ファンタジー

2009年8月 7日 (金)

虚空の旅人

「虚空の旅人」上橋菜穂子   新潮文庫   ★★★★

初読の感想は 591「虚空の旅人」

先日、「バルサの食卓」と一緒に「神の守り人」文庫版も購入したのですが、考えてみたらこっちを読んでませんでした。というわけで、「守り人」シリーズのチャグムサイドの物語へ。

もう、この壮大な物語の行きつく先を知っているので、チャグムが他国と初めて関わるこの物語を読んでいると、なんとも言えない気持ちになります。あとがきで上橋さんが書かれているとおり、「全十巻への舵を切った物語」ですね。なんというか・・・感無量でした。

チャグムが、その魂の熱さと純粋さゆえに苦しみ、でもその苦しみを抱えて王となる道を歩もうと決心するさまは、本当に胸が熱くなりました。その決意のもとになったのは、チャグム自身の生まれもった性質はもちろんですが、命がけで自分を守ってくれたバルサとの出会いが影響しているのです。

バルサは、チャグムを守ることで、自分が浄化されたような経験をしているのですが、チャグムにとっても、その後の生き方を左右するような経験だったわけで・・・。人と人との出会い・関わりのもつ意味というものを考えさせられました。

同時に、チャグムとシュガの絆も。それゆえ、二人はこの後、非常な苦悩を経験するわけですが・・・。

今回舞台になったサンガル王国は、今までの新ヨゴ皇国やカンバルとは全く違う海の国。そのきらびやかな雰囲気や開放的な空気は、この季節に読むのにピッタリでした。また、サンガルの王家の女たちのコミュニティは、私にとってなかなか魅力的でした。でも、こんな頭の切れる奥さんたちをもらったら、旦那さんは大変ですね(苦笑)

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2009年2月 8日 (日)

夢の守り人

「夢の守り人」上橋菜穂子   新潮文庫   ★★★★

  初読の感想は588「夢の守り人」

初めて読んだ時は、テーマの重さがズッシリとこたえて、さらにバルサやタンダとチャグムが再会したのがうれしくて、そちらに気を取られていましたが、あらためて読み返してみると、上橋さんご自身がおっしゃる通り、これは「守り人」本編からはちょっとずれた「鬼っ子」みたいな作品ですね、まさに。

でも、私はこの物語がすごく好きです。この作品があったから、この後の「守り人」シリーズがより深いものになったのではないかと思うくらい。トロガイとタンダという呪術師師弟の生き方にスポットがあたるこの話があってこそ、「天と地」でタンダがとった行動や、バルサとタンダの心のつながりがより深く理解できる気がしました。

そして、物語の最後で、バルサが長年の心のしがらみから解き放たれ、自分の幸福を自覚するにいたって、感動してしまいました。信じられないことに、初読のときは、ここを読み流していたようで・・・。人との出会いによって、人は変わっていく・・・バルサもまた、チャグムと出会ったことで、自分の人生を新たにスタートさせたのですね。ちょっと、この後のシリーズの読み方が変わりそうです。

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2009年1月 8日 (木)

天地のはざま

1371「天地のはざま」たつみや章   講談社   ★★★

「星の子」ポイシュマと、クニを追われたワカヒコ。アテルイのムラですくすくと成長した二人は、海辺のムラとの交易に行くことになる。しかし、そこで二人を待っているのは過酷な運命だった・・・。

このシリーズの前作を読んだのが、2004年!約4年半前ですよ。いや~、我ながらよく話についていけたと感動しました(笑) もちろん、細かいところは忘れていましたが。読んでいるうちに、「ああ、そうそう・・・」と思いだすこともあって。

もともとこの物語の世界観が好きなので、抵抗なく入れるんですね。ただ、「ハリー・ポッター」の次に読むのは間違いだったかもしれません。普段は同じジャンルとか重ならないように気をつけているんですけどね。図書館の返却期限が(苦笑)

これを読んでいて思うのは、私たちは感謝の心、自然に対する畏敬の念を忘れがちだということです。それは、私たち人間が自然な形でもっていたはずのものなのに・・・。それを忘れたときに、人間は傲慢になるのだなあと感じます。

物語はいまだ途中。今利用している図書館に全巻そろっているので、次も借りてこようと思います。

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2009年1月 7日 (水)

ハリー・ポッターと死の秘宝(上)(下)

1370「ハリー・ポッターと死の秘宝」J,K,ローリング   静山社   ★★★★★

ダンブルドアに託されたヴォルデモートとの戦いを決意したハリーとロン、そしてハーマイオニー。17歳・・・成人の時を迎え、とうとう3人は旅立つ。それは、文字通り、最後の戦いだった。

やーっと、読みました。本来、新年最初の本はこれにする予定でしたが、↓の本を去年中に読み終えられなかったので、ちょっと遅くなってしまいました。

いろんな方の感想を斜め読みしてたので、どうやら最悪の事態は免れそうだ・・・と思って、ちょっと安心して読み始めました。そして、よくここに着地させてくれた・・・と、思わず感動してしまいました。6巻までの伏線という伏線がすべて明らかになって、ああ、ここまで練り上げられた世界だったんだ・・・と。鳥肌が立つような気分でした。

それにしても、失ったものが大きすぎて、最後の大団円を読んでいても、胸がつまるような思いでした。ハリーたちは、そういうものを全部抱え込んで、大人になったのでしょうね。

特にも、「彼」の最期はせつなかったです。彼を動かしていたものがその思いだった・・・。ハリーにつらくあたったのも、報われない任務を引き受けたのも。なんという・・・。

「賢者の石」を読み始めた当時は、ファンタジーそのものを読みなれないこともあり、挫折したこともありました。読めるようになってからも、ハリーの反抗期にイライラしたり、いろんな思いを味わって読んできましたが、ハリーが到達した地点に、一緒に行くことができて、本当によかった、読み続けて本当によかったと思いました。

★5つは、シリーズすべてを通しての、総合評価です。

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2008年12月19日 (金)

鹿男あをによし

1366「鹿男あをによし」万城目学   幻冬舎   ★★★★

 人間関係のトラブルで大学の研究室にいづらくなった「おれ」は、奈良の女子高の講師の口を紹介される。そこで堀田というかわいげのない生徒とトラブり、さらに口をきく鹿に会ってしまい、否応なしに不思議な世界に引き込まれてしまい・・・。

 今さらな感じですが、ようやく読みました。先月、奈良に新婚旅行パート1で行ってきたばかりなので、微妙に土地勘があって、おもしろく読めました。鹿もいっぱいいましたしねえ・・・。

 「ホルモー」ほどのエネルギーはないですが、これはこれでおもしろかったです。あっちはいかにも京都、こっちは奈良のゆったりした空気にあっていて。

 そして、「ホルモー」は、凡ちゃんのキャラが生きてましたが、今回は堀田イトちゃんがいい味出してましたね。ラスト、よかったです。

 なんか、奈良ってこういうことが起こっても不思議じゃないような感じがするところですよねえ。

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2008年12月10日 (水)

流れ行く者

1364「流れ行く者」上橋菜穂子    偕成社    ★★★★

バルサがまだジグロと暮らしていた頃。タンダがまだ家族と暮らしていた頃。
二人の少年少女時代を描く「守り人」短編集。

読みたかったのをやっと読めました。
ほんと、このシリーズは、世界観がしっかりしてますね。
すごく若い二人が初々しくかわいく、でも、ちゃんと「守り人」の世界が展開していて、感動しました。
バルサが人を傷つけるのにためらうさまとか…なんか、新鮮でした。
この二人、この当時から互いにかけがえのない存在だったのですね。

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2008年12月 1日 (月)

大鷲の誓い

1363「大鷲の誓い」茅田砂胡    中央公論新社    ★★★★

ラモナ騎士団の見習い騎士・ナシアスは、ティレドン騎士団のバルロに剣の指南をすることになった。大公爵家の息子ゆえに、歪んだ環境で育ったバルロだったが、ナシアスには心を開いていき…。

デルフィニア戦記外伝です。
久々のデル戦、しかも若いバルロとナシアスの話ー!バルロ大好きな私には、こたえられないものがありました。
しかし、バルロはわりと予想通りの育ち方してますね(苦笑)
今回はナシアス目線の部分が多かったからかもしれないけど、なんか、ナシアスよかったです。
ラストはリィが消えてからの平和なデルフィニアの光景で終わりますが、この章がすごく好きでした。ありえないけど、ウォルとリィがまた会えたらいいのにね。

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2008年8月 2日 (土)

ヴィヴァーチェ 紅色のエイ

1329「ヴィヴァーチェ 紅色のエイ」あさのあつこ    角川書店    ★★★

 父を亡くし、妹を城に奪われたヤンは、最下層地区で暮らしながら、いつか宇宙へはばたきたいと思っていた。親友のゴドと共に…。

 角川の新ファンタジーシリーズ「銀のさじ」の初回刊行本。同じ「銀のさじ」の荻原規子さんのが続き物だとは知っていましたが、これもでしたか…。完結してるものと思い込んでいたので、びっくりしました。
 さて、話の設定はSFファンタジーといった趣で、ちょっと「ナンバーシックス」を思い出しました。
 賢く冷静なヤンと、明るくたくましいゴドのコンビがいい感じです。
 ヤンが憧れてやまない宇宙船ヴィヴァーチェをはじめ、すべてのピースがちりばめられただけで、物語はほんのさわり…といった感じです。
 この後どう展開していくのか…続き、ちゃんと出るんですよね?

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2008年5月19日 (月)

薄紅天女

1296「薄紅天女」荻原規子   徳間書店   ★★★★

 坂東の地で、双子のように育った阿高と藤太は、ともに十七歳。いつまでも一緒にいられると思っていた日々は、阿高が蝦夷の巫女姫の血を引くと知った時から激変する。一方、都では怨霊が跳梁し、皇女苑上は兄の皇太子を守るため、男装して都を飛び出すのだが・・・。

 勾玉三部作最終話。10年ぶりの再読です。いつか読み直して感想アップしようと思っていましたが、ようやく実現できました。

 それにしても、10年たつと忘れているものですねえ(苦笑)ものすごく新鮮な気分で読みました。

 「二連」と呼ばれる阿高と藤太のつながりがとってもよいです。これって女子の永遠の理想なのかもしれませんが(笑) それから、彼らの友人の広梨と茂里もいいですね。彼らがグループでじゃれているところが、かなりお気に入りでした。

 後半からは皇女・苑上の物語になって、それが阿高と絡んでくるわけですが・・・。シリアスな展開が、いつのまにか、型破りなお姫様と、もてるくせに女の子に興味なかった阿高とのラブストーリーになっていって、思わずにんまりしてしまいます。

 このシリーズは壮大なスケールが身上ですが、初読の時には、「薄紅天女」はわりとこじんまりしている気がして、ちょっと物足りなく感じたのです。が、読み返してみると、そうでもないですね。都と蝦夷と・・・時代の複雑な空気を描いていて、おもしろかったです。

 ただ、私は藤太のファンなので、できれば最後に千種に会うシーンを書いてほしかったです。千種が機織りをして、藤太の命を救うシーンがとっても好きなので。二人が現実で再会するところを読みたかったなあ。

 それにしても、坂上田村麻呂って不思議な人物です。小説でも、彼を悪く書いたものって、あんまり見たことがない。征夷大将軍なのに、攻められたみちのくでも、人気があるんですよねぇ。

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2008年2月 7日 (木)

闇の守り人

「闇の守り人」上橋菜穂子   新潮文庫   ★★★★★

 初読の感想は、580「闇の守り人」

 やっと「闇」も再読です。「天と地の守り人」を読むまでは、文句なしにこれがシリーズ中一番好きでした。私が一番感情移入できる登場人物・バルサに強烈なスポットがあたる物語だからです。

 再読してみても、やはりその輝きが失せることはありませんでした。女用心棒・バルサが、自分の過去と向き合うために故郷に帰る・・・。父が巻き込まれた陰謀。バルサと父の親友・ジグロとの逃亡生活。ジグロの苦悩。バルサの怒り。そして、今もカンバル王国に巣食う陰謀。息もつかせぬ展開で読ませます。

 初読の時と違って、ヒョウルの正体はわかっているので、衝撃はありませんでしたが・・・<槍舞い>のシーンに至るまでを、じっくり読むことができました。

 前作の舞台の新ヨゴ皇国とは全く異なるカンバル王国の空気や、人々の生活など、ディテールまできっちり作りこまれていることに改めて気づきました。物語の世界観がすばらしいです。

 そして、今回気づいたことをもう一つ。今まで、「バルサ=助ける人」「チャグム=助けられる人」という図式でしか考えていなかったのですが、すでにこの時点で、バルサもチャグムの生き方から何らかの影響を受け、自分の人生を見つめなおしているのですね。そういう意味で、チャグムとバルサの絆(今回、チャグムは登場しないけど)を再確認しました。

 絆といえば。バルサがことあるごとにタンダのことを思い浮かべるのですが、それがとてもよかったです。離れていることの方が多くても、いつも心のどこかにタンダがいるのですね。なんとなく、この旅が終わって、バルサにとってのタンダの存在もまたひときわ大きくなった気がするのです。 

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