という不安は、毛毬世代の私も感じることです。そうであれば、まさにこれから未来を創る世代の瞳子たちは、どれだけ不安なことでしょう。
 だから、この物語の最後には救われた気分で、思わず泣きそうになりました。

 時代が変われば、価値観も変わります。社会も、生活も、人も変わります。でも、その時々で(自分が生まれた時代で)、自分なりに生きていかなくては。生まれてきた以上は。
「ようこそ。ようこそ。ビューティフルワールドへ」・・・この言葉が、混沌とした時代に生きる私たちの支えになるのかもしれません。

EKKO > まゆさん、毛毬の章は本当に漫画チックで、万葉の章とのギャップに少々戸惑ったのですが、なるほど時代そのものがそういう雰囲気だったんでしょうね。まゆさんのレビューを読んで納得しました。ラストは本当に感動しました。万葉の純な思いが切なかったです。 (2007/06/11 07:11)
まゆ > EKKOさん、私は丙午ではないですが、かぎりなく近い、毛毬世代です。だから、あの時代の価値観とかはリアルにわかるのです。でも、やっぱり奇妙な時代だったなと思います。毛毬が大人になりきれないまま・・・というのも、この世代の特徴かしら?と思いました。私がそうだから、ですが(苦笑)
万葉にはあこがれます。あの飛行人間がここに結び付くのね・・・と、物語の運びの巧みさにもまいりました。 (2007/06/11 21:29)

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2007年6月 1日 (金)

となり町戦争

1122「となり町戦争」三崎亜記   集英社   ★★★

 ある日、町の広報紙に載っていた「となり町との戦争のお知らせ」。いったいなぜ戦争をするのか? どこで戦闘が行われるのか? 何もわからぬまま、偵察業務を命ぜられた北原は、となり町戦争係の香西さんと、となり町に潜入することになり・・・。

 ひところかなり話題になりましたね。今さら・・・という感じですが、読んでみました。
 なんとも不思議な小説。「戦争」と言いながら、戦闘シーンとか全くない。でも、「戦死者」は増えていく。全く実体の感じられない戦争。
 主人公の北原は、よくわからないままに戦争に関わっていきます。それでも、何も見えず、何もわからない。私は、この部分がすごく怖かったです。「リアル」の戦争も、実はそんなもんじゃないの?と思ってしまって。戦闘に直面しないかぎり、渦中にいても意外と見えないものなんじゃないだろうか?と。そして、覚悟もないままに安易に踏み込んでしまう・・・っていうのは、自分でもやってしまいそうで怖かったです。
 戦争といいつつ、戦争の具体的な様子が全く描かれないので、なんだかわからず、「???」という気分がずっと続きます。それは、主人公が感じている気分であり、今、世界で起きているリアルの戦争をリアルに感じ取れない私たちの気分そのものではないでしょうか。町の業務としての戦争というのは理不尽で不条理ですが、ではどんな戦争だったら、大義名分がたつというのでしょう・・・。
 北原と香西さんの恋愛の部分は、ちょっと微妙でした。でも、あれがなかったら、北原は戦争を実感することはなかったのかもしれませんね。 

buudy > なんだかよく分かりませんよね。分かんないけどけっこう良かった気がします。モヤモヤするけど悪くなさそうなものが胸の中に残った感じで・・・。
なぜか主人公の北原さんには親近感を抱きました。 (2007/06/02 17:46)
まゆ > buudyさん、本プロでも、かなり評価はわかれています。私は、北原がなんとなく戦争に巻き込まれていくさまに、リアルを感じました。 (2007/06/03 10:27)

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2007年5月29日 (火)

かもめ食堂

1121「かもめ食堂」群ようこ   幻冬舎   ★★★★

「素朴でいいから、ちゃんとした食事を食べてもらえるような店をつくりたい」
 ヘルシンキで「かもめ食堂」を営むサチエ。そこにやってきたミドリとマサコも、いつしか食堂で働くことに・・・。

 映画の原作として書かれた小説。この映画、すごく気になってるのです。DVD借りようと思いつつ、まだ見てませんが。
 武道家の父に育てられたサチエは38歳。「ちゃんとした食事」を出すお店をもつのが夢。がんばってお金をためていたけれど、とうとう宝くじをあててしまい、思い切って外国でお店をもとうと決める。選んだ場所がヘルシンキ。
 ミドリは裕福な家庭で育ち、適当に会社勤めをしているうちに、なんとなく40歳を過ぎてしまった。マサコは親の面倒をみているうちに、50歳。そんな二人が勢いで「外国へ行こう」と思い立ち、それぞれ選んだ先がヘルシンキ。
 この3人、いわゆる「負け犬」。それでも、自分の夢をもっているサチエは人生を悠々と楽しんでいるし、最初はちょっと情けないミドリもマサコも、かもめ食堂で居場所を見つけて、生き生きしてくる。
 ものすごく淡々としていて、さらっと読めてしまう物語なのだけど、私はすごく好きでした。非現実的な話のようでいて、サチエのものの考え方が、とても地に足が着いていて、心地よいのです。ものすごく真っ当な価値観だと思うのですよね。きちんとした食事、とか。
 それから、ミドリやマサコの情けなさはなんだか共感できる部分があり、彼女たちがかもめ食堂で生き生きと働く姿には、こちらもうれしい気分にさせられるのでした。
 特別なことをしなくても、心を込めて、ちゃんとした食事を作る・・・それだけで、人は幸せになれるのですよね。

さくら > 原作も良さそうですね!読みたくなりました~

映画はDVDでレンタルして見ました。ものすごく良かったです!私は好みでした~たぶん原作ほど多く背景が描かれていないと思うのですが、シンプルできちんとした生活ぶりにとっても癒されます。なんてことない日常が淡々と描かれているだけなのですが不思議と心地よかったです。
DVD購入してもいいな~と迷っているところ・・たぶんまゆさんもお好きだと思うのですよ~是非! (2007/05/31 18:41)
トントン > 原作もいつか読んでみたいなと思ってます。私もさくらさんと同じくDVDで見ましたが良かったです。もちろん女性達も素敵なんですが、おにぎりやシナモンロールがすごく美味しそうでした。ヘルシンキの風景も美しくて癒される映画でした。私もDVD欲しいなと思ってます^^ (2007/06/01 07:10)
わった > 私もDVD先行でしたが、原作もいつの日にかとの思いでおります。レンタルで見ましたが本当に良い作品でした。「いらっしゃい」とグラスを拭きながら微笑むサチエさんは、今もヘルシンキの空の下にいるんだと信じて止みません。普通と呼ばれることを心を込めてちゃんとするのは簡単なようですがなかなか・・・。私も見習いたいものです。 (2007/06/01 11:17)
まゆ > さくらさん、映画の方は、ずっと気になっているのですよ。原作は、それほど書き込まれてるわけではないです。群ようこさんって、もともとあっさりした小説書く人だし。アマゾンでもかなり評価わかれてました。私は、サチエの価値観とか、すごく好きなんです。 (2007/06/01 20:39)
まゆ > トントンさん、やはり映画いいんですね。もともと映像化することを前提に書かれてるから、「ああ、ここを映像で見たいな」と思うところがいっぱいあるんですよ~。 (2007/06/01 20:41)
まゆ > わったさんも高評価ですね~。うう、見たいなあ。役者さんたちもいいしなあ。普通のことをきちんと・・・って、当たり前のことなのに、それがなかなかできないんですよね。 (2007/06/01 20:43)

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2007年5月25日 (金)

あなたがパラダイス

1119「あなたがパラダイス」平安寿子   朝日新聞社   ★★★

 とうとう迎えてしまった更年期。体調の変化に加えて、親の介護の問題に直面したり、自分を取り巻く環境の激変にも翻弄される女性たち。そんな彼女たちの支えになったのは・・・。

 「更年期」をテーマにした連作。女性としては、身につまされるものがあります。いずれ(それもそう遠くない将来に)自分もこういう時期を迎えるのかしら・・・と思うと、正直言って不安になります。
 しかし、この作品は、更年期というイマイチ実態が知られていないものを取り上げ、実に明るく前向きに語ってくれます。どうしようもないんだけど、やっていけるよ・・・という気分にさせてくれます。
 そう思えるきっかけになるのが、あのシンガーというところが意外で、驚きました。私は彼にそれほどの思い入れはないですが(グループサウンズとか、ちょっと世代が違うなあという感じなので)、彼について語られている部分もおもしろく読みました。平さん自身が、もしかしてファンなのでしょうか??
 平さんの描く物語は、深みはないのかもしれないけれど、前向きなパワーを感じられるところが好きです。「まあ、悪くないよね」「もうちょっと頑張っていけるかな」・・・という気持ちになれるところが。

すもも > 「更年期」の言葉に惹かれてやってきました(笑)>前向きなパワー、ぜひ読んでみたいです。 (2007/05/28 15:40)
まゆ > すももさん、なかなかおもしろかったですよ。読んで元気がもらえる本って、好きです。 (2007/05/29 19:40)

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2007年5月24日 (木)

弱法師

1118「弱法師」中山可穂   文春文庫   ★★★

 難病に侵された少年・朔也とその母に心を奪われ、エリート医師としての未来を捨てた鷹之。必死の治療もむなしく、朔也の病気はどんどん進行し・・・。

 「弱法師」「卒塔婆小町」「浮舟」の三つの話が収められています。いずれも能に題材をとった物語。
 中山可穂を読むのは久しぶり。「かなわぬ恋」がテーマの作品集は、中山可穂らしい、キリキリしたせつなさにあふれたものでした。
 三作の中では、「浮舟」が一番好きです。ラストで多少なりとも希望をもてるので。恋愛と家族という、私の好きな「サグラダ・ファミリア」にも通じるテーマだったし。
 それにしても、中山可穂という人は、決して並び立たないものを同時にほしがり、それゆえに苦悩しているタイプだと再認識しました。その切迫感が、逆に魅力になっている作家だとは思いますが。

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2007年5月16日 (水)

その街の今は

1116「その街の今は」柴崎友香   新潮社   ★★★

 勤めていた会社が倒産し、カフェでバイトしている歌子。たまたま知り合った良太郎と、なんとなく親しくなったけれど・・・。

 柴崎友香、2冊目です。
 私は、起承転結のはっきりした、メリハリのあるエンタテイメント小説が好きです。そういう意味では、これは対極かもしれません。でも、漂っている空気は、なんとなく好きだったのです。
 大阪の古い街並みの写真に心ひかれる主人公の気持ちとか、良太郎との微妙な距離感とか、なんかわかるなあ・・・と思うことが多かったです。
 舞台が大阪・・・というのが、私にとってはちょっとつらかったかな。土地勘が全くないので。

EKKO > 今、この本を読んでいます。(なかなか読書の時間がとれないのですが・・)私も柴崎作品の漂う空気、結構肌に合う感じですね~。この本は舞台が大阪で、私にとっては馴染みの深いミナミの街の場面からはじまることもあって、それだけでわくわくしてしまいます♪ (2007/05/19 13:15)
まゆ > EKKOさん、大阪の方(もしくは、大阪に土地勘のある方)には、入りやすいと思うのです。私は、そのハードルが高かったです。東京なら、もっと入り込みやすかったのに・・・と思うけど、そうするとこの物語は全く違う雰囲気になるんだろうなと思ったり。とりあえず、柴崎さんの作品、もう少し読んでみたいです。 (2007/05/21 20:59)

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2007年5月 9日 (水)

窓の灯

1113「窓の灯」青山七恵   河出書房新社   ★★★   

 大学をやめて、喫茶店で働いているまりも。店主のミカド姉さんに憧れ、向かいのアパートの部屋をのぞくことが日課で・・・。そんな毎日にふいに現れた「先生」の存在が波紋を広げていく。

 今、京極夏彦を読んでいるのです。どうしても時間がかかるので、ちょっとひと休み・・・と思ってこれを手に取りました。いやあ、読みやすい(笑)あっというまに読み終えてしまいました。京極夏彦がいかに重厚な世界かを再認識。
 さて、「ひとり日和」が「んん?」という感じだったので、あまり期待しないで読みました。結果として、それが正解だったかな。「ひとり日和」よりはこっちの方がおもしろく感じました。
 これもやはりすごく閉じた世界の話。ものすごく主観的で、そこがちょっと私には重かったです。若い時のこういう感じって、わかる気もするのだけれど、共感するには私が年をとっちゃったのね・・・と(苦笑)
 ただ、最後にちょっとだけ世界が開くような予感があって、そこが救いでした。

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2007年5月 4日 (金)

うりずん

1111「うりずん」文 吉田修一  写真 佐内正史   光文社   ★★★

 佐内正史の写真に、吉田修一が掌編小説をつけた、写真と小説のコラボレーション。

 いちおう「スポーツ」がキーワードみたいになっています。本の前半に写真がずっと並んでいて、ところどころに「部活」「声援」「解雇」「告白」なんてキャプションがついています。そして、本の後半は、そのキャプションを題名にした小説。
 だいたい、写真を見てもそのキャプションがイメージできないものが多くて、いったいどんな話になるんだろう?と。そして、読んでみて「こうきたか~」。吉田さんのイマジネーションは、私にとっては意外な線が多くて、ちょっと驚きました。
 印象的だったのは、「声援」「告白」「息子」「失敗」といったあたり。
 全体的に主人公が大人に設定されているものが多いので、それなりに共感できました。小説を読んでから写真を見直すと、また見えてくるものが違ったりして楽しかったです。
 それにしても、どうしてこの本のタイトルが「うりずん」なのかしら・・・。沖縄でいう、春と夏の間というか、一年でいちばんいい季節のことなんですよね。

あしか > ちょっと聞いただけじゃ読まなかったかも、と思いますが、まゆさんの書評を読んで我然読みたくなりました。
「こう来たか・・・」って言うのが知りたいですよ! (2007/05/06 01:40)
まゆ > あしかさん、私は吉田修一の感性って自分とは異質だと表いて、だからよけいに意外性を感じたのかもしれません。あしかさんの感想が楽しみです。 (2007/05/06 20:24)

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ショートカット

1110「ショートカット」柴崎友香   河出文庫   ★★★

「おれ、ワープできんねんで」
 合コンで会った男はそんなことを言った。恋しい、会いたいという思いは、本当に距離を超えるのだろうか・・・。

 初・柴崎友香です。友人が最近「いい!」と言っていたので、とりあえず読みやすそうな一冊にチャレンジ。
「ショートカット」「やさしさ」「パーティー」「ポラロイド」の4作品。なかちゃんという男の人がすべての作品に登場して、連作の形になっています。
 遠距離恋愛が題材。うまくいってる人たちも、ダメになりそうな人たちも、ダメになった人たちも・・・いろんな人たちが登場します。
 読んでいて心地よかったのは、ただ感傷的な遠距離恋愛ものではなかったから。人を想う気持ちを抱えながら日常を生きている、そのリアル感がよかったです。
 たとえば、「やさしさ」。主人公は、パーティーの後、五つ年下のちょっとお気に入りの男の子に送ってもらって帰る。主人公には遠恋中の彼氏がいて、その男の子にも遠恋中の彼女がいて、途中で電話がかかってきたりして。それでも、二人でおしゃべりしながら夜の道をとことこ歩く。それだけの物語なのだけど、その歩いている時の感じが、「ああ、わかるなあ。いいなあ」と思えるのです。
 物理的な距離と、心の距離。どうしても超えられない「距離」を、表題作のラストの言葉が超えさせてくれます。
 
 だって、わたしはどこにでも行けるから。

 これが、すごく好きでした。

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2007年5月 3日 (木)

わらの人

1109「わらの人」山本甲士   文藝春秋   ★★★

 女主人が一人でやっている小さな理容店。マッサージがあんまり気持ちよくて、客はついうとうと・・・。そして、目を覚ますと、ありえない髪形に!?
 しかし、外見が変わることで、心までまるで別人のようになっていき・・・。

 思っていることを言ってしまうというのは難しいこと。特にも会社とか、いろんなしがらみがあると、言いたいことも言えなかったりする。
 そんな人たちの心をパーッと解き放って変えてしまう、不思議な理容店が登場する連作短編。と言っても、理容店のシーンはごくわずかで、女主人もどんな人なのか、よくわかりません。
 それぞれの登場人物の「変化」がおもしろいのですが・・・。私にはちょっと後味の悪いものもあり、評価は★3つ。言いたいことが言えるようになるとか、物事に立ち向かっていけるようになるとか、それはいいんだけど、今まで自分を苦しめていた相手を逆にいじめているような展開は、ちょっと好きじゃなかったので。
 実際、髪を切ったりすると、自分でも驚くほど気分が変わるときがあるので、この物語の発想はおもしろいなと思いました。でも、いきなり金髪にされたり、ベリーショートにされたら嫌だなあ(笑)
 そして、読み終えてもよくわからなかったのが、タイトルの意味。「わらの人」ってどういう意味なんだろう?

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2007年5月 1日 (火)

朝日のようにさわやかに

1108「朝日のようにさわやかに」恩田陸   新潮社   ★★★

 湿原の中にある学園で、「笑いカワセミ」という他愛もないゲームがはやっていた。その話を聞いたヨハンは、奇妙な事件に巻き込まれ・・・。(「水晶の夜、翡翠の朝」)

 恩田陸の第2短編集。ミステリあり、ショートショートあり、ホラーあり。いつもながら引き出しの多さに驚かされます。が、今回ちょっと点が辛いのは、ホラー系が多かったからです。ホラーは苦手なので。
 理瀬シリーズのヨハンが主人公の「水晶の~」はすでに何度も読んでいますが、恩田さんいうところの「邪悪な」ヨハンが素敵です(笑)
 ミステリーランド書き下ろしの予告編「淋しいお城」も、なんだか怖かったです。これ、子どもが読んだらトラウマになりそう。いろんな意味で。
 高校時代の文芸部の仲間が再会する「楽園を追われて」も、本来私の好きな設定のはずなのに、イマイチのめり込めず。
 やはり恩田さんって、長編作家なのかなという気がします。短編だと、なんか物足りないです。

めみ > 最近読んだ短編集の中では一番良かったです。ホラーが多かったですね~。でも「淋しいお城」は好きなんですよ。酷な描写に驚きましたが、ミステリーランドが一層楽しみになりました。 (2007/05/02 13:31)
まゆ > めみさん、私は「淋しいお城」は怖かったですよ~。子どもの頃にこんなの読んだら、泣きそうです(笑)全体的にホラーが多かったのがちょっとつらかったです。恩田さんのホラーって、その場面がリアルに想像できてほんとに怖いので(苦笑) (2007/05/04 18:21)

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2007年4月24日 (火)

ラスト・イニング

1105「ラスト・イニング」あさのあつこ   角川書店   ★★★★

「なんで、野球を捨てるんや」
 新田東との試合を最後に野球をやめた、元・横手二中の遊撃手・瑞垣。幼なじみの天才バッター・門脇は、あの試合の後、推薦入学を蹴って、地元の高校へ進学していた。
 あの試合が・・・新田東のバッテリーとの対決が、いったい何を変えてしまっ