シナリオ

2008年6月22日 (日)

猫と針

1311「猫と針」恩田陸    新潮社    ★★★★

 人はその場にいない人の話をする…葬式帰りに集まった学生時代の五人の仲間。それぞれに事情を抱えているらしい彼らは、互いの身の上に憶測を巡らし…。

 恩田陸・初戯曲!
 いつか書くだろうと確信してました。恩田さんの芝居好きは有名だし、もともと閉鎖された時空間の物語が多い恩田作品は、舞台向きだと思っていたので。さらに、「チョコレートコスモス」や「中庭の出来事」は、演劇が題材だったし。
 この戯曲は、サスペンス調の、台詞による心理劇。いかにも恩田さんらしい展開をします。やはり閉鎖された時空間での物語。会話を重ねることで、それまで見えなかったものが明らかになり、現実がグニャリと歪んでいくような…。この感じは「Q&A」や「ユージニア」を連想しました。ただ、学生時代の同級生の再会…という設定が、どろどろになりすぎない感じをキープしてます。
 戯曲と言っても、恩田さんの小説をそのまま読んでいる感じでした。
しかし、こういう不穏なムードのシナリオを、さわやか青春群像得意なキャラメルボックスにやらせちゃうところが、恩田さんの邪悪なとこですね(笑)確信犯だったらしいですが。

 公演チラシやパンフの作者の言葉、執筆過程の「猫と針」日記もついてきて、恩田さんが苦しんだ過程や、タイトルの由来もわかっておもしろかったです。

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2004年10月28日 (木)

ばら色の人生

646「ばら色の人生」鷺沢萠   作品社   ★★★★

 倒産した会社。残ったものは200万円と、600箱以上のなめたけの瓶詰め(キムチ味)。社長は200万円をもって雲隠れ。社員たちは差し押さえられる前に、なめたけを運び出そうと悪戦苦闘。そこに社長が戻ってきて・・・。

 鷺沢萠最初で最後の戯曲集。「ばら色の人生」「ビューティフル・ネーム」「ウェルカム・ホーム!」の3作(いずれも上演されました)。「ビューティフル~」「ウェルカム~」は同名の単行本がありますが、内容は全く違います。
 「ばら色の人生」がいちばんおもしろかったです。これにも「在日」の要素が入っていますが、変に重くない。息子が自分の父親の無責任ぶりを罵倒してるうちにボルテージがあがって、あげくに「チョーセンジーン!」と叫ぶシーンがあります。笑っちゃいけない気がするんだけど、笑える。あんたも同じ血が流れてるんだっつーの!って。そうやってコメディとして自分の思いを表現しようという作者の意図が伝わってきます。
 3作とも、伝わってくるメッセージはとてもポジティヴなものです。しょーもない人たちがいっぱい出てくるけど。笑いながら、「うんうん、そうだよね」って頷いてしまいます。
 正直言って、戯曲としての出来がどうなのか、私にはよくわかりません。ただ、小説よりももっと生々しく、鷺沢さんの考え、思い、願いが感じられて、憑かれたように一気に読んでしまいました。
 伊集院静さん、永江朗さん、原田宗典さん、沢知恵さんの寄稿があって、その中の沢さんのエッセイが印象的でした。
 

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2004年1月30日 (金)

阿修羅のごとく

440「阿修羅のごとく」向田邦子   新潮文庫   ★★★★

夫に先立たれ、妻子ある男と不倫を続ける綱子。夫が浮気しているのではないかと悩む巻子。融通のきかない性格が災いして縁遠い滝子。うだつのあがらないボクサーと同棲中の咲子。そんな四姉妹の父が浮気をしていることが発覚し、騒動が持ち上がる。

 文春文庫で小説としてリライトされたものが出ていますが、どうしても向田さんの生の言葉で読みたくて、アマゾンにてやっと入手。なぜか書店には一冊もなかったのです。
 テレビドラマのシナリオということで、小説とは異なり、会話主体で物語が進行していきます。実は、これがすごくおもしろかったのですね。四姉妹の会話のテンポがすごくよくわかる。姉妹のやりとりに夫がついていけない・・・という場面がありましたが、さもありなん。私は姉妹はいませんが、この雰囲気はわかります。
 姉妹の個性もさまざまで、それを生かしながら「女性」の本質を鋭くついてきます。さすが、向田さん。かなり痛いところをついてくるのだけど、どこかそういう彼女たちを微笑んで眺めているような、そんな作者の視線を感じます。
 第1話の冒頭、滝子が姉に電話をかけながら「父」という字を窓ガラスに書くところ、この文字の使い方がうまい!と思いました。ほかにも映像にしたら生きるなあ、さすがだなあという場面がたくさんあって、シナリオライターとしての向田さんの力量にあらためて脱帽です。
 なんとなく、向田邦子版「若草物語」って感じがするのは気のせいでしょうか?

さくら > アマゾンから届いたのですね!最初シナリオというのがちょっと読みにくいな~と思っていましたが、読み出したらすぐ慣れました。「若草物語」もそうですが、「細雪」の雰囲気とも通じていてとても好きな一冊となりました! (2004/01/31 09:26)
たばぞう > 文春文庫版と新潮文庫版の違いに気付かずに、文春文庫を購入して読みました。昔の物語なので、世相のずれみたいなものも感じましたが、恋をして阿修羅のようになったりなられたりする女たちの様子は、今も昔も変わらないものだと思いました。 (2004/01/31 12:31)
まゆ > さくらさん、やっと届きましたよ~。シナリオでもよくできたものはじゅうぶんおもしろいのは「北の国から」でわかっていたので、大丈夫でした。「細雪」は未読なんですよね。やっぱり読まなきゃダメかしらん。
たばぞうさん、お久しぶりです。時代の違いは感じますよね。映画化といっても今風の女優さんたちで大丈夫だったのかな?とちょっと心配してみたり。昔テレビでやったころの写真が載っているのですが、こっちはイメージにぴったりでした。 (2004/01/31 17:03)
nanako > 少しでも向田エッセンスを感じたくて私もシナリオ版で読みました。まゆさんが書かれている冒頭の窓ガラスに父の文字の場面の描写、私も凄く印象に残っています。ト書きを読んでいるだけど状況が目に浮かび、最低限の短い描写で風景を鮮やかに描く向田邦子の技に圧倒されて、ますますファンになりました。
「細雪」は私も最近読んだばかりですが、これまた物凄く良かったです。多分まゆさんもお気に召すと思いますよ~。是非是非読んでみて下さい。
(2004/01/31 21:02)
まゆ > 読んでいて、「うまいなあ」と何度もうならされました。会話の運びや食べ物の使い方なんかも。「細雪」も読まなきゃですね。谷崎ってあんまり読んでないんですよねえ。ちょっと食わず嫌いの作家なのですが。でも、チャレンジしてみます。 (2004/02/01 00:26)

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2003年3月17日 (月)

レディ・アンをさがして

182「レディ・アンをさがして」氷室冴子   角川文庫   ★★★★

 1959年、アメリカ。
 ヨーロッパの小国の王女、プリンセス・アントワージュはニューヨークに遊学にやってくる。ところがそれは表向きで、本当は火の車の国の経済を救うため、財閥のボンボンと政略結婚をするためなのだった。

 氷室冴子が原作を書いていた漫画「ライジング!」の劇中劇として作られた物語。漫画が宝塚をモデルにしたものだったので、これも歌ありダンスありのミュージカル・プレイの脚本になっています。
 「ローマの休日」を下敷きに、お屋敷を抜け出した王女さまと、新聞記者ならぬポップスのヒットメーカーとの恋が描かれる。もちろん、アンハッピーエンド。実は漫画で読んだ時に、けっこう感動してしまって、本気で舞台化してくれないかなと思ったものです(当時の私は、宝塚に全く興味がなかったのですが)。
 これは漫画連載当時のものに多少加筆して仕上げてあります。夢物語といってしまえばそれまでだけど、読んだ後にちょっとせつなくて、ほんわかとあったかい気持ちになります。実は、私の愛読書の一つです。

やぶ > 「ライジング!」うわ~、懐かしいですね。これ宮苑で娘役が初の主人公ということで、祐紀が主演した物語ですよね(何分昔のことなので違っていたらゴメンナサイ)まさか実際に本になっているとは全然しらなかった!驚きました。祐紀が宮苑を出て外部の劇団等で色々な役者と対決していくとこなど「ガラスの仮面」の北島マヤか!などと思いながら読んでいました。(確か姫川亜弓みたいな人も最後の方で出たような・・・) (2003/03/17 22:28)
まゆ > こういうのにもちゃんと反応が返ってくるところが、さすが本プロ!って感じですね。やぶさんのご記憶は確かです。まだ学生の祐紀が大抜擢されて、小劇場で主役を演じた時の演目です。私は舞台もの好きで、氷室冴子好きで、それであの漫画も読んでたんでした。今は宝塚も観ますけど。「ガラスの仮面」ももちろん読んでいます。姫川亜弓みたいな人って、鞠子さんのことですね。 (2003/03/18 00:44)
つん > これが取り上げられるなんてビックリです。この小説は読んだことないのですが、コミックスは全巻持ってますよ~。ラストシーンが好きでした。 (2003/03/18 17:17)
まゆ > これにちゃんとレスがつくことに、私のほうがビックリ(笑)本プロならもしや…と思ってはいましたが。私ももちろん、コミックス全巻もってます。漫画に出てくる劇中劇が好きで。これも、脚本の形で本になっています。残念ながら宝塚では上演されませんでしたが、同じように女性だけで構成されている劇団OSKで上演したんですよ。 (2003/03/18 21:29)

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2002年9月12日 (木)

北の国から 2002遺言

23「北の国から 2002遺言」倉本聰   理論社   ★★★★

 牧場をつぶしてしまい、借金を抱え、富良野にいられなくなった純。彼と一緒に富良野を去った夫・正吉を待ちながら息子と暮らす蛍。そして、相変わらずの五郎。
 もちろん、ドラマも見た。やっぱり、泣いてしまった。
 シナリオを読んでいると、映像が鮮明に浮かんでくる。そして、文字になった一語一語が、深くしみてくるような気がする。
 それにしても。これでもかとばかりに押し寄せてくる不幸の数々。倉本聰って鬼じゃないか?
 物語の最後、純は伴侶を得て富良野に戻り、蛍は夫と暮らすために富良野を去っていく。 
 純の「もう逃げない」という言葉が、ひどく印象的だった。倖せって何だろう、と、考えずにはいられなかった。

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