月とアマリリス
3625「月とアマリリス」 町田そのこ 小学館 ★★★★
自分が書いた記事が人を追いつめた。その事実を受け止められず、記者をやめ、実家の北九州に帰ったみちる。しかし、そこで遭遇した事件が、みちるを再び現場へ。死体遺棄事件から殺人事件へ。それらの事件に、偶然にもみちるの同級生たちが関わっているとわかり・・・。
「ひとはひとで歪むんよ。」
再生の物語でした。
死体遺棄事件の被害者の身元を調べるうちに、別の遺体を発見。その調査の過程で、意外すぎる事実が。年上の幼なじみ・井口の力も借りて、記者としてもう一度事件と向き合う覚悟を決めたみちる。とはいえ、その道のりは簡単なものではなく。
愛した人から愛されたい。そんな当たり前のことが、人を苦しめ、窮地に追い込む。繰り返し描かれるその姿が、切実に哀しかったです。歪んでしまった彼ら。みちるは自分の傷を抱えたまま、彼らと向き合い続けます。それは、単なる正義感ではなく。ある意味、みちるの「歪み」と対峙する作業だったのかもしれません。
事件のクライマックス。祖父が孫娘を抱きしめ、「ごめん」「よう頑張った」と繰り返す場面。泣けてしかたなかったです。「愛されたい」という当たり前の願いが踏みにじられた人が再生するきっかけも、やはり愛なのでしょうね。
ひとはひとで歪む。でも、ひとはひとでまっすぐにもなる。そんな、再生の物語でした。
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